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❋新しい未来へ❋
58 仕返し?
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*フィリベール視点*
「悪いのは、イーリャの実を使用したジュリエンヌ様であって、フィルじゃないから、謝らないで下さい。それに……こうやって抱きしめてくれたら、すごく安心します」
「それなら、いつだって…いくらでも抱きしめるから」
「………ありがとう」
暫くすると、イヴは俺の腕の中で寝てしまった。
四度も噛み殺したのは俺なのに、俺を責めるどころか安心する─と言うイヴ。
イヴが安心すると言うなら、いつだっていくらだって抱きしめる。抱きしめて、閉じ込めて───は、我慢だ。人間は、囲われて閉じ込められるのは嫌がるそうだ。
『囲う?閉じ込める?やだ、何?監禁!?』
竜の番への愛情は重い─と言う話になった時、その場に居た唯一の人間のイロハに……ドンびかれた…。
『言い方は悪いかもしれないけど…独りで頑張り続けながら四度も噛み殺されて、ようやく自由を得てデッドエンドから逃れたリーナを、今度は……番と言う名の鎖でリーナの自由を奪うの?』
『自分を四度も噛み殺した相手を受け入れて番になったんだよ?リーナがフィリベールを裏切る事はないと思う。なら、リーナを自由にさせてあげるのが……本当の愛情じゃない?』
竜族や獣人族にとっての番が、どれほど大切な存在なのか…人間族には、本当の意味で理解する事は無理だろう。だから、イロハは簡単にそんな事を言えるんだ──でも、イロハの言っている事もまた……間違ってはいない。
イヴは、過去の四度、成人する前に俺に噛み殺されている。それ迄も、ハロルドのせいで自由がない生活を送っていた。
今世でようやく自由と未来を手に入れたイヴ。
自国民でも難しい、王立学園の薬学部に留学生としてやって来た。毎日大変そうだが、必死に頑張っているのを、いつも間近で見て知っている。
番になってからも、俺や周りに甘える事がない。もっと…甘えてくれたら─ドロドロに甘やかして、囲って閉じ込めて──それはきっと、イヴは望んでいない。
俺の腕の中で安心したように、スヤスヤと寝ているイヴ。イヴが俺に求めているのは──“安心”なんだろう。
少し力を入れるだけで“死んでしまうのでは?”と思う程小さくて可愛い存在。
ー過去4回、死んでしまったが……ー
五度目でようやく手にした温もり。俺も、この温もりを感じる事でようやく安心するのだ。この温もりを確認しなければ……最強の黒龍と言われているが、怖くて怖くて仕方無いのだ。自分の為だけに、イヴを閉じ込めて安心する事は簡単だ。でも、それだと、きっとイヴは…本当の意味での幸せには…ならないだろう。
俺は、笑っているイヴは勿論の事、困った顔のイヴも怒った顔のイヴも泣いている顔のイヴも好きだ。
自由に動き回るイヴが───好きだ。
だから、俺は、イヴを番だから─と、縛り付ける事はしない。俺が、イヴと一緒に動けば良いだけなのだ。
だから、イヴ……お願いだから───
「俺の気持ちと同じぐらい、俺の事…好きになって……」
*エヴェリーナ視点*
「おかえりな───」
「ただいま!」
「ゔっ」
今日もまた、執務を終えて帰って来たフィルに、抱きしめられている─からの……「ひゃあっ!」お姫様抱っこだ。
「フィル!?」
「ちょっとイヴが足りないから、抱っこして移動する」
「はい?ちょっと意味が分からないから下ろし──」
「意味が分からなくても良いから、俺の精神安定の為におとなしく抱っこされてて欲しい」
ー久し振りの犬降臨かー
「わ…分かりました………」
フィルは詳しくは言わないけど、きっと、あの2人に関して何かあったんだろう。春休暇も後10日程で終わる。なら…そろそろ、あの2人が何かしてくるだろう─と予想はしていたけど。
「えっと…大丈夫?」
「イヴとくっついていると大丈夫だ。ちゃんと、イヴにも説明するから」
「分かった」
横抱きにされると、普段見上げなければならないフィルの顔が、同じ高さか、少し私が見下ろすぐらいの位置にある。
初めて“フィリベール=スコルッシュ”として会った時よりも長くなった黒髪は、後ろで緩く一つに括られている。見る角度によって濃藍色にも黒色にも見える瞳は、いつも綺麗だなと思う。
「…………」
「ん?どうかした?イ───」
いつもの仕返しに──と、フィルの頬に不意打ちにキスを─するつもりが、フィルが顔ごと私の方へと向けて来たせいで、頬ではなく……唇にキスをしてしまった。
「「………」」
ピタッ─と、歩みも止まってしまったフィル。
「えっと……あのね?いつもの仕返し?にね、頬にでもキスをして驚かそうかな?なんて思ってただけだったんだけどね?フィルが…こっちを向くから……唇に………だから……えっと……怒ってる??」
フィルが無表情で無反応だ。
「あの…ごめ───んっ!?」
横抱きされたまま、器用?に押さえ付けるように私の頭に手を回して、フィルからキスをされた。
ー今迄のキスは何だったんだろう?ー
とイマイチ働かない頭で思考する。
まともに息ができないようなキスになり、酸素を求めて口を開けば更に追い詰められて……口を離そうにも、頭をガッツリ押さえられていて離せず、そのまま更に追い詰められて……。
「………し……ぬ…………」
何とか言えた“死ぬ”で、ようやく止まったフィル。そのままグッタリとフィルにもたれかかり「バカフィル……フィルのバカ…」と訴えれば「──ゔっ…破壊力……くっそ………」とグッと眉間に皺を寄せて唸った後
「イヴが可愛いのが悪い」
「何でそうなるの!?」
何故か、私が怒られた。
仕返ししようとした私が馬鹿だったのかもしれない。
もう、仕返しなんて……しない───
そこで、私の意識が途切れた。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*´ ³ `)人(*´˘`*)人(ˊᗜˋ*)
「悪いのは、イーリャの実を使用したジュリエンヌ様であって、フィルじゃないから、謝らないで下さい。それに……こうやって抱きしめてくれたら、すごく安心します」
「それなら、いつだって…いくらでも抱きしめるから」
「………ありがとう」
暫くすると、イヴは俺の腕の中で寝てしまった。
四度も噛み殺したのは俺なのに、俺を責めるどころか安心する─と言うイヴ。
イヴが安心すると言うなら、いつだっていくらだって抱きしめる。抱きしめて、閉じ込めて───は、我慢だ。人間は、囲われて閉じ込められるのは嫌がるそうだ。
『囲う?閉じ込める?やだ、何?監禁!?』
竜の番への愛情は重い─と言う話になった時、その場に居た唯一の人間のイロハに……ドンびかれた…。
『言い方は悪いかもしれないけど…独りで頑張り続けながら四度も噛み殺されて、ようやく自由を得てデッドエンドから逃れたリーナを、今度は……番と言う名の鎖でリーナの自由を奪うの?』
『自分を四度も噛み殺した相手を受け入れて番になったんだよ?リーナがフィリベールを裏切る事はないと思う。なら、リーナを自由にさせてあげるのが……本当の愛情じゃない?』
竜族や獣人族にとっての番が、どれほど大切な存在なのか…人間族には、本当の意味で理解する事は無理だろう。だから、イロハは簡単にそんな事を言えるんだ──でも、イロハの言っている事もまた……間違ってはいない。
イヴは、過去の四度、成人する前に俺に噛み殺されている。それ迄も、ハロルドのせいで自由がない生活を送っていた。
今世でようやく自由と未来を手に入れたイヴ。
自国民でも難しい、王立学園の薬学部に留学生としてやって来た。毎日大変そうだが、必死に頑張っているのを、いつも間近で見て知っている。
番になってからも、俺や周りに甘える事がない。もっと…甘えてくれたら─ドロドロに甘やかして、囲って閉じ込めて──それはきっと、イヴは望んでいない。
俺の腕の中で安心したように、スヤスヤと寝ているイヴ。イヴが俺に求めているのは──“安心”なんだろう。
少し力を入れるだけで“死んでしまうのでは?”と思う程小さくて可愛い存在。
ー過去4回、死んでしまったが……ー
五度目でようやく手にした温もり。俺も、この温もりを感じる事でようやく安心するのだ。この温もりを確認しなければ……最強の黒龍と言われているが、怖くて怖くて仕方無いのだ。自分の為だけに、イヴを閉じ込めて安心する事は簡単だ。でも、それだと、きっとイヴは…本当の意味での幸せには…ならないだろう。
俺は、笑っているイヴは勿論の事、困った顔のイヴも怒った顔のイヴも泣いている顔のイヴも好きだ。
自由に動き回るイヴが───好きだ。
だから、俺は、イヴを番だから─と、縛り付ける事はしない。俺が、イヴと一緒に動けば良いだけなのだ。
だから、イヴ……お願いだから───
「俺の気持ちと同じぐらい、俺の事…好きになって……」
*エヴェリーナ視点*
「おかえりな───」
「ただいま!」
「ゔっ」
今日もまた、執務を終えて帰って来たフィルに、抱きしめられている─からの……「ひゃあっ!」お姫様抱っこだ。
「フィル!?」
「ちょっとイヴが足りないから、抱っこして移動する」
「はい?ちょっと意味が分からないから下ろし──」
「意味が分からなくても良いから、俺の精神安定の為におとなしく抱っこされてて欲しい」
ー久し振りの犬降臨かー
「わ…分かりました………」
フィルは詳しくは言わないけど、きっと、あの2人に関して何かあったんだろう。春休暇も後10日程で終わる。なら…そろそろ、あの2人が何かしてくるだろう─と予想はしていたけど。
「えっと…大丈夫?」
「イヴとくっついていると大丈夫だ。ちゃんと、イヴにも説明するから」
「分かった」
横抱きにされると、普段見上げなければならないフィルの顔が、同じ高さか、少し私が見下ろすぐらいの位置にある。
初めて“フィリベール=スコルッシュ”として会った時よりも長くなった黒髪は、後ろで緩く一つに括られている。見る角度によって濃藍色にも黒色にも見える瞳は、いつも綺麗だなと思う。
「…………」
「ん?どうかした?イ───」
いつもの仕返しに──と、フィルの頬に不意打ちにキスを─するつもりが、フィルが顔ごと私の方へと向けて来たせいで、頬ではなく……唇にキスをしてしまった。
「「………」」
ピタッ─と、歩みも止まってしまったフィル。
「えっと……あのね?いつもの仕返し?にね、頬にでもキスをして驚かそうかな?なんて思ってただけだったんだけどね?フィルが…こっちを向くから……唇に………だから……えっと……怒ってる??」
フィルが無表情で無反応だ。
「あの…ごめ───んっ!?」
横抱きされたまま、器用?に押さえ付けるように私の頭に手を回して、フィルからキスをされた。
ー今迄のキスは何だったんだろう?ー
とイマイチ働かない頭で思考する。
まともに息ができないようなキスになり、酸素を求めて口を開けば更に追い詰められて……口を離そうにも、頭をガッツリ押さえられていて離せず、そのまま更に追い詰められて……。
「………し……ぬ…………」
何とか言えた“死ぬ”で、ようやく止まったフィル。そのままグッタリとフィルにもたれかかり「バカフィル……フィルのバカ…」と訴えれば「──ゔっ…破壊力……くっそ………」とグッと眉間に皺を寄せて唸った後
「イヴが可愛いのが悪い」
「何でそうなるの!?」
何故か、私が怒られた。
仕返ししようとした私が馬鹿だったのかもしれない。
もう、仕返しなんて……しない───
そこで、私の意識が途切れた。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*´ ³ `)人(*´˘`*)人(ˊᗜˋ*)
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