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45 最後の夜③
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「本当に、めでたい頭だな?お前が、俺に勝る要素など微塵も無いのに。それに、俺がお前を赦す訳がないんだよ。魔法使いとして、決してしてはいけない事をした上……セオに手を出したんだからな…。」
魔法使いとして決してしてはいけない事─
それは多分、魔法を使って他者を虐げ攻撃して傷付ける事だろう。
セオ君に関しては、私情になるだろうけど……でも、媚薬を飲ませたりするのは、普通に犯罪にはなるだろう。
「そんなお前でも、二度……チャンスを与えてやったんだ。それを無にしたのは、お前自身だからな。もう三度目のチャンスは訪れないし、お前を助けてくれる者も居ないからな。何故か?それは、お前が魔道士以下の魔法使いだからだ。もう、使い道の無い魔法使いだからだ。」
リュウさんは、ニコルに嵌められている枷に手を翳して、更に何かの魔法を掛けた。その魔法を掛け終えると、ニコルは気を失って前のめりに倒れた。
その倒れたニコルを、カーシーが抱き上げ、そのまま魔塔の牢へと運んで行った。
「リュウさん、今のは……」
「体内の魔力の流れを完全に止めたんだ。」
これまた、アッサリ凄い事を言われた。
魔力持ちの体内の魔力の流れを完全に止めてしまうと、死にはしないけど、ほぼ寝たきり状態となる。
「でも…大丈夫ですかね?未だに魔法使いのニコルを崇拝してる魔道士や貴族が居るから、また…同じ様な事が起こらないとは言えませんよね?」
「ん?それなら大丈夫だ。魔道士達の事は、俺がキレイにしておいたから。貴族の方は、王太子が処罰を下すだろう。」
ー“キレイに”とは…何だろう?ー
「それと……リュウさんとハルさんは、どこから現れたんですか?」
魔法陣の展開もなかったから、転移して来たわけじゃない。
「俺とハルは、ずっとこの部屋に居たんだ。」
「はい?」
お兄様が苦笑していると言う事は、お兄様は知っていて、私だけが知らなかったと言う事だ。
なんと、ハルさんが、ハルさんとリュウさんに“認識阻害”の魔法を掛けて、ずっとこの部屋に居たらしい。
清水さんが、ニコルとの面会を求めて来た時点で何かある─と予想し、2人が面会をする時間に合わせて、リュウさんとハルさんが待機していたそうだ。
そして、予想通りニコルは脱走して、またやらかした─と。
手引き…手助けしたのは、ニコルを崇拝していた貴族の1人。その貴族は魔力持ち主義者で、自身も比較的強い魔力持ちだったそうだ。ただ、それもイーレン国内における基準で強いだけで、他国からすれば、大した事の無いレベルらしい。
“井の中の蛙大海を知らず”とは、正にこの事だ。
魔法使いであるニコルを崇拝していたのは事実だが、マトモなお兄様よりお馬鹿なニコルを国王に祭り上げ、自分がニコルを御し、もっと魔力持ちが優遇されるような国造りをしようとしていたそうだ。
「これで、明日の議会は紛糾する事もなく、色んな事を片付ける事ができそうです。ありがとうございます。」
ニッコリ微笑んで、リュウさんとハルさんにお礼を言うお兄様もまた……少し…黒いものがあった。
それから暫くしてから、清水さんがカーシーと一緒に、私達の居る部屋にやって来た。
やはり、ニコルとの面会を望んだのは、今回捕まった貴族に、とある魔道具をニコルに渡す為だったそうだ。ただ、最後にニコルに文句を言ってやりたかったと言う事もあったようだ。
「勝手に聖女として召喚されて、聖女で居られなくされて、馬鹿にされて………たまったもんじゃないわよ!こんな所……二度と!来たくないわ!今すぐ!今すぐ還りたい!」
ーうん。確かに……何とも言い難い召喚だったよねー
「じゃあ──今すぐ還してあげる」
「「「え?」」」
「…………」
清水さんの訴えに直ぐさま反応したのは、勿論ハルさんだ。
「え???」
少し焦っている清水さんの足元に魔法陣が現れて、そこから淡い水色の光が一気に溢れ出す。
「その魔法陣から外れないように気を付けて。でないと、流石の私でも……無事に送り還す事ができないから。」
その言葉に、清水さんはオロオロしていたのをやめて、その場にジッと佇み、両手を胸の前で組んで目をギュッと瞑った。その様子を確認したハルさんは、更に魔力を流して魔法陣を展開させた。
そうして、淡い水色の光が一気に弾けて落ち着くと、そこにはもう、清水さんの姿は無くなっていた。
「「…………」」
「あ…ひょっとして…最後に挨拶とか…したかった?」
「……いえ…挨拶は…別に………」
「なら良かった」
ーただただ、ハルさんの凄さに驚いているだけですー
たった1人で異世界へと転移させる魔力を使ったのにも関わらず、今もそこに、普通に、可愛らしい笑顔で立って話もしているハルさん。ひょっとして、普通の魔法使いなら誰でも───
「魔法使いなら誰でもできる─と思うな。ハルだからだ。」
ーなるほどー
もう、ソレ、驚きません。ソレ、ある意味呪文だよね?
