番から逃げる事にしました

みん

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31 お決まりの

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王都への道程は、のんびりしたものだった。
泊まった領地で、比較的安価な物を露店で売りながらの旅だった。客層は幅広いようだ。


「シーフォールスの海が穏やかなのは、聖女のお陰なんだね」
「そうよ。とは言っても、全ての海域を浄化する事は不可能で、他国との海路だけを浄化しているそうだから、その海路から外れてしまうと荒れる事もあるし、魔獣も現れたりするそうだけどね」

だから、友好関係にあるユーグレイシアとシーフォールスの海路は穏やかで、船が難破する事もない。それとは逆に、あまり仲の良くない国への海路を浄化する事はない。

「魔獣……見た事はないけど、できれば遭遇したくないなぁ…」
「現れたとしても、私達が護るから大丈夫よ」
「魔獣よりも、聖女であるメグの方が強いかもしれないが……」

移動中の馬車では、第二王子とメグと3人で色んな話をした。ただ、王都に着く迄の3日間は、ヴェルティル様の姿を目にする事はなかった。




******

王都では、リューゴ商会としては既に販売に向かう所が決まっていたらしく、王都に到着した翌日からは、イーデン様達は朝早くから出て行き、帰って来るのは夕方だった。
その間は、第二王子とメグは図書館や聖堂などを巡って聖女の文献などを読んだりしていた。メグは相変わらず勉強熱心だ。今も、メグは第二王子と図書館に篭っていて、私はその2人から少し距離を置いた所に座っている。

ユラは……リューゴ商会に付いて行って手伝いをしているそうだけど、不在の時間もあるようで……『護衛は付けてあるから、後は自由にさせてます』と、イーデン様も少し呆れていた。

「反省とかした事あるのかしら?」
「誰が?」
「───っ!!??」

一人だと思っていたところに、またまた低音ボイスが耳に響いた。叫ばなかった私は偉いと思う。

「その、気配を消して現れるの、止めてもらえませんか?心臓に悪いので!」
「気配を消してるつもりはないんだけどね」

悪戯が成功した─みたいに笑っているのだから、わざとなんだろう。きっと、今迄だってそうだったんだ。

「………」
「怒ってる?」
「怒ってません。ただ……色々と驚いているだけです」
「そっか……」

そこで、何故か嬉しそうに笑うヴェルティル様。
葵色の髪に青色の瞳のヴェルティル様。本当のヴェルティル様は───

「そのピアス、よく似合ってるね」
「そう…ですか?あ、この宝石の色なんですけど、光の加減で色が変わったりしますか?」
「基本淡い緑色だけど、太陽の光を浴びると青色にも見えるね」
「そうなんですね……」

私の色とヴェルティル様の色─なんて思ってしまうのだから、私も困ったものだ。

「青色も、クレイオン嬢によく似合ってる」
「っ!?あ…ありがとう…ございます…」

本当に!本当にー!!!

いっその事、早くリリアーヌ様と結婚してくれませんか!?そうしたら、私も────

「あれ?ヴェルティル様は、ここに居て良いんですか?」

護衛対象である第二王子から離れても大丈夫なんだろうか?

「護衛は俺1人だけではないからね。今日の俺の任務は終わったんだ。で、アラール殿下からの伝言で“クレイオン嬢も昼から休んでくれ”だそうだ」
「そうなんですか?」

急に休みをもらったからと言ってもどうするか。

「取り敢えず、ランチでもしようか?」
「────ランチ?」
「お勧めの店を聞いて来たから、一緒にどおかな?」
「……行きます………」
「よし、じゃあ行こう」

立ち上がるとメグがこちらを振り返り、手をフリフリと振ってくれたから、私も手を振ってからその場を後にした。

ー断れない自分が…恨めしいー




******

「お勧めのお店なだけあって、本当に美味しかったですね」
「ユーグレイシアとは全く違う味付けだけど、シーフォールスの料理も美味しいね。国によって、本当に無理な料理もあるけど」

ヴェルティル様とやって来たお店のランチは、本当に美味しかった。デザートはトルガレントの物とはまた違った物が多くて、新しい発見もあった。トルガレントに来てから、たまにだけど自炊するようになった。王都にしかない調味料もあるらしく、時間があるなら買い物にでも行こうかなと思っていた。

「この後の予定は何かある?」
「予定と言うか、買い物でもして帰ろうかと思って。なので、ヴェルティル様は先に─」
「それじゃあ、行こうか」
「え?」
「俺が一緒だと迷惑?」
「迷惑ではないですけど…でも………」
「どうせ暇だし時間はあるから」

ーいつもこのパターンだー

きっと、私が断れないと分かって言っているんだ。
リリアーヌ様と言う完璧な彼女?婚約者?が居るのに。ヴェルティル様は、一体私をどうしたいんだろう?その気にさせるだけさせてポイッ─しか無いよね?断り切れない私も私だけど!でも!

「ヴェルティルさ───」
「アラスター様!」
「「………」」

ーはい、これもお決まりになりつつあるパターンですー

「偶然ですね!」
「「…………」」

振り返ると、そこにはやっぱりユラが居た。


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