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❋新しい未来へ❋
68 王太后とイーリャの実
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「フィリベール様はまだなの!?ここから出しなさい!私は、トワイアルの王女で、黒龍の巫女なのよ!?」
「本当に……キーキー煩いわね。静かにできないのかしら?」
「貴方…ニノンとか言ったわね?憶えてなさいよ。私を牢に入れた上、私に威圧を掛けて……フィリベール様とトワイアルが黙っていないから」
「あぁ、その通りだな」
「フィリベール様!!」
地下牢に入った途端、馬鹿女のキーキーと煩い叫び声が響きわたっていた。何とも耳障りな声だ。その馬鹿女は、俺の顔を見た瞬間笑顔になった。
ニノンは、ニッコリ微笑んで頭を軽く下げた後、俺の後ろへと下がった。
「ようやく来て下さったのね?フィリベール様、ここから出して下さい。そこの女が───」
「何故、俺がお前をここから出してやらなければならないんだ?」
「え?何故って……何故、私が牢に入らなければならないの?私、何も悪い事なんてしてませんわ」
「何もしてない─ね…なら、一つ一つ、俺が説明してやろうか?一つ……ハロルド王子を唆して、婚約者のメザリンド嬢に媚薬を盛らせて、他の男と既成事実を作らせた事。二つ…禁止薬物の入った媚薬を使用してハロルド王子とエヴェリーナ=ハウンゼントの既成事実を作ろうとした事。三つ、俺に媚薬を盛り、俺と既成事実を作ろうとした事。そして……一番してはいけない四つ目は……“イーリャの実”を使用した事だ」
「──っ!?イーリャ……どうして……」
「やっぱり…お前は“イーリャの実”を知っていて……使ったんだな」
「っ!ちがっ───」
「一度目に使用したのが……黒龍の巫女の選定式の時だったな?そして、二度目が俺の怪我を治療した時だ。それ以降は……俺に会うたびに使っていたな?」
「………な…で……それを………」
「残念だったな…俺にはイーリャの実は効かないんだ」
「え?」
「何故効かないのか…お前は知らないだろう?」
10日前、トルトニア王太子からトワイアルの王太后の話を聞いてすぐに調べさせた。
すると、トワイアルの王太后が、イーリャと偽りの番となった伯爵家の男の家系の者だった事が判明した。
その商会は、後継ぎだった男を喪った後潰れてしまっていたが、その男(兄)の死を不審に思った妹が、死因を調べているうちに──イーリャの実の真実に辿り着いていたのだ。
ただ、この妹は、この真実は表に出してはいけない─と思い、その真実を誰にも話す事なく研究結果や資料は全て他人の目に入らないように隠す事にした。後々、国にでも報告を──と思っていた矢先、不慮の事故に遭い他界してしまった。
それから数百年。
とある貴族がその商会の跡地に別荘を建てようとした時、地下に部屋がある事が判明し、そこに足を踏み入れたのがトワイアルの王太后だった。そして、王太后はそこでイーリャの実の研究結果や資料を見付けたが、王太后もまた、これは世に出てはいけないと、処分をするか王家に提出するか──悩んでいるうちにトワイアルの王太子の婚約者になり、王妃教育で忙しい日々を送るようになり、イーリャの実の事はスッカリ忘れてしまっていた。
その事を思い出したのは、王太子と婚姻し、王太子妃となってからだった。
内容が内容な為、誰にも頼む事はできず、何年か経ってから数日の里帰りが許された時に、ようやく取りに行く事ができ、それらは王太子妃が王城で隠し持っていたのだが────
王太子、王太子妃から国王、王妃となり、2年で後継ぎとなる王子が生まれ、その3年後には王女が生まれた。もともと体の弱かった王であった為、3人目は諦め、王子には幼いうちから婚約者を決め、早いうちから帝王学を学ばせた。
そして、予定通り早目に王子に王の座を譲り、余生はゆっくりと──とはならなかった。王位を退いてからは更に体調が悪くなり亡くなってしまった。
夫の死後、部屋の整理をしていた王太后が、その時ようやく気付いたのが─夫から貰ったイヤリング数点が失くなっていた事と、イーリャの実の研究結果と資料が失くなっていた事だった。
それから、王太后は時間があれば探したが見付からず、自身もまた体調を崩す事が多くなり───王太后もまた、亡くなってしまった。
「“禁書庫最奥、2段左の10”と言えば…分かるか?」
「───っ!」
トワイアル王国の王城内にある、王族専用の書庫─禁書庫。その書庫の一番奥にある5段の棚の上から2段目、左端から10冊目。
そこにある高さのある分厚い本。その本はページの真ん中が切り抜かれていて、そこにイーリャの実の研究結果や資料が填められていた。
更に、イーリャの実には、人間が飲み続けると、心臓が弱くなる─とあった。これは、俺達も知らなかった事だ。おそらく、先代の国王と王妃が早くに亡くなったのも…………
「お前の様な馬鹿女が、1人で行えるような事ではないから……これは、お前の両親である国王と王妃も関わっているんだろう?」
「…………」
「沈黙は肯定と同じだからな?」
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(σ⁎˃ᴗ˂⁎)σண♡*
「本当に……キーキー煩いわね。静かにできないのかしら?」
「貴方…ニノンとか言ったわね?憶えてなさいよ。私を牢に入れた上、私に威圧を掛けて……フィリベール様とトワイアルが黙っていないから」
「あぁ、その通りだな」
「フィリベール様!!」
地下牢に入った途端、馬鹿女のキーキーと煩い叫び声が響きわたっていた。何とも耳障りな声だ。その馬鹿女は、俺の顔を見た瞬間笑顔になった。
ニノンは、ニッコリ微笑んで頭を軽く下げた後、俺の後ろへと下がった。
「ようやく来て下さったのね?フィリベール様、ここから出して下さい。そこの女が───」
「何故、俺がお前をここから出してやらなければならないんだ?」
「え?何故って……何故、私が牢に入らなければならないの?私、何も悪い事なんてしてませんわ」
「何もしてない─ね…なら、一つ一つ、俺が説明してやろうか?一つ……ハロルド王子を唆して、婚約者のメザリンド嬢に媚薬を盛らせて、他の男と既成事実を作らせた事。二つ…禁止薬物の入った媚薬を使用してハロルド王子とエヴェリーナ=ハウンゼントの既成事実を作ろうとした事。三つ、俺に媚薬を盛り、俺と既成事実を作ろうとした事。そして……一番してはいけない四つ目は……“イーリャの実”を使用した事だ」
「──っ!?イーリャ……どうして……」
「やっぱり…お前は“イーリャの実”を知っていて……使ったんだな」
「っ!ちがっ───」
「一度目に使用したのが……黒龍の巫女の選定式の時だったな?そして、二度目が俺の怪我を治療した時だ。それ以降は……俺に会うたびに使っていたな?」
「………な…で……それを………」
「残念だったな…俺にはイーリャの実は効かないんだ」
「え?」
「何故効かないのか…お前は知らないだろう?」
10日前、トルトニア王太子からトワイアルの王太后の話を聞いてすぐに調べさせた。
すると、トワイアルの王太后が、イーリャと偽りの番となった伯爵家の男の家系の者だった事が判明した。
その商会は、後継ぎだった男を喪った後潰れてしまっていたが、その男(兄)の死を不審に思った妹が、死因を調べているうちに──イーリャの実の真実に辿り着いていたのだ。
ただ、この妹は、この真実は表に出してはいけない─と思い、その真実を誰にも話す事なく研究結果や資料は全て他人の目に入らないように隠す事にした。後々、国にでも報告を──と思っていた矢先、不慮の事故に遭い他界してしまった。
それから数百年。
とある貴族がその商会の跡地に別荘を建てようとした時、地下に部屋がある事が判明し、そこに足を踏み入れたのがトワイアルの王太后だった。そして、王太后はそこでイーリャの実の研究結果や資料を見付けたが、王太后もまた、これは世に出てはいけないと、処分をするか王家に提出するか──悩んでいるうちにトワイアルの王太子の婚約者になり、王妃教育で忙しい日々を送るようになり、イーリャの実の事はスッカリ忘れてしまっていた。
その事を思い出したのは、王太子と婚姻し、王太子妃となってからだった。
内容が内容な為、誰にも頼む事はできず、何年か経ってから数日の里帰りが許された時に、ようやく取りに行く事ができ、それらは王太子妃が王城で隠し持っていたのだが────
王太子、王太子妃から国王、王妃となり、2年で後継ぎとなる王子が生まれ、その3年後には王女が生まれた。もともと体の弱かった王であった為、3人目は諦め、王子には幼いうちから婚約者を決め、早いうちから帝王学を学ばせた。
そして、予定通り早目に王子に王の座を譲り、余生はゆっくりと──とはならなかった。王位を退いてからは更に体調が悪くなり亡くなってしまった。
夫の死後、部屋の整理をしていた王太后が、その時ようやく気付いたのが─夫から貰ったイヤリング数点が失くなっていた事と、イーリャの実の研究結果と資料が失くなっていた事だった。
それから、王太后は時間があれば探したが見付からず、自身もまた体調を崩す事が多くなり───王太后もまた、亡くなってしまった。
「“禁書庫最奥、2段左の10”と言えば…分かるか?」
「───っ!」
トワイアル王国の王城内にある、王族専用の書庫─禁書庫。その書庫の一番奥にある5段の棚の上から2段目、左端から10冊目。
そこにある高さのある分厚い本。その本はページの真ん中が切り抜かれていて、そこにイーリャの実の研究結果や資料が填められていた。
更に、イーリャの実には、人間が飲み続けると、心臓が弱くなる─とあった。これは、俺達も知らなかった事だ。おそらく、先代の国王と王妃が早くに亡くなったのも…………
「お前の様な馬鹿女が、1人で行えるような事ではないから……これは、お前の両親である国王と王妃も関わっているんだろう?」
「…………」
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