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
ଘ(੭*ˊᵕˋ)੭* ੈ♡‧₊˚
魔法使いとして決してしてはいけない事─
それは多分、魔法を使って他者を虐げ攻撃して傷付ける事だろう。
セオ君に関しては、私情になるだろうけど……でも、媚薬を飲ませたりするのは、普通に犯罪にはなるだろう。
「そんなお前でも、二度……チャンスを与えてやったんだ。それを無にしたのは、お前自身だからな。もう三度目のチャンスは訪れないし、お前を助けてくれる者も居ないからな。何故か?それは、お前が魔道士以下の魔法使いだからだ。もう、使い道の無い魔法使いだからだ。」
リュウさんは、ニコルに嵌められている枷に手を翳して、更に何かの魔法を掛けた。その魔法を掛け終えると、ニコルは気を失って前のめりに倒れた。
その倒れたニコルを、カーシーが抱き上げ、そのまま魔塔の牢へと運んで行った。
「リュウさん、今のは……」
「体内の魔力の流れを完全に止めたんだ。」
これまた、アッサリ凄い事を言われた。
魔力持ちの体内の魔力の流れを完全に止めてしまうと、死にはしないけど、ほぼ寝たきり状態となる。
「でも…大丈夫ですかね?未だに魔法使いのニコルを崇拝してる魔道士や貴族が居るから、また…同じ様な事が起こらないとは言えませんよね?」
「ん?それなら大丈夫だ。魔道士達の事は、俺がキレイにしておいたから。貴族の方は、王太子が処罰を下すだろう。」
ー“キレイに”とは…何だろう?ー
「それと……リュウさんとハルさんは、どこから現れたんですか?」
魔法陣の展開もなかったから、転移して来たわけじゃない。
「俺とハルは、ずっとこの部屋に居たんだ。」
「はい?」
お兄様が苦笑していると言う事は、お兄様は知っていて、私だけが知らなかったと言う事だ。
なんと、ハルさんが、ハルさんとリュウさんに“認識阻害”の魔法を掛けて、ずっとこの部屋に居たらしい。
清水さんが、ニコルとの面会を求めて来た時点で何かある─と予想し、2人が面会をする時間に合わせて、リュウさんとハルさんが待機していたそうだ。
そして、予想通りニコルは脱走して、またやらかした─と。
手引き…手助けしたのは、ニコルを崇拝していた貴族の1人。その貴族は魔力持ち主義者で、自身も比較的強い魔力持ちだったそうだ。ただ、それもイーレン国内における基準で強いだけで、他国からすれば、大した事の無いレベルらしい。
“井の中の蛙大海を知らず”とは、正にこの事だ。
魔法使いであるニコルを崇拝していたのは事実だが、マトモなお兄様よりお馬鹿なニコルを国王に祭り上げ、自分がニコルを御し、もっと魔力持ちが優遇されるような国造りをしようとしていたそうだ。
「これで、明日の議会は紛糾する事もなく、色んな事を片付ける事ができそうです。ありがとうございます。」
ニッコリ微笑んで、リュウさんとハルさんにお礼を言うお兄様もまた……少し…黒いものがあった。
それから暫くしてから、清水さんがカーシーと一緒に、私達の居る部屋にやって来た。
やはり、ニコルとの面会を望んだのは、今回捕まった貴族に、とある魔道具をニコルに渡す為だったそうだ。ただ、最後にニコルに文句を言ってやりたかったと言う事もあったようだ。
「勝手に聖女として召喚されて、聖女で居られなくされて、馬鹿にされて………たまったもんじゃないわよ!こんな所……二度と!来たくないわ!今すぐ!今すぐ還りたい!」
ーうん。確かに……何とも言い難い召喚だったよねー
「じゃあ──今すぐ還してあげる」
「「「え?」」」
「…………」
清水さんの訴えに直ぐさま反応したのは、勿論ハルさんだ。
「え???」
少し焦っている清水さんの足元に魔法陣が現れて、そこから淡い水色の光が一気に溢れ出す。
「その魔法陣から外れないように気を付けて。でないと、流石の私でも……無事に送り還す事ができないから。」
その言葉に、清水さんはオロオロしていたのをやめて、その場にジッと佇み、両手を胸の前で組んで目をギュッと瞑った。その様子を確認したハルさんは、更に魔力を流して魔法陣を展開させた。
そうして、淡い水色の光が一気に弾けて落ち着くと、そこにはもう、清水さんの姿は無くなっていた。
「「…………」」
「あ…ひょっとして…最後に挨拶とか…したかった?」
「……いえ…挨拶は…別に………」
「なら良かった」
ーただただ、ハルさんの凄さに驚いているだけですー
たった1人で異世界へと転移させる魔力を使ったのにも関わらず、今もそこに、普通に、可愛らしい笑顔で立って話もしているハルさん。ひょっとして、普通の魔法使いなら誰でも───
「魔法使いなら誰でもできる─と思うな。ハルだからだ。」
ーなるほどー
もう、ソレ、驚きません。ソレ、ある意味呪文だよね?
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
ଘ(੭*ˊᵕˋ)੭* ੈ♡‧₊˚
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