巻き込まれではなかった、その先で…

みん

文字の大きさ
上 下
27 / 51

27 対面①

しおりを挟む
「ブルーナ殿下、カルザイン様、王太子殿下がお呼びです。」
「分かりました。」


庭園でセオ君と話しながら、2人で昼食を取り、終わってから少し経った頃、お兄様付きの侍従が私達を迎えにやって来た。

ーいよいよだー

自然と体に力が入る。

「大丈夫。翠は、必ず俺が守るから。」
「ありがとう。」

セオ君が側に居てくれる─それだけで、しっかり前を向く事ができるような気がした。









******


案内された部屋は、王太子宮内にある比較的広い応接室。そこには、既にお兄様が上座に座り、向かって右側にミヤ様、ハルさん、の順に座っていて、左側にリュウさんが座っている。私は、そのリュウさんの横に座り、セオ君は私の斜め後ろに立って控えている。
ちなみに、セオ君はフードを被っている為、顔はよく見えていない。


「ニコル殿下と聖女様がお越しになりました。」
「──入れ」

応接室の前に居た騎士に告げると、扉が開かれて、そこからお姉様と………清水しみず渚沙なぎさが入って来た。
入室した後一度歩みを止めて、お兄様に向かって軽く一礼をした後、すぐに顔を上げて挨拶をする事もなく口を開いた。


「お兄様、ようやく会っていただけましたね。」
「…そうだね………」
「ようやく、お兄様に紹介ができますわ!この子が、私が召喚した聖女です。彼女なら、きっと立派な聖女になりますわ!」

「ニコル…その前に、もっと言うべき事があるだろう?いや、挨拶も無いとは……」

「挨拶などする必要はないでしょう?私がニコル=イーレンだと言う事は、ここに居る者達は知っているのだから。それに、私がお兄様以外の者達の名を、態々聞いて覚える必要もないでしょう?」



「相変わらずだな……ニコル殿下は………」

お姉様の失礼極まりない言葉に反応したのは、魔法使いであるリュウさんだ。

「何故、この場に呼ばれたのか…全く分かっていないし、反省をしているようにも見えないな。」

「また…貴方なのね。反省とは…何に関しての反省かしら?」

「勝手に聖女を召喚して、他国を混乱させた事だと、説明した筈だけど?そんな簡単な事も理解出来ず、反省もできなかったのか?呆れるな──」

お姉様は、“それの一体何が悪いのか”と言うよな顔でリュウさんを睨んでいて、リュウさんは本当に呆れたような顔をしたまま、お姉様の視線を受け止めている。

「リュウはただの魔法使いなだけなのに、王女である私に偉そうな口を利くのね。それこそ不敬として、私に謝るべき事ではないの?それに、私は聖女の召喚を成功させたのよ?褒められても良いのではなくて?」

確かに、聖女とは有り難い存在ではある。

あるけど──

「え…何で………何でアンタが…ここに居るの!?」

王太子お兄様第一王女お姉様のやり取りの最中、そのやり取りを遮るように聖女である清水渚沙が、私を指差しながら叫んだ。

「アンタ……やっぱり、私の召喚に巻き込まれてたのね。で?何で、聖女でもないモブなアンタがそんな所に座ってるの?」

「ナギサは…を知っているの?あそこに座っているのは、私の妹のブルーナよ。ほら、話しただしょう?魔力無しの無能の名ばかりの第二王女よ。」
「──吉岡さんが……第二王女?」

ニヤッ─と嗤うお姉様と、何やら眉間に皺を寄せて思案している清水さん。清水さんは異世界から来て間もないと言う事もあるけど、お姉様は生まれた時からこの世界に居て、この国の王族なのに……マナーもへったくれも無い。15年の空白がある私でさえ、お姉様が異常である事が分かる。
お兄様はずっと顔を引き攣らせているし、ミヤ様なんて……光り輝くような微笑みを湛えていて見惚れてしまいそうなのに……背中がゾクゾクとするのは………絶対に気のせいではない。リュウさんは、この場のやり取りを愉しそうに見ている。

ハルさんは──空気と化していて、何だか可愛い。

「それじゃあ……吉岡さんは、もともとこの世界の人間だったって言う事?」
「そうよ。あの子…ブルーナは、自分が無能だから逃げていたのよ。帰って来たところで、無能の居場所なんて無いのに。」

「…………」

セオ君うしろから感じる殺気が…痛いー

殺気を感じて、背中が更にゾクゾクとしているのに、何故か嬉しいと思っている私が居る。セオ君やミヤ様が、私の為に怒っていると言う事が……嬉しいと思ってしまうのは……不謹慎な事だろうか?

「ニコル、口を慎むように。魔力無しだからと、無能だと……魔力無しの者を虐げる事は……私は今後一切赦しはしない。」
「お兄様がそんな事を言ったところで、そんな事をお父様が許す筈がないわ。」

確かに、あの父がここに居る事ができていたなら、許す事はなかっただろう。

「その父上─国王陛下はここには居ないし……もう、二度と表舞台に立つ事はない。現国王陛下の病状が急転してね……。後数日分の命らしいよ。」

「──なっ!?」

ーそれは……私も知らなかったー










❋エールを頂き、ありがとうございます❋
:.* ♡(°´˘`°)♡ *.:





しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

王太子殿下から逃げようとしたら、もふもふ誘拐罪で逮捕されて軟禁されました!!

屋月 トム伽
恋愛
ルティナス王国の王太子殿下ヴォルフラム・ルティナス王子。銀髪に、王族には珍しい緋色の瞳を持つ彼は、容姿端麗、魔法も使える誰もが結婚したいと思える殿下。 そのヴォルフラム殿下の婚約者は、聖女と決まっていた。そして、聖女であったセリア・ブランディア伯爵令嬢が、婚約者と決められた。 それなのに、数ヶ月前から、セリアの聖女の力が不安定になっていった。そして、妹のルチアに聖女の力が顕現し始めた。 その頃から、ヴォルフラム殿下がルチアに近づき始めた。そんなある日、セリアはルチアにバルコニーから突き落とされた。 突き落とされて目覚めた時には、セリアの身体に小さな狼がいた。毛並みの良さから、逃走資金に銀色の毛を売ろうと考えていると、ヴォルフラム殿下に見つかってしまい、もふもふ誘拐罪で捕まってしまった。 その時から、ヴォルフラム殿下の離宮に軟禁されて、もふもふ誘拐罪の償いとして、聖獣様のお世話をすることになるが……。

【完結】溺愛してくれる夫と離婚なんてしたくない!〜離婚を仕向けるために義父様の配下が私に呪いをかけてきたようですが、治癒魔法で解呪します〜

よどら文鳥
恋愛
 公爵家に嫁いだものの、なかなか子供が授からないミリア。  王族にとって子孫ができないことは死活問題だった。  そのため、旦那であるベイルハルトの両親からは離婚するよう圧がかかる。  ミリアもベイルハルトも離れ離れになりたくはなかった。  ミリアは治癒魔法の会得を試みて子供が授かる身体になることを決意した。 だが、治癒魔法は禁呪とも言われ、会得する前に死んでしまうことがほとんどだ。  それでもミリアはベイルハルトとずっと一緒にいたいがために治癒魔法を会得することに。  一方、ミリアに子供が授からないように呪いをかけた魔導師と、その黒幕はミリアが治癒魔法を会得しようとしていることを知って……? ※はじめてのショートショート投稿で、全7話完結です。

侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!

友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」 婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。 そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。 「君はバカか?」 あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。 ってちょっと待って。 いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!? ⭐︎⭐︎⭐︎ 「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」 貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。 あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。 「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」 「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」 と、声を張り上げたのです。 「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」 周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。 「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」 え? どういうこと? 二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。 彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。 とそんな濡れ衣を着せられたあたし。 漂う黒い陰湿な気配。 そんな黒いもやが見え。 ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。 「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」 あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。 背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。 ほんと、この先どうなっちゃうの?

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

義姉でも妻になれますか? 第一王子の婚約者として育てられたのに、候補から外されました

甘い秋空
恋愛
第一王子の婚約者として育てられ、同級生の第二王子のお義姉様だったのに、候補から外されました! え? 私、今度は第二王子の義妹ちゃんになったのですか! ひと風呂浴びてスッキリしたら…… (全4巻で完結します。サービスショットがあるため、R15にさせていただきました。)

処理中です...