贄の令嬢はループする

みん

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❋新しい未来へ❋

53 見限られた王子

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❋トルトニア王国❋


「ハロルド、メザリンド嬢は元気にしているの?」
「はい。元気にしていますが…何か?」
「“何か?”ねぇ……ハロルド、私が何も知らないと…思っているの?」
「………」
「黙っていると言う事は、あなたも理解はしているのね?“第二王子がメザリンド婚約者よりもトワイアル王女を優遇している”“第二王子がメザリンド婚約者を蔑ろにしている”と言われている事を、貴方は知っているの?」
「………」
「メザリンド嬢が負った傷の事を、忘れてはいませんね?貴方は、メザリンド嬢に更に……傷を付けるつもりなの?」
「………」
「……これ以上、メザリンド嬢に傷を付けるのなら、私は王妃として考えなければならなくなる─と言う事を覚えておきなさい。それと──まさかとは思うけれど……未だにハウンゼント嬢に執着していると言う事は…無いわね?」
「──っ!それは…ありません。……エンヌ殿下との付き合いも、これからは気を付けます。では…失礼します…」

ハロルドは早口にそれだけ言うと、踵を返し、トルトニア王妃の自室から出て行った。
その、ハロルドが出て行った後の扉を数秒見つめた後、王妃は深くため息を吐いた。



「ハロルドは……もう駄目ね………」

私の言葉で気付ければ良いけど、きっと気付かないまま行動するだろう。トワイアル王女と共に……

「ハロルドの処分は、にお任せします。また……その時は、改めて謝罪をしに伺わせていただきます─と……」

部屋の隅に控えていた女官に声を掛けると、その女官は「承知しました」と頭を下げた後、そのまま姿を消した。










******


「もうすぐ春休暇になるけど、その前に、イヴに話しておかないといけない事があるんだ」

無事に進級試験に合格し、高等部2年生も後1週間で終わりとなり、1ヶ月の春休暇へと入る。
そんな春休暇に入る1週間前の週末、フィルと2人で浮島の邸の庭園でのんびりとお茶をしていると、フィルが眉間に皺を寄せて口を開いた。
この眉間に皺を寄せる顔は、久し振りに見る。以前はよく目にしていたけど、最近では殆ど目にする事がなかった。

「話ですか?何でしょう?」

何となく、良くない話だろう─とは思っていたけど………本当に良くない……気分が悪くなる話だった。






「───そう言う事だから、できれば、この春休暇の間は竜王国に居て欲しいと思っている。この話はハウンゼント侯爵夫妻にも伝えてある。」
「あの…一つだけ…メザリンド様は、大丈夫なんですか?」
「あぁ、それも大丈夫だ。侯爵には伝えているし、トルトニアの王が護衛を付けてくれているそうだ」
「なら良かった……けど……」

四度目の時、メザリンド様があれほどハロルド様に自分をアピールしていたのに、結局は男爵家の子息との子を身籠っている事が判明して、ハロルド様の婚約者候補から外れてしまった。

「……まさか…………」

ハッとして目の前に居るフィルに視線を向けると、フィルは軽く頷いた。

「多分、そうだったんだろうと思う」
「──っ!」

ー何て…人達なんだろうー

自分の思いの為に、他人を平気で傷付け陥れ……贄にされて………

「赦せない────」
「イヴ………」

いつの間にか、私の隣に来ていたフィルに、優しく抱き込まれた。黒龍となったフィルも温かいけど、フィルに抱きしめられると、この温もりにホッと安心する。顔を隠すようにフィルの胸に顔を埋める。

「私の事、狭量だなって…呆れたりしてませんか?」
「狭量?いや、寧ろ……広過ぎるだろう?でなければ……俺と番になんて……なってくれてない…だろう?」
「………ふふっ…自分で言って…ダメージ喰らってます?」
「めちゃくちゃ喰らってる……イヴ、本当に、俺を受け入れてくれてありがとう」
「ぐぅ──っ」

ギュウッ─と力を入れて抱きしめられて、変な声が出るのはいつものパターンだ。ある意味、五度目の今世もフィルに圧死させられるのでは?と思ったりもしている。

「んー…食べられないだけ……マシなのかなぁ?」
「ん?食べられる?」
「フィル、何度も言うけど……力加減に気を付けて下さいね。今世で、食べられる─噛み付かれる心配はしてないけど、圧死させられるのも……嫌なので……」
「圧死!?分かった!すまない!気を付ける!!でも………ある意味……いつかは…事にはなるだろうけど……」
「ん?何か言いました?」
「ん?いや、何も言ってない」

ニッコリ微笑むフィル。その笑顔が、いつもより綺麗に見えたのは……気のせいだろうか?

「兎に角、あの2人はおそらく、この春休暇の間に動くと思う。でも…イヴには指…髪の毛1本にも触れさせない。イヴは、俺が護るから」
「はい。ありがとうございます」


そうして、私は春休暇の間は竜王国に留まる事になった。








❋誤字報告、ありがとうございます❋
(。>﹏<。)💦

❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*ˊ꒳ˋ* )****

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