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❋竜王国編❋
42 2人の番
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『******』
『──っ!?』
ジュリエンヌが口にしたのは、かつて古代龍が使用していた言葉だ。この言葉は、ある一族のみが継承している言葉だ。
ー何故…ジュリエンヌが知っているんだ!?ー
その言葉は、ある意味俺の唯一の弱点と言ってもいい。
『******』
『─────っ!!』
その言葉に、俺は一瞬にして殺気を溢れさせ、その視線を床に横たわっている人間に向けた。
彼女を殺さなければ───
ー違うー
ジュリエンヌを護る為に殺さなければ──
ー違う、彼女を……彼女こそ………ー
『********!』
『───っ!!!』
その言葉に、俺は……何の躊躇いもなく口を開いて……横たわっていた人間に噛み付いた。
「────フィリベール!!」
『──っ!!!』
その人間に噛み付いた瞬間に分かってしまった。
慌てて人型に戻り、噛み付いた人間を抱きとめた。
勿論、その人間は既に息をしていなかった。
顔色は真っ白なのに……体は真っ赤に染まっていて……俺の腕の中でグッタリとしている。
目は閉じられていて、どんな色の瞳をしているのかも分からない。
ただ、分かる事は、その瞳に俺が映る事は無いと言う事と────
本当の番を、自らのせいで喪ってしまった─と言う事だった。
「フィリベール!しっかりしなさい!」
必死に俺の名を呼ぶのは、大神官アルピーヌ。
「我を失ってはいけない!まだ…大丈夫だから!」
ー“まだ大丈夫”?何が…大丈夫なんだ?ー
「きゃあ────っ!何を…するの!?離しなさい!」
ハッとして、ジュリエンヌの声のする方へ視線を向けると、ニノンがジュリエンヌを床に押し付けて拘束していた。
その様子を見ても、何の感情も動かなかった。番だと思っていたジュリエンヌが酷い事をされているのに…。それに、あの、甘い香りも全くしなくなっていた。
俺にあるのは、喪失感と──
怒りだけだった──
「よくも………俺を……騙したな?俺の……番を………」
「フィリベール、落ち着きなさい!」
「落ち着ける……訳ないだろう?俺は…愚かにも、その女に騙されて…自分で……本当の番を……殺めて喪ってしまったんだ!!」
「フィリベール!!」
怒りで魔力が暴走し、そのまま竜化した。それでも、番の彼女は右手で掴んだまま離さない─離せなかった。
『お前だけは赦さない。喩え……この世界が無くなろうとも────』
「フィリベール!!」
俺1人に対するのは、大神官アルピーヌ、ニノン、アリソン、アラール、オーウェンの5人。それでもきっと、俺を止められないだろう。
「フィリベール!私の力はまだ完全ではないが、やり直せるから!」
『やり直せる────?』
「これは……私の失態だ。本来なら関与は赦されないだろうけど、全ては…私のせいだ。だから……私が時を戻すから……」
『時を…戻す?』
「今は時間がない。彼女の時を直ぐに戻さないと手遅れになる。兎に角、あの偽者は別として、ここに居る者達に記憶を残したまま時を戻すから。後は…彼女に、“正しい路”に導いてもらうしか…ない。」
そう言った後、その場全体が目を開けていられない程の光に包まれて───
気が付けば、3年前の時に戻っていた。
******
「え?え?あの…え?ちょっと待って……え?」
「エヴェリーナ、落ち着いて……と言っても無理…だよな……」
ーはい、無理ですー
今聞いた情報の、脳内処理が全く追いつかない。ところどころでエラーが出ている。
訊きたい事や確認したい事、更に詳しく教えて欲しい事がたくさんあるのに、何から訊けば良いのか分からない。
「エヴェリーナ、俺が何でも答えるから。訊きたい順番とか、言い方なんて気にしなくて良いから。何でも…全て、俺に訊いて欲しい。勿論……俺の事を怒ったって殴っても良い。ただ………嫌いにだけは…ならないで欲しいけど………」
シュン─と項垂れるフィリベールさんは、竜ではなく犬に見える。そんな姿を目にしたせいか、少しだけ心が落ち着いた。
「それじゃあ……思いつくままに質問させてもらいますね。先ず……フィリベールさん、貴方は……一体何者なんですか?貴方は、過去に私に4度噛み付いた、あの竜さんなんですか?」
「そうだ。俺が……エヴェリーナに噛み付いた……あの竜だ。そして………色の通り、俺は、竜王国の国王であり、アルクシェリア女神の遣いの黒龍だ。今から50年程前に、父である先代の黒龍と代替わりをしたばかりだ。」
ーフィリベールさん……まさかの50歳ー
「魔力が不安定な事や、間違った路を繰り返してしまったから……人型になると瞳の色が黒ではなく濃藍色になってしまっていたんだ。“スコルッシュ”とは、母方の家名で、人型で外に出る時は、その家名を名乗っているんだ」
ーなるほどー
「時間を戻したのは……フィリベ──竜王陛下の力で?」
「それは違う。俺にはそんな力は無い。時間を戻したのは……大神官のアルピーヌだ。」
大神官とは……竜王陛下よりも力がある─と言う事だろうか?
「それについては、私が説明しましょう」
そう言って、大神官が語った話は………想像を遥かに超えたものだった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(⁎˃ᴗ˂⁎)۶ (੭ >᎑<)੭
『──っ!?』
ジュリエンヌが口にしたのは、かつて古代龍が使用していた言葉だ。この言葉は、ある一族のみが継承している言葉だ。
ー何故…ジュリエンヌが知っているんだ!?ー
その言葉は、ある意味俺の唯一の弱点と言ってもいい。
『******』
『─────っ!!』
その言葉に、俺は一瞬にして殺気を溢れさせ、その視線を床に横たわっている人間に向けた。
彼女を殺さなければ───
ー違うー
ジュリエンヌを護る為に殺さなければ──
ー違う、彼女を……彼女こそ………ー
『********!』
『───っ!!!』
その言葉に、俺は……何の躊躇いもなく口を開いて……横たわっていた人間に噛み付いた。
「────フィリベール!!」
『──っ!!!』
その人間に噛み付いた瞬間に分かってしまった。
慌てて人型に戻り、噛み付いた人間を抱きとめた。
勿論、その人間は既に息をしていなかった。
顔色は真っ白なのに……体は真っ赤に染まっていて……俺の腕の中でグッタリとしている。
目は閉じられていて、どんな色の瞳をしているのかも分からない。
ただ、分かる事は、その瞳に俺が映る事は無いと言う事と────
本当の番を、自らのせいで喪ってしまった─と言う事だった。
「フィリベール!しっかりしなさい!」
必死に俺の名を呼ぶのは、大神官アルピーヌ。
「我を失ってはいけない!まだ…大丈夫だから!」
ー“まだ大丈夫”?何が…大丈夫なんだ?ー
「きゃあ────っ!何を…するの!?離しなさい!」
ハッとして、ジュリエンヌの声のする方へ視線を向けると、ニノンがジュリエンヌを床に押し付けて拘束していた。
その様子を見ても、何の感情も動かなかった。番だと思っていたジュリエンヌが酷い事をされているのに…。それに、あの、甘い香りも全くしなくなっていた。
俺にあるのは、喪失感と──
怒りだけだった──
「よくも………俺を……騙したな?俺の……番を………」
「フィリベール、落ち着きなさい!」
「落ち着ける……訳ないだろう?俺は…愚かにも、その女に騙されて…自分で……本当の番を……殺めて喪ってしまったんだ!!」
「フィリベール!!」
怒りで魔力が暴走し、そのまま竜化した。それでも、番の彼女は右手で掴んだまま離さない─離せなかった。
『お前だけは赦さない。喩え……この世界が無くなろうとも────』
「フィリベール!!」
俺1人に対するのは、大神官アルピーヌ、ニノン、アリソン、アラール、オーウェンの5人。それでもきっと、俺を止められないだろう。
「フィリベール!私の力はまだ完全ではないが、やり直せるから!」
『やり直せる────?』
「これは……私の失態だ。本来なら関与は赦されないだろうけど、全ては…私のせいだ。だから……私が時を戻すから……」
『時を…戻す?』
「今は時間がない。彼女の時を直ぐに戻さないと手遅れになる。兎に角、あの偽者は別として、ここに居る者達に記憶を残したまま時を戻すから。後は…彼女に、“正しい路”に導いてもらうしか…ない。」
そう言った後、その場全体が目を開けていられない程の光に包まれて───
気が付けば、3年前の時に戻っていた。
******
「え?え?あの…え?ちょっと待って……え?」
「エヴェリーナ、落ち着いて……と言っても無理…だよな……」
ーはい、無理ですー
今聞いた情報の、脳内処理が全く追いつかない。ところどころでエラーが出ている。
訊きたい事や確認したい事、更に詳しく教えて欲しい事がたくさんあるのに、何から訊けば良いのか分からない。
「エヴェリーナ、俺が何でも答えるから。訊きたい順番とか、言い方なんて気にしなくて良いから。何でも…全て、俺に訊いて欲しい。勿論……俺の事を怒ったって殴っても良い。ただ………嫌いにだけは…ならないで欲しいけど………」
シュン─と項垂れるフィリベールさんは、竜ではなく犬に見える。そんな姿を目にしたせいか、少しだけ心が落ち着いた。
「それじゃあ……思いつくままに質問させてもらいますね。先ず……フィリベールさん、貴方は……一体何者なんですか?貴方は、過去に私に4度噛み付いた、あの竜さんなんですか?」
「そうだ。俺が……エヴェリーナに噛み付いた……あの竜だ。そして………色の通り、俺は、竜王国の国王であり、アルクシェリア女神の遣いの黒龍だ。今から50年程前に、父である先代の黒龍と代替わりをしたばかりだ。」
ーフィリベールさん……まさかの50歳ー
「魔力が不安定な事や、間違った路を繰り返してしまったから……人型になると瞳の色が黒ではなく濃藍色になってしまっていたんだ。“スコルッシュ”とは、母方の家名で、人型で外に出る時は、その家名を名乗っているんだ」
ーなるほどー
「時間を戻したのは……フィリベ──竜王陛下の力で?」
「それは違う。俺にはそんな力は無い。時間を戻したのは……大神官のアルピーヌだ。」
大神官とは……竜王陛下よりも力がある─と言う事だろうか?
「それについては、私が説明しましょう」
そう言って、大神官が語った話は………想像を遥かに超えたものだった。
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