恋愛は見ているだけで十分です

みん

文字の大きさ
上 下
44 / 61
第三章ー学園生活ー

お誘い

しおりを挟む
「魔具は問題無いですね。モンテルアーノ様と、ナディアさんは、大丈夫ですか?」

「はい。全く問題無いです。」



今日は、週半ばの魔具のメンテナンスの日。今日も4人で図書館の地下フロアに来ている。

「聖女は、モンテルアーノ様に魔法を発動させたんですよね?なら、その痕跡は辿れなかったのですか?」

「残念ながら、痕跡は辿れなかった。何度辿っても、途中でプツリ─と途切れてしまっていたんだ。」

魔法は、100年前から随分と発展している。その分、魔法に関した犯罪も増えた事もあり、より一層魔法の研究なども進んでいる。

魔力は一人一人性質が異なり、全く同じと言う魔力は無い。双子だとしても。
誰かが魔法を使えば、その魔法─魔力は暫くの間その場に残ってしまう。その残った魔力から、魔法を使った者を辿る事ができるのだ。
勿論、誰でもできるワケではなく、それなりの魔力を持っている事が最低条件で、更に特別な訓練を受けなければいけない。誰でもできるモノではないのだ。

「辿れなかった─となると……その聖女は結構な魔力持ちと言う事ですか?」

痕跡を辿る者より、辿られる者の方がなら、痕跡を辿る事ができなかったりする。

「そう言う事になるな。本当に厄介な事になった。城付きの者に辿らせて駄目だったなら……彼女が禁忌の魔法を使っているとしても、証拠を押さえる事ができず、また被害者が出る可能性もある。」

そう。今の段階では、十中八九、彼女は何らかの魔法を使っているのに、証拠が無いから彼女に対しては何もできない─手を出せない状況なのだ。

「次にまた機会があれば、私が辿りましょうか?」

サラッと言うのはダレルさん。

「え!ダレルさん、できるんですか!?」

ーえ!?やっぱり、ダレルさんって凄過ぎない!?何で、こんな凄い人が田舎の市役所に閉じこもってるの!?ー

「それは、こちらからお願いしようかと思っていたんだ。それと、可能であれば、1ヶ月ではなく、このまま続けて学園の講師もお願いしたいのだが……」

「それも構いませんよ。聖女より上なのが私なら、ルシエント様より私の方が対処しやすいし……安心でしょうから。」

このままダレルさんが──

私からもお願いしようと思っていた事だったから、ダレルさんが引き受けてくれた事は正直に嬉しい。

ールシエント様は、シェイラにからなぁ…ー

しかも、今はリゼットとラブラブ中……浮かれているだろうルシエント様は、きっと隙だらけに違いない。勿論、そんな隙だらけのルシエント様を、リゼットが放っておく事はない。なら、きっと、リゼットからも『講師復帰はしない方が良いんじゃない?』と言われているんじゃないだろうか?いや、絶対言われてるだろう。そんな想像しかできない。

「それじゃあ、オスニエルにも学園の方にも私から連絡して、手続きもしておくよ。ダレル殿、ありがとう。」

取り敢えず、これで安心要素が増えて良かった。






******


それは、帰り間際の事だった。

「あ、すっかり忘れてたわ。モンテルアーノ様、ダレル様、ナディアさん。今週末のメンテナンスなんですけど、王城ここではなく、我が家─スペイシー家に来ていただけませんか?」

“スペイシー侯爵邸”

「どうかしたのか?」

突然のアデル様のお誘いに、モンテルアーノ様がどうしたのか?と訊くと、いざと言う時の為の魔具がいくつかある為、必要な物があるなら見て欲しい─との事だった。

「──それなら……お言葉に甘えて、お願いしようかな……ナディアも、大丈夫かな?」

ダレルさんが、私を心配そうに見ているのは、私の顔が…強張っているから──だろうか?

「だっ………大丈夫です!侯爵邸だからと緊張している訳ではないので!!」

「そんな事で緊張しているのか?やっぱりナディアは可愛いな。」

ーえ?可愛い要素、ありました?ー

「侯爵邸でソレなら、公爵邸私の生家なら、どうなるんだろうな?」

くくっ──と笑うモンテルアーノ様は…憎らしいけど、その笑っている目は優しくて……強張っている私に気を遣ってくれたんだろう事が分かる。

「喜んでアデル様のお屋敷には行きますけど、そんな簡単に、公爵邸には行きませんよ?」
「うんうん。ナディアはそうじゃないとな。」

「あらあら。更に仲が良くなったのですね?」
「そうですね。“真実”になるのも……早いかもしれませんね。」

モンテルアーノ様と私のやり取りを、アデル様とダレルさんは微笑ましい顔で見ていた。






そんなやり取りがあった学園最終日の朝、やっぱり、馬車に乗り込むと、そこにはいつもより少し大き目の荷物が置かれていた。

「…………」

勿論、視線を向けたモニクさんはただただ微笑んでいるだけだ。そこに拒否権は無い。相手は侯爵だ。

王城に行くよりもハードルが高い─なんて事も言えない。

「───行って来ます。」

そう言うと、モニクさんは「行ってらっしゃいませ」と言って、馬車の扉を閉めた。





今世で初めて───泊りがけでスペイシー侯爵邸に行く事になりました。






❋エールを頂き、ありがとうございます❋
♡*:.。.٩(๑>ω<๑)۶ .。.:*♡


しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。 朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。 そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。 「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」 「なっ……正気ですか?」 「正気ですよ」 最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。 こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。 そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。 志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。 そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。 「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」 「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」 「お…重い……」 「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」 「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」 過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。 二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。 全31話

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

処理中です...