贄の令嬢はループする

みん

文字の大きさ
上 下
66 / 84
❋新しい未来へ❋

66 それぞれの夜

しおりを挟む
私達が王城に戻って来てから1時間程してから、フィル達も王城へと戻って来た。


「少しだけ──」と言って、フィルと2人きりになり、ギュウギュウと抱きしめられた。

王太子殿下にキッチリ浄化してもらっていたから、スッキリはしていたのだけど、こうしてフィルに抱きしめられると……恥ずかしいけど安心して心も落ち着いた。

「もっとゆっくりイヴと一緒に居たいけど…やるべき事はさっさとやって、来る」と言って、フィルはまた部屋から出て行った。そして、私はまた明日にでも話を訊くからと言われ、今日は浮島に戻り、ゆっくりする事となった。



浮島に戻ると、イロハもやって来て、2人で一緒に夕食を食べた。イロハも今日はゆっくりして、明日、私と一緒にフィルの執務室に行く予定だ。

「イロハもお疲れ様」
「私はフィリベールさんに文句を言っただけだけどね。後は、あの馬鹿女が自滅したって感じかな?空っぽなプライドしかないくせに、やすやすと王族の身分まで使って“親も共犯です”って教えてくれたしね。本当に…馬鹿王女だったわ…」

そのジュリエンヌ様はと言うと、フィル─竜王に媚薬を盛った事を認めたそうで、その場で気を失わされ、今は王城の地下牢に入れられているらしい。
そして、今回の事に関して親であるトワイアルの国王両陛下も関わっている事も、ジュリエンヌ様本人が認めたそうだ。
これで、トワイアル王国の王族は排除され、新たな王が立つ事になるだろう。暫くの間は、フィルもトルトニアの国王両陛下と王太子殿下も忙しくなるだろう。

「その話はまた明日にして……」

と、それからは、気分を変えるかのように学園の話や、また行きたいお店の話などをしながら、少しだけ夜更しをして楽しんだ。









 ******


「トワイアル王女の所持品に、2本の小瓶がありました。今、研究所で分析してもらってます」
「分析している者は──」
「勿論、竜心で結ばれた旦那が居る者がしています」
「なら大丈夫だな」

2本の小瓶─おそらく、1本は俺に盛った媚薬で、もう1本はイーリャの実だろう。今現在、大陸中でイーリャの実の有無を確認させてはいるが、今のところ“見付かった”と言う報告はない。

今、報告をしに俺の執務室にやって来たのは宰相のアラール。ニノンは今、ジュリエンヌ馬鹿女の身体チェックなどをしている。ハロルド馬鹿王子にはオーウェンを付けている。

「ちなみに、第二王子からも、小瓶1本が出てきました。本人の言う通りならば、媚薬ですね。どれ程のレベルのモノなのか……こちらも、研究所で分析してもらってます」
「……へぇ………あの馬鹿王子、イヴに…媚薬を盛ったのか…………」
「申し訳ありませんでした!」

勢い良く頭を下げて謝罪するのは、トルトニアの王太子─メレディス。本当にあの馬鹿王子と兄弟なのか?と訊きたくなる程のマトモな王子だ。あの馬鹿王子と同じ色を持ちながら、他は全て違う。立派な国王に似ていて武に長けていて誠実。俺もアルピーヌもトルトニアの国王と王妃と王太子の事は気に入っている。

「メレディス、お前が謝る必要はない。イヴ─エヴェリーナからも、そう言われただろう?悪いのはメレディスではなく、ハロルドだと。ん?“気持ち悪い”だったか?」
「あー、はい。“悪い”のも“気持ち悪い”のも……ハロルドです。本当に……あそこまで気持ち悪い奴だったとは………アレでも、以前は勉学に励みしっかりしていたんです。将来、王となった私を支えたいと……父も母も…甘やかす事もなく……それがどうしてこんなにも………阿呆…愚かな者になってしまったのか……」

確かに、少し前までは、あの馬鹿王子も特に問題は無かった。ただ、過去の四度とも、やっぱり最後は馬鹿女と一緒になってイヴを死に追いやったのだ。

「確認だが、その第二王子は俺の番に手を出した。俺からと、トルトニア王妃の言葉を無視をして。今、地下牢に放り込んでいるが…そのまま、ここで預かると言う事で良いな?」
「勿論です。もともと、愚弟が行動すれば、竜王国こちらで処罰を受けさせると言う約束でしたし、行動を起こした段階で、愚弟がトルトニアの地を踏む事は二度とないと思っていましたから。トルトニアとしては、竜王陛下のいかなる処罰も受け入れる所存です。」

ー本当に…マトモだー

「分かった。それでは、第二王子はこれから竜王国預かりとする。色々調べる事もあるから時間は掛かるかも知れないが、処罰が決まり次第トルトニア国王に知らせよう」
「承知致しました。どうぞ…宜しくお願い致します」


メレディスからの話も訊きたい為、メレディスにも暫くの間竜王国の王城で過ごしてもらう事になり、今日のところはゆっくり休んでもらう為に客室へと案内させた。

「イヴの様子はどうだ?」
「侍女の話によると、イロハ様とお喋りしながら、そのまま一緒にベッドで寝てしまったそうです」
「一緒に…………」

ー何て羨ましいー

「寂しいなら、陛下もアラスターと一緒に寝ますか?」
「何故そうなる!?」
「ははっ…冗談ですよ。兎に角、エヴェリーナ様とイチャイチャしたいなら、明日からもキリキリ働いて下さいね。」

“イチャイチャ”

何だろう……普段真面目なアラールが言うと恥ずかしく聞こえる。

「あーうん。イヴとの時間の為に…」
「はい。では、本日は陛下もお休み下さい。私もこれで、失礼致します。」

と、アラールは笑顔のまま部屋から出て行った。










❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(*´ᗜ`)ㅅ(ˊᗜˋ*)و



しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

「ババアはいらねぇんだよ」と婚約破棄されたアラサー聖女はイケメン王子に溺愛されます

平山和人
恋愛
聖女のロザリーは年齢を理由に婚約者であった侯爵から婚約破棄を言い渡される。ショックのあまりヤケ酒をしていると、ガラの悪い男どもに絡まれてしまう。だが、彼らに絡まれたところをある青年に助けられる。その青年こそがアルカディア王国の王子であるアルヴィンだった。 アルヴィンはロザリーに一目惚れしたと告げ、俺のものになれ!」と命令口調で強引に迫ってくるのだった。婚約破棄されたばかりで傷心していたロザリーは、アルヴィンの強引さに心が揺れてしまい、申し出を承諾してしまった。そして二人は幸せな未来を築くのであった。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

お嫁さんはフェアリーのお墨付き~政略結婚した傷物令嬢はなかなか幸せなようです~

かべうち右近
恋愛
腕に痣があるために婚約者のいなかったミシェルは、手に職をつけるためにギルドへ向かう。 しかし、そこでは門前払いされ、どうしようかと思ったところ、フェアリーに誘拐され…!? 世界樹の森に住まうフェアリーの守り手であるレイモンの嫁に選ばれたミシェルは、仕事ではなく嫁入りすることになるのだが… 「どうせ結婚できないなら、自分の食い扶持くらい自分で稼がなきゃ!」 前向きヒロイン×やんちゃ妖精×真面目ヒーロー この小説は別サイトにも掲載しています。 6/16 完結しました!ここまでお読みいただきありがとうございました! また続きの話を書くこともあるかもしれませんが、物語は一旦終わりです。 お気に入り、♥などありがとうございました!

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語 母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・? ※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています

処理中です...