15 / 59
15 違和感
しおりを挟む
私の内緒の卒業まで3ヶ月
「メグ、今日の放課後は予定通り、一緒にカフェに行ける?」
「アラール様から許可をもらってるから大丈夫。でも、ユラは……」
「あー…ユラは駄目なのね?」
「いつもの友達と、約束があるみたいで。ごめんなさい」
「メグが謝る必要はないわ。ユラも、色んな友達ができて良かったわ」
メグとユラの学校生活が始まって3ヶ月。メグは控え目な性格の上“聖女”と言う立場もあり、ほぼ私とモニカと一緒に行動しているけど、ユラは私達以外の仲良くなった人達と居る事が多くなった。巻き込まれてしまったユラの事は心配していたけど、この世界にも慣れてきているようで良かった。
ただ──
「メグは…寂しい?」
「少し寂しいけど、私にはリュシエンヌとモニカが居るから…」
恥ずかしそうに笑うメグは可愛らしい。
メグの聖女としての能力は、少しずつだけど訓練する度に上がっているそうで、後数ヶ月もすれば浄化に出れるだろうとリリアーヌ様が言っていた。勉強に関しても、成績は良いようで、先生達からの評判も良好だ。
ただ、気になる事もある。
メグ達が学校に来始めた頃は、それなりにクラスメイト達との交流はあったのに、ここ最近はユラはあるけど、メグには殆どない。皆、メグを遠巻きに見ているだけ。聖女だからと遠慮?しているのか──
ーそう言えば、最近はまともにユラとも会話してないかもー
******
放課後、3人で訪れたお店には色んな種類のケーキがあって、来る度に何を食べるか悩んでいたけど、今日は1人2個ずつ選んで3人で分け合って食べる事にした。
「何とも贅沢な食べ方よね」
「メグが、分け合って食べる事に抵抗が無くて良かったわ」
「私の元の世界でも、嫌がる人も居たけど、分け合って食べる事はよくやってたから」
こちらの世界の貴族社会では、一つの物を分け合って食べる事はあまりしない。モニカとはよくやっているけど。兎に角、今日は6種類のケーキが食べれると言う事で、3人ともテンションが上がっている。
このカフェには扉がない半個室スペースがあり、今日はその半個室で周りの目を気にする事なく、ケーキを分け合って食べる事ができる。そんな感じで、3人で楽しくお喋りしながらケーキを堪能していた。
「────は聖女なのに、」
ーん?ー
「──聖女様だから、私を気に掛けている暇なんてないのよ…」
「「「…………」」」
私達の居る半個室の外側から、ボソボソとした声が、私達3人の耳に入って来て、私達3人はそのまま黙ったまま耳を傾ける。
“聖女”と言えば、今現在メグしかいないから、聞こえて来る話はメグの話と言う事だ。それに、女性の声はユラだ。
「一緒に王都に出て来たけど、学校ではあの3人の中には入れないし、お城に帰っても私が側に呼ばれる事はないの。訓練の時も邪魔だからって…」
訓練の時に侍女なんかが居たら邪魔なのは確かだろう。その場に侍女が居たところで、何もする事もないだろうし。ただ、その“邪魔だから”と言う言い方は、誤解を招くのではないだろうか?そもそも、メグがそんな言い方をする筈がない。
「ユラが邪魔だなんて、酷い言い方だな。聖女の為に一緒に来てくれたユラに対して──」
「きっと、メグも必死だから────」
「「「……………」」」
モニカを見ると、モニカも複雑な顔でメグを見ている。そのメグは、視線をテーブルに落としたまま黙っている。モニカも違和感を感じているのだろう。ユラの言葉に。
“あの3人の中には入れない”
いつも、私達が誘っても断って来るのはユラの方だった。
「リュシエンヌ様もモニカ様も侯爵令嬢で、おまけにリリアーヌ様の後ろ盾があるから、少しお高くとまってるって言うか…」
「それに、リュシエンヌ様は獣人だから余計に──」
「えらい言われようね…」
「お高くとまった事なんて一度も無いけど。そもそも、声を掛けられてもないし、こっちから掛けてもないよね?」
