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41 訓練
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セオ君のお祖父様─ゼンさんは……とんでもなく凄い人だった。
ゼンさんは、見た目から武人が歩いているような雰囲気の人で、武だけではなく魔力も強いようで、やっぱり年齢よりも遥かに若く見える人だった。
そのゼンさんと久し振りの再会を果たしたセオ君は、とても嬉しそうに、ゼンさんに剣の稽古をつけてもらっていた。それから、お兄様のお願いで、ゼンさんにイーレンの騎士の訓練を見てもらうと──
「これが訓練?“お遊戯”の間違いだろう…」
とニッコリ微笑み、それから急遽、ゼンさん指導による特訓が始まった。そこに、エディオルさんとセオ君が補佐役として付いていたが、ゼンさんが一番キレッキレな動きをしているのにも関わらず、髪の毛1本も乱れない─と言うのは、どう言う事なんだろうか?
ゼンさんは特別凄いけど、エディオルさんとセオ君も凄かった。エディオルさんは、流れるような綺麗な動きをするのに、全く隙が無い。踊ってる─と言える程に綺麗だ。
セオ君も、親子だからか、エディオルさんに近い動きをしている。
兎に角、この3人を目にしていると、イーレンの騎士のレベルは低いと言う事がよく分かる。いや、騎士だけではなく、魔道士のレベルも他国に比べると、かなり低いんだろうと思う。
その辺りも、お兄様が王位を継げば変わっていくだろう。
「もう無理よ!何でここまでしなきゃいけないのよ!結局、私が聖女になれなくても、アンタが聖女として色んな国を綺麗にすれば良いだけじゃない!」
騎士の訓練場の端で、大声で叫んだのは清水渚沙だ。
気を失って帰って来た清水さんだったけど、意識を取り戻して暫らく休んだ後、ゼンさん達と一緒に訓練場へとやって来て、清水さんは訓練場の端で、ミヤ様から聖女としての訓練を受ける事になったのだ。
職業体験の続きだ。
その訓練には驚いた。ラノベイメージなのか、聖女とは、祈りさえすれば発動するのかと思っていた。祈りが重要なのだと。
先ず、聖女も体力が重要らしい。何でも、光の魔力は他属性の魔力より、魔力の消費量が多いらしく、体内の魔力の流れを良くしていないと、うまく光の魔力が使えない上、あっと言う間に魔力量も減ってしまうんだそうだ。
その為、ミヤ様も訓練を始めた頃は、毎日毎日走って走って走りまくっていたそうだ。
訓練始めに走り込み、その後魔力についての訓練、そして、訓練の締めにまた走り込み──
ー昭和のスポ根かな?ー
「召喚された3人が仲の良い友達で、3人ともが負けず嫌いだったから、辛い事も乗り越える事ができたのかもしれないわ。ハルと言う可愛い存在もあったけどね。」
その聖女様達の合言葉が“ハルと一緒に、4人で日本の彼氏の元に還る!”だったそうだ。
そこでの清水さん。
「先ずは走り込みよ」と、ミヤ様に言われて走り出したけど、1キロも走る事なく息を切らせながら「無理!」と言って、その場に座り込んでしまった。
「それじゃあ、魔力の流れを整える訓練を」と言うと、「ようやく魔法が使えるのね!」と意気揚々と始めたものの、自分の体内に流れている魔力の流れを掴む事も上手くいかず……。「流れとかよりも、実践の方が私には合ってるわ!」と、訳の分からない理屈を言い出したが、ミヤ様が“その言葉、待ってました”と言わんばかりの微笑みをたたえ、それじゃあ─と言って、魔法の実地訓練を始める事になった。
魔力の流れを感じて整える─それは、魔力持ちが先ず基本として学ぶ事で、魔法を使う為の基礎となるものだ。それが上手くいかなければ、自分自身の負担にもなるし、上手く魔法も発動しなかったりする。
「何で!?何で……うまく魔法が使えないの!?前は簡単にできたのに!」
いざ、光魔法を使おうとしても、チラッと手が光るだけで、魔法が発動する気配が全くなかった。
自分の手の平を見てワナワナと震える清水さん。
「これで……分かった?」
そんな様子の清水さんに、ミヤ様が静かに語りかける。
「召喚されて聖女─なんて、確かにラノベ展開だけど、ここはラノベの世界ではなくて、現実の世界なの。聖女だから、魔法使いだから、王妃だからと言う理由だけでは、何もできないし生きていけないの。貴方は、ここに来てから何もしなかったでしょう?何もしなかった分、光の魔力もどんどん失ってしまって、今ではもう……殆ど無い状態なのよ。だから、ある意味、自分の体内の魔力の流れを感じる事ができないし、光魔法を発動させる事ができないのよ。」
「そんな…………」
「召喚されてやって来たのがイーレンだった事が……ある意味運が悪かったわね。聖女を必要とする国ではなくてすぐに対応ができなかったから、魔力を高める事ができなかったのよ。まぁ……貴方の性格では、どの国に召喚されていたとしても……高められていたかどうかは疑問だけどね?」
「なっ!」
ーミヤ様…やっぱり容赦がない。そして、めちゃくちゃ……愉しそうだよねー
と、そこでハタと気付いたのが……そんなミヤ様の少し後ろに、気配を消したハルさんが居た事だった。
ー全く気付かなかったー
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
✧ 。*٩(* ˊᗜˋ)(ˊᗜˋ*)و✧
ゼンさんは、見た目から武人が歩いているような雰囲気の人で、武だけではなく魔力も強いようで、やっぱり年齢よりも遥かに若く見える人だった。
そのゼンさんと久し振りの再会を果たしたセオ君は、とても嬉しそうに、ゼンさんに剣の稽古をつけてもらっていた。それから、お兄様のお願いで、ゼンさんにイーレンの騎士の訓練を見てもらうと──
「これが訓練?“お遊戯”の間違いだろう…」
とニッコリ微笑み、それから急遽、ゼンさん指導による特訓が始まった。そこに、エディオルさんとセオ君が補佐役として付いていたが、ゼンさんが一番キレッキレな動きをしているのにも関わらず、髪の毛1本も乱れない─と言うのは、どう言う事なんだろうか?
ゼンさんは特別凄いけど、エディオルさんとセオ君も凄かった。エディオルさんは、流れるような綺麗な動きをするのに、全く隙が無い。踊ってる─と言える程に綺麗だ。
セオ君も、親子だからか、エディオルさんに近い動きをしている。
兎に角、この3人を目にしていると、イーレンの騎士のレベルは低いと言う事がよく分かる。いや、騎士だけではなく、魔道士のレベルも他国に比べると、かなり低いんだろうと思う。
その辺りも、お兄様が王位を継げば変わっていくだろう。
「もう無理よ!何でここまでしなきゃいけないのよ!結局、私が聖女になれなくても、アンタが聖女として色んな国を綺麗にすれば良いだけじゃない!」
騎士の訓練場の端で、大声で叫んだのは清水渚沙だ。
気を失って帰って来た清水さんだったけど、意識を取り戻して暫らく休んだ後、ゼンさん達と一緒に訓練場へとやって来て、清水さんは訓練場の端で、ミヤ様から聖女としての訓練を受ける事になったのだ。
職業体験の続きだ。
その訓練には驚いた。ラノベイメージなのか、聖女とは、祈りさえすれば発動するのかと思っていた。祈りが重要なのだと。
先ず、聖女も体力が重要らしい。何でも、光の魔力は他属性の魔力より、魔力の消費量が多いらしく、体内の魔力の流れを良くしていないと、うまく光の魔力が使えない上、あっと言う間に魔力量も減ってしまうんだそうだ。
その為、ミヤ様も訓練を始めた頃は、毎日毎日走って走って走りまくっていたそうだ。
訓練始めに走り込み、その後魔力についての訓練、そして、訓練の締めにまた走り込み──
ー昭和のスポ根かな?ー
「召喚された3人が仲の良い友達で、3人ともが負けず嫌いだったから、辛い事も乗り越える事ができたのかもしれないわ。ハルと言う可愛い存在もあったけどね。」
その聖女様達の合言葉が“ハルと一緒に、4人で日本の彼氏の元に還る!”だったそうだ。
そこでの清水さん。
「先ずは走り込みよ」と、ミヤ様に言われて走り出したけど、1キロも走る事なく息を切らせながら「無理!」と言って、その場に座り込んでしまった。
「それじゃあ、魔力の流れを整える訓練を」と言うと、「ようやく魔法が使えるのね!」と意気揚々と始めたものの、自分の体内に流れている魔力の流れを掴む事も上手くいかず……。「流れとかよりも、実践の方が私には合ってるわ!」と、訳の分からない理屈を言い出したが、ミヤ様が“その言葉、待ってました”と言わんばかりの微笑みをたたえ、それじゃあ─と言って、魔法の実地訓練を始める事になった。
魔力の流れを感じて整える─それは、魔力持ちが先ず基本として学ぶ事で、魔法を使う為の基礎となるものだ。それが上手くいかなければ、自分自身の負担にもなるし、上手く魔法も発動しなかったりする。
「何で!?何で……うまく魔法が使えないの!?前は簡単にできたのに!」
いざ、光魔法を使おうとしても、チラッと手が光るだけで、魔法が発動する気配が全くなかった。
自分の手の平を見てワナワナと震える清水さん。
「これで……分かった?」
そんな様子の清水さんに、ミヤ様が静かに語りかける。
「召喚されて聖女─なんて、確かにラノベ展開だけど、ここはラノベの世界ではなくて、現実の世界なの。聖女だから、魔法使いだから、王妃だからと言う理由だけでは、何もできないし生きていけないの。貴方は、ここに来てから何もしなかったでしょう?何もしなかった分、光の魔力もどんどん失ってしまって、今ではもう……殆ど無い状態なのよ。だから、ある意味、自分の体内の魔力の流れを感じる事ができないし、光魔法を発動させる事ができないのよ。」
「そんな…………」
「召喚されてやって来たのがイーレンだった事が……ある意味運が悪かったわね。聖女を必要とする国ではなくてすぐに対応ができなかったから、魔力を高める事ができなかったのよ。まぁ……貴方の性格では、どの国に召喚されていたとしても……高められていたかどうかは疑問だけどね?」
「なっ!」
ーミヤ様…やっぱり容赦がない。そして、めちゃくちゃ……愉しそうだよねー
と、そこでハタと気付いたのが……そんなミヤ様の少し後ろに、気配を消したハルさんが居た事だった。
ー全く気付かなかったー
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