23 / 59
23 結星
しおりを挟む
「恵には友達が居ないから、入れてあげても良い?」
「本当に結星は優しいよね。あんな子放っておけば良いのに…」
「そんな事言わないで。恵は本当の両親が早くに死んじゃって、寂しい思いをして可哀想な子なの」
「だからって、我儘し放題は駄目でしょう?本当に──」
恵は、本当に可哀想な子だった。両親は早くに病死して、育ての親はマトモに恵の世話をするような人達ではなかった。実の子が1人居て、その子はいつも綺麗な服を着ていたけど、恵はいつも着古したような色褪せた服を着ていた。見た目も私と同じ年齢の筈なのに、痩せ過ぎていて小さかったから、私よりも年下に見えた。
ー何て可哀想な子なんだろうー
それから、私は恵を誘っては私達の輪の中に入れてあげるようにした。
「結星は優しいよね」
そう言われるのも嬉しかった。
******
「九十九さんって、よく見たら可愛いよな?」
「分かる!あの小ささがまた可愛いよな」
「…そうだね………」
確かに恵は可愛い…と思う。思うけど──
ー何かが気に入らないー
恵が可愛いと言ったのは、私が良いな─と思っていた男子だった。
「恵は異性に慣れてないから、あまり話し掛けたりしないであげてね。何となく…男の子が怖いみたいなの」
「そうなんだ。怖がられてるなら近付かないようにしとくよ。上条さんは、気が利くよな」
「……ありがとう」
嘘は言っていない。だって、恵が男子と話している所を見た事がないんだから、恵はきっと、男子が苦手なんだ。それに、毎日が色々大変で恋愛なんてする暇はないだろうし。何より、彼に恵は不釣り合いだ。恵に似合うのは、おとなしい感じの子だ。
ー私が恵に合った子を選んであげないとー
それでも、たまに恵が可愛いと言う男子が居た。それがまた、女子から人気がある男子だったりして、ますます気に入らない。何故恵ばかりが可愛いと言われるのか──
******
そんなある日、下校途中で私の前を歩く恵を何となく見ていると、恵の足下が光出して、恵がその光に包まれて行くのを見て、何故か咄嗟に駆け出して、私もその光の中に飛び込んだ。
「恵!」
「えっ!?結星!?」
「「きゃあ───っ!!」」
あまりの眩しさに目をギュッと閉じて、お互い抱き合ったままその場にしゃがみこんだ。
そして、次に目を開けると、そこは日本でも地球でもない別の世界だった。
ーあの時、咄嗟に駆け出した自分を褒めてあげたいー
恵だけが聖女と言う事には納得いかないけど、私は私で良い待遇を受ける事になったから良しとする。
それに、この世界には本物の王子様が存在するし、私の周りには日本のイケメンが霞む程のイケメンが沢山居る。貴族の殆どがイケメンだ。そのイケメン達は、優しいし私の話やお願いをよく聞いてくれる。
だから、相変わらずなメグの為に、メグが過ごしやすいように、後見人であるアラール様に色々とお願いをしてあげた。
学校の友達にも、メグは人付き合いが苦手だから近付かないで─とお願いしておいた。
城に居ても、私がメグと一緒に居る事は殆どない。最近では、週末の聖女の訓練をしていならしいけど、その週末でさえ、私がメグと顔を合わせる事はない。きっと、メグは聖女の訓練に疲れて、今はリュシエンヌやモニカと遊んでいるんだろう。
ー私を除け者にしてー
メグはこの世界に来てから、自分が聖女だからと少しお高くなって来ている。日本で私がメグの為にどれだけ気を使ってあげたのか…忘れてるんじゃない?
「ユラ、少し話があるんだ」
「アラール様!何ですか?」
アラール様は、この国の第二王子で、私のお願い事は何でも聞いてくれるイケメンだ。
そう思っていたけど──
何故か、私は聖女メグの侍女と言う肩書きが無くなり、ただの付き添い人扱いとなった。事情が事情だけに、城から放り出される事はないし、働かなくとも楽に暮らせていける事に変わりはないけど。
ただ、それ以降、アラール様が無条件に私の言葉を信じてくれる事がなくなってしまった。私の言葉を信じてくれるのは、学校の友達だけになった。リュシエンヌとモニカは、相変わらず私とは距離を置いている感じがする。
何より気になるのが…アラスター様だ。
少し冷たい印象のある青色の瞳と、葵色の髪がよく似合うイケメン。どうにかして、彼に近付く事はできないかなぁ?リリアーヌなんかより、私の方がよっぽどアラスター様にお似合いだと思うのに─そんな風に考えながら歩いていると、城の廊下の先に、そのアラスター様の姿が見えた。声を掛けようと近付いて行くと──
「─────ね」
「──────だろう?」
アラスター様だけではなく、リリアーヌも一緒に居るようで、私は2人に気付かれないように身を隠して耳を立てた。
「それで、これからどうするの?」
「勿論、必ず毛並みの綺麗なシロを手に入れる」
「自信満々なのね」
「何よりも欲しいモノだからね」
“毛並みの綺麗なシロ”
それは一体何なのかは分からないけど、アラスター様がどうしても欲しい─手に入れたいと言うモノなんだろう。
「………」
もし、それを私が見付けてアラスター様にあげれば…
「ふふっ……」
メグの事は取り敢えず置いといて、私はこれからの事を考えながらその場を離れた。
「本当に結星は優しいよね。あんな子放っておけば良いのに…」
「そんな事言わないで。恵は本当の両親が早くに死んじゃって、寂しい思いをして可哀想な子なの」
「だからって、我儘し放題は駄目でしょう?本当に──」
恵は、本当に可哀想な子だった。両親は早くに病死して、育ての親はマトモに恵の世話をするような人達ではなかった。実の子が1人居て、その子はいつも綺麗な服を着ていたけど、恵はいつも着古したような色褪せた服を着ていた。見た目も私と同じ年齢の筈なのに、痩せ過ぎていて小さかったから、私よりも年下に見えた。
ー何て可哀想な子なんだろうー
それから、私は恵を誘っては私達の輪の中に入れてあげるようにした。
「結星は優しいよね」
そう言われるのも嬉しかった。
******
「九十九さんって、よく見たら可愛いよな?」
「分かる!あの小ささがまた可愛いよな」
「…そうだね………」
確かに恵は可愛い…と思う。思うけど──
ー何かが気に入らないー
恵が可愛いと言ったのは、私が良いな─と思っていた男子だった。
「恵は異性に慣れてないから、あまり話し掛けたりしないであげてね。何となく…男の子が怖いみたいなの」
「そうなんだ。怖がられてるなら近付かないようにしとくよ。上条さんは、気が利くよな」
「……ありがとう」
嘘は言っていない。だって、恵が男子と話している所を見た事がないんだから、恵はきっと、男子が苦手なんだ。それに、毎日が色々大変で恋愛なんてする暇はないだろうし。何より、彼に恵は不釣り合いだ。恵に似合うのは、おとなしい感じの子だ。
ー私が恵に合った子を選んであげないとー
それでも、たまに恵が可愛いと言う男子が居た。それがまた、女子から人気がある男子だったりして、ますます気に入らない。何故恵ばかりが可愛いと言われるのか──
******
そんなある日、下校途中で私の前を歩く恵を何となく見ていると、恵の足下が光出して、恵がその光に包まれて行くのを見て、何故か咄嗟に駆け出して、私もその光の中に飛び込んだ。
「恵!」
「えっ!?結星!?」
「「きゃあ───っ!!」」
あまりの眩しさに目をギュッと閉じて、お互い抱き合ったままその場にしゃがみこんだ。
そして、次に目を開けると、そこは日本でも地球でもない別の世界だった。
ーあの時、咄嗟に駆け出した自分を褒めてあげたいー
恵だけが聖女と言う事には納得いかないけど、私は私で良い待遇を受ける事になったから良しとする。
それに、この世界には本物の王子様が存在するし、私の周りには日本のイケメンが霞む程のイケメンが沢山居る。貴族の殆どがイケメンだ。そのイケメン達は、優しいし私の話やお願いをよく聞いてくれる。
だから、相変わらずなメグの為に、メグが過ごしやすいように、後見人であるアラール様に色々とお願いをしてあげた。
学校の友達にも、メグは人付き合いが苦手だから近付かないで─とお願いしておいた。
城に居ても、私がメグと一緒に居る事は殆どない。最近では、週末の聖女の訓練をしていならしいけど、その週末でさえ、私がメグと顔を合わせる事はない。きっと、メグは聖女の訓練に疲れて、今はリュシエンヌやモニカと遊んでいるんだろう。
ー私を除け者にしてー
メグはこの世界に来てから、自分が聖女だからと少しお高くなって来ている。日本で私がメグの為にどれだけ気を使ってあげたのか…忘れてるんじゃない?
