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第四章ー未来へー
影さん
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「理由は簡単。ナディアには“影”を付けていたからだ。」
「え?私に?聖女のシェイラに─ではなく?」
ーあれ?そんな事、聞いてたっけ?ー
「俺が個人的に…付けていたんだ。」
「え?個人……的に?」
「黙っていてすまない。ナディアを守りたかったから。俺がずっと側に居て守れたら一番良いんだけど、そうはいかないから……。」
「───っっ!!」
ーそんな風に言われたら、怒るに怒れないよね!?ー
「謝らないで下さい……少し……文句はありますけど、今回助かったのは、その影のお陰ですから。影の方も、ありがとうございました。」
どこに居るのか、この部屋内に居るのかどうかも分からないけど、取り敢えずお礼を言うと、一瞬だけユラッと気配が揺れた。
どうやら、私に付いている影は、自分の気配をコントロールして私に反応してくれているようだ。
「なんだか、少し…楽しい“影さん”ですね?」
「影さん……くくっ……良かったな?クロ。」
本当に、今世では色々な人達に守られている。
でも……私を一番守ってくれていたのは──
「後からダレル殿が来る。」
その言葉に、体がビクッと反応する。
「色々…訊きたい事や確認したい事があるから。ただ……もし、ナディアが…無理なら………」
「……いえ、大丈夫です。それに……私も、ダレルさんには色々訊きたい事があるので……。」
「なら、俺は外そうか?2人の方が良いなら……」
それに対して、私はふるふると首を振った。
「あの…できれば……モンテルアーノ様には……私の側に…居て欲しい……です。」
「─────ゔっ」
「えっ!?」
何故か、モンテルアーノ様が呻きながら両手で顔を覆って項垂れた。
「あの、すみません!無理なら良いんで──」
「──デレたナディアが可愛過ぎる…………」
「──はい?何て言いました?」
ーえ?大丈夫?怒ってる?呆れてる?ー
項垂れたままだから顔は見えないけど、肩が震えているのは分かる。怒りで震えているとか?なんて焦っていると、何となく影さんが笑って?いる感じがした。
「んんっ──ナディアがそう言うなら、側に居るから。」
顔を上げたモンテルアーノ様は、いつもより甘い?雰囲気の笑顔をしていた。
ーイケメンの笑顔は、心臓に悪いのねー
何て思ってしまう辺り……やっぱり私は、落ちかけているみたいだ。でも、その前に──
コンコン
「──ダレルです。入っても……良いかな?」
丁度そのタイミングで、ダレルさんがやって来た。
ー今世では……逃げないー
ギュッと握る手に力を入れた。
******
この部屋には、モンテルアーノ様とダレルさんと私と、影さんの4人だけで、モンテルアーノ様と私は3人掛けのソファーに横並びで座り、机を挟んだ向かい側の3人掛けのソファーにダレルさんが座っている。勿論、影さんは気配を消してどこかに居る─と思う。
先ずは、今回の事についての確認から始まった。
どうやら、学園内で起こった生徒による魔法の使用によるトラブルも仕組まれたもので、魔法を発動させた生徒に、誰かの魔力の痕跡があり、意図的に魔力が暴走するように魔法が掛けられていたそうだ。
そうすれば、ダレルさんと私が離れる事になり、私が1人になったところで、シェイラが怪我をした─と部屋から連れ出し気を失わせて、私を始末しようとしたらしい。
シェイラ本人からも聞かされたが、今回の事は、私が気に入らなくて、私を排除したかったから─故の行動だった。
それは、捕らえられた男2人からも確認が取れているそうだ。
『あの女─ナディア先生とやらを、“汚してから排除して欲しい”と依頼されたんだ。』
と、アッサリ吐いたそうだ。
“汚して”
今更ながらに、その怖ろしさに手が震える。あの時、モンテルアーノ様が間に合わなければ……影を付けてくれていなかったら……
その震える手を見ていると、その手にモンテルアーノ様の手が添えられた。チラッと見た先には、やっぱり優しい目をしたモンテルアーノ様が居る。
そんなモンテルアーノ様を見ると、心が落ち着いた。
そんな私達のやりとりを、ダレルさんは安心したような顔で見ている。その目は……とても穏やかだ。
「─それで……訊きたいのだが………何故、あの女─シェイラ=ペイトリンは、ダレル殿に執着しているんだ?それと……“リオネル”や“アディー”とは…誰の事だ?」
「それについては……私から説明します。ただ……できれば……ここだけの話にしてもらいたい。」
「──確約はできないが……可能な限りは努力する。」
ダレルさんが私へと視線を向け、それに答えるように私が頷くと、目を瞑って軽く息を吐いた。それから、ダレルさんが部屋全体に結界を張った後、ポツリポツリ─と話しだした。
❋クロは、“置き場”で書いたクロです。本編初登場でした(笑)❋
