巻き込まれではなかった、その先で…

みん

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8 懐かしい光

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セオ君が帰ってから2ヶ月─


ー寂しくなるなぁー

何て思っていたけど………仕事が忙しくなり、それどころではなかった。
セオ君が帰ってから1週間後に、無駄に広い裏庭が荒らされてベンチが壊されたり、それなりの大きな木が切り倒されたりしたのだ。それは、たった一晩での出来事だった。
それから警察が来たりマスコミが押し寄せたり、生徒の授業の変更やら────兎に角

「疲れた………」

まだ元通りにはなっていないけど、2ヶ月程してようやく落ち着いて来たところだ。
でも、そうして時間に余裕ができてしまうと、ついついセオ君の事を考えてしまうのだ。

ーあれは…夢だった?ー

と思える程、私はセオ君の事を知らなかった。どこの国に住んでいるかさえ……知らないのだ。
知ってる事と言えば、美男美女な両親と、可愛い妹が居る───ぐらいだ。
いつもはハキハキしている小南さんでさえ、セオ君の事を訊いても『ごめんね?私からは…詳しく言えないの』と、何も教えてくれなかった。



『でもね、これだけは信じてあげて…セオ君は、翠ちゃんの事、本当に好きになってたからね。このネックレスに青色の石が付いてるでしょう?これ、セオ君の国では……自分の好きな人に、自分の色のモノを贈るのよ。“この人は、私のモノです”って意味を込めてね。』

“この人は、私のモノです”──って……恥ずかしい!

でも───

このネックレスだけが、セオ君が夢ではなかった事の唯一のモノなんだ。

「会いたい…なぁ………」
「やっぱり…もう捨てられたんだ?」

ー何で、いつもでやって来るかなぁ?ー

「捨てられてないから。」

立入禁止となっている裏庭のベンチに座っている私の目の前に、清水渚沙がやって来た。

「“立入禁止”の看板…見えなかった?」
「もう綺麗になってるし、アンタだって入って来てるんだから、問題無いでしょう?」
「はぁ───。清水さん、何か勘違いしてない?私は、この裏庭の点検をしに来てるの。学生は立入禁止よ……出て行きなさい。」
「なっ──本当に、ムカつく!偉そうに!」

偉そうに──ではなくて、事務員として学生に注意をしてるだけなんだけどね。ずっと受け流してたけど……そろそろ、“素行が悪い”と教授に報告しようかな?

「やっと見付けたー」
『バフッ──』
「ん?」

不穏な空気に包まれそうになった時、それとは真反対な明るい声が響いた。

「え?小南さん──と、シルヴィ!?」

何故か、小南事務局長の奥さんが、シルヴィを連れてやって来た。ふと、手に持っていたスマホを見ると、既に終業時間が過ぎていた。

「小南さんどうしたんですか?何で…シルヴィが?」

シルヴィは、家のいつもの部屋でお留守番をさせていた筈だ。玄関の鍵は……しっかり掛けた。

「それが、私にもよく分からないんだけど…芽流めぐるさんと待ち合わせしてたから、家を出たら……シルヴィが居たの。それで、取り敢えず大学ここに来たら、芽流さんにも翠ちゃんにも会えるからと思って連れて来たの。」

『───ワフッ……』
「……シルヴィ?」

何故か、シルヴィは私ではなく、清水さんを見つめている。

「何よ?飼い主が生意気で根暗なら、その犬も……くすんだ色になるんだね?お似合いで……ウケる…」

何がどうなったらのか……是非詳しく聞いてみたいところだけど、どうやらシルヴィの様子がいつもと違うし、小南さんが──清水さんに怒り心頭で、今にでもキレそうだ。

「小南さん、私は気にしていないので、一緒に事務局長の所に───」

“行きましょう”───

と言う言葉は、私の口からは出て来なかった。

ー何!?ー

何かが足元に絡みつくような感覚が這い上がって来た。それから、体中がゾワゾワとする。

ー体が……動かない!?ー

「翠ちゃん?」

急に黙り込んで動かなくなった私を心配するように、小南さんが私に近付いて来る。

ー駄目だ……来ちゃ……駄目だ…ー

理由は分からない。ただ、今私に近付いたら駄目だと……頭の中で警告音のような音が鳴っている。

「───小南…さん……私から…離れて下さい!」
「え?」

何とか振り絞って声をあげたのと同時に、その声に驚いて立ち止まった小南さん。それと同時に──

私と清水さんの足下が……光り出した。

ー何で!?ー

私は、を知っている。

「ちょっ……何よ、これ!何で……地面がこんなに光ってるのよ!?」

慌てている清水さんの足下に顕れたに、ヒュッ─と息を呑んだ。

ーどうして!?ー

戸惑う私の足下にも、は顕れた。

『バフッ!』
「な…シル……ヴィ!?」

シルヴィが私の足元に寄り添うように座っている。「きゃあ──っ」と言う声を最後に、清水渚沙の姿と光がそこから消えた。

次は……私だ───

「翠ちゃん!セオ君から貰ったネックレスは、絶対に…肌身離さず持っててね!絶対!失くしたり、誰かにあげたりしないでね!きっと、護ってくれるから!」

小南さんが必死に叫んでいる声が、どんどん小さくなって────


そこで光が一気に弾けて、視界が真っ白になった。












❋エールを頂き、ありがとうございます❋
₍₍ ε(∗˙ ꒵ ˙∗)з ₎₎



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