番から逃げる事にしました

みん

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10 異世界召還

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ここ、ユーグレイシア王国には、名も無き女神の守護がある─とされている。
その女神が、この王国の穢れを浄化する為に“聖女”を遣わすのだ。その聖女は、“女神の化身”とも“女神の代理人”とも言われている。
その聖女様のお陰で、ユーグレイシア王国は穢れが爆発的に発生する事が無く、魔物が溢れ出す事も滅多に起こらず比較的平穏な国だ。

ただ、ここ数年は聖女様が不在だったと言う事もあり、辺境地では魔物が増えつつある─と報告されていた。
国内に聖女様が1人も居ない─と言う事は過去にもなかった。何故、空白の期間があったのか?



「異世界……ですか?」
「大神官曰く、本来この世界で生を享ける筈だった聖女の魂が、異世界に紛れ込んでしまい、今迄その魂を捜していた為に聖女が不在となっていたそうだ。そして、ようやくその聖女を見つけ出し、ユーグレイシア王国こちらの世界に召還した─と」

“大神官”

名も無き女神に使える“神官”のトップだ。この大神官もまた、聖女様の後見人の1人とも言える。王子─王家による後見には、政治的な理由が絡んでいたりもするが、大神官は女神様と聖女様第一優先で動いている。

「それでは、ユラ様もメグ様も異世界から還って来た聖女様だと言う事なんですね?」

少し信じ難い話で、何故聖女様の存在を直ぐに公表しなかったのか不思議だったけど、異世界から来たと言うのなら納得だ。この世界、ユーグレイシアについての基礎知識などの勉強も必要だったんだろう。

「いや、聖女はメグ=ツクモだけで……ユラ=カミジョーは、召還に巻き込まれてやって来てしまったんだ」
「「え……」」

巻き込まれ──

「本来、メグだけだったんだが、メグと一緒に居たユラも、召還の魔法陣の中に入ってしまっていたらしく、2人ともこちらに来てしまったそうだ。勝手に巻き込んでしまって申し訳無い事だが……元の世界に戻す術が今のところ無いから、このままメグと同じ待遇をしていく事にしたんだ。それに、光属性ではないが、ユラも僅かではあるが火属性の魔力持ちで、この世界にも馴染んでいるから、生活していくのは問題無いとの事だ。それに─」

と、第二王子がユラ様に視線を向けると、ユラ様はニッコリと微笑んだ。 

「確かに、私はメグの召還に巻き込まれただけだけど、憧れてた魔法が使えるし、幼馴染みのメグが一緒だから大丈夫よ」
「あ…私も…ユラが一緒に居てくれて嬉しい…」

メグ様は、何となくユラ様に対して申し訳無さそうに笑っているけど、ユラ様は楽しそうに笑っている。メグ様は、自分の都合にユラ様を巻き込んでしまった事に、後ろめたさの様なものを感じているのかもしれない。今迄生きてきた世界には、もう戻れないかもしれないから。

元居た世界での生活─家族はどうなったのか?

きっと、家族は居なくなった2人を探しているだろう─と思っていたけど、メグ様の本当の両親は幼い頃に病気で亡くなり、親戚に育てられていたようだけど、そこではあまり良い待遇をされていなかったそうだ。同じ年のわりに小柄なのは…そのせいだろうか?
そしてユラ様は、メグ様の幼馴染みで、同じ学校に通っていて、一緒に家に帰る途中で召還に巻き込まれたそうだ。ユラ様には家族が居て家族仲も良く、こちらに来た当初はそれこそ泣いていたそうだけど、第二王子やスタンホルス様の支えもあって笑えるようになったのだとか。
家族と二度と会えないかもしれない─となれば、本当に辛いものがあるだろう。今は笑っているけど、これからも色々と気を付けて見ないといけないよね。

「そう言う訳で、2人にはこの世界やユーグレイシア王国、貴族社会について最低限の事は勉強してもらったけど、まだまだこちらの世界に関しては疎いところが多いだろうから、どうか、クレイオン嬢とラインズリー嬢には2人を助けてもらいたい」
「「承知しました」」
「あの…ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、宜しくお願いします。それで…私の事は“メグ”と呼んでもらえますか?様なんて慣れなくて…あ、敬語も……」

おずおずと話すメグ様は可愛らしい。

「分かりまし─分かったわ。それじゃあ、私の事も“リュシエンヌ”と呼んでね」
「私は“モニカ”よ」

どうやら、聖女メグは控え目な性格のようだ。




それから公務がある第二王子が退室した後、これからの学校生活の話を5人でしてから解散となり、メグとユラは王城内にある部屋へと帰って行き、モニカと私はまたスタンホルス様の案内で違う部屋へとやって来た。ここで、リリアーヌ様から今後の説明をしてくれる事になっている。

「リリアーヌ、クレイオン嬢とモニカを連れて来たよ」
「入ってちょうだい」

この部屋の中で、リリアーヌ様は、メグ達の学校生活の為の計画や警護についてなどの作業を行っているそうだ。

「リュシエンヌ、元気そうで良かったわ」
「リリアーヌ様、お手紙やお見舞いの品、ありがとうございました」

そうお礼を言ってから、私は椅子に座った。



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