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第四章ー未来へー

見ているだけで十分です

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手を引かれてやって来たのは王城の部屋─ではなく、学園から徒歩で20分程の距離にある、貴族としては小さいけど、平民としては立派な邸だった。

門番に「おかえりなさいませ」と言われ、門をくぐると、一直線に邸まで続く道があり、その道を挟んで左右に芝生が広がっている。

邸に辿り着くと、家令らしき男性と、女性が出迎えてくれていた。

「挨拶はまた後で。バレン、俺の部屋にお茶の用意を頼む。」
「畏まりました。」

オードリックさんは、歩みを止める事なく指示をすると、私の手をひいたまま邸の中へと入って行った。





バレンさんがお茶を淹れてくれた後、部屋に2人きりとなってしまった。しかも、ソファーに横並びで、その上……距離が近い。足と足が触れてない?あれ?ひょっとして、100年前の男女の距離の観念と今の観念は…違うのかなぁ?この距離が普通だったりするのかなぁ?

「ナディア……」
「は───っ!?」

名前を呼ばれて振り向くと、透かさずキスをされた。
それからギュッ─と、また抱きしめられた。

「やっとナディアに遠慮なく…触れられる。」
「…い…今までも…遠慮なんてありましたか?これからも、遠慮しながらが……助かるんですけど……」
「嫌だ───」

ー“嫌だ”って…ちょっと可愛いなぁー

「ようやく、婚約できたと思ったら…1ヶ月も会えないとは思わなかった。」

はい。私達は、1ヶ月前、無事に?ついに?婚約した。私がオードリックさんに落ちてから1年半。どうして1年半も掛かったかと言うと……周りに反対されたから─ではなく、私の心─気持ちが追い付く迄婚約は待って欲しいとお願いしたから。
寧ろ、周りからは「早く婚約しろ」「私達の安寧の為に、早く婚約…いや、飛ばして結婚しろ」と迄言われた。オードリックさんの両親からも、両手を上げて喜ばれた。

ー一体、オードリックさんは何をしたの?ー

とは、未だに誰にも訊けていない。

兎に角、何とか気持ちも決まり、婚約を結んだのは良かったけど、それが丁度、2年に一度の魔道士入門試験の時期と重なり、その上学園の卒業、入学が控えているやら、王太子の視察などが重なり……1ヶ月の間、会うどころか、すれ違う事も遠目に見る事もなかったのだ。

未だに抱きしめられていて、ドキドキして落ち着かないけど、安心感はある。私もオードリックさんの背中に手を回して、ポンポンと背中を叩いてから「私も会いたかったです。」と言うと、オードリックさんは、やっぱり少し呻いた後、抱く腕に更に力を入れた。







「え?今…何て?」
「今日から、この邸が、俺とナディアの家だ。この部屋は俺の部屋で、この部屋の隣がナディアの部屋になる。荷物も既に運び終わってるから。」
「えっ!?私、全く聞いてませんけど!?」

ーあれ?今朝も、王城の女官も何も言ってなかったよね?ー

「驚かそうと思って、ナディアには言ってなかったからな。」

今の時代の貴族は、サプライズや隠し事が好きなんだろうか?ルシエント家の使用人達もそうだったよね。

あまりにも嬉しそうな顔をしているから、文句の一つも……言えないよね………

「驚きましたけど、これからは前以て教えてくれると嬉しいです。2人の事なので……できれば、2人で一緒に考えたりしたいので……」

「くっ……久し振りのデレ連発は…苦しいな!」
「はい?今何て────」
「少しだけだから、今は黙って流されてくれ。」

そう囁かれた後、啄む様なキスを繰り返された。







オードリックさんと婚約を結んで以後、オードリックさんからの攻められ具合が……半端無い。恥ずかしいを通り過ぎて、無の境地を開きかけている。とても心臓に悪い。やっぱり、恋愛や溺愛と言うのは、傍から見るのが……楽しいかもしれない。

ーオードリックさんの事は…好き…だけど…ー

「溺愛は……要らないけど…勘弁して欲しいけど…好きだけど……」
「誰が誰を好きなんだ?」
「ひやぁーっ!?なっ!?」
「誰が、誰を?」

軽く私を抱きしめながら、キラキラ笑顔で首を傾げているオードリックさんの色気が───ヤバ過ぎる。

「き…そんな事…訊かなくても分かりますよね!?」
「んー…分からないかなぁ……」
「ゔー………」

ー分かってるクセに!ー

「オードリックさんは、意地悪ですよね!?」
「そんな事──」

背伸びをして、初めての私からのキスをする。

「私が、オードリックさんの事を──です!」

ビシッ──と固まったオードリックさんの腕の中からすり抜けて、部屋を後にした。


ーやってしまったー

部屋を出て廊下を進み、辿り着いたのはテラスだった。
自分から……オードリックさんに……
恥ずかしい!けど……やられっ放しと言うのも悔しいと言うか……私も、逞しくなったよね……。

