巻き込まれではなかった、その先で…

みん

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12 現在のイーレン王国

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ーネックレスは?シルヴィは?ー

ネックレスもシルヴィも、私─吉岡よしおかすいにとって、とても大切なモノだ。

「どうしよう……」


「ブルーナ、朝食は食べれ──どうした!?」
「お兄…さま……」
「どうした?顔色が…何か食べ物に問題が──」
「あの……私…が着けていたブレスレットを…知りませんか?それと…シルヴィ……私と居た魔獣は……」
「あぁ、それは大丈夫だ。その事も含めて、色々話さなければいけない事があるんだけど……」
「お兄様の時間があれば、できるだけ早く……聞きたいです。」


「今日の執務が終わってから、一緒にお茶をしながら話そう」と言って、お兄様はまた、私の居る部屋から出て行き、入れ替わるようにお兄様付きの侍女アメリーがやって来た。“侍女”と言うモノに良い印象がないから、侍女なんて要らないのに─と思ったけど、フライアのように何か嫌がらせをして来るような事はなかった為、ゆっくりと過ごす事ができた。





アメリーが用意してくれた昼食も………普通に美味しい物だった。
昼食を終えてから少しゆっくりした後、アメリーが用意してくれたゆるっとした淡い黄色のワンピースに着替えて、隣室へと移動すると、既にお茶の準備が終わっていて、お兄様が座って待っていた。




「取り敢えず、これを先に返しておくよ。」

お兄様が私の手に渡して来たのは、セオ君から貰ったネックレスだ。

「良かった……」と、そのネックレスを握り締める。
私がお兄様の腕の中で気を失った後、着替えさせてベッドに寝かせる為に女官を呼ぶと、フライアがやって来たそうだ。そこで、私がネックレスをしているのを見て、このネックレスを奪われないように、フライアが気付く前に外してお兄様が持っていてくれたらしい。
ブルーナわたしの色の石ではなかった為、誰かからの贈り物だと思ったらしい。

ーその通りですけど…ー

それと、シルヴィは、お姉様の嵌めた枷のせいで魔力を失い過ぎて意識を失ってしまったようで、今はお兄様の信頼できる魔道士に治療してもらっているそうだ。

魔道士───

「ひょっとして……今の魔道士のトップは……」
「そう。今の魔道士のトップはニコルだ。」

それはそうだろう。魔法使いであるお姉様以外、誰がなると言うのか。ただ──実は、お姉様が“魔法使い”である事は、王族と一部の側近にしか知らされていない。理由は簡単。魔法使いは稀な存在な為、色んな意味て狙われる。その力を得ようとする者、反対に、恐怖を抱き殺そうとする者。それ故に、第一王女ニコルも、魔力量が多く、強い“魔力持ち”とされているのだ。それでも、国によって魔法使いの扱いも違う。殆どの国では魔法使いの存在の有無は公表される事はないけど、唯一、隣国の魔法使いだけは、この大陸中に名を轟かせている。

隣国の魔法使い─リュウ

彼に敵う魔道士は居ないそうで、同じ魔法使いのお姉様でも、手も足も出ない程だそうだ。その魔法使いのリュウさんが、何と、今現在お兄様の後ろ盾になっているらしい。

「ブルーナは、イーレンこの国の成り立ちを知っているかい?」



イーレン王国の成り立ち──



もう何百年以上も昔、この辺りは“デライト王国”と呼ばれた王国が繁栄していた。守り神であるフェンリルを崇拝した魔力持ちの民族達。それが、守り神のフェンリルを失い、守りを失ったデライト王国は衰退の一途を辿り───その王国がなくなった後、3つの新たな王国が誕生し、そのうちの1つがイーレン王国だった。


「その通り。で、今から12、3年前の話なんだけどね……そのデライト王国の王族の末裔達が……数ヶ国を巻き込んだ事件を起こしたんだ。」


デライト王国の王族の末裔達が、デライト王国を裏切ったフェンリルを見付け、デライト王国の再興の為に捕まえようとしたが失敗して、再興が不可能であれば──と、そのフェンリルと、そのフェンリルが今護っている場所や者達に呪いを掛けようとしたらしい。
それを、隣国の魔法使いであるリュウさんが阻止し、デライト王国の末裔や、それを支持した者達を一掃したそうだ。

ただ、その時、その魔法使いのリュウさんも“魔力封じの枷”を嵌められ、危なかったそうで……そして、その時に嵌められたと言う枷と言うのが──

イーレンうちの魔塔が保管していた物だったんだ。」
「え?それは……盗まれた─と言う事…ですか?」
「そうだ。しかも、いつ盗まれたのか、いつからなかったのか…失くなっていた事にすら気付いていなかったらしい。」

“魔力封じの枷”とは、基本、魔力持ちの罪人─特に重い罪を犯した者に嵌められる物で、魔力持ちにとっては命を左右する物である為に、厳重に保管されなければならない。喩えそれが、魔力持ちが殆ど居ない我が国イーレンだったとしても。

しかも、その枷も危険過ぎると言う事で、それ自体を失くそう─と、各国が処分するようになり、隣国の魔法使いリュウが主立って動いている最中の事だったらしい。
そんな危険な物の管理ができていなかった事で、魔道士トップであるお姉様は、リュウさんからかなりきつく咎められたそうだ。


「それで……何故、その魔法使いのリュウさんが、お兄様の後ろ盾に?」
「それは──」



『そんなで煩い魔法使いね。もし私が次期国王となれば、お前なんて排除してあげるから!』

と、宣ったそうだ。









❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*˘︶˘人)♡*。+







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