“獣人だから”と耳にしたのも久し振りだ。300年前とは違い、今では人種で差別するような発言をする貴族は殆ど居ない。極一部の古参の貴族を除いて、高位貴族であればある程、人種に関しての発言には細心の注意を払っている程だ。しかも、こんな人が多く、誰にでも聞こえるような所で話す内容ではない。聖女様の話なんて、以ての外だ。
ユラといつも一緒に入る人達を思い浮かべる。
ーなるほどー
差別をする訳ではないけど、子爵や男爵の嫡子ではない令嬢と令息達だ。同類には甘いけど目上に反感を持ち、弱者にはマウントを取ると言う、何ともバカ─厄介なタイプだ。そんなタイプの人間にとって、今のユラの発言は、聖女メグを攻撃するのにはうってつけの話だ。その話が、本当の事かどうかなんて関係無いのだ。
「そんなお馬鹿だから、嫡子にもなれないのよ」
ごもっとも。ユーグレイシア王国は、基本男女関係なく第一子が嫡子となるが、その第一子に能力が無いと判断されれば、第二子や傍系から養子縁組をして継がせる事もできる。
兎に角、そのお馬鹿達は置いといて──
「残っているのは持ち帰るようにしてもらって、続きは私の家で食べましょう」
そう言って、私達3人はユラ達に気付かれないように、そのカフェを後にした。
「メグ、今日の放課後は予定通り、一緒にカフェに行ける?」
「アラール様から許可をもらってるから大丈夫。でも、ユラは……」
「あー…ユラは駄目なのね?」
「いつもの友達と、約束があるみたいで。ごめんなさい」
「メグが謝る必要はないわ。ユラも、色んな友達ができて良かったわ」
メグとユラの学校生活が始まって3ヶ月。メグは控え目な性格の上“聖女”と言う立場もあり、ほぼ私とモニカと一緒に行動しているけど、ユラは私達以外の仲良くなった人達と居る事が多くなった。巻き込まれてしまったユラの事は心配していたけど、この世界にも慣れてきているようで良かった。
ただ──
「メグは…寂しい?」
「少し寂しいけど、私にはリュシエンヌとモニカが居るから…」
恥ずかしそうに笑うメグは可愛らしい。
メグの聖女としての能力は、少しずつだけど訓練する度に上がっているそうで、後数ヶ月もすれば浄化に出れるだろうとリリアーヌ様が言っていた。勉強に関しても、成績は良いようで、先生達からの評判も良好だ。
ただ、気になる事もある。
メグ達が学校に来始めた頃は、それなりにクラスメイト達との交流はあったのに、ここ最近はユラはあるけど、メグには殆どない。皆、メグを遠巻きに見ているだけ。聖女だからと遠慮?しているのか──
ーそう言えば、最近はまともにユラとも会話してないかもー
******
放課後、3人で訪れたお店には色んな種類のケーキがあって、来る度に何を食べるか悩んでいたけど、今日は1人2個ずつ選んで3人で分け合って食べる事にした。
「何とも贅沢な食べ方よね」
「メグが、分け合って食べる事に抵抗が無くて良かったわ」
「私の元の世界でも、嫌がる人も居たけど、分け合って食べる事はよくやってたから」
こちらの世界の貴族社会では、一つの物を分け合って食べる事はあまりしない。モニカとはよくやっているけど。兎に角、今日は6種類のケーキが食べれると言う事で、3人ともテンションが上がっている。
このカフェには扉がない半個室スペースがあり、今日はその半個室で周りの目を気にする事なく、ケーキを分け合って食べる事ができる。そんな感じで、3人で楽しくお喋りしながらケーキを堪能していた。
「────は聖女なのに、」
ーん?ー
「──聖女様だから、私を気に掛けている暇なんてないのよ…」
「「「…………」」」
私達の居る半個室の外側から、ボソボソとした声が、私達3人の耳に入って来て、私達3人はそのまま黙ったまま耳を傾ける。
“聖女”と言えば、今現在メグしかいないから、聞こえて来る話はメグの話と言う事だ。それに、女性の声はユラだ。
「一緒に王都に出て来たけど、学校ではあの3人の中には入れないし、お城に帰っても私が側に呼ばれる事はないの。訓練の時も邪魔だからって…」
