23 / 61
第三章ー学園生活ー
思わぬ約束
しおりを挟む
“貴族に於ける男女の距離感”
それは、平民の感じる距離感とはかなりの違いがある。平民の男女は、恋人ではなくても2人きりでお茶をしても問題にはならない。合意であれば、婚前交渉だってよくある事だ。
貴族はと言うと、確かに、今でも未婚の男女が2人きりになる─と言う事は良くないとされている。婚前交渉なんて以ての外だ。それは、貴族であるが故に仕方無い事だろう。
ーこの1学期の間、第三王子と聖女の距離はどうだっただろう?ー
授業の時の2人がどうだったのか─を思い出してみる。
『ペアが決まらないなら、私とペアを組もう』
『ありがとうございます』
なかなかペアが決まらない聖女に、手を差し伸べたのは第三王子─アルビー様だった。その時は、“王子が聖女をフォローした”と思い見ていたけど…今思えば、王子と組むのではなく、誰か他の令嬢にでも声を掛けて組ませれば良かった─と言う事に気付いた。王子と婚約者が組むのなら問題無いが、相手は聖女であっても女の子なのだから。
「……すみません。貴族に於ける距離感を……きちんと理解できていなかったかもしれません。」
確かに、色々思い出してみると、第三王子と聖女の距離は、あのペアを組んでからは、貴族としては近過ぎたのかもしれない。
そんな2人を、婚約者である公爵令嬢─オレリア=エタシエル─は、どう思っているのか……。
ージョアンヌ様の、第二王子の切り捨ては早かったけどー
「いや…ナディア嬢が謝る必要はない。その距離感については……言い方は悪いが、貴族と平民とでは捉え方から違うから、ナディア嬢が“おかしい”と思わなくても仕方無いと思う。寧ろ──」
その事に、何故オスニエルが苦言を呈さなかったのか……そっちの方が気になる──と、モンテルアーノ様がポツリ─と呟いた。
確かに…そうだ。ルシエント様なら、その距離感が近過ぎると分かっていた筈だ。何か…意図がある?
「ルシエント様の事はおいといて、王子とシェイラさんに関しては、新学期が始まったら注意して見てみます。」
「ありがとう」
そんな訳で……オードリック=モンテルアーノ様とは、定期的に会って報告をする─と言う事に………なってしまった。
前半1週間、ルシエント様は本当に学園に来る事はなく、邸にも帰って来なかった。そして、そのまま後半の休み1週間に突入した。
この1週間の休みの間、私は王城の図書館の地下に入り浸っている。この地下のフロアにある本には、1冊ずつ魔法が掛けられているようで、許可証を持つ者にしか開かれないようになっているそうだ。ただ、許可証を持っていても、中には開く事ができない本もあるが、それはそれで仕方無い。“魔法の書”が読めるだけでも感謝しないとね。
魔法の書には、私の知らない魔法が沢山書かれてあった。何となくできそうな魔法から、複雑過ぎてできないだろう魔法や、今は忘れられた魔法など、色々な魔法で溢れていた。
その中でも特に気になったモノは
“禁忌となった魔法”
コレについては、アドリーヌの時にも調べようと思った魔法だった。調べる前に死んでしまったし、死んでいなくても、調べる事はできなかっただろう。でも、今の私は、ソレを調べる事ができるのだ。ある意味、ルシエント様のお陰だろう。
でも…その前に──
魔法の書と、もう1冊、手元にある本に視線を落とす。
“王家家系図”
これは、特に禁書と言う訳でもなく、この王城の図書館にのみ保管されているモノで、この地下ではなく、一般公開されているフロアに所蔵されているモノだ。
100年前、あれからどうなったのか──
本を開いてページを捲る。この王国の歴史は1000年。そのうちの100年だ。後ろから捲っていくと、すぐに懐かしい王名が目に入ってきた。
その王名から繋がっている名は──あの当時、王太子殿下だった王子だけだった。
あの第二王子は──
「ルードモント…子爵?」
王子が…ルードモント子爵に婿入り?有り得ない。王太子ではない王子が婿入りして、その家の爵位を継ぐ事は多々あるが、その場合も侯爵以上だ。もしくは、新たな家名で公爵位を与えられたりするのが基本だ。
それなのに…子爵とは──
貴族名鑑のルードモント子爵家には、“聖女の生家”としか書かれていなかった。
『──どんな子が生まれるのか……楽しみだな』
と、父が言っていた。
「第二王子の子では…なかった?」
「ナディア嬢?」
「はい!?」
この地下のフロアには、私だけしか居なかった筈だけど、名前を呼ばれて、声がした方に視線を向けると
「モンテルアーノ様………」
「そうか…ナディア嬢も許可証を持っていたんだな。そこに…座っても?」
と、テーブルを挟んだ私の向かい側にある椅子を指差す。勿論「嫌です」なんて言える訳もなく、「どうぞ」と答えると、モンテルアーノ様は「ありがとう」と笑顔で椅子に腰を下ろした。
それは、平民の感じる距離感とはかなりの違いがある。平民の男女は、恋人ではなくても2人きりでお茶をしても問題にはならない。合意であれば、婚前交渉だってよくある事だ。
貴族はと言うと、確かに、今でも未婚の男女が2人きりになる─と言う事は良くないとされている。婚前交渉なんて以ての外だ。それは、貴族であるが故に仕方無い事だろう。
ーこの1学期の間、第三王子と聖女の距離はどうだっただろう?ー
授業の時の2人がどうだったのか─を思い出してみる。
『ペアが決まらないなら、私とペアを組もう』
『ありがとうございます』
なかなかペアが決まらない聖女に、手を差し伸べたのは第三王子─アルビー様だった。その時は、“王子が聖女をフォローした”と思い見ていたけど…今思えば、王子と組むのではなく、誰か他の令嬢にでも声を掛けて組ませれば良かった─と言う事に気付いた。王子と婚約者が組むのなら問題無いが、相手は聖女であっても女の子なのだから。
「……すみません。貴族に於ける距離感を……きちんと理解できていなかったかもしれません。」
確かに、色々思い出してみると、第三王子と聖女の距離は、あのペアを組んでからは、貴族としては近過ぎたのかもしれない。
そんな2人を、婚約者である公爵令嬢─オレリア=エタシエル─は、どう思っているのか……。
ージョアンヌ様の、第二王子の切り捨ては早かったけどー
「いや…ナディア嬢が謝る必要はない。その距離感については……言い方は悪いが、貴族と平民とでは捉え方から違うから、ナディア嬢が“おかしい”と思わなくても仕方無いと思う。寧ろ──」
その事に、何故オスニエルが苦言を呈さなかったのか……そっちの方が気になる──と、モンテルアーノ様がポツリ─と呟いた。
確かに…そうだ。ルシエント様なら、その距離感が近過ぎると分かっていた筈だ。何か…意図がある?
「ルシエント様の事はおいといて、王子とシェイラさんに関しては、新学期が始まったら注意して見てみます。」
「ありがとう」
そんな訳で……オードリック=モンテルアーノ様とは、定期的に会って報告をする─と言う事に………なってしまった。
前半1週間、ルシエント様は本当に学園に来る事はなく、邸にも帰って来なかった。そして、そのまま後半の休み1週間に突入した。
この1週間の休みの間、私は王城の図書館の地下に入り浸っている。この地下のフロアにある本には、1冊ずつ魔法が掛けられているようで、許可証を持つ者にしか開かれないようになっているそうだ。ただ、許可証を持っていても、中には開く事ができない本もあるが、それはそれで仕方無い。“魔法の書”が読めるだけでも感謝しないとね。
魔法の書には、私の知らない魔法が沢山書かれてあった。何となくできそうな魔法から、複雑過ぎてできないだろう魔法や、今は忘れられた魔法など、色々な魔法で溢れていた。
その中でも特に気になったモノは
“禁忌となった魔法”
コレについては、アドリーヌの時にも調べようと思った魔法だった。調べる前に死んでしまったし、死んでいなくても、調べる事はできなかっただろう。でも、今の私は、ソレを調べる事ができるのだ。ある意味、ルシエント様のお陰だろう。
でも…その前に──
魔法の書と、もう1冊、手元にある本に視線を落とす。
“王家家系図”
これは、特に禁書と言う訳でもなく、この王城の図書館にのみ保管されているモノで、この地下ではなく、一般公開されているフロアに所蔵されているモノだ。
100年前、あれからどうなったのか──
本を開いてページを捲る。この王国の歴史は1000年。そのうちの100年だ。後ろから捲っていくと、すぐに懐かしい王名が目に入ってきた。
その王名から繋がっている名は──あの当時、王太子殿下だった王子だけだった。
あの第二王子は──
「ルードモント…子爵?」
王子が…ルードモント子爵に婿入り?有り得ない。王太子ではない王子が婿入りして、その家の爵位を継ぐ事は多々あるが、その場合も侯爵以上だ。もしくは、新たな家名で公爵位を与えられたりするのが基本だ。
それなのに…子爵とは──
貴族名鑑のルードモント子爵家には、“聖女の生家”としか書かれていなかった。
『──どんな子が生まれるのか……楽しみだな』
と、父が言っていた。
「第二王子の子では…なかった?」
「ナディア嬢?」
「はい!?」
この地下のフロアには、私だけしか居なかった筈だけど、名前を呼ばれて、声がした方に視線を向けると
「モンテルアーノ様………」
「そうか…ナディア嬢も許可証を持っていたんだな。そこに…座っても?」
と、テーブルを挟んだ私の向かい側にある椅子を指差す。勿論「嫌です」なんて言える訳もなく、「どうぞ」と答えると、モンテルアーノ様は「ありがとう」と笑顔で椅子に腰を下ろした。
52
お気に入りに追加
789
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。
そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。
悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。
「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」
こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。
新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!?
⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる