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22 旅立ち
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学年末ともなれば、1年生も2年生も授業がなく、卒業を控えた3年生も学校には来ない為、この時期の校内はとても静かだ。そんな静かな学校の図書室で本を読むのが好きで、私は午前中は図書室で本を読み、学校を出てお気に入りのお店でランチを食べて家に帰る─と言う日々を送っている。それも、後数日で終わりだ。
卒業式迄1週間。メグとユラは学校には来ていない。
メグは、新学期が始まる迄は訓練を中心に頑張るそうだ。ユラは、今でも厄介な友達と出掛けたりしているそうだけど、今はおとなしくしているそうだ─と言うより、おとなしくせざるを得ないよね。第二王子ではなく、王太子に釘を刺されたのだから。このまま、後一年おとなしく────
「──する訳ないか………」
申し訳無いけど、後はモニカとアデールに頑張ってもらおう。
「あら?リュシエンヌ?」
「え?あ、リリアーヌ様!」
今日も1人で食後のデザートを食べていると、リリアーヌ様に声を掛けられた。
リリアーヌ様は、王城からランチを食べに来たようだ。
「少し早いですが、卒業おめでとうございます。この1年ありがとうございました」
「こちらこそありがとう。リュシエンヌに毎日会えなくなるのは、少し寂しいわ」
「リリアーヌ様……」
ーリリアーヌ様と話せるのも、これで最後かなー
「また、落ち着いたらお茶でもしましょうね」
「はい……」
「それじゃあ、人を待たせているから失礼するわね」
リリアーヌ様は、そのまま奥にある個室へと入って行った。
ーあの個室で、ヴェルティル様と……ー
「……よし、帰ろう」
リリアーヌ様もヴェルティル様も好きだし、2人並んだ姿は眼福だけど、少し近付いてしまった分、胸が痛むのも確かな訳で……自分から胸を抉らない為にも、私は急いでデザートを食べて店を出た。
だから、私は知らなかった。その個室で誰が待っていたか──なんて。
******
卒業式の日は晴天だった。
「旅立ちにピッタリのお天気ね」
「1週間位掛かるだろうけど、気を付けて行くんだぞ」
「向こうに着く迄にも、手紙を書いてね」
「たまには帰って来るのよ?」
「ナメて来る奴には遠慮はいらないからな!」
「お母様、お父様、クロエお姉様、クレアお姉様、ありがとう。必ず手紙を書くわ。お兄様、ナメられないように頑張るわ」
学校で卒業式が行われている間に、私は家族と使用人総出の見送りの中、お別れの挨拶をしている。モニカとアデールとは、昨日のうちに挨拶を済ませていたから、今日は来ていない。別れが寂しくなるからと、私が断ったのだ。
『別に、今生の別れではないし、私からも会いに行くから!』
『リュシエンヌさまぁ……お元気でっ!!』
『『…………』』
何故か大泣きするアデールを見て、自然と笑みが溢れて、笑顔でお別れする事ができた。
メグとユラには手紙を書いてモニカに預けてある。新学期で登校した時に渡してもらう予定だ。正直、ユラには書く事が無くてかなり時間が掛かった割に…内容は薄っぺらいモノになったのは仕方無い。
リリアーヌ様にも手紙を書いたけど、ヴェルティル様とスタンホルス様とイーデン様には書いていない。
「お父様、お母様、我儘を聞いてくれてありがとう。必ず、クレイオンの名に恥じない立派な騎士になります」
「リュシーならなれるわ。体に気を付けてね」
「はい。それでは……行って来ます!」
「「「「お嬢様、行ってらっしゃいませ」」」」
皆に見送られ、私の乗った馬車が動き出した。
馬車の窓から、学校のある方へと視線を向ける。
ーヴェルティル様、どうかお幸せにー
リリアーヌ様とヴェルティル様が婚約、結婚すれば、時間差で私の耳にも入って来るだろうけど、その頃にはこの恋心も少しは落ち着いているだろう。新しい土地で新しい恋をしている可能性だってある…よね?
「兎に角、今からは目の前の事から全力で頑張ろう!」
寂しい気持ちには蓋をして、私は───
番から逃げる事にしました。
**????**
「あー……それは…ヤバイな…何故そんな事になったんだ!?何故今迄その情報を得られなかったんだ!?」
『申し訳ありません。アラール殿下が押さえていました』
「アラール……そう言う所だけは優秀だな………まぁ、その気持ちも分からなくもないが…さて、どうするか………」
左手を顎に当てて、右手の人差し指で机をトントンと叩きながら思案する。
「私が悩んだところで仕方無いか。暫くの間は怖ろしい事になりそうだが……」
結局、逃げられる事はないだろうから──
「…………」
ーその時は、全力で労うとしようー
「報告お疲れ様。これについての調査はこれで終わりで、ここだけの話としておこう……お互いの身の為に…分かるな?」
『承知しました』
それだけ言うと、張っていた結界を解除した。
「いつまで逃げられるやら………頑張れ……」
卒業式迄1週間。メグとユラは学校には来ていない。
メグは、新学期が始まる迄は訓練を中心に頑張るそうだ。ユラは、今でも厄介な友達と出掛けたりしているそうだけど、今はおとなしくしているそうだ─と言うより、おとなしくせざるを得ないよね。第二王子ではなく、王太子に釘を刺されたのだから。このまま、後一年おとなしく────
「──する訳ないか………」
申し訳無いけど、後はモニカとアデールに頑張ってもらおう。
「あら?リュシエンヌ?」
「え?あ、リリアーヌ様!」
今日も1人で食後のデザートを食べていると、リリアーヌ様に声を掛けられた。
リリアーヌ様は、王城からランチを食べに来たようだ。
「少し早いですが、卒業おめでとうございます。この1年ありがとうございました」
「こちらこそありがとう。リュシエンヌに毎日会えなくなるのは、少し寂しいわ」
「リリアーヌ様……」
ーリリアーヌ様と話せるのも、これで最後かなー
「また、落ち着いたらお茶でもしましょうね」
「はい……」
「それじゃあ、人を待たせているから失礼するわね」
リリアーヌ様は、そのまま奥にある個室へと入って行った。
ーあの個室で、ヴェルティル様と……ー
「……よし、帰ろう」
リリアーヌ様もヴェルティル様も好きだし、2人並んだ姿は眼福だけど、少し近付いてしまった分、胸が痛むのも確かな訳で……自分から胸を抉らない為にも、私は急いでデザートを食べて店を出た。
だから、私は知らなかった。その個室で誰が待っていたか──なんて。
******
卒業式の日は晴天だった。
「旅立ちにピッタリのお天気ね」
「1週間位掛かるだろうけど、気を付けて行くんだぞ」
「向こうに着く迄にも、手紙を書いてね」
「たまには帰って来るのよ?」
「ナメて来る奴には遠慮はいらないからな!」
「お母様、お父様、クロエお姉様、クレアお姉様、ありがとう。必ず手紙を書くわ。お兄様、ナメられないように頑張るわ」
学校で卒業式が行われている間に、私は家族と使用人総出の見送りの中、お別れの挨拶をしている。モニカとアデールとは、昨日のうちに挨拶を済ませていたから、今日は来ていない。別れが寂しくなるからと、私が断ったのだ。
『別に、今生の別れではないし、私からも会いに行くから!』
『リュシエンヌさまぁ……お元気でっ!!』
『『…………』』
何故か大泣きするアデールを見て、自然と笑みが溢れて、笑顔でお別れする事ができた。
メグとユラには手紙を書いてモニカに預けてある。新学期で登校した時に渡してもらう予定だ。正直、ユラには書く事が無くてかなり時間が掛かった割に…内容は薄っぺらいモノになったのは仕方無い。
リリアーヌ様にも手紙を書いたけど、ヴェルティル様とスタンホルス様とイーデン様には書いていない。
「お父様、お母様、我儘を聞いてくれてありがとう。必ず、クレイオンの名に恥じない立派な騎士になります」
「リュシーならなれるわ。体に気を付けてね」
「はい。それでは……行って来ます!」
「「「「お嬢様、行ってらっしゃいませ」」」」
皆に見送られ、私の乗った馬車が動き出した。
馬車の窓から、学校のある方へと視線を向ける。
ーヴェルティル様、どうかお幸せにー
リリアーヌ様とヴェルティル様が婚約、結婚すれば、時間差で私の耳にも入って来るだろうけど、その頃にはこの恋心も少しは落ち着いているだろう。新しい土地で新しい恋をしている可能性だってある…よね?
「兎に角、今からは目の前の事から全力で頑張ろう!」
寂しい気持ちには蓋をして、私は───
番から逃げる事にしました。
**????**
「あー……それは…ヤバイな…何故そんな事になったんだ!?何故今迄その情報を得られなかったんだ!?」
『申し訳ありません。アラール殿下が押さえていました』
「アラール……そう言う所だけは優秀だな………まぁ、その気持ちも分からなくもないが…さて、どうするか………」
左手を顎に当てて、右手の人差し指で机をトントンと叩きながら思案する。
「私が悩んだところで仕方無いか。暫くの間は怖ろしい事になりそうだが……」
結局、逃げられる事はないだろうから──
「…………」
ーその時は、全力で労うとしようー
「報告お疲れ様。これについての調査はこれで終わりで、ここだけの話としておこう……お互いの身の為に…分かるな?」
『承知しました』
それだけ言うと、張っていた結界を解除した。
「いつまで逃げられるやら………頑張れ……」
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