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❋新しい未来へ❋
62 決別②
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「エヴェリーナ……」
「………殿下!?」
現れるのが早くないだろうか…それに…いきなりの名前呼び。許した覚えなんて全く無いんですけど?“リーナ”呼びじゃないだけ……マシ……ではないよね?
「私の事を、覚えてくれていたんだな」
嬉しそうに笑うその笑顔は、何とも懐かしいものだった。忘れてしまっていたけど、ハロルド様ももともとはとても優しくて誠実な人だった。それが、どこから、どうして狂ってしまったんだろうか?
「自国の王子様を忘れる筈はありません。ところで……どうして竜王国に?護衛の方々はいらっしゃらないのですか?」
「あ…今はその…お忍びで出て来ているんだ…だから、エヴェリーナも…ここで私に会った事は内緒にしてくれると…それと……バレると困るから、“ハリー”と呼んで欲しい」
「……分かり…ました。ここではなんですから……どこか、お店にでも行きますか?」
「そう…だな。喉が乾いたから、何か飲みたいし」
「……では……案内しますね」
そして私は、さっきまで居たお店とは違う位置にあるお店へと向かった。
******
「スコルッシュ様、これは一体どう言う事ですか?貴方は、エヴェリーナの婚約者ではなかったの?」
「…………」
「婚約者であるエヴェリーナが走り去っても、追いかける事もしないなんて……本当に呆れるわ。あぁ、追いかけたところで言い訳もできないからかしら?」
「………」
ーイロハ……楽しみ過ぎていないか?ー
俺は今、予定通りのイロハからの口撃を受けまくっている。その間、嬉しそうに微笑んで俺の腕にネットリ絡みついているは………ジュリエンヌだ。
ーその絡みついている手を……切り落としても良いだろうか?良いだろう?ー
本当に気持ち悪い。気持ち悪いしかない。過去の四度の俺は、よくこんな気持ち悪いモノを側に置いていたなぁ─と感心する程に気持ち悪い。これがイヴだったら………
ー確実に浮島の邸に飛んで帰っている自信があるー
「………」
イヴ──さっきのが演技だとは分かってはいても……あの、ショックを受けたような顔を見た瞬間、心臓が止まるかと思った。逃がすまいと、手を伸ばしそうになった。イヴは………大丈夫だろうか?
「貴方、そろそろその口を閉じては如何かしら?黙ってたいたけれど…私は、トワイアルの王女ジュリエンヌよ。このフィリベール様は、さっきの女─婚約者より私を選んだの。そして、私もフィリベール様を選んだの。この意味分かるかしら?それ以上、私達に何か言うのであれば……私がトワイアル王国の王女として、貴方を訴えるわよ?」
「……“トワイアル王国の王女として訴える”ですか?では……王女とスコルッシュ様の事に関して、トワイアル王国の国王両陛下は……承認済みと言う事ですか?」
「ええ、そうよ」
「一国の王女が、他国の、婚約者の居る相手との仲を認めるとは……ご立派なご両親なんですね」
ー本当に、ご立派な両親だな。親が親なら、子もこうなるのは……仕方無いなー
「もう、私からは何も言う事はありませんから、これで失礼しますね」
そう言ってニッコリ微笑んだ後、イロハはこの店から出て行った。
「邪魔者は居なくなったから、これで、ゆっくり食事ができますわね」
「…そうだな…………」
未だに俺の腕に絡みついている馬鹿女の腕が気持ち悪くて、振り払ってしまいそうになるのを必死で我慢をする。
今すぐイヴを追いかけて行きたいのも我慢をする。今だけは、イロハ達に任せるしかない。
2人を確実に…落とす為に───
******
「竜王国の学園生活はどう?大変なんだろう?」
「はい、色々大変ですけど、毎日が充実していて楽しいです」
ハロルド様と私は、あれからカフェへと向かったのだけど…『この近くに、私が泊まっているホテルがあるから、そこのティールームでお茶をしよう』と言われ、今、そこでお茶を飲んでいる。
このティールームには、私達だけではなく、ホテルの客らしき人も何人か利用している。
そんな中で、ハロルド様とは当たり障りのない会話を続けている。
ー多分、この紅茶には…何か仕掛けられてるよね?ー
飲んだふりをしつつ、ハロルド様の様子を窺っていると
「ところで…前に紹介された、エヴェリーナの婚約者とは…仲良くやっているの?」
「…え?」
「その…エヴェリーナの婚約者が、トワイアルの王女と仲が良いと聞いて……」
「えっと……」
何て答えようか─と考えていると、ハロルド様が私の手を握って持ち上げ、そのまま私の手にキスをした。
「──っ!?」
「エヴェリーナは知らないだろうけど、幼い頃、ハウンゼントの領で君を見掛けて……その時に目にした君の笑顔がとても可愛らしくて忘れられなくて……それが、一目惚れだったんだと思う。ずっとエヴェリーナに会いたくて、またあの時の笑顔を見たくて……私のものにしたかったのに…ようやく会えたエヴェリーナには、竜王国の伯爵の次男とか言う男が居て……それだけでもショックだったのに、メザリンドが私を庇ったせいで、メザリンドなんかが私の婚約者になって……母上からもエヴェリーナを諦めろと言われて……メザリンドも母上も……鬱陶しくて仕方無かったんだ」
なんとも……自分勝手な思考回路の持ち主なんだろうか
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
ও(੭*ˊᵕˋ)੭ᵗʱᵃᵑᵏᵧₒᵤ❥
「………殿下!?」
現れるのが早くないだろうか…それに…いきなりの名前呼び。許した覚えなんて全く無いんですけど?“リーナ”呼びじゃないだけ……マシ……ではないよね?
