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18 落ち着いた再会
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「手強いわね………」
「何が手強いの?」
「─っ!?」
相変わらずの心地良い低音ボイスだ。一体、いつぶりだろうか?それでも本能は落ち着いている。魔法が効いていると言う事だ。
ゆっくりと振り返り──
「ヴェルティル様、お久し振りです」
「本当に久し振りだね」
ーあぁ…やっぱり…何もかもが…かっこいいー
葵色の髪と青色の瞳は、ヴェルティル様の為にあるんじゃない?そもそも、その低音ボイスだけで惚れてしまうんですけど?もう惚れてますけど?もう、本当に、本当に!何が何でもリリアーヌ様と幸せになってもらわないと!
「王城には、メグに会いに?」
「はい。モニカと一緒に来ました。残念ながら、ユラは友達と出掛けているようですけど」
「そうなんだね……」
「………」
ーヴェルティル様は、反応無しかー
まぁ、リリアーヌ様とヴェルティル様はメグとは直接関わっていてメグの性格も知っているから、妙な噂話なんかに惑わされる事はないか。
「迷惑じゃなかったら、一緒に付いて行って、メグとラインズリー嬢に挨拶をしようかな」
「メグもモニカも喜びます」
ー気も利く男前ですー
本能が騒ぐ事も暴れ出す事もない。ただ、心臓だけはドキドキと騒いでいるけど、これはただ純粋に私がヴェルティル様の事が好きだからだ。
「今日も、リリアーヌ様とお仕事ですか?」
「いや、今日はレイモンド様の所で事務処理をしているんだ」
レイモンド=オズ=ユーグレイシア
アラール第二王子の兄で、ユーグレイシア王国の王太子だ。ヴェルティル様は、学校を卒業した後は、その王太子の側近として城仕えするそうだ。その為に、ヴェルティル様は、ここ最近は殆ど学校には来ていない。
「王太子様の側近になるとは、大変でしょうけど凄い事ですね」
王族の側近と言えば、公爵か侯爵の家門で占められる事が殆どだ。そこに、伯爵家の次男が入るのだ。ヴェルティル様には、余程の才能があると言う事だし、王太子が身分関係無く人を見ていると言う事だろう。
ー第二王子も、ちゃんと人を見れる人なら良いけどー
正直、私は第二王子の事をよく知っている訳ではない。私が侯爵令嬢だとしても、メグの事がなければ、会って会話を交わす事もなかっただろう。
「確かに、色々大変だけど…俺にはどうしても手に入れたいモノがあるからね」
「手に入れたい…モノですか?」
ー何だろう?ー
男前な上に才能があって、隣にはこれまた完璧淑女のリリアーヌ様が居るのに、どうしても手に入れたいモノが他にあるとか……
「更なる高みへと上り詰めるんですか?」
「ふっ…更なる高みって…一体、クレイオン嬢の中で、俺はどんな崇高な奴になっているんだか……」
面白そうに笑うヴェルティル様の顔が尊い。
ー脳内にしっかり焼き付けておかないと!ー
久し振りにホワホワとした気持ちでメグの部屋迄戻って来たのに───
「最近、週末の訓練はしていないそうだけど、どうしてだい?」
「それは…最近は学校での必須のレポートがあったのと、神官さん達が、疲れているだろうからと気を遣ってくれたので…それで……」
「それじゃあ、今日も、お茶をしながら3人でレポートを?」
「「…………」」
エミリーに扉を開けてもらうと、そんな会話が耳に入って来た。怒ってはいないが、少し冷たさを含んだ声の主はアラール第二王子だ。
ヴェルティル様が私に何か言いたそうな視線を向けて来たけど、私は自分の口に人差し指を立てて“何も言わないで”と言う意思表示をすると、ヴェルティル様は静かに頷いてくれた。
メグと第二王子は、私とヴェルティル様には気付いていないようだから、そのまま扉を少し開けた状態で部屋には入らず、その場で会話を聞く事にした。
「今日は、大神官様が、私に気を遣ってくれて、友達とゆっくりして下さいと言ってくれて…」
「そう。大神官が…そうだろうね。大神官や神官は聖女様を第一にとても大切にしてくれるからね。でも、だからと言って、それにずっと甘えているのもどうか─と思うけど」
「……すみません」
ーメグが責められて、謝る必要ある?無いよね?ー
メグはつい最近まで異世界で過ごしていたのだ。もともとこちらの世界の人間だったと言っても、今のメグはまだまだこの世界には慣れていない。慣れていないのに、必死になって聖女の訓練や勉強を頑張っている事は、メグの側に居て見ていれば分かる。メグが学校の宿題を忘れた事など一度も無いし、成績だって常に20位以内に入っている。もともと卒なくこなすタイプではなく、努力家と言うタイプだ。
そんなメグに対して、どんな皮肉を言っているのやら。
ーユラ……か………ー
メグを思ってメグの為にしています─フリをして、メグを陥れているようにしか見えないよね?
「………」
もしそうなら、元の世界でメグに友達ができなかった理由も、ユラのせいだったんじゃないんだろうか?でも、何の為に?そんな事をして、ユラが得をする事があるんだろうか?