❋可能な限り、GW中は2話投稿でいきたいと思っています❋
❋感想やエールを頂き、ありがとうございます❋
(*ˊᗜˋ*)ノ°•·.*ꕤ*ᵗʱᵃᵑᵏᵧₒᵤ ꕤ*.゚
「え?私に?聖女のシェイラに─ではなく?」
ーあれ?そんな事、聞いてたっけ?ー
「俺が個人的に…付けていたんだ。」
「え?個人……的に?」
「黙っていてすまない。ナディアを守りたかったから。俺がずっと側に居て守れたら一番良いんだけど、そうはいかないから……。」
「───っっ!!」
ーそんな風に言われたら、怒るに怒れないよね!?ー
「謝らないで下さい……少し……文句はありますけど、今回助かったのは、その影のお陰ですから。影の方も、ありがとうございました。」
どこに居るのか、この部屋内に居るのかどうかも分からないけど、取り敢えずお礼を言うと、一瞬だけユラッと気配が揺れた。
どうやら、私に付いている影は、自分の気配をコントロールして私に反応してくれているようだ。
「なんだか、少し…楽しい“影さん”ですね?」
「影さん……くくっ……良かったな?クロ。」
本当に、今世では色々な人達に守られている。
でも……私を一番守ってくれていたのは──
「後からダレル殿が来る。」
その言葉に、体がビクッと反応する。
「色々…訊きたい事や確認したい事があるから。ただ……もし、ナディアが…無理なら………」
「……いえ、大丈夫です。それに……私も、ダレルさんには色々訊きたい事があるので……。」
「なら、俺は外そうか?2人の方が良いなら……」
それに対して、私はふるふると首を振った。
「あの…できれば……モンテルアーノ様には……私の側に…居て欲しい……です。」
「─────ゔっ」
「えっ!?」
何故か、モンテルアーノ様が呻きながら両手で顔を覆って項垂れた。
「あの、すみません!無理なら良いんで──」
「──デレたナディアが可愛過ぎる…………」
「──はい?何て言いました?」
ーえ?大丈夫?怒ってる?呆れてる?ー
項垂れたままだから顔は見えないけど、肩が震えているのは分かる。怒りで震えているとか?なんて焦っていると、何となく影さんが笑って?いる感じがした。
「んんっ──ナディアがそう言うなら、側に居るから。」
顔を上げたモンテルアーノ様は、いつもより甘い?雰囲気の笑顔をしていた。
ーイケメンの笑顔は、心臓に悪いのねー
何て思ってしまう辺り……やっぱり私は、落ちかけているみたいだ。でも、その前に──
コンコン
「──ダレルです。入っても……良いかな?」
丁度そのタイミングで、ダレルさんがやって来た。
ー今世では……逃げないー
ギュッと握る手に力を入れた。
******
この部屋には、モンテルアーノ様とダレルさんと私と、影さんの4人だけで、モンテルアーノ様と私は3人掛けのソファーに横並びで座り、机を挟んだ向かい側の3人掛けのソファーにダレルさんが座っている。勿論、影さんは気配を消してどこかに居る─と思う。
先ずは、今回の事についての確認から始まった。
どうやら、学園内で起こった生徒による魔法の使用によるトラブルも仕組まれたもので、魔法を発動させた生徒に、誰かの魔力の痕跡があり、意図的に魔力が暴走するように魔法が掛けられていたそうだ。
そうすれば、ダレルさんと私が離れる事になり、私が1人になったところで、シェイラが怪我をした─と部屋から連れ出し気を失わせて、私を始末しようとしたらしい。
シェイラ本人からも聞かされたが、今回の事は、私が気に入らなくて、私を排除したかったから─故の行動だった。
それは、捕らえられた男2人からも確認が取れているそうだ。
『あの女─ナディア先生とやらを、“汚してから排除して欲しい”と依頼されたんだ。』
と、アッサリ吐いたそうだ。
“汚して”
今更ながらに、その怖ろしさに手が震える。あの時、モンテルアーノ様が間に合わなければ……影を付けてくれていなかったら……
その震える手を見ていると、その手にモンテルアーノ様の手が添えられた。チラッと見た先には、やっぱり優しい目をしたモンテルアーノ様が居る。
そんなモンテルアーノ様を見ると、心が落ち着いた。
そんな私達のやりとりを、ダレルさんは安心したような顔で見ている。その目は……とても穏やかだ。
「─それで……訊きたいのだが………何故、あの女─シェイラ=ペイトリンは、ダレル殿に執着しているんだ?それと……“リオネル”や“アディー”とは…誰の事だ?」
「それについては……私から説明します。ただ……できれば……ここだけの話にしてもらいたい。」
「──確約はできないが……可能な限りは努力する。」
ダレルさんが私へと視線を向け、それに答えるように私が頷くと、目を瞑って軽く息を吐いた。それから、ダレルさんが部屋全体に結界を張った後、ポツリポツリ─と話しだした。
❋クロは、“置き場”で書いたクロです。本編初登場でした(笑)❋
❋可能な限り、GW中は2話投稿でいきたいと思っています❋
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