26 / 59
26 リューゴ商会
しおりを挟む
ユーグレイシア王国からやって来る商団は“リューゴ商会”だった。このリューゴ商会は、3、4年程前に立ち上げられた商会で、若い世代からの人気があり、この1、2年で更に大きくなった商会だった。誰が立ち上げたのか、トップには誰が居るのか──詳細が表に全く出ないものの、扱っている商品は品質が良いのに、お手軽な値段だっりする為、若い世代の貴族から平民にまで人気がある。私も、学生時代は色々とお世話になっていたから、今回久し振りにリューゴ商会の物を買えると言うのは嬉しい。
しかも、今回はそのトップがやって来るそうで、それはそれで興味津々だったりもする。
そのリューゴ商会がやって来るのが明日。それからトルガレントに3日泊まってから、王都に向けて出立すると言う事で、買い物は2日目の午前中になった。私達交換訓練生5人はもれなく参加できる。
「その商会と一緒に、お偉いさんも来るらしい」
「お偉いさん?」
どのレベルのお偉いさんなのか。それによって、護衛の人数も変わって来る。ただ、護衛に付く予定のハーヴィーさんでさえ知らされていないと言う事は、伯爵以下の貴族の可能性が高い。もし侯爵以上なら、辺境地に3日も泊まる事はないだろうし、護衛もトルガレントの騎士だけではなく、王家からも派遣されるだろう。
「俺もよく分からないけど、お忍びで来るんじゃないか─って」
「お忍び………」
ーそれはそれで、何だか嫌なワードじゃない?ー
それでも『王族だけはないだろうけどね』と、笑って話を終えた。それから、ハーヴィーさんは商団を迎える準備からの出迎えや警護の為、別邸には帰って来なかった。そして、そのまま滞在2日目の朝になり、別邸に居た交換訓練生4人は、商会での買い物をする為にトルガレント辺境伯の本邸へとやって来た。
「あ、ハーヴィー!お疲れさ────」
本邸へとやって来ると、門前で出迎えてくれたのかハーヴィーさんが居た。ハーヴィーさんと同期であるイアンさんが声を掛けたところで、私達4人は動きを止めた。
「えっと…ハーヴィー?どうした?この2日で……えらい窶れたんじゃないか?」
「そう……かな……」
「「「………」」」
たったの2日。2日だけでこんなにも窶れる事ができるのか?と突っ込みたくなる程だ。
「あー……うん。多分、理由はすぐに分かってもらえると思う。まぁ…うん。取り敢えずは……買い物を……楽しみたいな……」
何とも歯切れの悪いものだったけど、私達5人は本邸の奥へと進んで行った。
本邸の裏庭で、広げられていたリューゴ商会の商品は、やっぱり質が良いのにお手軽な物だった。何より品数も多く、何を買うのか悩んでしまう程だった。ちなみに、今ここには、私達交換訓練生以外に、トルガレント辺境伯の本邸の使用人達も居て、それなりの人数で賑わっている。
「クレイオン嬢!」
「?」
買い物途中で名を呼ばれて振り返ると──
「イーデン様!?」
「あぁ!本当にシーフォールスに居たんだね!」
「お久し振りです。あの…挨拶もできずに……」
「本当に、話を聞いた時は驚いて…色々大変だったけど………元気そうで良かった」
“色々大変だった”─とは…そう言えば、モニカもそんな事を手紙に書いていたような???正直、大変だったのは私の方なんだけど?
