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第四章ー未来へー
王太子宮
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圧死させられかけた翌日─
王太子殿下に呼ばれて、王太子宮内にある王太子の執務室へとやって来た。
そして、今、この部屋には王太子殿下と、モンテルアーノ様と、ダレル様と私が居る。
「王太子宮に呼び出して申し訳ない。本来なら、本殿で行う事なんだが……何と言うか……王族としては、少し扱いが難しい事が絡んでいるのと……信じ難いのもあってな……。」
心なしか、王太子殿下は少しゲッソリとしている。
それも、仕方無い事だろう。昨日起きた事には関わってはいないけど、また、王族と聖女が絡んだトラブルがあり……そのうちの3人が前世の記憶持ちで、100年前の当事者達だったのだ。
王族としては、隠したかった事実や、抹消させた事実もあっただろう。現に、今世では“ガレイシー侯爵”と言う名家は記録すら残っていない。
聖女─シェイラ=ペイトリンは、昨日ダレルさんに無効化の魔法を掛けられた後拘束され、そのまま王城の地下牢に連行され、色々取り調べを受けたそうだ。シェイラは、特に騒いだりはせず、淡々と質問にも答えたそうだが、その語った内容が信じられない内容だったのだ。
そりゃそうだ…。自分は100年前の聖女ローゼの生まれ変わりだ─とか、100年前に自分のモノにならなかったダレルさんを手に入れたかったから─とか、100年前に思い通りにならなかった女に似たナディア先生が気に食わなかったから─なんて……
一体、どこの誰が信じると言うのか。“頭のイカレタ囚人”扱いをされ、精神病として始末されるのがオチだろう。
それでも、記録に残っていない筈の事を口にしていた為、今回の事は、“一旦王預かり”となったそうだ。とは言っても、国王陛下自ら動く事は難しい為、王太子殿下が取り仕切る事になり、早速、私達が呼び出されたと言う事だった。それも、公にはできない為、こうして王族本殿より奥に位置する、王太子の居城である王太子宮に呼び出されたのだ。
こんな所、平民が来る所でもないし、アドリーヌだった頃も来たことは勿論の事、目にした事もなかった。
「単刀直入に尋ねるが……イカレ女──ペイトリン嬢の言っている事は……本当なのか?」
ダレルさんと私は視線を合わせた後、ダレルさんが口を開いた。
「本当です。ただ、ペイトリン嬢は気付いてませんけど、ナディアも……100年前の記憶を持ってます。」
「は?え?ナディア殿も?」
そう。シェイラは、“ナディアがアドリーヌに似ているから”始末しようとしただけで、私がそのアドリーヌの生まれ変わりで、記憶を持っていると言う事には気付いていないのだ。
あの時、ダレルさんが思い切り『アディー』って叫んでいたけど、彼女の耳には入ってなかったんだろう。
「えー…いや………まさか……………」
「はい、その“まさか”です。ナディアは………100年前に殺された……私が殺めたスペイシー家の令嬢でした。」
「マジか!!!!」
そう叫んだ後、王太子殿下はガクッ─と机の上に項垂れるように突っ伏した。
「証拠は?と言われると、ありませんけど……100年前の第二王子の話ならいくらでも話せますよ?そうですねぇ……本人は知らなかったようですが、彼には子種が無かったとか───」
ー子種が無かった?ー
「それ…は………はぁ……どうやら、本当の事のようだな。」
突っ伏していた顔を上げて驚いている王太子殿下に、ダレルさんはニッコリ微笑んでいる。
第二王子は、子供ができなかった?
それじゃあ、第二王子の父親であった国王陛下も、ローゼのお腹の子が第二王子の子では無い事を分かった上で、2人の婚姻を認めた?2人を……切り捨てる為に。否。ジョアンヌ様─公爵家の意向だろう。
「今回の事は、公にはできないが、処分はしっかり行う。先ずは、イカレ女の魔力を封じた上で、既に“聖女”の称号は剥奪した。勿論、学園も退学処分だ。暫くの間、王城地下牢に収監した後、辺境地での療養生活扱いになる。」
喩え聖女であっても、今世ではアッサリ処罰する。王族は、余程100年前に痛い目に…遭ったのだろう。
「私達から、1つだけお願いがあります。」
「何だ?」
「ナディアが記憶持ちの生まれ変わりと言う事を、ペイトリン嬢には言わないでもらいたい。魔力を封じたと言うなら何も無いと思いますけど…あの女が、それを知ったら……何をしでかすか分かりませんから。あの女は私─リオネル=ガレイシーに執着し過ぎてましたから。」
「──分かった。あのイカレ女には言わないと約束する。もともと、こちら側の話をイカレ女に伝えるつもりもなかったからね。」
ニコニコ笑い合っている王太子殿下とダレルさん。
“イカレ女”とか“あの女”とか…仮にも“聖女”だったのに……
ー何とも素直過ぎる……2人だー
その笑顔が少しだけ恐ろしく見え、私は知らず知らずのうちに、隣に座っていたモンテルアーノ様の服を握り締めていた。
❋夜にも、もう1話投稿します。予定では、GW中に終わらせる予定が長くなってしまいました。❋
Σ(´□`;)
❋感想やエールを頂き、ありがとうございます❋
(*ˊᗜˋ*)/ᵗᑋᵃᐢᵏ ᵞᵒᵘ*♪
王太子殿下に呼ばれて、王太子宮内にある王太子の執務室へとやって来た。
そして、今、この部屋には王太子殿下と、モンテルアーノ様と、ダレル様と私が居る。
「王太子宮に呼び出して申し訳ない。本来なら、本殿で行う事なんだが……何と言うか……王族としては、少し扱いが難しい事が絡んでいるのと……信じ難いのもあってな……。」
心なしか、王太子殿下は少しゲッソリとしている。
それも、仕方無い事だろう。昨日起きた事には関わってはいないけど、また、王族と聖女が絡んだトラブルがあり……そのうちの3人が前世の記憶持ちで、100年前の当事者達だったのだ。
王族としては、隠したかった事実や、抹消させた事実もあっただろう。現に、今世では“ガレイシー侯爵”と言う名家は記録すら残っていない。
聖女─シェイラ=ペイトリンは、昨日ダレルさんに無効化の魔法を掛けられた後拘束され、そのまま王城の地下牢に連行され、色々取り調べを受けたそうだ。シェイラは、特に騒いだりはせず、淡々と質問にも答えたそうだが、その語った内容が信じられない内容だったのだ。
そりゃそうだ…。自分は100年前の聖女ローゼの生まれ変わりだ─とか、100年前に自分のモノにならなかったダレルさんを手に入れたかったから─とか、100年前に思い通りにならなかった女に似たナディア先生が気に食わなかったから─なんて……
一体、どこの誰が信じると言うのか。“頭のイカレタ囚人”扱いをされ、精神病として始末されるのがオチだろう。
それでも、記録に残っていない筈の事を口にしていた為、今回の事は、“一旦王預かり”となったそうだ。とは言っても、国王陛下自ら動く事は難しい為、王太子殿下が取り仕切る事になり、早速、私達が呼び出されたと言う事だった。それも、公にはできない為、こうして王族本殿より奥に位置する、王太子の居城である王太子宮に呼び出されたのだ。
こんな所、平民が来る所でもないし、アドリーヌだった頃も来たことは勿論の事、目にした事もなかった。
「単刀直入に尋ねるが……イカレ女──ペイトリン嬢の言っている事は……本当なのか?」
ダレルさんと私は視線を合わせた後、ダレルさんが口を開いた。
「本当です。ただ、ペイトリン嬢は気付いてませんけど、ナディアも……100年前の記憶を持ってます。」
「は?え?ナディア殿も?」
そう。シェイラは、“ナディアがアドリーヌに似ているから”始末しようとしただけで、私がそのアドリーヌの生まれ変わりで、記憶を持っていると言う事には気付いていないのだ。
あの時、ダレルさんが思い切り『アディー』って叫んでいたけど、彼女の耳には入ってなかったんだろう。
「えー…いや………まさか……………」
「はい、その“まさか”です。ナディアは………100年前に殺された……私が殺めたスペイシー家の令嬢でした。」
「マジか!!!!」
そう叫んだ後、王太子殿下はガクッ─と机の上に項垂れるように突っ伏した。
「証拠は?と言われると、ありませんけど……100年前の第二王子の話ならいくらでも話せますよ?そうですねぇ……本人は知らなかったようですが、彼には子種が無かったとか───」
ー子種が無かった?ー
「それ…は………はぁ……どうやら、本当の事のようだな。」
突っ伏していた顔を上げて驚いている王太子殿下に、ダレルさんはニッコリ微笑んでいる。
第二王子は、子供ができなかった?
それじゃあ、第二王子の父親であった国王陛下も、ローゼのお腹の子が第二王子の子では無い事を分かった上で、2人の婚姻を認めた?2人を……切り捨てる為に。否。ジョアンヌ様─公爵家の意向だろう。
「今回の事は、公にはできないが、処分はしっかり行う。先ずは、イカレ女の魔力を封じた上で、既に“聖女”の称号は剥奪した。勿論、学園も退学処分だ。暫くの間、王城地下牢に収監した後、辺境地での療養生活扱いになる。」
喩え聖女であっても、今世ではアッサリ処罰する。王族は、余程100年前に痛い目に…遭ったのだろう。
「私達から、1つだけお願いがあります。」
「何だ?」
「ナディアが記憶持ちの生まれ変わりと言う事を、ペイトリン嬢には言わないでもらいたい。魔力を封じたと言うなら何も無いと思いますけど…あの女が、それを知ったら……何をしでかすか分かりませんから。あの女は私─リオネル=ガレイシーに執着し過ぎてましたから。」
「──分かった。あのイカレ女には言わないと約束する。もともと、こちら側の話をイカレ女に伝えるつもりもなかったからね。」
ニコニコ笑い合っている王太子殿下とダレルさん。
“イカレ女”とか“あの女”とか…仮にも“聖女”だったのに……
ー何とも素直過ぎる……2人だー
その笑顔が少しだけ恐ろしく見え、私は知らず知らずのうちに、隣に座っていたモンテルアーノ様の服を握り締めていた。
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