「私の事を、覚えてくれていたんだな」
嬉しそうに笑うその笑顔は、何とも懐かしいものだった。忘れてしまっていたけど、ハロルド様ももともとはとても優しくて誠実な人だった。それが、どこから、どうして狂ってしまったんだろうか?
「自国の王子様を忘れる筈はありません。ところで……どうして竜王国に?護衛の方々はいらっしゃらないのですか?」
「あ…今はその…お忍びで出て来ているんだ…だから、エヴェリーナも…ここで私に会った事は内緒にしてくれると…それと……バレると困るから、“ハリー”と呼んで欲しい」
「……分かり…ました。ここではなんですから……どこか、お店にでも行きますか?」
「そう…だな。喉が乾いたから、何か飲みたいし」
「……では……案内しますね」
そして私は、さっきまで居たお店とは違う位置にあるお店へと向かった。
******
「スコルッシュ様、これは一体どう言う事ですか?貴方は、エヴェリーナの婚約者ではなかったの?」
「…………」
「婚約者であるエヴェリーナが走り去っても、追いかける事もしないなんて……本当に呆れるわ。あぁ、追いかけたところで言い訳もできないからかしら?」
「………」
ーイロハ……楽しみ過ぎていないか?ー
俺は今、予定通りのイロハからの口撃を受けまくっている。その間、嬉しそうに微笑んで俺の腕にネットリ絡みついているは………ジュリエンヌだ。
ーその絡みついている手を……切り落としても良いだろうか?良いだろう?ー
本当に気持ち悪い。気持ち悪いしかない。過去の四度の俺は、よくこんな気持ち悪いモノを側に置いていたなぁ─と感心する程に気持ち悪い。これがイヴだったら………
ー確実に浮島の邸に飛んで帰っている自信があるー
「………」
イヴ──さっきのが演技だとは分かってはいても……あの、ショックを受けたような顔を見た瞬間、心臓が止まるかと思った。逃がすまいと、手を伸ばしそうになった。イヴは………大丈夫だろうか?
「貴方、そろそろその口を閉じては如何かしら?黙ってたいたけれど…私は、トワイアルの王女ジュリエンヌよ。このフィリベール様は、さっきの女─婚約者より私を選んだの。そして、私もフィリベール様を選んだの。この意味分かるかしら?それ以上、私達に何か言うのであれば……私がトワイアル王国の王女として、貴方を訴えるわよ?」
「……“トワイアル王国の王女として訴える”ですか?では……王女とスコルッシュ様の事に関して、トワイアル王国の国王両陛下は……承認済みと言う事ですか?」
「ええ、そうよ」
「一国の王女が、他国の、婚約者の居る相手との仲を認めるとは……ご立派なご両親なんですね」
ー本当に、ご立派な両親だな。親が親なら、子もこうなるのは……仕方無いなー
「もう、私からは何も言う事はありませんから、これで失礼しますね」
そう言ってニッコリ微笑んだ後、イロハはこの店から出て行った。
「邪魔者は居なくなったから、これで、ゆっくり食事ができますわね」
「…そうだな…………」
未だに俺の腕に絡みついている馬鹿女の腕が気持ち悪くて、振り払ってしまいそうになるのを必死で我慢をする。
今すぐイヴを追いかけて行きたいのも我慢をする。今だけは、イロハ達に任せるしかない。
2人を確実に…落とす為に───
******
「竜王国の学園生活はどう?大変なんだろう?」
「はい、色々大変ですけど、毎日が充実していて楽しいです」
ハロルド様と私は、あれからカフェへと向かったのだけど…『この近くに、私が泊まっているホテルがあるから、そこのティールームでお茶をしよう』と言われ、今、そこでお茶を飲んでいる。
このティールームには、私達だけではなく、ホテルの客らしき人も何人か利用している。
そんな中で、ハロルド様とは当たり障りのない会話を続けている。
ー多分、この紅茶には…何か仕掛けられてるよね?ー
飲んだふりをしつつ、ハロルド様の様子を窺っていると
「ところで…前に紹介された、エヴェリーナの婚約者とは…仲良くやっているの?」
「…え?」
「その…エヴェリーナの婚約者が、トワイアルの王女と仲が良いと聞いて……」
「えっと……」
何て答えようか─と考えていると、ハロルド様が私の手を握って持ち上げ、そのまま私の手にキスをした。
「──っ!?」
「エヴェリーナは知らないだろうけど、幼い頃、ハウンゼントの領で君を見掛けて……その時に目にした君の笑顔がとても可愛らしくて忘れられなくて……それが、一目惚れだったんだと思う。ずっとエヴェリーナに会いたくて、またあの時の笑顔を見たくて……私のものにしたかったのに…ようやく会えたエヴェリーナには、竜王国の伯爵の次男とか言う男が居て……それだけでもショックだったのに、メザリンドが私を庇ったせいで、メザリンドなんかが私の婚約者になって……母上からもエヴェリーナを諦めろと言われて……メザリンドも母上も……鬱陶しくて仕方無かったんだ」
なんとも……自分勝手な思考回路の持ち主なんだろうか
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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