「会えて嬉しいんですけど、イーデン様はどうしてここに?」
「え?あ、クレイオン嬢には言ってなかったと言うか…極秘事項だったから、今迄公にしてなかったんだけど、このリューゴ商会を立ち上げて指揮を執っているのが…私なんだ」
「………えっ!!??」
それって、リューゴ商会の創設者で会長って事だよね!?立ち上がったのが4年程前だから、学生をしながら経営もしていたと言う事になる。
「共同経営だから、私1人だけの力で─とは言えないんだけどね。でも、なんとかうまくいってここまで来れたから、ようやく念願が叶うところまて来たと言う感じかな。まぁ…その前に大きな山が………」
「大きな山??」
「あ、いや、何でもない。気にしないで良いよ。これは、私達の問題だから………」
「?」
何だかよく分からないけど、トラブル的なモノがあったのかもしれないから、あまり深くは聞かない方が良いだろう。
「まさか、リューゴ商会のトップがイーデン様だとは……凄いですね。私、学生の頃からお世話になってました。だから、今日、久し振りに買い物ができて─」
「リュシエンヌ!!」
「え!?うわぁ──っ」
イーデン様と話をしていると、背後から抱きつかれた。
「え?ちょっ………メグ!?」
「リュシエンヌ!会いたかった!」
ーえ!?何でこんな所に聖女のメグが!?ー
サッと辺りを見回すと
「…………」
更に、こんな所で見掛けてはいけない人物が目に入って来た。髪色を変えて変装?してはいるけど、間違いではないだろう。チラッとイーデン様に視線を向けると、物凄く困った顔をされてしまった。
どうやら、間違いないようだ。
よくある茶色の髪で、眼鏡を掛けている男性がこちら側に歩いて来る。
「……見付けた…………」
そう言って、涙目になっているのは──
ユーグレイシア王国第二王子、アラール様だった。
しかも、今回はそのトップがやって来るそうで、それはそれで興味津々だったりもする。
そのリューゴ商会がやって来るのが明日。それからトルガレントに3日泊まってから、王都に向けて出立すると言う事で、買い物は2日目の午前中になった。私達交換訓練生5人はもれなく参加できる。
「その商会と一緒に、お偉いさんも来るらしい」
「お偉いさん?」
どのレベルのお偉いさんなのか。それによって、護衛の人数も変わって来る。ただ、護衛に付く予定のハーヴィーさんでさえ知らされていないと言う事は、伯爵以下の貴族の可能性が高い。もし侯爵以上なら、辺境地に3日も泊まる事はないだろうし、護衛もトルガレントの騎士だけではなく、王家からも派遣されるだろう。
「俺もよく分からないけど、お忍びで来るんじゃないか─って」
「お忍び………」
ーそれはそれで、何だか嫌なワードじゃない?ー
それでも『王族だけはないだろうけどね』と、笑って話を終えた。それから、ハーヴィーさんは商団を迎える準備からの出迎えや警護の為、別邸には帰って来なかった。そして、そのまま滞在2日目の朝になり、別邸に居た交換訓練生4人は、商会での買い物をする為にトルガレント辺境伯の本邸へとやって来た。
「あ、ハーヴィー!お疲れさ────」
本邸へとやって来ると、門前で出迎えてくれたのかハーヴィーさんが居た。ハーヴィーさんと同期であるイアンさんが声を掛けたところで、私達4人は動きを止めた。
「えっと…ハーヴィー?どうした?この2日で……えらい窶れたんじゃないか?」
「そう……かな……」
「「「………」」」
たったの2日。2日だけでこんなにも窶れる事ができるのか?と突っ込みたくなる程だ。
「あー……うん。多分、理由はすぐに分かってもらえると思う。まぁ…うん。取り敢えずは……買い物を……楽しみたいな……」
何とも歯切れの悪いものだったけど、私達5人は本邸の奥へと進んで行った。
本邸の裏庭で、広げられていたリューゴ商会の商品は、やっぱり質が良いのにお手軽な物だった。何より品数も多く、何を買うのか悩んでしまう程だった。ちなみに、今ここには、私達交換訓練生以外に、トルガレント辺境伯の本邸の使用人達も居て、それなりの人数で賑わっている。
「クレイオン嬢!」
「?」
買い物途中で名を呼ばれて振り返ると──
「イーデン様!?」
「あぁ!本当にシーフォールスに居たんだね!」
「お久し振りです。あの…挨拶もできずに……」
「本当に、話を聞いた時は驚いて…色々大変だったけど………元気そうで良かった」
“色々大変だった”─とは…そう言えば、モニカもそんな事を手紙に書いていたような???正直、大変だったのは私の方なんだけど?
