48 / 51
48 シルヴィの願い
しおりを挟む
ウォーランド王国パルヴァン辺境地にやって来てから1週間。エディオルさんとセオ君は、3日前から仕事復帰し、毎日魔法陣を使って登城している。
日中の私は、この世界やウォーランド王国について、ハルさん付きの侍女のルディさんに色々と教えてもらっている。
ハルさんは?と言うと、私の為にパルヴァンに居てくれているが、薬師として、毎日ポーション作りやポーションの研究をしていて、お昼過ぎ迄会える事は殆どなかった。それでも、ティータイムの時には必ず一緒に過ごしてくれて、その時にはセオ君の事を色々話してくれた。
一番驚いたのは、セオ君に今迄彼女と言う存在が1人も居なかったと言う事だった。
父親のエディオルさんとは違い、男女分け隔てなく笑顔で対応する為、モテない事は無いのだけど、擦り寄って来る令嬢が居ても、うまく笑顔で躱してキッチリ距離を取って行動していたそうだ。
「エディオル様の場合は、“氷の騎士”なんて呼ばれていて、秋波を飛ばして来る令嬢方にも氷の視線を向けてましたけどね。」
と言ったのはリディさん。
ー想像できるー
「ただ、ハル様には笑顔か微笑みか蕩けた目しか向けないので、私達には“氷の騎士”の意味が全く分かりませんでしたけどね。」
と言ったのはルナさん。
ー想像できるし、実際目の当たりにしたよねー
「ハル様はハル様で天然で可愛さを振りまくから、エディオル様も大変でしたけどね。」
ーそれも想像できるなぁ…無自覚にエディオルさんを煽って、自分がダメージ受ける…みたいな?ー
「ルナさん!リディさん!わっ…私の事はいいんです!」
真っ赤な顔でむぅっ─と怒ってる?ハルさんは、可愛いしかない。ルナさんとリディさんと私の3人は、そんなハルさんをニコニコしながら見ていた。
「ん?」
その時、ハルさんが何かに反応したかと思うと、そこにはネージュさんとシルヴィが居た。
シルヴィはパルヴァンに来てから、邸の奥にあるパルヴァンの森で過ごす事が多い。何でも、魔素がたくさんあり、魔獣にとっては居心地が良いらしい。この1週間で、更に15年前の状態よりも良くなったそうだ。
ハルさんが、テーブルの上にある私の手に、手を重ねてくれた。
『ハル様、こんにちは。』
「シルヴィ、こんにちは。すっかり元気になったね。」
『はい。お陰様で、本来の自分以上になりました。本当に、ありがとうございます。』
「ふふっ。シルヴィは、本当にお利口さんだよね」
と、ハルさんがシルヴィの頭をワシャワシャと撫で回す。その時のシルヴィは、やっぱり背筋を綺麗にピンッと伸ばして微動だにしないけど、目だけはとても嬉しそうに細められている。
そんなシルヴィの様子を、私とネージュさんは笑うのを我慢しながら見ている。
そう。シルヴィは、色んな意味でハルさんには弱いのだ。
シルヴィの姿勢や態度や言葉遣いがやたら良いのは、同じ魔獣でも別格のフェンリルが居るからだと思っていたけど、実は……シルヴィにとって、ハルさんが一番ヤバい存在らしく、危機感や嫌悪感は全く無いのだけど、本能が反応してしまい、ハルさんの近くに来ると自然と“借りてきた猫”状態になってしまうらしい。
『何とも面白い…可愛らしいハティだろう?』
と、ニヤッ─と笑いながらネージュさんが教えてくれた。
『あの…ハル様。少し相談したい事があるのですが……』
「ん?何?」
シルヴィは、私をチラッと一瞥した後、またハルさんに視線を戻した。
『俺は……セオドアと名を交わしたいと思ってます。』
******
魔獣ハティは、そこそこ…結構なレベルの魔獣らしい。そのハティであるシルヴィが、セオ君と名を交わしたい─と言う事は、セオ君の魔力も相当なモノだと言う事。チートな魔法使いのハルさんの子供だからだろうか?
