番から逃げる事にしました

みん

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「失礼ながら申し上げさせていただきます」

モニカがニッコリ微笑んだ。

「メグが謝る必要は無いかと思います。メグは週末だけではなく、学校のある日も、学校が終わると王城に帰り、そこから聖女の訓練を受け、夕食を食べた後はその日の宿題をする─その様な日々を送っていると、神官様や魔法使い達から聞いています。その上、週末にはこの国や貴族社会についての勉強もしているから、暫くは週末の訓練はお休みにしましょう─と言う話になったと、私は神官様やリリアーヌ様から聞いております。私は、てっきり後見人である第二王子もご存知かと思っておりました」
「それ…は………」

“それは、ユラが言っていたから”

とでも言いたいのか?言えないよね?後見人でありながら、メグの状況を把握していなかったのだから。ユラの言葉を鵜呑みにしていたんだろう。

「それでも、聖女としての責務は果たさなければならないのは事実だろう?」
「メグ様の事情はよくご存知の筈ですが…それでも、それを承知の上で申し上げているのであれば……少し、聖女様に対して厳し過ぎではないか?と思います」
「厳し過ぎる事は…ないだろう?こちらも、メグの言う事は可能な限り聞いているのだから」

そもそも、からが違うのだ。メグが、第二王子にお願い事をした事は何も無いだろう。ユラがメグの事を思って第二王子に言っただけ。

「王都や貴族社会に慣れていないメグに、王城勤めに慣れていない女官を付けるのも、メグの意向でしょうか?」
「─っ!?あ、クレイオン嬢……と、アラスター!?」
「私の個人的な意見としては、メグは貴族社会に慣れていませんから、貴族社会に慣れている侍女を付けた方が良いかと思います。今の女官達が悪いと言う訳ではありませんが、いざ何かあった時、フォローできる者が居た方が良いかと思います」
「それはそうだが、ユラが……」
「申し訳ありませんが、今私がお話しているのは、ユラの事ではなく、聖女メグ様の事です。聖女を傷付けるような貴族は居ないと思いますが、今居る女官だけでは、メグ様を守り切る事は難しいかと…」

チラッとエミリーを見ると、コクコクと頷いている。これはこれでアウトだ。これに反応して同意するようであれば、高位貴族の令嬢や令息から攻撃された場合、メグを守る事なんてできない。

「それに…護衛も少な過ぎませんか?」

学校の登下校時に付いている護衛も1人だけで、日替わりで2人しか居ない。今日王城に来て更に驚いたのは、護衛が扉の外に1人しか居ないと言う事だ。
クレイオン家は、代々騎士として仕える家門だ。幼い頃から男女関係無く騎士について学ばされる。ある意味過保護に育てられた私も、あの日々は本当に辛く苦しい日々だった。

「…………」

ーと、今はそれは置いといてー

「それは、堅苦しいのは嫌だと。いつも見られているようで嫌だと─」
「メグが言いましたか?それとも、ユラが言いましたか?」
「………」
「更に失礼を申し上げますが、王子は護衛の意味をご存知ですか?護衛は、護衛対象者を護る為に付けられる者です。ですから、“堅苦しい”や“見られてるから嫌だ”などと言う理由だけで、護衛を減らす事はあってはならない事です。勿論、減らさなければいけない時もありますが、聖女様の護衛とあれば、常に2、3人体制でメインに10人程組んでおくのが基本です」

護衛対象でもある王子自身が、それを知らない筈はない。言い方は悪いけど、第二王子の代わりはいるけど、聖女の代わりは居ない。と言う事は、ある意味第二王子より聖女メグの方が危機管理に関しては上のレベルで対応しなければいけないと言う事だ。

「ユラがメグの為を思って、ユラが王子にお願いした事かもしれませんが、それは、メグにも確認するべきだったのではありませんか?」
「ユラは、メグの付き添いなのだから……ユラが言う事はメグも…」
「アラール殿下、今の話を聞く限りでは、間違っているのはアラール殿下で、メグは謝る必要はないでしょうね。それに、メグの周りの人の配置は、色々と変更する必要があるのはお分かりでしょう?」

低音ボイスでチクリと釘を刺すヴェルティル様は、爽やかに微笑んでいるのに、何故か背中がゾクゾクするのは気のせいだろうか?

「ソウダナ…」

第二王子の顔が引き攣っているのは、気のせいではない。伯爵家の令息であっても、王太子の側近になるヴェルティル様に言われてしまえば、流石の第二王子も聞き入れるしかない─と言ったところだろうか?

「兎に角、今後はユラからの意見だけではなく、クレイオン嬢やラインズリー嬢にも意見を聞いて、メグに直接確認する事ですね。まぁ…基本中の基本ですが…」
「………ソウダナ…」

それは、第二王子はヴェルティル様に弱い─と言う事を理解した瞬間だった。





ーやっぱり、ヴェルティル様はカッコイイー



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