贄の令嬢はループする

みん

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❋新しい未来へ❋

59 嵐の前の…

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『……四度も噛み殺されましたから、そのうち……いつか、仕返ししてやろうかな?何て……思ったりもしてたりします。ふふっ』



確かに、イヴが俺を受け入れてくれて番となった時、イヴがそんな可愛い事を言っていた。
イヴからの仕返しなんて、寧ろ大歓迎だ─なんて思ったのも確かだ。勿論、本気の仕返しで刺されたりなんかしても……甘んじて受け入れるつもりだった。それが……そのイヴの言う仕返しとやらが………

まさかの“頬にキス”だとは────


「誰が、そんな可愛いお返しの予想ができるんだ!寧ろ、ありがとう!イヴ!──じゃないな!」

1人叫んでから我に返る。

ーやってしまったー

俺の腕の中でグッタリして気を失ってしまったイヴ。
頬にキスするつもりだったらしいが、それが唇に当たってしまった─と言っていたが、それでも、偶発事故だったとしても、初めてのイヴからのキスである事には違い無い訳で────

……理性を失ってガッツいてしまった───

必死になって、抵抗になっていない抵抗をしているイヴが可愛くて……“全く慣れてません!”みたいなたどたどしい反応に更に煽られて……更に追い打ちを掛けてしまった。「……し………ぬ……」その言葉にようやく我に返った。唇を離すと、イヴはそのまま俺にグッタリともたれ掛かってきた。

「バカフィル……フィルのバカ…」
「──ゔっ…破壊力……くっそ………」

更に追い打ちをかけそうなるのを、グッと力を入れて耐える。

涙目で俺を睨んでいるつもりのイヴは、可愛い以外の何物でもない。全く怖くないからな?煽っている─と思われても仕方無いからな?

“バカフィル”─まさかのイヴからのバカ呼ばわり…イヴが言うと、“バカ”も可愛く聞こえるのは……俺がおかしいだけなんだろうか?

イヴがする事成す事、全てが可愛くしか見えない。


「イヴが可愛いのが悪い」
「何でそうなるの!?」

ギョッとして目を大きく見開いた後、イヴは少し何かを考えるように口を閉じた後───また俺の腕の中で意識を失ってしまった。

ーやり過ぎたー

兎に角、イヴをベッドに───離したくない。このまま抱いておくのも…アリだよな?いやいやいや…

「あぁ、そうか、一緒に寝れば良いのか」









******


「ん───」

何だろう………背中が温かいような……体が重いような………

「?」

あれ?私……いつの間に寝てしまったんだろうか?
あれ?フィルを出迎えて………

「あぁ!!??」

そこで色々と思い出してバチッと目が覚めた。

「えっ!?」

起き上がろうとして、ようやく気が付いた。
私が今居るのはベッドの上だ。ただ、いつもの布団とは違う気がするどころか、いつもの部屋とは違う気がするのは………気がするだけではないようだ。
そして、私のお腹に回されている腕と、私の頭の下に腕があり、背中に何かがピッタリくっついている。

ソロソロと顔だけを後ろに向けると「──っ!!」やっぱり……フィルが居た。

ーな…何で!?ー

えっと……服は…着ているし、昨日と同じ服で、シワシワにはなっているけど、着ている状態だ。うん。フィルが、私の寝込みを襲う─なんて事は絶対に無い。きっと、意識を失った私を運んでくれて、フィルも疲れていたからそのまま一緒に寝てしまった─みたいな?

「うん。その通り。イヴがあまりにもグッスリ眠ってるから、つられて……一緒に寝てしまったみたいだ」
「うえっ!?私、全部口に出してた!?」
「ははっ──イヴは本当に可愛いな……おはよう」

ニッコリ微笑まれて、またまたサラッと流れるようにキスをされた。寝起きのイケメンの爽やか笑顔とキスは……ある意味、とても心臓に悪いものだった。






******


「ハロルド様が!?」
「どうやら、竜王国に来ているらしい」
「………」

恥ずかしながら、あれから急いでお風呂に入って着替えてから、今朝は久し振りにフィルと朝食を食べた。それから、本当は昨日のうちにする話を今、フィルから聞かされたところだった。

“フィリベール=スコルッシュ”とジュリエンヌ様が初めて会って仕掛けられたあの日から、二度程接触したそうだが、その2回ともイーリャの実が使用されたそうだ。「大丈夫ですか?」と訊けば、何と、もう既にイーリャの実と偽物をすり替えているようで、ジュリエンヌ様はそうとは知らず、その偽物を使用しているそうだ。そして、その偽物を使用すれば分かるようになっているらしく、ある意味、それも物的証拠となるだろう─との事だった。
そして、その本物の方は、極秘のイーリャの実の研究員が調べを進めているそうだ。

そして、フィルは、そのイーリャの実の効能に掛かっているフリをしていて、ジュリエンヌ様もそれを疑っている様子はなく、次の段階に進み、ハロルド様を極秘のうちに竜王国へと呼び出したそうだ。

「でも……ハロルド様が国王両陛下の許可なく竜王国に来る事なんて…」

ある意味切り捨てられた王子で、泳がされている─とは言っても、問題を起こすと分かっていて、竜王国へ行く事を許可するとは思えない。

「ジュリエンヌ=トワイアルなら…許可なんてなくても、それが簡単にできるんだ」








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(,,ᴗ  ̫ᴗ,,)ꕤ*.゚


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