贄の令嬢はループする

みん

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❋竜王国編❋

32 動き出した????

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「黒龍の巫女の………選定式?」
「はい。黒龍の巫女の選定式とは、簡単に言うと、光属性の魔力持ちである一般的な聖女の力が、竜族にも効くかどうか調べる式になります。年に1回か2回行われるんですけど、それが、今週末に行われる事になったんです。」

そんな式があるとは知らなかったけど、確か…ジュリエンヌ様が黒龍の巫女と認められたのが、トルトニアへの留学が決まってからだった筈だから……まだ1年ぐらい先の話だと思っていたけど……。もう、この週末には、ジュリエンヌ様が黒龍の巫女として……認められるのかもしれない。

「そうなんですね。その式には、イロハも選定する側で参加するの?」
「選定するのは、竜王陛下の側近と神官で、私は大聖女の身分は隠しているから、神官のお手伝い役として見学する…みたいな感じかな?」

ーなるほどー

それじゃあ、今週末はイロハもニノンさんも忙しい─と言う事かな?

「それで…ですね…ハウンゼントさん。その選定式、見てみたくないですか?」
「────はい?」

その質問に驚き、ニノンさんに視線を向ければ、ニノンさんとイロハは愉しそうに笑っていた。














******
(????)


竜王とは、竜王国の王であり、この大陸の創世神アルクシェリア女神の遣い龍で、唯一無二の黒龍。

その黒龍を目にした者は殆どいない。ただ、その漆黒の闇のような鱗はキラキラと輝き、見る者全てを魅了する─と言われている。
ただ、現竜王が初代からの竜王なのか、代替わりを繰り返しているのか、竜人化するのか──その存在は謎に包まれている。

ただ一つ言えるとすれば、喩え唯一無二の存在であったとしても竜は竜。竜王に見初められれば、竜王妃の座を得る事ができる。それに、つがいともなれば、この大陸一の存在にもなれる。

手に持っている琥珀色の液体の入った小瓶を見つめる。

ー後は、選定式の時に……ー

その小瓶をキュッと握りしめた時、馬車の動きが止まり、外が少し慌ただしくなった後「姫様、到着しました」と、御者から声が掛かり、一拍置いてから扉が開かれた。

「ようこそ、いらっしゃいました。」
「お出迎え、ありがとうございます。」

馬車の扉を開けて私に手を差し出してくれたのは、黒色の短髪で、瞳は空の様な青色の竜人の騎士だった。

「私は“オーウェン=グリフォード”と申します。王女殿下がこちらに滞在中は、私が王女殿下の護衛に付きます。宜しくお願い致します。」
「分かりました。オーウェン、宜しくお願いしますね。」

ニッコリ微笑んで挨拶をする。
自国での私は、美姫と言われて可愛がられている。言われている事は素直に嬉しいし、否定はしない。私が微笑めば、どんな相手だって嬉しそうな顔をする。子息に至っては、簡単に顔を赤らめるのだ。
目の前のオーウェンもそうだ。私を見て微笑んでいる。

ー本当に、種族が違っても、男と言うのは単純で馬鹿ばっかりねー

このオーウェンも、それなりの男前だけど、所詮は一介の騎士にしか過ぎない。私には不釣り合いだ。王女である私の護衛に付けただけでも、ラッキーだったと思う事ね。

「では、まず、本日より滞在されるお部屋の方へ、案内させていただきます。」

そう言われ、私はオーウェンの後を付いて行った。





その後、“ニノン”と言う女性がやって来て、今回の選定式についての説明をした後、夕食迄は自由です─と言って、部屋から出て行った。

今回の選定式には、私を含め5人の光の魔力持ちが居るとの事だった。黒龍の巫女としての能力を持つ者は滅多に現れない。現在、黒龍の巫女は2人しかいない。

ーきっと、私が3人目になるー

理由は分からないが、何故か“黒龍の巫女になれる”と言う自信がある。巫女にさえなれれば──後は、だけ。

「ふふっ──竜王に会えるのが…楽しみだわ。」





******
(オーウェン視点)


「今のところ、充てがわれた部屋でおとなしくしています。」
「そうか。引き続き、を頼む。」
「了解です。ところで………あの……ハウンゼント嬢は、元気にされてますか?」
「あぁ。元気で毎日可愛い。」
「そうですか……なら…良かったです……くくっ…では、失礼します。」

退室する為に扉を開けると、そこにニノンが居た。

「あ、オーウェン、丁度良かったわ。話があるから、もう少しここに居てくれる?」
「分かった、大丈夫だ。」
「フィリベール、選定式の話だけど……ハウンゼントさんも参加するそうよ。」
「ハウンゼント嬢が!?え?大丈夫なのか!?」

ー選定式には、が居るのに!?ー

「大丈夫よ。今回は、大聖女イロハ様が居るし、何よりも……我らが主の力がほぼ元に戻っているから。」
「あ…あぁ……そうだったな……。」

ニノンの笑顔が恐ろしい。

「これで、我が主も間違いを起こす事はないでしょう?」
「───当たり前だ。もう、六度目などない。アレも……終わりにしてやる。」

ブワッ─と部屋に殺気が充満する。

ー恐ろしいー

あの女は、誰に手を出したのか…本当の意味では理解していない。あの女にとっては一度目だろうけど、四度も繰り返された、あの最期──

一度でも、反省する時があれば良かったが、全てにおいて実行し、彼女の居場所を奪い、同じ最期を迎えさせたのだ。あの女の性格は変わらないと言う事だ。

「死ねた方がマシだ──と……思うんだろうな…」
「でしょうね。」

それから、俺とニノンは、選定式の警備の配置などを、入念にチェックをしていった。








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
\(*´▽`*)人(*´▽`*)人(*´▽`*)ノ


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