贄の令嬢はループする

みん

文字の大きさ
上 下
24 / 84
❋竜王国編❋

24 トルトニアからの手紙

しおりを挟む
「………」

目の前に居るフィリベールさんに視線を向ける。

黒色の髪に瞳も黒色。イロハと同じ色。でも、よく見ると、その黒も少し違う。どちらかと言うと、フィリベールさんの方がより濃い黒─漆黒の闇を纏っているような────

「ん?何か…分からない事でもあった?」
「あ…ごめんなさい!」

じーっ…と見つめ過ぎてしまっていたようだ。

「いや……謝らなくて良いから……寧ろ……」
「寧ろ?」
「いや…何でもない。で?何か分からない事でもあった?」
「あー…えっと…龍族について…訊いても良いですか?」
「あぁ、構わない。」

そう言うと、フィリベールさんは目を細めて微笑んだ後、開いていた本を閉じた。






やっぱり、黒龍─黒色の竜は、この世界には1人しか居ないそうだ。では、その黒龍は何歳なのか?

「それは…俺達竜人にも分からない。」

と言うのも、黒龍─竜王陛下は滅多に人前に現れる事がないそうで、現れたとしても竜の姿をしている為、人型になれるのかどうかさえも分からないそうだ。そして、今の竜王が、この世界が創世された時から居る黒龍なのか…代替わりをした黒龍なのか──それすらも分からないらしい。

「この大陸…世界を統べる存在だから、竜王陛下については、余程のことがない限り、情報が漏れる事はないから。」

ー代替わりしてない──ともなれば、かなりの……おじいちゃん?おばあちゃん?……だよね?ー

「フィリベールさんの髪色と瞳は黒色だけど、竜化すると…黒に近い色だったりするんですか?」
「うーん…有り難い事に、俺は竜力が強くて…濃藍色……かな?人型になった時の髪か目の色が、竜化した時の色にになる。」
「それじゃあ、違う色になる事もあるって事ですか?」
「そうだな。だいたいは、その色か近い色だけど、稀に全く違う色の者も居る。」

と言う事は、人型になったに会っても、分からないって事か…。フィリベールさんが黒色だから(正しくは濃藍だったけど)、もしかして?と思ったりもしたけど………竜王陛下がこんなに若い筈はないだろうし、こんな所で人間ひと族の留学生わたしの護衛なんてしてる訳ないよね。


それからも、色々聞いた話によると、色の違いによる力の上下関係はなく、あくまでその竜の持つ竜力の強さで上下関係が決まってくるとのことだった。ただ、同じ色でも、その色が濃ければ濃い程竜力が強くなるそうだ。


「エヴェリーナは……竜を…怖いと思うか?」

ふと、フィリベールさんに質問された事に、ドキリとする。

怖いか怖くないか──と訊かれたら……正直、少し怖い。噛み付かれた記憶しかないからだ。流石に四度目はズレたキレ方をしたと言う自覚は……あるけど。
ただ、四度目の竜さんに対しては、恐怖心は全くなかった。あの時の竜さんの目は……優しい色を持っていたから。

「どうでしょう?一度だけ、上空を飛んでいる竜を見掛けたけど、それ以外では……近くで竜を見てないから……怖いかどうか、分からない…ですね。」
「……そうか…………。」

一瞬だけ悲しそうな目をしたフィリベールさん。

竜化すると、大き過ぎて壁を破壊する事もあるそうで、学園内での竜化は禁止されている。そんな理由もあり、今世ではまだ間近で竜を見た事はない。
噛み付かれた記憶がなくても、あの大きさは少し怖いけど。

「でも…その竜が、ニノンさんやフィリベールさんだと分かっていれば、怖くない─と思います。」

ふふっ──と笑えば

ゴンッ────

「フィリベールさん!?」

何故か、フィリベールさんがテーブルに勢い良く突っ伏したせいで、ものすごい音がした。

ーえぇっ!?オデコ、大丈夫!?ー

「あの…だっ……だいじょ───」
「大丈夫だ。すまない……少し………破壊力が───ではなくて、少し自戒していただけだから。」
「破壊力?じかい?」

ー“破壊力”とは?次回?自戒?磁界?ん??ー


「ハウンゼントさんは、何も気にしなくて良いですよ。」
「あ、ニノンさん。お疲れ様です。」
「……ニノン…………」

少し呆れたように笑っているは、ニノンさん。そんなニノンさんにジトリとした視線を向けるのは、フィリベールさん。この2人の雰囲気で、何となく、お互い信頼のようなものがある仲なのかな?と思っている。

「ハウンゼントさん、トルトニアから手紙が届いたんですけど……」
「手紙…ですか?」

手紙なら、いつもなら寮の私の部屋に届けられるのに、何故ニノンさんが直接私に?と不思議に思いながら、その手紙を受け取る。

「え?」
「この手紙は、学園寮宛てではなく、王城に届いたようなので、私が預かって持って来たの。」

ー何で?ー

その手紙の封蝋には、ハウンゼントではなく、トルトニア王国の紋章が押されていた。

ーまさかー

落ち着かせるように深呼吸をしてから、その手紙の封を開けた。



その手紙は───




3ヶ月後に開かれる、トルトニア王国第二王子ハロルド様の誕生会の招待状だった。












しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる 生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。 しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。 同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。 「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」 しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。 「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」 これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

殿下へ。貴方が連れてきた相談女はどう考えても◯◯からの◯◯ですが、私は邪魔な悪女のようなので黙っておきますね

日々埋没。
恋愛
「ロゼッタが余に泣きながらすべてを告白したぞ、貴様に酷いイジメを受けていたとな! 聞くに耐えない悪行とはまさしくああいうことを言うのだろうな!」  公爵令嬢カムシールは隣国の男爵令嬢ロゼッタによる虚偽のイジメ被害証言のせいで、婚約者のルブランテ王太子から強い口調で婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚だったためカムシールは二つ返事で了承し、晴れてルブランテをロゼッタに押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って明らかに〇〇からの〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  真実に気がついていながらもあえてカムシールが黙っていたことで、ルブランテはやがて愚かな男にふさわしい憐れな最期を迎えることになり……。  ※こちらの作品は改稿作であり、元となった作品はアルファポリス様並びに他所のサイトにて別のペンネームで公開しています。

政略結婚だなんて、聖女さまは認めません。

りつ
恋愛
 聖女メイベルは婚約者である第一王子のサイラスから、他に好きな相手がいるからお前とは結婚できないと打ち明けられ、式の一週間前に婚約を解消することとなった。代わりの相手をいろいろ紹介されるものの、その相手にも婚約者がいて……結局教会から女好きで有名なアクロイド公爵のもとへ強引に嫁がされることとなった。だが公爵の屋敷へ行く途中、今度は賊に襲われかける。踏んだり蹴ったりのメイベルを救ったのが、辺境伯であるハウエル・リーランドという男であった。彼はアクロイド公爵の代わりに自分と結婚するよう言い出して……

竜人王の伴侶

朧霧
恋愛
竜の血を継ぐ国王の物語 国王アルフレッドが伴侶に出会い主人公男性目線で話が進みます 作者独自の世界観ですのでご都合主義です 過去に作成したものを誤字などをチェックして投稿いたしますので不定期更新となります(誤字、脱字はできるだけ注意いたしますがご容赦ください) 40話前後で完結予定です 拙い文章ですが、お好みでしたらよろしければご覧ください 4/4にて完結しました ご覧いただきありがとうございました

【完結】伯爵令嬢の格差婚約のお相手は、王太子殿下でした ~王太子と伯爵令嬢の、とある格差婚約の裏事情~

瀬里
恋愛
【HOTランキング7位ありがとうございます!】  ここ最近、ティント王国では「婚約破棄」前提の「格差婚約」が流行っている。  爵位に差がある家同士で結ばれ、正式な婚約者が決まるまでの期間、仮の婚約者を立てるという格差婚約は、破棄された令嬢には明るくない未来をもたらしていた。  伯爵令嬢であるサリアは、高すぎず低すぎない爵位と、背後で睨みをきかせる公爵家の伯父や優しい父に守られそんな風潮と自分とは縁がないものだと思っていた。  まさか、我が家に格差婚約を申し渡せるたった一つの家門――「王家」が婚約を申し込んでくるなど、思いもしなかったのだ。  婚約破棄された令嬢の未来は明るくはないが、この格差婚約で、サリアは、絶望よりもむしろ期待に胸を膨らませることとなる。なぜなら婚約破棄後であれば、許されるかもしれないのだ。  ――「結婚をしない」という選択肢が。  格差婚約において一番大切なことは、周りには格差婚約だと悟らせない事。  努力家で優しい王太子殿下のために、二年後の婚約破棄を見据えて「お互いを想い合う婚約者」のお役目をはたすべく努力をするサリアだが、現実はそう甘くなくて――。  他のサイトでも公開してます。全12話です。

処理中です...