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第三章ー学園生活ー

思わぬ約束

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“貴族に於ける男女の

それは、平民の感じる距離感とはかなりの違いがある。平民の男女は、恋人ではなくても2人きりでお茶をしても問題にはならない。合意であれば、婚前交渉だってよくある事だ。

貴族はと言うと、確かに、今でも未婚の男女が2人きりになる─と言う事は良くないとされている。婚前交渉なんて以ての外だ。それは、貴族であるが故に仕方無い事だろう。

ーこの1学期の間、第三王子と聖女の距離はどうだっただろう?ー

授業の時の2人がどうだったのか─を思い出してみる。


『ペアが決まらないなら、私とペアを組もう』
『ありがとうございます』

なかなかペアが決まらない聖女に、手を差し伸べたのは第三王子─アルビー様だった。その時は、“王子が聖女をフォローした”と思い見ていたけど…今思えば、王子組むのではなく、誰か他の令嬢にでも声を掛けて組ませれば良かった─と言う事に気付いた。王子と婚約者が組むのなら問題無いが、相手は聖女であっても女の子なのだから。


「……すみません。貴族に於ける距離感を……きちんと理解できていなかったかもしれません。」

確かに、色々思い出してみると、第三王子と聖女の距離は、あのペアを組んでからは、貴族としては近過ぎたのかもしれない。
そんな2人を、婚約者である公爵令嬢─オレリア=エタシエル─は、どう思っているのか……。

ージョアンヌ様の、第二王子の切り捨ては早かったけどー

「いや…ナディア嬢が謝る必要はない。その距離感については……言い方は悪いが、貴族と平民とでは捉え方から違うから、ナディア嬢が“おかしい”と思わなくても仕方無いと思う。寧ろ──」

その事に、何故オスニエルが苦言を呈さなかったのか……そっちの方が気になる──と、モンテルアーノ様がポツリ─と呟いた。

確かに…そうだ。ルシエント様なら、その距離感が近過ぎると分かっていた筈だ。何か…意図がある?

「ルシエント様の事はおいといて、王子とシェイラさんに関しては、新学期が始まったら注意して見てみます。」

「ありがとう」

そんな訳で……オードリック=モンテルアーノ様とは、定期的に会って報告をする─と言う事に………なってしまった。







前半1週間、ルシエント様は本当に学園に来る事はなく、邸にも帰って来なかった。そして、そのまま後半の休み1週間に突入した。
この1週間の休みの間、私は王城の図書館の地下に入り浸っている。この地下のフロアにある本には、1冊ずつ魔法が掛けられているようで、許可証を持つ者にしか開かれないようになっているそうだ。ただ、許可証を持っていても、中には開く事ができない本もあるが、それはそれで仕方無い。“魔法の書”が読めるだけでも感謝しないとね。

魔法の書には、私の知らない魔法が沢山書かれてあった。何となくできそうな魔法から、複雑過ぎてできないだろう魔法や、今は忘れられた魔法など、色々な魔法で溢れていた。
その中でも特に気になったモノは

“禁忌となった魔法”

コレについては、アドリーヌの時にも調べようと思った魔法だった。調べる前に死んでしまったし、死んでいなくても、調べる事はできなかっただろう。でも、今の私は、ソレを調べる事ができるのだ。ある意味、ルシエント様のお陰だろう。

でも…その前に──

魔法の書と、もう1冊、手元にある本に視線を落とす。

“王家家系図”

これは、特に禁書と言う訳でもなく、この王城の図書館にのみ保管されているモノで、この地下ではなく、一般公開されているフロアに所蔵されているモノだ。

100年前、あれからどうなったのか──

本を開いてページを捲る。この王国の歴史は1000年。そのうちの100年だ。後ろから捲っていくと、すぐに懐かしい王名が目に入ってきた。
その王名から繋がっている名は──あの当時、王太子殿下だった王子だけだった。

あの第二王子は──

「ルードモント…子爵?」

王子が…ルードモント子爵に婿入り?有り得ない。王太子ではない王子が婿入りして、その家の爵位を継ぐ事は多々あるが、その場合も侯爵以上だ。もしくは、新たな家名で公爵位を与えられたりするのが基本だ。

それなのに…子爵とは──

貴族名鑑のルードモント子爵家には、“聖女の生家”としか書かれていなかった。

『──どんな子が生まれるのか……楽しみだな』

と、父が言っていた。

「第二王子の子では…なかった?」

「ナディア嬢?」

「はい!?」

この地下のフロアには、私だけしか居なかった筈だけど、名前を呼ばれて、声がした方に視線を向けると

「モンテルアーノ様………」

「そうか…ナディア嬢も許可証を持っていたんだな。そこに…座っても?」

と、テーブルを挟んだ私の向かい側にある椅子を指差す。勿論「嫌です」なんて言える訳もなく、「どうぞ」と答えると、モンテルアーノ様は「ありがとう」と笑顔で椅子に腰を下ろした。




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