兎に角、人間と魔獣が名を交わすと言う事は、本来なら滅多に行われる事は無い筈なんだけど、ハルさんが居れば、お互いの魔力の相性が合えば可能になってしまうのだ。ハルさんを介せば言葉を交わせる事ができるから。
ーハルさんが凄過ぎるー
シルヴィが、セオ君と名を交わしたい─と言ったら、ハルさんは「セオがその願いを受け入れて、お互いの魔力の相性が良かったら、私が喜んで手伝うよ?」と笑顔で答えた。
『俺がセオドアと名を交わせれば、ブルーナ、お前の事も、俺が護ってやるからな?』
「──え?」
『俺はセオドア本人とセオドアの魔力を気に入っている。そのセオドアの番はブルーナ、お前だろう?なら、俺がこれからも、ブルーナを護ってやるからな。』
「シルヴィ……ありがとう。」
ギュッと、シルヴィの首に抱きついてお礼を言うと、尻尾がユラユラと揺れていた。
ハルさんに対しては微動だにしない、その尻尾。
本当に、シルヴィはハルさんには敵わないんだなぁ─と思った事は、シルヴィには内緒にしておこう。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
( *¯ ꒳¯*).。.:*ෆ
日中の私は、この世界やウォーランド王国について、ハルさん付きの侍女のルディさんに色々と教えてもらっている。
ハルさんは?と言うと、私の為にパルヴァンに居てくれているが、薬師として、毎日ポーション作りやポーションの研究をしていて、お昼過ぎ迄会える事は殆どなかった。それでも、ティータイムの時には必ず一緒に過ごしてくれて、その時にはセオ君の事を色々話してくれた。
一番驚いたのは、セオ君に今迄彼女と言う存在が1人も居なかったと言う事だった。
父親のエディオルさんとは違い、男女分け隔てなく笑顔で対応する為、モテない事は無いのだけど、擦り寄って来る令嬢が居ても、うまく笑顔で躱してキッチリ距離を取って行動していたそうだ。
「エディオル様の場合は、“氷の騎士”なんて呼ばれていて、秋波を飛ばして来る令嬢方にも氷の視線を向けてましたけどね。」
と言ったのはリディさん。
ー想像できるー
「ただ、ハル様には笑顔か微笑みか蕩けた目しか向けないので、私達には“氷の騎士”の意味が全く分かりませんでしたけどね。」
と言ったのはルナさん。
ー想像できるし、実際目の当たりにしたよねー
「ハル様はハル様で天然で可愛さを振りまくから、エディオル様も大変でしたけどね。」
ーそれも想像できるなぁ…無自覚にエディオルさんを煽って、自分がダメージ受ける…みたいな?ー
「ルナさん!リディさん!わっ…私の事はいいんです!」
真っ赤な顔でむぅっ─と怒ってる?ハルさんは、可愛いしかない。ルナさんとリディさんと私の3人は、そんなハルさんをニコニコしながら見ていた。
「ん?」
その時、ハルさんが何かに反応したかと思うと、そこにはネージュさんとシルヴィが居た。
シルヴィはパルヴァンに来てから、邸の奥にあるパルヴァンの森で過ごす事が多い。何でも、魔素がたくさんあり、魔獣にとっては居心地が良いらしい。この1週間で、更に15年前の状態よりも良くなったそうだ。
ハルさんが、テーブルの上にある私の手に、手を重ねてくれた。
『ハル様、こんにちは。』
「シルヴィ、こんにちは。すっかり元気になったね。」
『はい。お陰様で、本来の自分以上になりました。本当に、ありがとうございます。』
「ふふっ。シルヴィは、本当にお利口さんだよね」
と、ハルさんがシルヴィの頭をワシャワシャと撫で回す。その時のシルヴィは、やっぱり背筋を綺麗にピンッと伸ばして微動だにしないけど、目だけはとても嬉しそうに細められている。
そんなシルヴィの様子を、私とネージュさんは笑うのを我慢しながら見ている。
そう。シルヴィは、色んな意味でハルさんには弱いのだ。
シルヴィの姿勢や態度や言葉遣いがやたら良いのは、同じ魔獣でも別格のフェンリルが居るからだと思っていたけど、実は……シルヴィにとって、ハルさんが一番ヤバい存在らしく、危機感や嫌悪感は全く無いのだけど、本能が反応してしまい、ハルさんの近くに来ると自然と“借りてきた猫”状態になってしまうらしい。
『何とも面白い…可愛らしいハティだろう?』
と、ニヤッ─と笑いながらネージュさんが教えてくれた。
『あの…ハル様。少し相談したい事があるのですが……』
「ん?何?」
シルヴィは、私をチラッと一瞥した後、またハルさんに視線を戻した。
『俺は……セオドアと名を交わしたいと思ってます。』
******
魔獣ハティは、そこそこ…結構なレベルの魔獣らしい。そのハティであるシルヴィが、セオ君と名を交わしたい─と言う事は、セオ君の魔力も相当なモノだと言う事。チートな魔法使いのハルさんの子供だからだろうか?
兎に角、人間と魔獣が名を交わすと言う事は、本来なら滅多に行われる事は無い筈なんだけど、ハルさんが居れば、お互いの魔力の相性が合えば可能になってしまうのだ。ハルさんを介せば言葉を交わせる事ができるから。
ーハルさんが凄過ぎるー
シルヴィが、セオ君と名を交わしたい─と言ったら、ハルさんは「セオがその願いを受け入れて、お互いの魔力の相性が良かったら、私が喜んで手伝うよ?」と笑顔で答えた。
『俺がセオドアと名を交わせれば、ブルーナ、お前の事も、俺が護ってやるからな?』
「──え?」
『俺はセオドア本人とセオドアの魔力を気に入っている。そのセオドアの番はブルーナ、お前だろう?なら、俺がこれからも、ブルーナを護ってやるからな。』
「シルヴィ……ありがとう。」
ギュッと、シルヴィの首に抱きついてお礼を言うと、尻尾がユラユラと揺れていた。
ハルさんに対しては微動だにしない、その尻尾。
本当に、シルヴィはハルさんには敵わないんだなぁ─と思った事は、シルヴィには内緒にしておこう。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
( *¯ ꒳¯*).。.:*ෆ
62
お気に入りに追加
791
あなたにおすすめの小説

召喚から外れたら、もふもふになりました?
みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。
今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。
すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。
気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!?
他視点による話もあります。
❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。
メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。

氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす
みん
恋愛
【モブ】シリーズ③(本編完結済み)
R4.9.25☆お礼の気持ちを込めて、子達の話を投稿しています。4話程になると思います。良ければ、覗いてみて下さい。
“巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について”
“モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語”
に続く続編となります。
色々あって、無事にエディオルと結婚して幸せな日々をに送っていたハル。しかし、トラブル体質?なハルは健在だったようで──。
ハルだけではなく、パルヴァンや某国も絡んだトラブルに巻き込まれていく。
そして、そこで知った真実とは?
やっぱり、書き切れなかった話が書きたくてウズウズしたので、続編始めました。すみません。
相変わらずのゆるふわ設定なので、また、温かい目で見ていただけたら幸いです。
宜しくお願いします。

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。

恋愛は見ているだけで十分です
みん
恋愛
孤児院育ちのナディアは、前世の記憶を持っていた。その為、今世では恋愛なんてしない!自由に生きる!と、自立した女魔道士の路を歩む為に頑張っている。
そんな日々を送っていたが、また、前世と同じような事が繰り返されそうになり……。
色んな意味で、“じゃない方”なお話です。
“恋愛は、見ているだけで十分よ”と思うナディア。“勿論、溺愛なんて要りませんよ?”
今世のナディアは、一体どうなる??
第一章は、ナディアの前世の話で、少しシリアスになります。
❋相変わらずの、ゆるふわ設定です。
❋主人公以外の視点もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字が多いかもしれません。すみません。
❋メンタルも、相変わらず豆腐並みなので、緩い気持ちで読んでいただけると幸いです。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる