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27 対面①
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「ブルーナ殿下、カルザイン様、王太子殿下がお呼びです。」
「分かりました。」
庭園でセオ君と話しながら、2人で昼食を取り、終わってから少し経った頃、お兄様付きの侍従が私達を迎えにやって来た。
ーいよいよだー
自然と体に力が入る。
「大丈夫。翠は、必ず俺が守るから。」
「ありがとう。」
セオ君が側に居てくれる─それだけで、しっかり前を向く事ができるような気がした。
******
案内された部屋は、王太子宮内にある比較的広い応接室。そこには、既にお兄様が上座に座り、向かって右側にミヤ様、ハルさん、の順に座っていて、左側にリュウさんが座っている。私は、そのリュウさんの横に座り、セオ君は私の斜め後ろに立って控えている。
ちなみに、セオ君はフードを被っている為、顔はよく見えていない。
「ニコル殿下と聖女様がお越しになりました。」
「──入れ」
応接室の前に居た騎士に告げると、扉が開かれて、そこからお姉様と………清水渚沙が入って来た。
入室した後一度歩みを止めて、お兄様に向かって軽く一礼をした後、すぐに顔を上げて挨拶をする事もなく口を開いた。
「お兄様、ようやく会っていただけましたね。」
「…そうだね………」
「ようやく、お兄様に紹介ができますわ!この子が、私が召喚した聖女です。彼女なら、きっと立派な聖女になりますわ!」
「ニコル…その前に、もっと言うべき事があるだろう?いや、挨拶も無いとは……」
「挨拶などする必要はないでしょう?私がニコル=イーレンだと言う事は、ここに居る者達は知っているのだから。それに、私がお兄様以外の者達の名を、態々聞いて覚える必要もないでしょう?」
「相変わらずだな……ニコル殿下は………」
お姉様の失礼極まりない言葉に反応したのは、魔法使いであるリュウさんだ。
「何故、この場に呼ばれたのか…全く分かっていないし、反省をしているようにも見えないな。」
「また…貴方なのね。反省とは…何に関しての反省かしら?」
「勝手に聖女を召喚して、他国を混乱させた事だと、説明した筈だけど?そんな簡単な事も理解出来ず、反省もできなかったのか?呆れるな──」
お姉様は、“それの一体何が悪いのか”と言うよな顔でリュウさんを睨んでいて、リュウさんは本当に呆れたような顔をしたまま、お姉様の視線を受け止めている。
「リュウはただの魔法使いなだけなのに、王女である私に偉そうな口を利くのね。それこそ不敬として、私に謝るべき事ではないの?それに、私は聖女の召喚を成功させたのよ?褒められても良いのではなくて?」
確かに、聖女とは有り難い存在ではある。
あるけど──
「え…何で………何でアンタが…ここに居るの!?」
王太子と第一王女のやり取りの最中、そのやり取りを遮るように聖女である清水渚沙が、私を指差しながら叫んだ。
「アンタ……やっぱり、私の召喚に巻き込まれてたのね。で?何で、聖女でもないモブなアンタがそんな所に座ってるの?」
「ナギサは…ブルーナを知っているの?あそこに座っているのは、私の妹のブルーナよ。ほら、話しただしょう?魔力無しの無能の名ばかりの第二王女よ。」
「──吉岡さんが……第二王女?」
ニヤッ─と嗤うお姉様と、何やら眉間に皺を寄せて思案している清水さん。清水さんは異世界から来て間もないと言う事もあるけど、お姉様は生まれた時からこの世界に居て、この国の王族なのに……マナーもへったくれも無い。15年の空白がある私でさえ、お姉様が異常である事が分かる。
お兄様はずっと顔を引き攣らせているし、ミヤ様なんて……光り輝くような微笑みを湛えていて見惚れてしまいそうなのに……背中がゾクゾクとするのは………絶対に気のせいではない。リュウさんは、この場のやり取りを愉しそうに見ている。
ハルさんは──空気と化していて、何だか可愛い。
「それじゃあ……吉岡さんは、もともとこの世界の人間だったって言う事?」
「そうよ。あの子…ブルーナは、自分が無能だから逃げていたのよ。帰って来たところで、無能の居場所なんて無いのに。」
「…………」
ーセオ君から感じる殺気が…痛いー
殺気を感じて、背中が更にゾクゾクとしているのに、何故か嬉しいと思っている私が居る。セオ君やミヤ様が、私の為に怒っていると言う事が……嬉しいと思ってしまうのは……不謹慎な事だろうか?