「謝るのは私にではなく、神官達にだろう?」
「…………」
ー第二王子、もっとしっかり見てくれませんか?ー
私とヴェルティル様に気付いているモニカと、視線を合わせて頷いた。
「何が手強いの?」
「─っ!?」
相変わらずの心地良い低音ボイスだ。一体、いつぶりだろうか?それでも本能は落ち着いている。魔法が効いていると言う事だ。
ゆっくりと振り返り──
「ヴェルティル様、お久し振りです」
「本当に久し振りだね」
ーあぁ…やっぱり…何もかもが…かっこいいー
葵色の髪と青色の瞳は、ヴェルティル様の為にあるんじゃない?そもそも、その低音ボイスだけで惚れてしまうんですけど?もう惚れてますけど?もう、本当に、本当に!何が何でもリリアーヌ様と幸せになってもらわないと!
「王城には、メグに会いに?」
「はい。モニカと一緒に来ました。残念ながら、ユラは友達と出掛けているようですけど」
「そうなんだね……」
「………」
ーヴェルティル様は、反応無しかー
まぁ、リリアーヌ様とヴェルティル様はメグとは直接関わっていてメグの性格も知っているから、妙な噂話なんかに惑わされる事はないか。
「迷惑じゃなかったら、一緒に付いて行って、メグとラインズリー嬢に挨拶をしようかな」
「メグもモニカも喜びます」
ー気も利く男前ですー
本能が騒ぐ事も暴れ出す事もない。ただ、心臓だけはドキドキと騒いでいるけど、これはただ純粋に私がヴェルティル様の事が好きだからだ。
「今日も、リリアーヌ様とお仕事ですか?」
「いや、今日はレイモンド様の所で事務処理をしているんだ」
レイモンド=オズ=ユーグレイシア
アラール第二王子の兄で、ユーグレイシア王国の王太子だ。ヴェルティル様は、学校を卒業した後は、その王太子の側近として城仕えするそうだ。その為に、ヴェルティル様は、ここ最近は殆ど学校には来ていない。
「王太子様の側近になるとは、大変でしょうけど凄い事ですね」
王族の側近と言えば、公爵か侯爵の家門で占められる事が殆どだ。そこに、伯爵家の次男が入るのだ。ヴェルティル様には、余程の才能があると言う事だし、王太子が身分関係無く人を見ていると言う事だろう。
ー第二王子も、ちゃんと人を見れる人なら良いけどー
正直、私は第二王子の事をよく知っている訳ではない。私が侯爵令嬢だとしても、メグの事がなければ、会って会話を交わす事もなかっただろう。
「確かに、色々大変だけど…俺にはどうしても手に入れたいモノがあるからね」
「手に入れたい…モノですか?」
ー何だろう?ー
男前な上に才能があって、隣にはこれまた完璧淑女のリリアーヌ様が居るのに、どうしても手に入れたいモノが他にあるとか……
「更なる高みへと上り詰めるんですか?」
「ふっ…更なる高みって…一体、クレイオン嬢の中で、俺はどんな崇高な奴になっているんだか……」
面白そうに笑うヴェルティル様の顔が尊い。
ー脳内にしっかり焼き付けておかないと!ー
久し振りにホワホワとした気持ちでメグの部屋迄戻って来たのに───
「最近、週末の訓練はしていないそうだけど、どうしてだい?」
「それは…最近は学校での必須のレポートがあったのと、神官さん達が、疲れているだろうからと気を遣ってくれたので…それで……」
「それじゃあ、今日も、お茶をしながら3人でレポートを?」
「「…………」」
エミリーに扉を開けてもらうと、そんな会話が耳に入って来た。怒ってはいないが、少し冷たさを含んだ声の主はアラール第二王子だ。
ヴェルティル様が私に何か言いたそうな視線を向けて来たけど、私は自分の口に人差し指を立てて“何も言わないで”と言う意思表示をすると、ヴェルティル様は静かに頷いてくれた。
メグと第二王子は、私とヴェルティル様には気付いていないようだから、そのまま扉を少し開けた状態で部屋には入らず、その場で会話を聞く事にした。
「今日は、大神官様が、私に気を遣ってくれて、友達とゆっくりして下さいと言ってくれて…」
「そう。大神官が…そうだろうね。大神官や神官は聖女様を第一にとても大切にしてくれるからね。でも、だからと言って、それにずっと甘えているのもどうか─と思うけど」
「……すみません」
ーメグが責められて、謝る必要ある?無いよね?ー
メグはつい最近まで異世界で過ごしていたのだ。もともとこちらの世界の人間だったと言っても、今のメグはまだまだこの世界には慣れていない。慣れていないのに、必死になって聖女の訓練や勉強を頑張っている事は、メグの側に居て見ていれば分かる。メグが学校の宿題を忘れた事など一度も無いし、成績だって常に20位以内に入っている。もともと卒なくこなすタイプではなく、努力家と言うタイプだ。
そんなメグに対して、どんな皮肉を言っているのやら。
ーユラ……か………ー
メグを思ってメグの為にしています─フリをして、メグを陥れているようにしか見えないよね?
「………」
もしそうなら、元の世界でメグに友達ができなかった理由も、ユラのせいだったんじゃないんだろうか?でも、何の為に?そんな事をして、ユラが得をする事があるんだろうか?
「謝るのは私にではなく、神官達にだろう?」
「…………」
ー第二王子、もっとしっかり見てくれませんか?ー
私とヴェルティル様に気付いているモニカと、視線を合わせて頷いた。
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―――『私の番には飼い主がいる』
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