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❋新しい未来へ❋
48 フィリベール②
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身分を隠してエヴェリーナの側に居る日々は、楽しかった。
人間族のエヴェリーナとイロハは、兎に角竜人達からモテた。2人とも無自覚だが、小柄で見た目も可愛らしい顔をしている。2人が、クラスから少し離れた教室に移動する為に必死に歩いている姿を、竜人達は微笑ましい顔で見ている。なんなら、おぶって運んであげようか?とでも言いたげに見ている。
勿論、その中には、恋愛対象として2人を見ている者もいるが───
「「…………」」
俺とアラスターがニッコリ微笑めば、殆どの者が理解してくれた。
獣人よりも竜人は、相手の力を推し量る能力が高い。それ故に、俺が竜王だとは知らなくとも、竜力が強いと言う事は分かっているから、決して俺に何かを言ったりしたりする事はない。そんな俺がエヴェリーナを気に入っていると言う事も、本人以外には周知の事実になっている。
イロハも然り
イロハは、他人の事に関しては敏いのに、自分の事となると鈍いようで、アラスターからの好意には全く気付いていない。イロハはイロハで、アラスターに対して良い感情を持っているとは思うけど。
そこで届いた、トルトニア王国第二王子の誕生会の招待状。態々王家を通しての招待だった。
「いっそのこと、やってしまうか?」
「…………陛下……………………」
「…冗談だ…………」
つい本音──冗談をこぼせば、宰相のアラールに呆れた目を向けられた。
「ちゃんと分かっている。今世のアイツが、まだエヴェリーナに手を出していない事は。でも…先手を打っておくのも…良いだろう?」
竜王の俺の、黒龍としての姿を知っているのは俺の側近達とトルトニアとトワイアルの国王と王妃。人化の姿を知っているのは、俺の側近達だけだ。
ただ、トルトニアの国王と王妃には、竜王の瞳が濃藍色だと言う事は知らせてある。
かつて、一度目の時はトワイアルの国王にも知らせたが、二度目以降は知らせていない。トワイアルは、今世のこれからの動き次第で、今の王族は切り捨てる予定だ。
裏切り者に、黒龍の守護を任せる訳にはいかないのだ。現アルクシェリア女神と、アルピーヌ大神官の許可も得ている。
「なら……陛下もハウンゼント嬢と一緒に参加されますか?転移魔法陣を使用すれば、日帰りでも可能です」
「そうだな。そうすれば、エヴェリーナも学園を休まずに済むな…。よし、エヴェリーナのドレスを新調したいから、手配を頼む」
「承知しました」
それから、エヴェリーナを丸め込──言い聞かせて、誕生会に一緒に行く約束をとりつけた。
不安げな顔をするエヴェリーナを見ると、ギュッと腕の中に閉じ込めてしまいたくなる。それを何とか我慢して…ブルーグレーのサラサラな髪を掬って…キスをすると、エヴェリーナの顔が真っ赤になった。
ー可愛い過ぎるー
******
ドレスを着たエヴェリーナは……本当に綺麗だった。Aラインの濃藍色のドレスで、裾の方にはラベンダー色を入れている。ネックレスはラベンダー色だけど、ピアスは濃藍にも黒にも見える魔石を使用した。ニノンが国中を探し、時には魔物を狩って見付けてくれた魔石だった。
俺の本当の色は“黒”だ。正直、エヴェリーナが濃藍を身に纏っているのは……何となくと納得がいかないのだ。
ー本当の番になったら、黒色を纏わせたいー
そんな欲望があるなんて、エヴェリーナは微塵も思っていないだろう。
******
「私は、ハウンゼント侯爵が娘、エヴェリーナでございます。第二王子殿下、お誕生日おめでとうございます。」
少し緊張気味のエヴェリーナが挨拶と祝の言葉を口にする。
「ありがとう…ハウンゼント嬢。ところで……そちらは?」
「私は、竜王国スコルッシュ伯爵が次男、フィリベールと申します。竜王国ではエヴェリーナの護衛を務めています。今回は、その護衛も兼ねて、エヴェリーナと一緒に出席させていただいています。」
「“兼ねて”?」
「はい。」
「─っ!?」
“兼ねて”と言う言葉に疑問を持った馬鹿王子に、ニッコリ微笑んだ後、エヴェリーナを更に自分の方へと引き寄せた。
「態々、留学中のエヴェリーナに、王家経由で招待状が届いたので、私もちゃんと挨拶をしなければ─と思い、エヴェリーナと一緒に出席させてもらいました。」
「「…………」」
更にニッコリ微笑むと、横に居る王妃の顔色が少し悪くなった。俺の圧も、王妃の焦りも気付いていないのが……ハロルドだ。
「そう…ですか。態々来ていただいて、ありがとう。ハウンゼント嬢。また後で…時間があれば……留学の話を聞かせてもらえるかな?」
ーほう……喧嘩を売られているのか?ー
「……はい。時間があれば…フィリベールさんと一緒に……。」
ー馬鹿王子、命拾いしたなー
チラッと俺を見上げて来るエヴェリーナ。その可愛さは……反則ではないだろうか?
それから、エヴェリーナには久し振りに家族で過ごしてもらい、俺はその間にトルトニアの王妃に会いに行った。
誕生会で起こった事件。馬鹿王子を庇って怪我を負った令嬢を、馬鹿王子の婚約者にする─と王妃は言った。そして、エヴェリーナには手を出させないと約束もした。後は、あの馬鹿王子が行動に出なければいいが──
そう思いながら、俺はトルトニアの王城からエヴェリーナの元へと転移した。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
«٩(*´ ꒳ `*)۶»
人間族のエヴェリーナとイロハは、兎に角竜人達からモテた。2人とも無自覚だが、小柄で見た目も可愛らしい顔をしている。2人が、クラスから少し離れた教室に移動する為に必死に歩いている姿を、竜人達は微笑ましい顔で見ている。なんなら、おぶって運んであげようか?とでも言いたげに見ている。
勿論、その中には、恋愛対象として2人を見ている者もいるが───
「「…………」」
俺とアラスターがニッコリ微笑めば、殆どの者が理解してくれた。
獣人よりも竜人は、相手の力を推し量る能力が高い。それ故に、俺が竜王だとは知らなくとも、竜力が強いと言う事は分かっているから、決して俺に何かを言ったりしたりする事はない。そんな俺がエヴェリーナを気に入っていると言う事も、本人以外には周知の事実になっている。
イロハも然り
イロハは、他人の事に関しては敏いのに、自分の事となると鈍いようで、アラスターからの好意には全く気付いていない。イロハはイロハで、アラスターに対して良い感情を持っているとは思うけど。
そこで届いた、トルトニア王国第二王子の誕生会の招待状。態々王家を通しての招待だった。
「いっそのこと、やってしまうか?」
「…………陛下……………………」
「…冗談だ…………」
つい本音──冗談をこぼせば、宰相のアラールに呆れた目を向けられた。
「ちゃんと分かっている。今世のアイツが、まだエヴェリーナに手を出していない事は。でも…先手を打っておくのも…良いだろう?」
竜王の俺の、黒龍としての姿を知っているのは俺の側近達とトルトニアとトワイアルの国王と王妃。人化の姿を知っているのは、俺の側近達だけだ。
ただ、トルトニアの国王と王妃には、竜王の瞳が濃藍色だと言う事は知らせてある。
かつて、一度目の時はトワイアルの国王にも知らせたが、二度目以降は知らせていない。トワイアルは、今世のこれからの動き次第で、今の王族は切り捨てる予定だ。
裏切り者に、黒龍の守護を任せる訳にはいかないのだ。現アルクシェリア女神と、アルピーヌ大神官の許可も得ている。
「なら……陛下もハウンゼント嬢と一緒に参加されますか?転移魔法陣を使用すれば、日帰りでも可能です」
「そうだな。そうすれば、エヴェリーナも学園を休まずに済むな…。よし、エヴェリーナのドレスを新調したいから、手配を頼む」
「承知しました」
それから、エヴェリーナを丸め込──言い聞かせて、誕生会に一緒に行く約束をとりつけた。
不安げな顔をするエヴェリーナを見ると、ギュッと腕の中に閉じ込めてしまいたくなる。それを何とか我慢して…ブルーグレーのサラサラな髪を掬って…キスをすると、エヴェリーナの顔が真っ赤になった。
ー可愛い過ぎるー
******
ドレスを着たエヴェリーナは……本当に綺麗だった。Aラインの濃藍色のドレスで、裾の方にはラベンダー色を入れている。ネックレスはラベンダー色だけど、ピアスは濃藍にも黒にも見える魔石を使用した。ニノンが国中を探し、時には魔物を狩って見付けてくれた魔石だった。
俺の本当の色は“黒”だ。正直、エヴェリーナが濃藍を身に纏っているのは……何となくと納得がいかないのだ。
ー本当の番になったら、黒色を纏わせたいー
そんな欲望があるなんて、エヴェリーナは微塵も思っていないだろう。
******
「私は、ハウンゼント侯爵が娘、エヴェリーナでございます。第二王子殿下、お誕生日おめでとうございます。」
少し緊張気味のエヴェリーナが挨拶と祝の言葉を口にする。
「ありがとう…ハウンゼント嬢。ところで……そちらは?」
「私は、竜王国スコルッシュ伯爵が次男、フィリベールと申します。竜王国ではエヴェリーナの護衛を務めています。今回は、その護衛も兼ねて、エヴェリーナと一緒に出席させていただいています。」
「“兼ねて”?」
「はい。」
「─っ!?」
“兼ねて”と言う言葉に疑問を持った馬鹿王子に、ニッコリ微笑んだ後、エヴェリーナを更に自分の方へと引き寄せた。
「態々、留学中のエヴェリーナに、王家経由で招待状が届いたので、私もちゃんと挨拶をしなければ─と思い、エヴェリーナと一緒に出席させてもらいました。」
「「…………」」
更にニッコリ微笑むと、横に居る王妃の顔色が少し悪くなった。俺の圧も、王妃の焦りも気付いていないのが……ハロルドだ。
「そう…ですか。態々来ていただいて、ありがとう。ハウンゼント嬢。また後で…時間があれば……留学の話を聞かせてもらえるかな?」
ーほう……喧嘩を売られているのか?ー
「……はい。時間があれば…フィリベールさんと一緒に……。」
ー馬鹿王子、命拾いしたなー
チラッと俺を見上げて来るエヴェリーナ。その可愛さは……反則ではないだろうか?
それから、エヴェリーナには久し振りに家族で過ごしてもらい、俺はその間にトルトニアの王妃に会いに行った。
誕生会で起こった事件。馬鹿王子を庇って怪我を負った令嬢を、馬鹿王子の婚約者にする─と王妃は言った。そして、エヴェリーナには手を出させないと約束もした。後は、あの馬鹿王子が行動に出なければいいが──
そう思いながら、俺はトルトニアの王城からエヴェリーナの元へと転移した。
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