番から逃げる事にしました

みん

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26 リューゴ商会

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ユーグレイシア王国からやって来る商団は“リューゴ商会”だった。このリューゴ商会は、3、4年程前に立ち上げられた商会で、若い世代からの人気があり、この1、2年で更に大きくなった商会だった。誰が立ち上げたのか、トップには誰が居るのか──詳細が表に全く出ないものの、扱っている商品は品質が良いのに、お手軽な値段だっりする為、若い世代の貴族から平民にまで人気がある。私も、学生時代は色々とお世話になっていたから、今回久し振りにリューゴ商会の物を買えると言うのは嬉しい。
しかも、今回はそのトップがやって来るそうで、それはそれで興味津々だったりもする。





そのリューゴ商会がやって来るのが明日。それからトルガレントに3日泊まってから、王都に向けて出立すると言う事で、買い物は2日目の午前中になった。私達交換訓練生5人はもれなく参加できる。



「その商会と一緒に、も来るらしい」
?」

どのレベルのお偉いさんなのか。それによって、護衛の人数も変わって来る。ただ、護衛に付く予定のハーヴィーさんでさえ知らされていないと言う事は、伯爵以下の貴族の可能性が高い。もし侯爵以上なら、辺境地に3日も泊まる事はないだろうし、護衛もトルガレントの騎士だけではなく、王家からも派遣されるだろう。

「俺もよく分からないけど、お忍びで来るんじゃないか─って」
「お忍び………」

ーそれはそれで、何だか嫌なワードじゃない?ー

それでも『王族だけはないだろうけどね』と、笑って話を終えた。それから、ハーヴィーさんは商団を迎える準備からの出迎えや警護の為、別邸には帰って来なかった。そして、そのまま滞在2日目の朝になり、別邸に居た交換訓練生4人は、商会での買い物をする為にトルガレント辺境伯の本邸へとやって来た。


「あ、ハーヴィー!お疲れさ────」

本邸へとやって来ると、門前で出迎えてくれたのかハーヴィーさんが居た。ハーヴィーさんと同期であるイアンさんが声を掛けたところで、私達4人は動きを止めた。

「えっと…ハーヴィー?どうした?この2日で……えらい窶れたんじゃないか?」
「そう……かな……」
「「「………」」」

たったの2日。2日だけでこんなにも窶れる事ができるのか?と突っ込みたくなる程だ。

「あー……うん。多分、理由はすぐに分かってもらえると思う。まぁ…うん。取り敢えずは……買い物を……楽しみたいな……」

何とも歯切れの悪いものだったけど、私達5人は本邸の奥へと進んで行った。







本邸の裏庭で、広げられていたリューゴ商会の商品は、やっぱり質が良いのにお手軽な物だった。何より品数も多く、何を買うのか悩んでしまう程だった。ちなみに、今ここには、私達交換訓練生以外に、トルガレント辺境伯の本邸の使用人達も居て、それなりの人数で賑わっている。

「クレイオン嬢!」
「?」

買い物途中で名を呼ばれて振り返ると──

「イーデン様!?」
「あぁ!本当にシーフォールスに居たんだね!」
「お久し振りです。あの…挨拶もできずに……」
「本当に、話を聞いた時は驚いて…色々大変だったけど………元気そうで良かった」

“色々大変だった”─とは…そう言えば、モニカもそんな事を手紙に書いていたような???正直、大変だったのは私の方なんだけど?

「会えて嬉しいんですけど、イーデン様はどうしてここに?」
「え?あ、クレイオン嬢には言ってなかったと言うか…極秘事項だったから、今迄公にしてなかったんだけど、このリューゴ商会を立ち上げて指揮を執っているのが…私なんだ」
「………えっ!!??」

それって、リューゴ商会の創設者で会長トップって事だよね!?立ち上がったのが4年程前だから、学生をしながら経営もしていたと言う事になる。

「共同経営だから、私1人だけの力で─とは言えないんだけどね。でも、なんとかうまくいってここまで来れたから、ようやく念願が叶うところまて来たと言う感じかな。まぁ…その前に大きな山が………」
「大きな山??」
「あ、いや、何でもない。気にしないで良いよ。これは、私達の問題だから………」
「?」

何だかよく分からないけど、トラブル的なモノがあったのかもしれないから、あまり深くは聞かない方が良いだろう。

「まさか、リューゴ商会のトップがイーデン様だとは……凄いですね。私、学生の頃からお世話になってました。だから、今日、久し振りに買い物ができて─」
「リュシエンヌ!!」
「え!?うわぁ──っ」

イーデン様と話をしていると、背後から抱きつかれた。

「え?ちょっ………メグ!?」
「リュシエンヌ!会いたかった!」

ーえ!?何でこんな所に聖女のメグが!?ー

サッと辺りを見回すと

「…………」

更に、こんな所で見掛けてはいけない人物が目に入って来た。髪色を変えて変装?してはいるけど、間違いではないだろう。チラッとイーデン様に視線を向けると、物凄く困った顔をされてしまった。
どうやら、間違いないようだ。

よくある茶色の髪で、眼鏡を掛けている男性がこちら側に歩いて来る。

「……見付けた…………」

そう言って、涙目になっているのは──


ユーグレイシア王国第二王子、アラール様だった。





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