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9 登城
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学校に復帰してからの1週間は大変だった。
復帰前の週末に、モニカが泊まりがけで家に来てくれて、授業の進み具合を教えてくれて、軽く授業内容も教えてくれていたから、予習をする事ができたのは本当に助かった。
兎に角、聖女様を迎える前に遅れを取り戻さないと!と言う思いで、朝は早目に登校して予習をして、放課後も図書室で勉強して必死で遅れを取り戻した。
聖女様を迎えるにあたって忙しいようで、この1週間はリリアーヌ様とヴェルティル様とスタンホルス様は学校には来ていなかった。
学校に来ていて会っていたら、嬉し過ぎて勉強が疎かになっていたかもしれないから、来ていなかったのは丁度良かったのかもしれない。
******
そうして、復帰後の時間はあっと言う間に過ぎていき、いよいよ聖女様と会う日がやって来た。場所は勿論王城だ。モニカも私も社交界デビューをしていないから、初めての登城となる。
「クレイオン嬢、モニカ、今日はありがとう」
王城の門で私達を出迎えてくれたのは、クライド=スタンホルス様だった。
“モニカ”
チラッと視線だけをモニカに向けると、何故か貼り付けた様な微笑みを浮かべているモニカが居た。何か訳がありそうだけど、今訊いても答えてくれないだろうと思い、私は取り敢えず気付かないふりをする事にした。
「態々のお出迎え、ありがとうございます」
「クレイオン嬢、復帰したと聞いていたけど、体調は大丈夫?」
「はい、大丈夫です。病気ではなく、獣人特有のものでしたから」
「あぁ、獣人特有の…なるほど。だから、少し容姿が変わったんだね。はぁ…ただでさえ煩いのに…これは……」
「煩い…ですか?」
ー私、何か迷惑掛けるような事したかなぁ?ー
「あー…気にしないでくれ。クレイオン嬢の事ではないから。それじゃあ、案内するから付いて来て」
「「はい」」
そうして、モニカと私はスタンホルス様の後に続き、王城へと入って行った。
******
「クレイオン嬢とラインズリー嬢をお連れしました」
『入ってくれ』
「「………」」
スタンホルス様に案内されてやって来たのは、比較的小さ目の応接室だった。謁見の間のように、ご立派な部屋だったらどうしよう─と緊張していたけど、普通の応接室で良かった。とは言え、扉だけでも普通の応接室より格調高いものだけど。
そして、扉を開けて中に入ると、金髪の男性と黒髪の女性2人が椅子に座っていた。
この黒髪の女性のうちの1人が聖女様だろうか?
「クレイオン嬢、ラインズリー嬢、今回の事はありがとう。私は、聖女の後見人となっているアラール=オズ=ユーグレイシアだ」
ーまさかの、ユーグレイシア王国第二王子!ー
「私、リュシエンヌ=クレイオンでございます。未熟ではありますが、精一杯務めさせていただきます」
「モニカ=ラインズリーでございます。私も、微力ながら精一杯務めさせていただきます」
慌てて挨拶をすると、黒髪の女性2人のうちの1人が立ち上がった。
「あの…私、つく……メグ=ツクモと言います。学校では色々お世話になると思いますが、宜しくお願いします」
ペコリと挨拶する姿は、何とも可愛らしい印象がある。この人が聖女様だろうか?にしても、“ツクモ”とは、ユーグレイシアでは珍しい…初めて耳にする家名だ。
「メグは態々頭を下げなくても良いのよ?」
「でも、挨拶は大事だから…」
「私は、ユラ=カミジョーです。私もメグと一緒に学校に行くので、宜しくお願いします」
“カミジョー”
これまた珍しい家名だ。それに、彼女も学校に行くと言う事は、この2人ともが聖女様?
モニカと私は、聖女様をサポートする役をお願いされてはいたけど、それ以外の事については一切何も知らされてはいない。今も、彼女達と挨拶を交わしたところで、一切何も分からない。
「色々事情があって、2人には詳細を話していなかったんだ、すまない。それで、今日、この場で2人には話しておこうと思って、交流の場を設けたんだ。話は長くなるから、取り敢えず椅子に座ってくれ」
と、第二王子に言われて、モニカと私とスタンホルス様が椅子に座ると、女官達がお茶の準備をし始めた。
「あ、私、このケーキ好きなんです!」
「そうか、なら良かった」
ユラさんが嬉しそうに言うと、第二王子も嬉しそうに微笑んだ。この2人は、仲が良さそうにも見える。
ーユラさんが聖女様かな?ー
メグさんは緊張しているのか、おとなしく座ったままだ。
女官達がお茶の準備を終えると、私達6人以外の全員が部屋から出て行ってしまった。
通常であれば、この部屋に第二王子が居るから、護衛の1人か2人居てもおかしくない筈なのに、護衛すら居ない─と不思議に思っていると
「結界を張らせてもらうね」
と第二王子が言うと、一瞬空気が張り詰められた事が分かった。
「今から話す事は、ここだけの話としてもらいたい。その為、他言しないと言う誓約書にもサインしてもらいたい。それを拒否するなら、今この場から去ってもらう事になる。選ぶのは自由だ」
“選ぶのは自由だ”と言われたところで、拒否する事も退室する事も無理だよね?一体、今からどんな話を聞かされるのか─
不安に思いつつも、モニカと私は誓約書にサインをした。
復帰前の週末に、モニカが泊まりがけで家に来てくれて、授業の進み具合を教えてくれて、軽く授業内容も教えてくれていたから、予習をする事ができたのは本当に助かった。
兎に角、聖女様を迎える前に遅れを取り戻さないと!と言う思いで、朝は早目に登校して予習をして、放課後も図書室で勉強して必死で遅れを取り戻した。
聖女様を迎えるにあたって忙しいようで、この1週間はリリアーヌ様とヴェルティル様とスタンホルス様は学校には来ていなかった。
学校に来ていて会っていたら、嬉し過ぎて勉強が疎かになっていたかもしれないから、来ていなかったのは丁度良かったのかもしれない。
******
そうして、復帰後の時間はあっと言う間に過ぎていき、いよいよ聖女様と会う日がやって来た。場所は勿論王城だ。モニカも私も社交界デビューをしていないから、初めての登城となる。
「クレイオン嬢、モニカ、今日はありがとう」
王城の門で私達を出迎えてくれたのは、クライド=スタンホルス様だった。
“モニカ”
チラッと視線だけをモニカに向けると、何故か貼り付けた様な微笑みを浮かべているモニカが居た。何か訳がありそうだけど、今訊いても答えてくれないだろうと思い、私は取り敢えず気付かないふりをする事にした。
「態々のお出迎え、ありがとうございます」
「クレイオン嬢、復帰したと聞いていたけど、体調は大丈夫?」
「はい、大丈夫です。病気ではなく、獣人特有のものでしたから」
「あぁ、獣人特有の…なるほど。だから、少し容姿が変わったんだね。はぁ…ただでさえ煩いのに…これは……」
「煩い…ですか?」
ー私、何か迷惑掛けるような事したかなぁ?ー
「あー…気にしないでくれ。クレイオン嬢の事ではないから。それじゃあ、案内するから付いて来て」
「「はい」」
そうして、モニカと私はスタンホルス様の後に続き、王城へと入って行った。
******
「クレイオン嬢とラインズリー嬢をお連れしました」
『入ってくれ』
「「………」」
スタンホルス様に案内されてやって来たのは、比較的小さ目の応接室だった。謁見の間のように、ご立派な部屋だったらどうしよう─と緊張していたけど、普通の応接室で良かった。とは言え、扉だけでも普通の応接室より格調高いものだけど。
そして、扉を開けて中に入ると、金髪の男性と黒髪の女性2人が椅子に座っていた。
この黒髪の女性のうちの1人が聖女様だろうか?
「クレイオン嬢、ラインズリー嬢、今回の事はありがとう。私は、聖女の後見人となっているアラール=オズ=ユーグレイシアだ」
ーまさかの、ユーグレイシア王国第二王子!ー
「私、リュシエンヌ=クレイオンでございます。未熟ではありますが、精一杯務めさせていただきます」
「モニカ=ラインズリーでございます。私も、微力ながら精一杯務めさせていただきます」
慌てて挨拶をすると、黒髪の女性2人のうちの1人が立ち上がった。
「あの…私、つく……メグ=ツクモと言います。学校では色々お世話になると思いますが、宜しくお願いします」
ペコリと挨拶する姿は、何とも可愛らしい印象がある。この人が聖女様だろうか?にしても、“ツクモ”とは、ユーグレイシアでは珍しい…初めて耳にする家名だ。
「メグは態々頭を下げなくても良いのよ?」
「でも、挨拶は大事だから…」
「私は、ユラ=カミジョーです。私もメグと一緒に学校に行くので、宜しくお願いします」
“カミジョー”
これまた珍しい家名だ。それに、彼女も学校に行くと言う事は、この2人ともが聖女様?
モニカと私は、聖女様をサポートする役をお願いされてはいたけど、それ以外の事については一切何も知らされてはいない。今も、彼女達と挨拶を交わしたところで、一切何も分からない。
「色々事情があって、2人には詳細を話していなかったんだ、すまない。それで、今日、この場で2人には話しておこうと思って、交流の場を設けたんだ。話は長くなるから、取り敢えず椅子に座ってくれ」
と、第二王子に言われて、モニカと私とスタンホルス様が椅子に座ると、女官達がお茶の準備をし始めた。
「あ、私、このケーキ好きなんです!」
「そうか、なら良かった」
ユラさんが嬉しそうに言うと、第二王子も嬉しそうに微笑んだ。この2人は、仲が良さそうにも見える。
ーユラさんが聖女様かな?ー
メグさんは緊張しているのか、おとなしく座ったままだ。
女官達がお茶の準備を終えると、私達6人以外の全員が部屋から出て行ってしまった。
通常であれば、この部屋に第二王子が居るから、護衛の1人か2人居てもおかしくない筈なのに、護衛すら居ない─と不思議に思っていると
「結界を張らせてもらうね」
と第二王子が言うと、一瞬空気が張り詰められた事が分かった。
「今から話す事は、ここだけの話としてもらいたい。その為、他言しないと言う誓約書にもサインしてもらいたい。それを拒否するなら、今この場から去ってもらう事になる。選ぶのは自由だ」
“選ぶのは自由だ”と言われたところで、拒否する事も退室する事も無理だよね?一体、今からどんな話を聞かされるのか─
不安に思いつつも、モニカと私は誓約書にサインをした。
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