「ユラ、少し話があるんだ」
「アラール様!何ですか?」
アラール様は、この国の第二王子で、私のお願い事は何でも聞いてくれるイケメンだ。
そう思っていたけど──
何故か、私は聖女メグの侍女と言う肩書きが無くなり、ただの付き添い人扱いとなった。事情が事情だけに、城から放り出される事はないし、働かなくとも楽に暮らせていける事に変わりはないけど。
ただ、それ以降、アラール様が無条件に私の言葉を信じてくれる事がなくなってしまった。私の言葉を信じてくれるのは、学校の友達だけになった。リュシエンヌとモニカは、相変わらず私とは距離を置いている感じがする。
何より気になるのが…アラスター様だ。
少し冷たい印象のある青色の瞳と、葵色の髪がよく似合うイケメン。どうにかして、彼に近付く事はできないかなぁ?リリアーヌなんかより、私の方がよっぽどアラスター様にお似合いだと思うのに─そんな風に考えながら歩いていると、城の廊下の先に、そのアラスター様の姿が見えた。声を掛けようと近付いて行くと──
「─────ね」
「──────だろう?」
アラスター様だけではなく、リリアーヌも一緒に居るようで、私は2人に気付かれないように身を隠して耳を立てた。
「それで、これからどうするの?」
「勿論、必ず毛並みの綺麗なシロを手に入れる」
「自信満々なのね」
「何よりも欲しいモノだからね」
“毛並みの綺麗なシロ”
それは一体何なのかは分からないけど、アラスター様がどうしても欲しい─手に入れたいと言うモノなんだろう。
「………」
もし、それを私が見付けてアラスター様にあげれば…
「ふふっ……」
メグの事は取り敢えず置いといて、私はこれからの事を考えながらその場を離れた。
1,130
お気に入りに追加
2,109
あなたにおすすめの小説

運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】そう、番だったら別れなさい
堀 和三盆
恋愛
ラシーヌは狼獣人でライフェ侯爵家の一人娘。番である両親に憧れていて、番との婚姻を完全に諦めるまでは異性との交際は控えようと思っていた。
しかし、ある日を境に母親から異性との交際をしつこく勧められるようになり、仕方なく幼馴染で猫獣人のファンゲンに恋人のふりを頼むことに。彼の方にも事情があり、お互いの利害が一致したことから二人の嘘の交際が始まった。
そして二人が成長すると、なんと偽の恋人役を頼んだ幼馴染のファンゲンから番の気配を感じるようになり、幼馴染が大好きだったラシーヌは大喜び。早速母親に、
『お付き合いしている幼馴染のファンゲンが私の番かもしれない』――と報告するのだが。
「そう、番だったら別れなさい」
母親からの返答はラシーヌには受け入れ難いものだった。
お母様どうして!?
何で運命の番と別れなくてはいけないの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる