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❋新しい未来へ❋
51 ジュリエンヌ=トワイアル
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“黒龍の巫女見習い”
私─ジュリエンヌ=トワイアル─の治癒力は弱かったようで、見習い扱いとなった。
「既に、ベテランの黒龍の巫女が2人居ますし、竜王陛下の竜力も特に問題はありませんので、トワイアル王女については、今後の成長次第と言う事にさせていただきます」
人間や獣人相手なら、簡単に治癒できるぐらいの怪我だったのに、相手が竜人だと時間差で発動され、完璧に治癒できなかった。
「どうして、うまくいかないの?」
何もかもがうまくいかなかった。
先ずは、選定式に竜王陛下が居なかった事。イーリャの実を使ったのにも関わらず、何も得る事ができなかったのだ。
“選定式に、竜王がお忍びで参加する”
そう情報を得て、イーリャの実を使ったのに。
ならば─と、見習いを理由に王城へ通う事を願い出たのに。
「確か、トワイアル王女はトルトニアへの留学を希望されていましたね?その留学は、予定通りして下さい。まだまだお若いですから、今学べる事は学んで欲しい─と、竜王陛下より言葉を頂いております。トルトニアの方にも……“黒龍の巫女見習い”ですが宜しくお願いします─と、伝えております。来年度から2年間は、トルトニアで頑張って下さい」
何故か、私がトルトニアへ留学したいと言う事を知られていた。見習いのまま2年もトルトニアで無駄な時間を過ごす事になってしまった。
2年──
それだけ我慢した後、見習いを口実に王城に住まわせてもらおう。そうすれば…竜王陛下にも会えるだろうし、竜王陛下も一度、私に会えば……私の事を気に入ってくれる筈。喩え、気に入られなくとも、私にはイーリャの実がある。だから、2年。2年だけ、我慢すれば良い。
「ふふっ…2年後が…楽しみだわ……」
******
「ようこそいらっしゃいました。私は、ハロルド=トルトニアです。王女殿下とは同じ学年になりますので、何かあればすぐ仰って下さい。それと─」
「私、ハロルド様の婚約者のメザリンドと申します。私も同じ学年になります。宜しくお願い致します」
どうやら、この2人が私の相手をしてくれるようだ。
ハロルド様は、“王子様然り”な方で、婚約者とやらのメリザンド嬢は、少し気が強そうな普通の……大したことない令嬢ね。
ーこんな令嬢の、何処が良いのかしら?きっと、政略的な婚約者なのね…可哀想にー
「私、ジュリエンヌ=トワイアルです。これから2年間、宜しくお願いしますわ。どうぞ、私の事は“ジュリエンヌ”とお呼び下さい」
ニッコリ微笑めば、ハロルド様は少しだけ顔を赤らめ、メザリンド様もニコリと微笑んだ。
「お2人は、昨日はどちらへ行かれたのですか?」
留学生活が始まり3ヶ月経った頃。それ迄は3人で行動する事が多かったが、昨日は初めてハロルド様と2人だけで、新しくできた評判の良いカフェに行ったのだ。それを、翌日の今日、メザリンド様から、何処に行ったのか?と訊かれたのだ。
顔は笑っているけど、内心では怒っているのがよく分かる。
「メザリンド様、ごめんなさい。帰城する時にどうしても気になってしまって…ハロルド様に付き合っていただいたの…」
私は留学中、黒龍の巫女見習いは極秘扱いではあるが、王女であると言う事で、学園の寮ではなく王城の客室で過ごす事になり、登下校はハロルド様と共にしている。その為、自然と……ハロルド様との距離が縮まっているのだ。それは仕方の無い事だろう。メザリンド様より、私の方が……
「そうですか。ですが……ハロルド様は第二王子と言う身分で、私と言う婚約者も居ますので、2人きりで出掛けると言う事は、今後控えていただけますか?その様な事が続きますと、醜聞になりかねませんので。」
「メザリンド、それは少し、ジュリエンヌ様に対して言い過ぎではないか?」
ー王女である私に、たかが侯爵令嬢が物を申すとはー
腹立たしいが、ここは我慢をしていると、ハロルド様がメザリンドを窘めた。
「“言い過ぎ”ですか?私は、本当の事を述べているだけです。現に、“婚約者ではない2人がデートをしていた”と、私に親切に教えて下さった令嬢がいたんです。この事が、国王両陛下の耳に入ればどうなるか─殿下は理解されていますか?」
「………分かった…今後は気を付ける。」
「…………」
ー何て弱い王子様なのかしらー
やっぱり、顔だけの王子様では、私の相手は無理だと言う事ね。それに……この女は、本当に気に食わない。私がトワイアルの王女で、黒龍の巫女だと知っているのにも関わらず、私に媚びる様子が全く無い。
ーどうしてやろうかしら?ー
それから半年程したある日、更にハロルド様と距離が近付き、ある真実を知る事ができた。
メザリンドとは、自分のせいで怪我をしてしまったせいで結ばれた婚約である事。
本当は好きな令嬢がいた事。
今でもその令嬢が好きだと言う事。
その令嬢が今、竜王国に留学中である事。
その令嬢に、恋人らしき令息がいると言う事。
私はすぐに、そのハロルド様が思いを寄せる令嬢の事を調べさせた。
“エヴェリーナ=ハウンゼント”
竜王国学園高等部の1年生。
護衛、恋人の“フィリベール=スコルッシュ”
眉目秀麗で、竜力も強い。竜王の側近の可能性有り。
彼の姿絵は、黒色の髪に濃藍色の瞳をした美男子だった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
୧(⑅˃ᗜ˂⑅)୨
私─ジュリエンヌ=トワイアル─の治癒力は弱かったようで、見習い扱いとなった。
「既に、ベテランの黒龍の巫女が2人居ますし、竜王陛下の竜力も特に問題はありませんので、トワイアル王女については、今後の成長次第と言う事にさせていただきます」
人間や獣人相手なら、簡単に治癒できるぐらいの怪我だったのに、相手が竜人だと時間差で発動され、完璧に治癒できなかった。
「どうして、うまくいかないの?」
何もかもがうまくいかなかった。
先ずは、選定式に竜王陛下が居なかった事。イーリャの実を使ったのにも関わらず、何も得る事ができなかったのだ。
“選定式に、竜王がお忍びで参加する”
そう情報を得て、イーリャの実を使ったのに。
ならば─と、見習いを理由に王城へ通う事を願い出たのに。
「確か、トワイアル王女はトルトニアへの留学を希望されていましたね?その留学は、予定通りして下さい。まだまだお若いですから、今学べる事は学んで欲しい─と、竜王陛下より言葉を頂いております。トルトニアの方にも……“黒龍の巫女見習い”ですが宜しくお願いします─と、伝えております。来年度から2年間は、トルトニアで頑張って下さい」
何故か、私がトルトニアへ留学したいと言う事を知られていた。見習いのまま2年もトルトニアで無駄な時間を過ごす事になってしまった。
2年──
それだけ我慢した後、見習いを口実に王城に住まわせてもらおう。そうすれば…竜王陛下にも会えるだろうし、竜王陛下も一度、私に会えば……私の事を気に入ってくれる筈。喩え、気に入られなくとも、私にはイーリャの実がある。だから、2年。2年だけ、我慢すれば良い。
「ふふっ…2年後が…楽しみだわ……」
******
「ようこそいらっしゃいました。私は、ハロルド=トルトニアです。王女殿下とは同じ学年になりますので、何かあればすぐ仰って下さい。それと─」
「私、ハロルド様の婚約者のメザリンドと申します。私も同じ学年になります。宜しくお願い致します」
どうやら、この2人が私の相手をしてくれるようだ。
ハロルド様は、“王子様然り”な方で、婚約者とやらのメリザンド嬢は、少し気が強そうな普通の……大したことない令嬢ね。
ーこんな令嬢の、何処が良いのかしら?きっと、政略的な婚約者なのね…可哀想にー
「私、ジュリエンヌ=トワイアルです。これから2年間、宜しくお願いしますわ。どうぞ、私の事は“ジュリエンヌ”とお呼び下さい」
ニッコリ微笑めば、ハロルド様は少しだけ顔を赤らめ、メザリンド様もニコリと微笑んだ。
「お2人は、昨日はどちらへ行かれたのですか?」
留学生活が始まり3ヶ月経った頃。それ迄は3人で行動する事が多かったが、昨日は初めてハロルド様と2人だけで、新しくできた評判の良いカフェに行ったのだ。それを、翌日の今日、メザリンド様から、何処に行ったのか?と訊かれたのだ。
顔は笑っているけど、内心では怒っているのがよく分かる。
「メザリンド様、ごめんなさい。帰城する時にどうしても気になってしまって…ハロルド様に付き合っていただいたの…」
私は留学中、黒龍の巫女見習いは極秘扱いではあるが、王女であると言う事で、学園の寮ではなく王城の客室で過ごす事になり、登下校はハロルド様と共にしている。その為、自然と……ハロルド様との距離が縮まっているのだ。それは仕方の無い事だろう。メザリンド様より、私の方が……
「そうですか。ですが……ハロルド様は第二王子と言う身分で、私と言う婚約者も居ますので、2人きりで出掛けると言う事は、今後控えていただけますか?その様な事が続きますと、醜聞になりかねませんので。」
「メザリンド、それは少し、ジュリエンヌ様に対して言い過ぎではないか?」
ー王女である私に、たかが侯爵令嬢が物を申すとはー
腹立たしいが、ここは我慢をしていると、ハロルド様がメザリンドを窘めた。
「“言い過ぎ”ですか?私は、本当の事を述べているだけです。現に、“婚約者ではない2人がデートをしていた”と、私に親切に教えて下さった令嬢がいたんです。この事が、国王両陛下の耳に入ればどうなるか─殿下は理解されていますか?」
「………分かった…今後は気を付ける。」
「…………」
ー何て弱い王子様なのかしらー
やっぱり、顔だけの王子様では、私の相手は無理だと言う事ね。それに……この女は、本当に気に食わない。私がトワイアルの王女で、黒龍の巫女だと知っているのにも関わらず、私に媚びる様子が全く無い。
ーどうしてやろうかしら?ー
それから半年程したある日、更にハロルド様と距離が近付き、ある真実を知る事ができた。
メザリンドとは、自分のせいで怪我をしてしまったせいで結ばれた婚約である事。
本当は好きな令嬢がいた事。
今でもその令嬢が好きだと言う事。
その令嬢が今、竜王国に留学中である事。
その令嬢に、恋人らしき令息がいると言う事。
私はすぐに、そのハロルド様が思いを寄せる令嬢の事を調べさせた。
“エヴェリーナ=ハウンゼント”
竜王国学園高等部の1年生。
護衛、恋人の“フィリベール=スコルッシュ”
眉目秀麗で、竜力も強い。竜王の側近の可能性有り。
彼の姿絵は、黒色の髪に濃藍色の瞳をした美男子だった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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