「ニコル、口を慎むように。魔力無しだからと、無能だと……魔力無しの者を虐げる事は……私は今後一切赦しはしない。」
「お兄様がそんな事を言ったところで、そんな事をお父様が許す筈がないわ。」
確かに、あの父がここに居る事ができていたなら、許す事はなかっただろう。
「その父上─国王陛下はここには居ないし……もう、二度と表舞台に立つ事はない。現国王陛下の病状が急転してね……。後数日分の命らしいよ。」
「──なっ!?」
ーそれは……私も知らなかったー
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
:.* ♡(°´˘`°)♡ *.:
「分かりました。」
庭園でセオ君と話しながら、2人で昼食を取り、終わってから少し経った頃、お兄様付きの侍従が私達を迎えにやって来た。
ーいよいよだー
自然と体に力が入る。
「大丈夫。翠は、必ず俺が守るから。」
「ありがとう。」
セオ君が側に居てくれる─それだけで、しっかり前を向く事ができるような気がした。
******
案内された部屋は、王太子宮内にある比較的広い応接室。そこには、既にお兄様が上座に座り、向かって右側にミヤ様、ハルさん、の順に座っていて、左側にリュウさんが座っている。私は、そのリュウさんの横に座り、セオ君は私の斜め後ろに立って控えている。
ちなみに、セオ君はフードを被っている為、顔はよく見えていない。
「ニコル殿下と聖女様がお越しになりました。」
「──入れ」
応接室の前に居た騎士に告げると、扉が開かれて、そこからお姉様と………清水渚沙が入って来た。
入室した後一度歩みを止めて、お兄様に向かって軽く一礼をした後、すぐに顔を上げて挨拶をする事もなく口を開いた。
「お兄様、ようやく会っていただけましたね。」
「…そうだね………」
「ようやく、お兄様に紹介ができますわ!この子が、私が召喚した聖女です。彼女なら、きっと立派な聖女になりますわ!」
「ニコル…その前に、もっと言うべき事があるだろう?いや、挨拶も無いとは……」
「挨拶などする必要はないでしょう?私がニコル=イーレンだと言う事は、ここに居る者達は知っているのだから。それに、私がお兄様以外の者達の名を、態々聞いて覚える必要もないでしょう?」
「相変わらずだな……ニコル殿下は………」
お姉様の失礼極まりない言葉に反応したのは、魔法使いであるリュウさんだ。
「何故、この場に呼ばれたのか…全く分かっていないし、反省をしているようにも見えないな。」
「また…貴方なのね。反省とは…何に関しての反省かしら?」
「勝手に聖女を召喚して、他国を混乱させた事だと、説明した筈だけど?そんな簡単な事も理解出来ず、反省もできなかったのか?呆れるな──」
お姉様は、“それの一体何が悪いのか”と言うよな顔でリュウさんを睨んでいて、リュウさんは本当に呆れたような顔をしたまま、お姉様の視線を受け止めている。
「リュウはただの魔法使いなだけなのに、王女である私に偉そうな口を利くのね。それこそ不敬として、私に謝るべき事ではないの?それに、私は聖女の召喚を成功させたのよ?褒められても良いのではなくて?」
確かに、聖女とは有り難い存在ではある。
あるけど──
「え…何で………何でアンタが…ここに居るの!?」
王太子と第一王女のやり取りの最中、そのやり取りを遮るように聖女である清水渚沙が、私を指差しながら叫んだ。
「アンタ……やっぱり、私の召喚に巻き込まれてたのね。で?何で、聖女でもないモブなアンタがそんな所に座ってるの?」
「ナギサは…ブルーナを知っているの?あそこに座っているのは、私の妹のブルーナよ。ほら、話しただしょう?魔力無しの無能の名ばかりの第二王女よ。」
「──吉岡さんが……第二王女?」
ニヤッ─と嗤うお姉様と、何やら眉間に皺を寄せて思案している清水さん。清水さんは異世界から来て間もないと言う事もあるけど、お姉様は生まれた時からこの世界に居て、この国の王族なのに……マナーもへったくれも無い。15年の空白がある私でさえ、お姉様が異常である事が分かる。
お兄様はずっと顔を引き攣らせているし、ミヤ様なんて……光り輝くような微笑みを湛えていて見惚れてしまいそうなのに……背中がゾクゾクとするのは………絶対に気のせいではない。リュウさんは、この場のやり取りを愉しそうに見ている。
ハルさんは──空気と化していて、何だか可愛い。
「それじゃあ……吉岡さんは、もともとこの世界の人間だったって言う事?」
「そうよ。あの子…ブルーナは、自分が無能だから逃げていたのよ。帰って来たところで、無能の居場所なんて無いのに。」
「…………」
ーセオ君から感じる殺気が…痛いー
殺気を感じて、背中が更にゾクゾクとしているのに、何故か嬉しいと思っている私が居る。セオ君やミヤ様が、私の為に怒っていると言う事が……嬉しいと思ってしまうのは……不謹慎な事だろうか?
「ニコル、口を慎むように。魔力無しだからと、無能だと……魔力無しの者を虐げる事は……私は今後一切赦しはしない。」
「お兄様がそんな事を言ったところで、そんな事をお父様が許す筈がないわ。」
確かに、あの父がここに居る事ができていたなら、許す事はなかっただろう。
「その父上─国王陛下はここには居ないし……もう、二度と表舞台に立つ事はない。現国王陛下の病状が急転してね……。後数日分の命らしいよ。」
「──なっ!?」
ーそれは……私も知らなかったー
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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