訓練の時に侍女なんかが居たら邪魔なのは確かだろう。その場に侍女が居たところで、何もする事もないだろうし。ただ、その“邪魔だから”と言う言い方は、誤解を招くのではないだろうか?そもそも、メグがそんな言い方をする筈がない。
「ユラが邪魔だなんて、酷い言い方だな。聖女の為に一緒に来てくれたユラに対して──」
「きっと、メグも必死だから────」
「「「……………」」」
モニカを見ると、モニカも複雑な顔でメグを見ている。そのメグは、視線をテーブルに落としたまま黙っている。モニカも違和感を感じているのだろう。ユラの言葉に。
“あの3人の中には入れない”
いつも、私達が誘っても断って来るのはユラの方だった。
「リュシエンヌ様もモニカ様も侯爵令嬢で、おまけにリリアーヌ様の後ろ盾があるから、少しお高くとまってるって言うか…」
「それに、リュシエンヌ様は獣人だから余計に──」
「えらい言われようね…」
「お高くとまった事なんて一度も無いけど。そもそも、声を掛けられてもないし、こっちから掛けてもないよね?」
“獣人だから”と耳にしたのも久し振りだ。300年前とは違い、今では人種で差別するような発言をする貴族は殆ど居ない。極一部の古参の貴族を除いて、高位貴族であればある程、人種に関しての発言には細心の注意を払っている程だ。しかも、こんな人が多く、誰にでも聞こえるような所で話す内容ではない。聖女様の話なんて、以ての外だ。
ユラといつも一緒に入る人達を思い浮かべる。
ーなるほどー
差別をする訳ではないけど、子爵や男爵の嫡子ではない令嬢と令息達だ。同類には甘いけど目上に反感を持ち、弱者にはマウントを取ると言う、何ともバカ─厄介なタイプだ。そんなタイプの人間にとって、今のユラの発言は、聖女メグを攻撃するのにはうってつけの話だ。その話が、本当の事かどうかなんて関係無いのだ。
「そんなお馬鹿だから、嫡子にもなれないのよ」
ごもっとも。ユーグレイシア王国は、基本男女関係なく第一子が嫡子となるが、その第一子に能力が無いと判断されれば、第二子や傍系から養子縁組をして継がせる事もできる。
兎に角、そのお馬鹿達は置いといて──
「残っているのは持ち帰るようにしてもらって、続きは私の家で食べましょう」
そう言って、私達3人はユラ達に気付かれないように、そのカフェを後にした。
885
お気に入りに追加
2,109
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

あなたの運命になりたかった
夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。
コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。
※一話あたりの文字数がとても少ないです。
※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】そう、番だったら別れなさい
堀 和三盆
恋愛
ラシーヌは狼獣人でライフェ侯爵家の一人娘。番である両親に憧れていて、番との婚姻を完全に諦めるまでは異性との交際は控えようと思っていた。
しかし、ある日を境に母親から異性との交際をしつこく勧められるようになり、仕方なく幼馴染で猫獣人のファンゲンに恋人のふりを頼むことに。彼の方にも事情があり、お互いの利害が一致したことから二人の嘘の交際が始まった。
そして二人が成長すると、なんと偽の恋人役を頼んだ幼馴染のファンゲンから番の気配を感じるようになり、幼馴染が大好きだったラシーヌは大喜び。早速母親に、
『お付き合いしている幼馴染のファンゲンが私の番かもしれない』――と報告するのだが。
「そう、番だったら別れなさい」
母親からの返答はラシーヌには受け入れ難いものだった。
お母様どうして!?
何で運命の番と別れなくてはいけないの!?

忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる