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第2章ー魔道士ー
魔法の書
しおりを挟むオスニエル=ルシエント
ルシエント伯爵家の嫡男、25歳。
王太子の側近の1人。
金髪緑眼のイケメン。
にも関わらず、未婚─どころか、婚約者も未だ決まっていないと言う。
これは、魔法馬鹿か、女好きか女嫌いか──
私が受けた印象では……女嫌いな感じだ。人好きのする笑顔。誰が見ても爽やかなイケメンだけど、目が─笑ってない。貴族にはよく居るタイプだ。モテるのはモテるんだろうけど。
「王城付きの魔道士は、女性が3人しか居ないから、ディシリス嬢が来るのを、皆楽しみにしてるんだ。」
「そう言っていただけると、嬉しいですね。」
しかも、リゼットは2属性持ちで攻撃に特化しているから、男性魔道士顔負けレベルなんじゃないだろうか?ある程度のレベルの魔獣なら、リゼット1人でも難なく対処できる程の実力がある。きっと、リゼットは王都に行っても、今以上の活躍ができると思う。
ルシエント様とリゼットの会話を、ダレルさんと私は紅茶を飲みながら聞いている。
実は、このダレルさんも、もともとは王城付きの魔道士だった。奥さんが女男爵で婿入りと言う形で結婚。しかし、5年後、2人の子ができないまま男爵である奥さんが病死してしまい、ダレルさんは自ら平民となる事を選び、男爵家は奥さんの妹夫婦が引き継いだ。
そして、ダレルさんは王城付きも辞退し、自分の故郷であるこの領地に戻って来て、この領地の役所勤めをする事になった─と言う経歴の持ち主だ。
なので、ダレルさんも、一応は“エリート様”である。
本人ももともと男爵家の次男の貴族だったけど、物腰の柔らかい──おじさんだ。40を優に超えているだろうけど、見た目はまだまだ若い。それでも、再婚どころか、新たな恋人を作る事もない。ダレルさんの執務机に、亡くなった奥さんの絵が飾られているのも知っている。その奥さんの事が、未だに好きなんだろう。
ーそんな、一途な恋もあるのかー
と、ふと思ってしまう事がある。その反面、いとも簡単に心変わりをする事もある事を知っている。
ーもう、あんな思いは…懲り懲りだー
「───で、君は、王城付きの魔道士には…興味ないの?」
「──えっ!?」
考え事をしていた事もあり、急に話を振られて慌てて返事をする。
「興味が無い……訳ではありませんが、私はコレと言って特化したモノはありませんし……王都より田舎暮らしが性に合っているので……。」
自分を卑下している訳じゃない。魔力量は多いけど、それだけなのだ。全ての魔法が平々凡々。中の中。“普通”なのだ。
「……“特化したモノが無い”?」
と、不思議そう?な顔をしたまま思案するルシエント様。ダレルさんとリゼットに至っては苦笑している。
「なら……もし、“王城の魔法の書”が読める─としたら…どうする?」
「魔法の……書………」
王城にしかない“魔法の書”
とは──それこそ魔道士達にとっては垂涎の1冊だ。1000年程の魔法に関する歴史が刻まれていて、今では失われた魔法も書かれているそうだ。
ーその魔法の書が読める─だとっ!?ー
今世では魔道士になりたくて、色んな…たくさんの魔法に関する本を読みあさった。その時に知った、ある魔法。ソレは、何百年も前に禁忌とされ、それ以降使われなくなり、そのまま廃れて失われた魔法。色んな本を読んだけど、結局はその魔法については書かれてはなくて、分からないままになっている。でも、その魔法の書なら……
でも──
チラリと、ルシエント様に視線を向ける。
ー王都に行くのも嫌なのに、王城付きになるのは……もっと嫌だー
「“魔法の書”には興味がありますが───」
「一つ提案があるんだけど……その提案を聞いてから考えてみてくれないかな?」
「え?」
ーなんだか…物凄い食い気味ではないだろうか?ー
「提案…ですか?それは──」
「それは、明日話すよ。午前中はディシリス嬢との約束があるから、午後にでも。」
「分かりました。」
また食い気味に言われて、勿論、エリート様には逆らえないから、私は素直に受け入れた。
その日は時間が遅いから─と、リゼットと私はそのまま役所に泊まる事にした。リゼットは、邸に連絡すればお迎えの馬車が来るのに、その連絡するのも面倒臭い─と、何とも伯爵令嬢らしからぬ令嬢だけど、リゼットらしいと言えばリゼットらしくて、私はそんな彼女の事が大好きだ。
アドリーヌだった時に、リゼットのような親友が居れば、また違った人生があったのだろうか?
翌朝、少し早目に起きて、リゼットと一緒に朝食を買いに行き、そのまま役所の庭のベンチで食べた。
「それじゃあ、行って来るね。」と、リゼットは約束の時間の10分程前に、役所内にある応接室に向かい、私は職場である魔法科へと向かった。
❋エール、ありがとうございます❋
(*,,˃ ᵕ ˂ )✰*
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