アドリーヌだった頃は、色んな事から逃げた。守られていた事も愛されていた事も気付かず、逃げた結果がアレだった。
今世では、守られている事も、愛されている事にもちゃんと気付けた。それは、リゼットやダレルさん………オードリックさんのお陰だろう。

ーオードリックさんは、意地悪でもあるけどー

恋愛は、見ているだけで十分だ─と思っていたけど、オードリックさんとなら……恋愛をしても……悪い気はしない。これから未来さきも、オードリックさんと一緒に居られたらなぁ─と思っている。







*オードリック視点*


パタン──と、部屋の扉が閉まる音が響いた。

「──────え?」

今、ナディアから……

「キスをされた──だと!?」

あまりにも突然で一瞬で、目を閉じる暇もなかった。
キュッと俺を軽く睨んでから、背伸びして目を閉じて──

「───ゔっ…可愛過ぎる!可愛いが過ぎるだろう!」

恋愛事なんて、慣れている─そう思っていた。計算高い女性だったとしても、流されているフリをして相手にできていた─のに。
どうも、ナディア相手には、それらは適応されないようだ。特に、最近では“デレ”が増えて来て、色んな意味で大変な事が多くなってきた。

ーうん。結婚の日取りをさっさと決めてしまおうー



それから逃げたナディアを捕まえて、少しをしてから、少し体の力が抜けているナディアに色んな言質を取りながら、最短での結婚の日取りを決めた。

「やっぱり…恋愛は見ているだけで…十分だったかも……」
「俺は、見てるいだけでは満足できないからな?」

ニッコリ笑えば、ナディアは顔を真っ赤にさせた。







❋これにて、本編完結となります。最後迄読んでいただき、ありがとうございました❋
(*ˊᗜˋ*)ノ°•·.*ꕤ*ᵗʱᵃᵑᵏᵧₒᵤ ꕤ*.゚

❋また、話を思いついたり、リクエストがあれば、投稿するかもしれません❋



↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓








「結局、私の講師期間は……短かったなぁ…」
「それは、仕方無いんじゃない?あの女に、まんまとやすやすと、やられたから。」

オスニエル=ルシエントが呟けば、リゼット=ディシリスが遠慮なく口撃する。

「リゼットは相変わらず厳しいね……」
「慰めの言葉が欲しかった?」
「いや─そんなハッキリ言うリゼットが好きだからね。」

と、ルシエントにとっては、容姿や肩書きではなく、自分自身を見て、ハッキリと物言うリゼットが大好きなのである。
この2人も、ようやく婚約を結んだばかり。

「そう言えば、ついに、オードリックとナディアが同棲を始めたらしい。これで、オードリックの威嚇も……落ち着けば良いけど。」

「それね……本当に、モンテルアーノ様の威嚇は半端ないよね。知らぬはナディアだけだもんね。」

オードリック=モンテルアーノが放つ威嚇。唯一知らないのはナディアだけ。

「ま、ナディアが幸せなら良いけどね。」
「それもそうだけど──リゼットは?君も、いつでも私の邸に来てもらっても良いからね?」
「ありがとう。オスニエルの顔のがマシになったら考えるわね。」

と、リゼットは今日もオスニエルに釘を刺した。






❋“ルシエントは?”と感想を頂いたので、少しだけですが、追記しました。ありがとうございます❋
((´艸`*))






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感想 37

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みんなの感想(37件)

towaka
2023.05.08 towaka
ネタバレ含む
みん
2023.05.08 みん

towaka様

ありがとうございます。

囲われなかったヒロインも居ますが、ついつい、外堀埋めて囲ってしまうんですよね…
(๑¯ω¯๑󾭜)アレェ…

某リスは自覚有りのチートですが、ナディアは無自覚なチートです(笑)
( *^艸^)

解除
芹香
2023.05.08 芹香
ネタバレ含む
みん
2023.05.08 みん

芹香様

ありがとうございます。

もともと、ルシエントは前半チョイ役の設定でした(笑)
(*ノ>ᴗ<)

結婚後のお話も、考えてみます。気長にお待ちいただけると幸いです。
_φ(゚▽゚*)♪

最後迄読んでいただき、ありがとうございました。
感想も、いつも励みになっていました。
‪感謝Շ”ਭ ପ(꒪ˊ꒳ˋ꒪)ଓ。ෆ。

解除
えすく
2023.05.07 えすく
ネタバレ含む
みん
2023.05.08 みん

えすく様

ありがとうございます。

確かに、クロが一番被害?を被っているかもしれません(笑)
( *^艸^)

大家は、もともと前半だけのチョイ役……の設定でした(笑)
(*ノ>ᴗ<)

最後迄、読んでいただき、ありがとうございました。
感想も、いつも励みになっていました。
‪感謝Շ”ਭ ପ(꒪ˊ꒳ˋ꒪)ଓ。ෆ。

解除

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