番から逃げる事にしました

みん

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6 欲

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あのお茶会以降、私達6人はよくお茶をしたり、学校でも一緒に居る時間が増えたりしていた。
勿論、聖女様についてはまだ極秘扱いの為、学校では当たり障りのない話をしている。


「今日もヴェルティル様がカッコイイ」
「リュシーもブレないわね」

ヴェルティル様と過ごす時間が増えるごとに、ヴェルティル様の魅力が増えていくのは…私の欲目からだろうか?

私が困っていたりすると『大丈夫?何かあった?』と声を掛けてくれたり、大きな荷物を持っていると『手伝うよ』と言って、荷物を持ってくれたりする。私は獣人だから、人間の女性よりも力持ちだったりするから、そう言う扱いをされる事にあまり慣れていないと言う事もあって、そんな事をされると余計に嬉しくて、ヴェルティル様への気持ちが溢れて行ってしまっている。

でも──

ヴェルティル様とリリアーヌ様は…本当にお似合いなのだ。あの2人の間に割り込むつもりはない。2人と仲良くなって距離が縮んだ分、少しだけ胸がチクッとする事があるけど、優先するのはヴェルティル様の幸せだ。
ヴェルティル様と同じ時間を過ごせるのも、ヴェルティル様が学校を卒業する迄の間だけ。後1年も無い。

「兎に角、今のうちにヴェルティル様をたくさん見ておくわ!」
「ストーカーにはならないでね」

と、モニカに呆れた顔で釘を刺された。






******


「顔色が悪いけど大丈夫?」
「え?あ…ヴェルティル様……」

放課後、図書室で勉強をしていると、頭がチクチクと痛みだし、体も少しフラフラする感じがした為、帰る用意をしようかと思ったところで、ヴェルティル様に声を掛けられた。

「あ…少し頭痛がするので、そろそろ帰ろうかと………っ!」
「クレイオン嬢!」

立ち上がろうとしたところで体がふらついてしまい、ふらついた私をヴェルティル様が受け止めてくれた。

「あ…すみません……すぐに……」
「ごめんね、また…失礼するよ?」
「え?あっ!?」

ヴェルティル様は笑いながら謝った後、また私を抱き上げた。

「倒れたら危ないから、このまま医務室まで連れて行くから。恥ずかしかったら、また顔を隠しておいて」
「……ありがとう…ございます…」

正直、恥ずかしいけどありがたい。一瞬立ち上がっただけでも辛かったから、歩くのは無理だっただろう。

「………」

やっぱり、ヴェルティル様の体温?は心地いい。胸はドキドキするけど安心感がある。そっと目を閉じると……私はまた、ヴェルティル様に抱き上げられたまま眠ってしまった。






******


「─可愛いわね。──は見てておもしろ─」
「─可愛いのは───」


ーこの声は……リリアーヌ様と……ー

また眠ってしまっていたようで、まぶたも重くて開けられない。頭痛は無いけど、フワフワしていて、自分がまだ寝ているのか、起きているのかもよく分からない。
誰かの話し声が聞こえるけど、これが現実のものなのか、夢の中なのかもよく分からない。

「──教えてあげたいわ。本当の──を…」
「そんな事をしたら────」
「ふふっ……本当に好きなのね────」
「当たり前だろう…だから───」

ーあぁ…本当にこの2人は、想い合っているのねー

ヴェルティル様の喋り方が、いつもより雑?フランク?なのは、相手がリリアーヌ様だからだろうか?私には、いつも紳士的で優しい喋り方だから、何となくドキドキしてしまう。これが素のヴェルティル様だったりする?そんなヴェルティル様を、リリアーヌ様はいつも見て、聞く事ができるのだ。

ー羨ましいー

2人を─ヴェルティル様を見ているだけで幸せだったのに、距離が縮まると少しだけ欲が出て来てしまったのかもしれない。

「…………」
「ん?クレイオン嬢……起きてる?」
「………ん……」

ヴェルティル様が声を掛けてくれたタイミングで、ゆっくりと目を開けた。

「私……」
「ここに来る迄に寝てしまったようだから、そのままここで寝かせてあげようと先生に言われてね。取り敢えず、クレイオン邸には迎えの連絡を飛ばしてあるから、迎えが来る迄休んでると良いよ」
「ありがとうございます。あの…迷惑を掛けてしまってすみません」
「迷惑だとは思ってないから。うん、顔色も良くなったね。良かった。それじゃあ──ん?どうかした?」
「え?あっ!?すみません!」

それじゃあ─と、去って行こうとするヴェルティル様の服を、無意識のうちに掴んでしまっていたようで、慌ててその手を離す。

ーやってしまったー

体調が悪くて気が弱くなっているのか、気が緩んでしまっているのか……去って行こうとするヴェルティル様を目にして“寂しい”と思ってしまって…ついつい手を伸ばしてしまったのだ。

「あの…本当に……すみま──」
「謝らなくて良いから。体調を崩すと、1人になる事が心細くなったりするからね。何か飲み物を持って来るだけで、またすぐ戻って来るから」

ヴェルティル様は優しい笑顔でそう言うと、私の頭をポンポンと優しく叩いてから医務室から出て行った。






ーヴェルティル様って…香水なんてつけてたかなぁ?ー


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