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第三章ー学園生活ー

王城

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「お疲れ様」

「「お疲れ様です」」

王城に辿り着くと、モンテルアーノ様が出迎えてくれていた。
モンテルアーノ様って、第二騎士団副団長で、王太子の側近で、王太子とは従兄弟ではなかっただろうか?そんな人が、平民を出迎えたりは───普通はしないよね?ダレルさんが笑っているのは何故?
色々と気になる事は沢山あるけど、それよりも、周辺に居る令嬢達の視線が痛いから、さっさと入城して泊まる部屋に引き篭もりたい。

「ほらほら、オードリック、早く案内してあげないと。に間に合わないよ?」

そこで声を掛けて来たのは、まさかの……王太子様だった。

ー勘弁して欲しいー

逃げない!とは誓ったけど、全て受け入れるつもりは無いんです!

ーん?“ディナー”って…何?ー

チラッとダレルさんに視線を向けると、少し呆れたような顔でため息を吐いていた。




それから、案内された部屋は、王城の客室だった。
この部屋に来る迄も…大変だった。部屋までの案内は、てっきり城付きの女官がしてくれると思っていたのに──まさかの王太子様とモンテルアーノ様に、そのままこの部屋迄案内されたのだ。

王族2人に案内ドナドナされる平民わたし……注目されない訳がない。私にではなく、王太子様とモンテルアーノ様に頭を下げて通りすがって行く人達……

ー本当に勘弁して欲しいー

“モンテルアーノ様と私が恋仲”

助長させてないだろうか?モンテルアーノ様は、噂の事は知ってるんだよね?
悶々と考えていると、城付きの女官がやって来て、私に更なる爆弾を投下した。





「ナディア、大丈夫?」
「大丈夫──じゃないよ……」

遠い目になってしまうのは、許してもらいたい。
リゼットが優しく背中を撫でてくれてはいるけど、少しも心が穏やかになる事はない。


女官が投下した爆弾とは──

“王太子様とモンテルアーノ様と、ディナーを共にする”事だった。

今回の王族に関わった事へのお礼と、危険に晒す事になった謝罪を兼ねての饗しだそうだ。
その場には、王太子様とモンテルアーノ様以外に、ダレルさんとリゼットと………ルシエント様も居た。

「あー……ナディア…その…大丈夫?あー…今回の事は申し訳無い!」
「──本当ですよ!まさか、ルシエント様が掛かるとは思ってませんでしたから!コレ、ですから!」

ールシエント様が伯爵家嫡男でも、魔道士団副団長であっても、ただでは……許したりはしない!ー


「まさか、あのオスニエルに媚びたりしない令嬢が居るとは……面白いね。」
「……リュカ……」
「……殿下……」

私とルシエント様のやり取りを、愉快そうに見る王太子様と、その王太子様を咎めるように声を掛けるモンテルアーノ様とダレルさん。

“全く面白くありません!”

と、叫びそうになったのは……我慢した。





食事は、本当に美味しかった。
最初こそ緊張していたが、ルシエント様とリゼットが何かと私を気遣ってくれて、途中からは食事を楽しめるようになった。
思うところが無いわけではないけど、王太子様も気さくな感じだったのも助かった。

最後の方は、ルシエント様とリゼットのラブラブが気になって、周りが話している事があまり耳に入って来なかったけど。
まぁ、親友のリゼットが幸せそうで何よりだ。
夕食を食べ終わると、ルシエント様はリゼットをエスコートして、その場からサクッと出て行ってしまった為、リゼットとはゆっくり話もできなかった。

「あの2人、明日は久し振りに休みが一緒になったらしいよ。」

と、去って行く2人を笑いながら見送っているダレルさんにそう教えてもらったら……素直に見送る事しかできなかった。


「それじゃあ、後は部屋でゆっくり休んでくれ。」

そう言うと、王太子様も食堂から出て行き、残るはモンテルアーノ様とダレルさんと私だけになった。

「ダレルさんの部屋は、どこにあるんですか?」

さっき私が案内された部屋の近くにはなかったけど。

「私の部屋は魔道士棟にあるんだ。」

魔道士棟なら、この食堂を出れば、向かう方向は真反対と言う事だ。

「今日はお疲れ様でした。また明日…。おやすみなさい。」
「うん。お疲れ様。おやすみ。」

「モンテルアーノ様も、今日はありがとうございました。それでは──」
「部屋迄送って行くよ。」

ー嫌です。結構です。1人で部屋迄行けますー

って、正直に言いたい。

「そこまでしていただかなくても、1人で大丈夫です。部屋の場所も、ちゃんと覚えてますから。」

と断れば

「送ってもらった方が良いよ。もう夜も遅いし、何があるか分からないからね。」

と、何故かダレルさんからも言われてしまい、結局はモンテルアーノ様に送ってもらう事になった。

ーもう…本当に勘弁して欲しいー








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*˘︶˘人)♡*。+




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