巻き込まれではなかった、その先で…

みん

文字の大きさ
上 下
12 / 51

12 現在のイーレン王国

しおりを挟む

ーネックレスは?シルヴィは?ー

ネックレスもシルヴィも、私─吉岡よしおかすいにとって、とても大切なモノだ。

「どうしよう……」


「ブルーナ、朝食は食べれ──どうした!?」
「お兄…さま……」
「どうした?顔色が…何か食べ物に問題が──」
「あの……私…が着けていたブレスレットを…知りませんか?それと…シルヴィ……私と居た魔獣は……」
「あぁ、それは大丈夫だ。その事も含めて、色々話さなければいけない事があるんだけど……」
「お兄様の時間があれば、できるだけ早く……聞きたいです。」


「今日の執務が終わってから、一緒にお茶をしながら話そう」と言って、お兄様はまた、私の居る部屋から出て行き、入れ替わるようにお兄様付きの侍女アメリーがやって来た。“侍女”と言うモノに良い印象がないから、侍女なんて要らないのに─と思ったけど、フライアのように何か嫌がらせをして来るような事はなかった為、ゆっくりと過ごす事ができた。





アメリーが用意してくれた昼食も………普通に美味しい物だった。
昼食を終えてから少しゆっくりした後、アメリーが用意してくれたゆるっとした淡い黄色のワンピースに着替えて、隣室へと移動すると、既にお茶の準備が終わっていて、お兄様が座って待っていた。




「取り敢えず、これを先に返しておくよ。」

お兄様が私の手に渡して来たのは、セオ君から貰ったネックレスだ。

「良かった……」と、そのネックレスを握り締める。
私がお兄様の腕の中で気を失った後、着替えさせてベッドに寝かせる為に女官を呼ぶと、フライアがやって来たそうだ。そこで、私がネックレスをしているのを見て、このネックレスを奪われないように、フライアが気付く前に外してお兄様が持っていてくれたらしい。
ブルーナわたしの色の石ではなかった為、誰かからの贈り物だと思ったらしい。

ーその通りですけど…ー

それと、シルヴィは、お姉様の嵌めた枷のせいで魔力を失い過ぎて意識を失ってしまったようで、今はお兄様の信頼できる魔道士に治療してもらっているそうだ。

魔道士───

「ひょっとして……今の魔道士のトップは……」
「そう。今の魔道士のトップはニコルだ。」

それはそうだろう。魔法使いであるお姉様以外、誰がなると言うのか。ただ──実は、お姉様が“魔法使い”である事は、王族と一部の側近にしか知らされていない。理由は簡単。魔法使いは稀な存在な為、色んな意味て狙われる。その力を得ようとする者、反対に、恐怖を抱き殺そうとする者。それ故に、第一王女ニコルも、魔力量が多く、強い“魔力持ち”とされているのだ。それでも、国によって魔法使いの扱いも違う。殆どの国では魔法使いの存在の有無は公表される事はないけど、唯一、隣国の魔法使いだけは、この大陸中に名を轟かせている。

隣国の魔法使い─リュウ

彼に敵う魔道士は居ないそうで、同じ魔法使いのお姉様でも、手も足も出ない程だそうだ。その魔法使いのリュウさんが、何と、今現在お兄様の後ろ盾になっているらしい。

「ブルーナは、イーレンこの国の成り立ちを知っているかい?」



イーレン王国の成り立ち──



もう何百年以上も昔、この辺りは“デライト王国”と呼ばれた王国が繁栄していた。守り神であるフェンリルを崇拝した魔力持ちの民族達。それが、守り神のフェンリルを失い、守りを失ったデライト王国は衰退の一途を辿り───その王国がなくなった後、3つの新たな王国が誕生し、そのうちの1つがイーレン王国だった。


「その通り。で、今から12、3年前の話なんだけどね……そのデライト王国の王族の末裔達が……数ヶ国を巻き込んだ事件を起こしたんだ。」


デライト王国の王族の末裔達が、デライト王国を裏切ったフェンリルを見付け、デライト王国の再興の為に捕まえようとしたが失敗して、再興が不可能であれば──と、そのフェンリルと、そのフェンリルが今護っている場所や者達に呪いを掛けようとしたらしい。
それを、隣国の魔法使いであるリュウさんが阻止し、デライト王国の末裔や、それを支持した者達を一掃したそうだ。

ただ、その時、その魔法使いのリュウさんも“魔力封じの枷”を嵌められ、危なかったそうで……そして、その時に嵌められたと言う枷と言うのが──

イーレンうちの魔塔が保管していた物だったんだ。」
「え?それは……盗まれた─と言う事…ですか?」
「そうだ。しかも、いつ盗まれたのか、いつからなかったのか…失くなっていた事にすら気付いていなかったらしい。」

“魔力封じの枷”とは、基本、魔力持ちの罪人─特に重い罪を犯した者に嵌められる物で、魔力持ちにとっては命を左右する物である為に、厳重に保管されなければならない。喩えそれが、魔力持ちが殆ど居ない我が国イーレンだったとしても。

しかも、その枷も危険過ぎると言う事で、それ自体を失くそう─と、各国が処分するようになり、隣国の魔法使いリュウが主立って動いている最中の事だったらしい。
そんな危険な物の管理ができていなかった事で、魔道士トップであるお姉様は、リュウさんからかなりきつく咎められたそうだ。


「それで……何故、その魔法使いのリュウさんが、お兄様の後ろ盾に?」
「それは──」



『そんなで煩い魔法使いね。もし私が次期国王となれば、お前なんて排除してあげるから!』

と、宣ったそうだ。









❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*˘︶˘人)♡*。+







しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

王太子殿下から逃げようとしたら、もふもふ誘拐罪で逮捕されて軟禁されました!!

屋月 トム伽
恋愛
ルティナス王国の王太子殿下ヴォルフラム・ルティナス王子。銀髪に、王族には珍しい緋色の瞳を持つ彼は、容姿端麗、魔法も使える誰もが結婚したいと思える殿下。 そのヴォルフラム殿下の婚約者は、聖女と決まっていた。そして、聖女であったセリア・ブランディア伯爵令嬢が、婚約者と決められた。 それなのに、数ヶ月前から、セリアの聖女の力が不安定になっていった。そして、妹のルチアに聖女の力が顕現し始めた。 その頃から、ヴォルフラム殿下がルチアに近づき始めた。そんなある日、セリアはルチアにバルコニーから突き落とされた。 突き落とされて目覚めた時には、セリアの身体に小さな狼がいた。毛並みの良さから、逃走資金に銀色の毛を売ろうと考えていると、ヴォルフラム殿下に見つかってしまい、もふもふ誘拐罪で捕まってしまった。 その時から、ヴォルフラム殿下の離宮に軟禁されて、もふもふ誘拐罪の償いとして、聖獣様のお世話をすることになるが……。

【完結】溺愛してくれる夫と離婚なんてしたくない!〜離婚を仕向けるために義父様の配下が私に呪いをかけてきたようですが、治癒魔法で解呪します〜

よどら文鳥
恋愛
 公爵家に嫁いだものの、なかなか子供が授からないミリア。  王族にとって子孫ができないことは死活問題だった。  そのため、旦那であるベイルハルトの両親からは離婚するよう圧がかかる。  ミリアもベイルハルトも離れ離れになりたくはなかった。  ミリアは治癒魔法の会得を試みて子供が授かる身体になることを決意した。 だが、治癒魔法は禁呪とも言われ、会得する前に死んでしまうことがほとんどだ。  それでもミリアはベイルハルトとずっと一緒にいたいがために治癒魔法を会得することに。  一方、ミリアに子供が授からないように呪いをかけた魔導師と、その黒幕はミリアが治癒魔法を会得しようとしていることを知って……? ※はじめてのショートショート投稿で、全7話完結です。

侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!

友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」 婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。 そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。 「君はバカか?」 あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。 ってちょっと待って。 いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!? ⭐︎⭐︎⭐︎ 「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」 貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。 あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。 「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」 「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」 と、声を張り上げたのです。 「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」 周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。 「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」 え? どういうこと? 二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。 彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。 とそんな濡れ衣を着せられたあたし。 漂う黒い陰湿な気配。 そんな黒いもやが見え。 ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。 「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」 あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。 背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。 ほんと、この先どうなっちゃうの?

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

義姉でも妻になれますか? 第一王子の婚約者として育てられたのに、候補から外されました

甘い秋空
恋愛
第一王子の婚約者として育てられ、同級生の第二王子のお義姉様だったのに、候補から外されました! え? 私、今度は第二王子の義妹ちゃんになったのですか! ひと風呂浴びてスッキリしたら…… (全4巻で完結します。サービスショットがあるため、R15にさせていただきました。)

処理中です...