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第三章ー学園生活ー

赤色

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王立モランドル学園

王国内一の大きさを誇る学園で、殆どの貴族の令息令嬢が、この学園に通っている。勿論、自分の領地にある学校に通っている者も居るが、どの学校に行くとしても、15歳から18歳の間の最低2年から4年通う事になっている。
ナディアとしては、学校に通う事はなく、孤児院の院長から色んな事を学んだが、アドリーヌだった時は、私もこの学園に4年間通っていたから、ある意味では“母校”と言えるかもしれない。
アイボリーカラーを基調とした校舎が建ち並び、その奥には更に広大な敷地があり、騎士科の訓練場や、実地訓練を行う為の森も有している。
そして、常に魔法で管理されている為か、100年前の姿と全く変わらず、新築のようなままの状態を維持している。

良い思い出も、悪い思い出もある所である。
可能であれば、生徒会室だけには近寄りたくない。


兎に角、今日は、ついにやって来た新年度─入学式の日である。

この学園では制服があり、男女ともに紺色のブレザーで、学年によってネクタイの色が違っている。今年で言うと、1年生から─赤、青、水色、緑となっている為、新入生は皆、赤色のネクタイをしている。

今年は、第三王子であるアルビー様が新入生代表で挨拶を述べている。その第三王子は金髪に青眼の美少年といったところで、周りの令嬢達からの秋波が……半端ない。傍から見ると、それがよく分かる。

ただ──

第三王子の容姿は、第二王子とよく似ている。
この第三王子─アルビー様は、王太子と第二王子とは母親が違う。王太子と第二王子は王妃様で、第三王子は則妃。それも、その則妃は産後の肥立ちが悪く、回復する事なく半年後に亡くなってしまったのだ。
もともの王妃と則妃も仲が良かったようで、異母兄弟ではあるが、3人はとても仲が良いようだ。

その第三王子には公爵令嬢の婚約者が居る。その公爵家には令息が居ない為、結婚した後は第三王子が公爵となるのだろう。

ー何だか…どこかで聞いた話と同じだよねー



「────そして、今年は喜ばしい事に、100年ぶりに……聖女が現れました。」

私が色々と考えているうちに、第三王子から、聖女の存在の発表が始まり、ホール内にざわめきが起こる。勿論、ここで公表する事は予定通りの事である。

「シェイラ=ペイトリン子爵令嬢だ。」

ホール全体が、更にざわめく。
そして、壇上横から1人の令嬢が歩み出て来た。

ヒュッ─と息を呑む。

その聖女は、聖女とは違って銀髪だけど、眼は……聖女と同じ赤色をしている。

「シェイラ=ペイトリンです。宜しくお願いします。」

スッと頭を下げて礼を取った後、フワリと微笑むその姿や雰囲気は、とても可愛らしく目を惹くものがあった───のように。







******

「少し顔色が悪かったけど…大丈夫か?」

入学式が終わり、その日は授業も無い為、講師としてルシエント様に充てられた部屋へと戻って来て、自分の机に突っ伏していると、後から部屋に入って来たルシエント様に心配そうに声を掛けられた。

「大丈夫です。少し…緊張してしまったみたいです」

学園に来て校舎を目にしても“懐かしいな”─と言う感情しか湧かなかったから、大丈夫なんだと思っていたけど…そうでもなかったようだ。

「今日は、これからは特に用はないから、ここで少し休んだら先に帰って、邸でゆっくりすると良いよ。」

「でも……そう…ですね。そうさせてもらいます。」

授業が始まるのは来週からだけど、明日からは、その授業に向けての準備をしなければいけない事を思い出し、無理をするのは止めよう─と、今日は早目に帰らせてもらう事にした。

トントン

「すみません、今、よろしいでしょうか?」

ノックの後に声が掛けられた。

「あぁ、入って良いよ。」

「失礼します。」

ルシエント様が入室の許可をして入って来たのは、第三王子アルビー様と2人の令息。その2人の令息の後ろからは、更に──

銀髪に赤眼の聖女─シェイラ=ペイトリンが入って来た。




2人の令息─

1人は─ジュスト=ハイデン。伯爵家の次男。
1人は─シモン=オドリクス。伯爵家の次男。

2人共、第三王子の側近であり、第三王子含め、3人ともが騎士科を選択している。

ルシエント様が王太子の側近であり、この学園の講師と言う事で、第三王子自らが挨拶をしに来たようだ。

基本、15歳で入学した1年生は、選択した科とは関係無く、皆必ず魔法の授業を受ける事になっている。喩え、魔力持ちではなくてもだ。魔力が無くても魔石などを使って魔法を使う事もあるから。それに、魔法には、良い処もあれば悪い処もある為、魔法についての基礎的なモノをしっかりと学んでおく必要があるのだ。
ちなみに、この第三王子は水属性だ。

「オスニエル……先生と呼ぶべきか?兎に角、これから宜しくお願いします。」

「人目のある所では先生で…。ただ、アルビーは、既に水の扱いは完璧でしょうけどね。」

お互い気安い仲なのか、2人とも笑顔だ。

「──それで、彼女が…聖女のペイトリン嬢だ。」

「シェイラ=ペイトリンです。宜しくお願いします」

第三王子に促されて挨拶をする聖女。

その赤色の瞳は──

やっぱりを思い出させる色をしていた。









❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(⁎˃ ꇴ ˂⁎)


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