「会えて嬉しいんですけど、イーデン様はどうしてここに?」
「え?あ、クレイオン嬢には言ってなかったと言うか…極秘事項だったから、今迄公にしてなかったんだけど、このリューゴ商会を立ち上げて指揮を執っているのが…私なんだ」
「………えっ!!??」
それって、リューゴ商会の創設者で会長って事だよね!?立ち上がったのが4年程前だから、学生をしながら経営もしていたと言う事になる。
「共同経営だから、私1人だけの力で─とは言えないんだけどね。でも、なんとかうまくいってここまで来れたから、ようやく念願が叶うところまて来たと言う感じかな。まぁ…その前に大きな山が………」
「大きな山??」
「あ、いや、何でもない。気にしないで良いよ。これは、私達の問題だから………」
「?」
何だかよく分からないけど、トラブル的なモノがあったのかもしれないから、あまり深くは聞かない方が良いだろう。
「まさか、リューゴ商会のトップがイーデン様だとは……凄いですね。私、学生の頃からお世話になってました。だから、今日、久し振りに買い物ができて─」
「リュシエンヌ!!」
「え!?うわぁ──っ」
イーデン様と話をしていると、背後から抱きつかれた。
「え?ちょっ………メグ!?」
「リュシエンヌ!会いたかった!」
ーえ!?何でこんな所に聖女のメグが!?ー
サッと辺りを見回すと
「…………」
更に、こんな所で見掛けてはいけない人物が目に入って来た。髪色を変えて変装?してはいるけど、間違いではないだろう。チラッとイーデン様に視線を向けると、物凄く困った顔をされてしまった。
どうやら、間違いないようだ。
よくある茶色の髪で、眼鏡を掛けている男性がこちら側に歩いて来る。
「……見付けた…………」
そう言って、涙目になっているのは──
ユーグレイシア王国第二王子、アラール様だった。
1,203
お気に入りに追加
2,018
あなたにおすすめの小説
私が一番嫌いな言葉。それは、番です!
水無月あん
恋愛
獣人と人が住む国で、ララベルが一番嫌う言葉、それは番。というのも、大好きな親戚のミナリア姉様が結婚相手の王子に、「番が現れた」という理由で結婚をとりやめられたから。それからというのも、番という言葉が一番嫌いになったララベル。そんなララベルを大切に囲い込むのが幼馴染のルーファス。ルーファスは竜の獣人だけれど、番は現れるのか……?
色々鈍いヒロインと、溺愛する幼馴染のお話です。
猛暑でへろへろのため、とにかく、気分転換したくて書きました。とはいえ、涼しさが得られるお話ではありません💦 暑さがおさまるころに終わる予定のお話です。(すみません、予定がのびてます)
いつもながらご都合主義で、ゆるい設定です。お気軽に読んでくださったら幸いです。
ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?
蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」
ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。
リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。
「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」
結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。
愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。
これからは自分の幸せのために生きると決意した。
そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。
「迎えに来たよ、リディス」
交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。
裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。
※完結まで書いた短編集消化のための投稿。
小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
【完結】そう、番だったら別れなさい
堀 和三盆
恋愛
ラシーヌは狼獣人でライフェ侯爵家の一人娘。番である両親に憧れていて、番との婚姻を完全に諦めるまでは異性との交際は控えようと思っていた。
しかし、ある日を境に母親から異性との交際をしつこく勧められるようになり、仕方なく幼馴染で猫獣人のファンゲンに恋人のふりを頼むことに。彼の方にも事情があり、お互いの利害が一致したことから二人の嘘の交際が始まった。
そして二人が成長すると、なんと偽の恋人役を頼んだ幼馴染のファンゲンから番の気配を感じるようになり、幼馴染が大好きだったラシーヌは大喜び。早速母親に、
『お付き合いしている幼馴染のファンゲンが私の番かもしれない』――と報告するのだが。
「そう、番だったら別れなさい」
母親からの返答はラシーヌには受け入れ難いものだった。
お母様どうして!?
何で運命の番と別れなくてはいけないの!?
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる