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❋竜王国編❋
46 少しずつ
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今世でも、ジュリエンヌ様が黒龍の巫女となる事に、ヒュッと息を呑む。今世でもまた、顔を合わせる事になるかもしれない。
ーそれで、もし、また…同じ事になったら?ー
「フィリベールが、エヴェリーナ嬢を殺める事はありません。裏切る事もありません。」
「………」
信じたい気持ちはあるけど、四度も同じ最期を迎えたのだ…素直に信じられない自分がいる。
「分かってるんです。竜さん…竜王陛下も、三度目と四度目は古代龍の言葉に抗ってくれてましたし、今世では…竜心と共鳴もしましたから……ただ、どうしても…」
「そうですね……そう簡単には忘れられませんよね。本当に…申し訳無い。全ては、私の失態なんです。ただ、私の事を恨んでも赦さなくとも良いので、フィリベールの事だけは、信じてあげて下さい。」
泣きそうな顔をした大神官様に頭を下げられて、慌てたところで、ニノンさんが食事を持って来てくれた。
「アルピーヌ様、アラールが呼んでいたので、ここは私に任せて下さい」
「あぁ、分かりました。では、エヴェリーナ嬢、今はゆっくり休んで下さい」
そう言うと、大神官様は部屋から出て行き、私はニノンさんとお喋りしながら久し振りの食事を口にした。
ジュリエンヌ=トワイアル第一王女
五度目の今回では、過去と比べて光属性の魔力自体が弱いそうで、過去では、竜人の怪我も一瞬で治癒できていたのが、今世では時間差で発動したそうだ。
それでも、選定式を受けた以上、黒龍の巫女として認めるしかない──が、既にベテランの黒龍の巫女が2人居て、まだ極秘ではあるが、番が居て、黒龍の魔力が暴走する可能性が低く、新たな黒龍の巫女は必要無いと言えば必要はないらしい。
「それでも、あの女を野放しにはできないですからね………」
他国の王女を“あの女”呼ばわりときた。
ーいや、咎めませんけどね?ー
兎に角、このまま野放しにするつもりはないらしく、今世では、“黒龍の巫女見習い”として受け入れる事にしたそうだ。所謂、監視下に置く─と言う事だ。
選定式の時に、イーリャの実が使われた事に気付いていないフリをして対応し、過去と同じようにトルトニアにも留学をさせるそうだ。
「何故、トルトニアに留学を?」
もう、私とハロルド様の縁は繋がっていないのに、態々ハロルド様とジュリエンヌ様の接点を作る必要があるんだろうか?
「あの女は、五度目の今世でも同じ事をしましたからね。トルトニアの第二王子も、ハウンゼントさんに執着していない─とは言い切れませんから…」
その為、あの2人を引き合わせてどう出るのか─
2人だけでイチャイチャするならそれで善し。
そこからまた、何かしら動くようなら──
「きっちり……止めを刺す──だけです」
「な……なる…ほど………」
ーニノンさんの笑顔が恐ろしいー
一応、ハロルド様の誕生会の時に、竜王陛下が、ハロルド様が私に手を出さないようにと、トルトニアの王妃陛下には釘を刺しておいたらしい。
と言う事は、あの誕生会の時には、王妃陛下は、フィリベールさんが竜王陛下だと分かっていたと言う事だ。だから、あの時、王妃陛下は焦ったような感じだったのか。そりゃあ……焦るよね………。それに、竜王陛下の存在は極秘扱いだから、ハロルド様には言えないだろうし……。
「もう、今世では、あの女の好きな様にはさせませんから…」
「………はい」
まだまだ複雑な気持ちだったりするけど──
先ずは、竜王陛下─フィリベールさんを知る事から始めよう。
*ニノン視点*
「エヴェリーナ様は、スープを召し上がって、私と少し話をした後、またお眠りになりました。陛下の竜力も、馴染んで落ち着いているみたいです」
「そうか、それなら…良かった……で?会いに行っても──」
「駄目です。言いましたよね?寝ていると」
「見るだけでも──」
「駄目です。いくら番になったと言っても相手は人間ですから。ある程度の距離感と物理的な距離も必要です」
「物理的な…距離……………」
私─ニノン─の目の前で少し駄々を捏ねているのは、まだまだ若い竜王であるフィリベール様。
五度目のやり直しで、ようやく番を得る事ができた。本当に、私にとっても喜ばしい事だ。陛下が、どれ程苦しんだ事か──番を自ら殺めてしまうのだ。よく、精神を保つ事ができたな…と思う。
だから、本当は、今すぐにでも、陛下をエヴェリーナ様の側に行かせてあげたいと思うのだけど………。
「陛下、私が恐れているのはフラッシュバックです」
そう。エヴェリーナ様も、今は落ち着いているように見えるけど、きっと、環境の変化があり過ぎてバタバタして考える暇もないからそう見えるだけの可能性もある。陛下を受け入れたからと言って、過去の出来事が無くなる訳でもない。
フィリベール=スコルッシュとしては大丈夫だったとしても、自分を噛み殺した黒龍だと知った今は、どうなるのかは分からない。
「エヴェリーナ様は、四度も黒龍に噛み殺されてますから。トラウマになってない─とは言い切れません。ですから、少しずつ、距離をつめて行った方が良いかと…」
番を目の前にして……“待て”状態とは…何とも酷な話だと思う。
「そう…だな………うん。少しずつ……俺の事も…知っていってもらいたいしな……それに、もう、俺の番である事は確かだしな……ニノン、エヴェリーナの事、引き続き頼む…」
「お任せ下さい」
どうか、1日でも早く、2人が並んで笑って過ごせる日が来ますように───
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
*(੭*ˊᵕˋ)੭* ੈ✩‧₊˚
ーそれで、もし、また…同じ事になったら?ー
「フィリベールが、エヴェリーナ嬢を殺める事はありません。裏切る事もありません。」
「………」
信じたい気持ちはあるけど、四度も同じ最期を迎えたのだ…素直に信じられない自分がいる。
「分かってるんです。竜さん…竜王陛下も、三度目と四度目は古代龍の言葉に抗ってくれてましたし、今世では…竜心と共鳴もしましたから……ただ、どうしても…」
「そうですね……そう簡単には忘れられませんよね。本当に…申し訳無い。全ては、私の失態なんです。ただ、私の事を恨んでも赦さなくとも良いので、フィリベールの事だけは、信じてあげて下さい。」
泣きそうな顔をした大神官様に頭を下げられて、慌てたところで、ニノンさんが食事を持って来てくれた。
「アルピーヌ様、アラールが呼んでいたので、ここは私に任せて下さい」
「あぁ、分かりました。では、エヴェリーナ嬢、今はゆっくり休んで下さい」
そう言うと、大神官様は部屋から出て行き、私はニノンさんとお喋りしながら久し振りの食事を口にした。
ジュリエンヌ=トワイアル第一王女
五度目の今回では、過去と比べて光属性の魔力自体が弱いそうで、過去では、竜人の怪我も一瞬で治癒できていたのが、今世では時間差で発動したそうだ。
それでも、選定式を受けた以上、黒龍の巫女として認めるしかない──が、既にベテランの黒龍の巫女が2人居て、まだ極秘ではあるが、番が居て、黒龍の魔力が暴走する可能性が低く、新たな黒龍の巫女は必要無いと言えば必要はないらしい。
「それでも、あの女を野放しにはできないですからね………」
他国の王女を“あの女”呼ばわりときた。
ーいや、咎めませんけどね?ー
兎に角、このまま野放しにするつもりはないらしく、今世では、“黒龍の巫女見習い”として受け入れる事にしたそうだ。所謂、監視下に置く─と言う事だ。
選定式の時に、イーリャの実が使われた事に気付いていないフリをして対応し、過去と同じようにトルトニアにも留学をさせるそうだ。
「何故、トルトニアに留学を?」
もう、私とハロルド様の縁は繋がっていないのに、態々ハロルド様とジュリエンヌ様の接点を作る必要があるんだろうか?
「あの女は、五度目の今世でも同じ事をしましたからね。トルトニアの第二王子も、ハウンゼントさんに執着していない─とは言い切れませんから…」
その為、あの2人を引き合わせてどう出るのか─
2人だけでイチャイチャするならそれで善し。
そこからまた、何かしら動くようなら──
「きっちり……止めを刺す──だけです」
「な……なる…ほど………」
ーニノンさんの笑顔が恐ろしいー
一応、ハロルド様の誕生会の時に、竜王陛下が、ハロルド様が私に手を出さないようにと、トルトニアの王妃陛下には釘を刺しておいたらしい。
と言う事は、あの誕生会の時には、王妃陛下は、フィリベールさんが竜王陛下だと分かっていたと言う事だ。だから、あの時、王妃陛下は焦ったような感じだったのか。そりゃあ……焦るよね………。それに、竜王陛下の存在は極秘扱いだから、ハロルド様には言えないだろうし……。
「もう、今世では、あの女の好きな様にはさせませんから…」
「………はい」
まだまだ複雑な気持ちだったりするけど──
先ずは、竜王陛下─フィリベールさんを知る事から始めよう。
*ニノン視点*
「エヴェリーナ様は、スープを召し上がって、私と少し話をした後、またお眠りになりました。陛下の竜力も、馴染んで落ち着いているみたいです」
「そうか、それなら…良かった……で?会いに行っても──」
「駄目です。言いましたよね?寝ていると」
「見るだけでも──」
「駄目です。いくら番になったと言っても相手は人間ですから。ある程度の距離感と物理的な距離も必要です」
「物理的な…距離……………」
私─ニノン─の目の前で少し駄々を捏ねているのは、まだまだ若い竜王であるフィリベール様。
五度目のやり直しで、ようやく番を得る事ができた。本当に、私にとっても喜ばしい事だ。陛下が、どれ程苦しんだ事か──番を自ら殺めてしまうのだ。よく、精神を保つ事ができたな…と思う。
だから、本当は、今すぐにでも、陛下をエヴェリーナ様の側に行かせてあげたいと思うのだけど………。
「陛下、私が恐れているのはフラッシュバックです」
そう。エヴェリーナ様も、今は落ち着いているように見えるけど、きっと、環境の変化があり過ぎてバタバタして考える暇もないからそう見えるだけの可能性もある。陛下を受け入れたからと言って、過去の出来事が無くなる訳でもない。
フィリベール=スコルッシュとしては大丈夫だったとしても、自分を噛み殺した黒龍だと知った今は、どうなるのかは分からない。
「エヴェリーナ様は、四度も黒龍に噛み殺されてますから。トラウマになってない─とは言い切れません。ですから、少しずつ、距離をつめて行った方が良いかと…」
番を目の前にして……“待て”状態とは…何とも酷な話だと思う。
「そう…だな………うん。少しずつ……俺の事も…知っていってもらいたいしな……それに、もう、俺の番である事は確かだしな……ニノン、エヴェリーナの事、引き続き頼む…」
「お任せ下さい」
どうか、1日でも早く、2人が並んで笑って過ごせる日が来ますように───
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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