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❋竜王国編❋
16 五度目の始まり
しおりを挟む『ようやく、私の力が──。彼女より先に──。』
『どうか………正しい路に戻して──。』
『でなければ彼が─を失ってしまう。──だから。彼をすくって欲しい……どうか…』
『─が本当の─だから……。』
「お嬢様、おはようございます。」
「おはよう、ジョリ………って……ジョリー、何だか……若い?」
「まだ寝ぼけてるんですか?私は15歳なので若いですよ。お嬢様とは2つしか変わりませんよ。」
ージョリーが15歳!?ー
と言う事は、私は13歳。
ハロルド様の婚約者になるまで3年。
ジュリエンヌ様が留学生としてやって来る迄5年。
ーようやく…今迄とは違う路に進める可能性が出て来た!?ー
「ジョリー、今日の予定は何だった?」
「今日は、週の中日なので、特に予定の無い日です。何かされたい事でもできましたか?」
「ちょっと調べたい事があるから、書斎に行こうかなと思って。」
「分かりました。それでは、朝食後に行けるように準備をしておきます。」
身支度を整えてから朝食をとり、食べ終えた後、自室には戻らずそのまま書斎へと向かった。
『もう、私もいい加減……キレました!次こそは……自分自身も……そして、竜さん。貴方も……助けてみせます!』
プチッ─と、私の中で何かがキレた。そのキレた勢いで……あの竜に向かって叫んでいた。
自分でハードルを上げてどうする!?
“助けてみせます!”─って何!?
何が“正しい路”なのかすら分かっていないのに!
「はぁ──────」
盛大にため息を吐いた後、机の上に突っ伏した。
全身真っ黒で、瞳も真っ黒な竜。
基本、竜や竜人は竜王国にしか居ない。人間や獣人と仲が悪い─と言う訳ではなく、竜王国の王が、この大陸の創世神アルクシェリア女神の遣い龍であり、この大陸を統べる絶対不可侵の王であり、竜王を筆頭に、竜人は人間や獣人とでは何もかもが違う為、住む場所を区分けしているのだ。
お互い交流はあるし、竜王国に住んでいる人間や獣人も居れば、異種族結婚している人も居る。
竜人と獣人に関して言えば、“番”と言う本能?で結ばれる絶対的な存在?が居るらいけど、それは人間にはないし、喩えあったとしても人間には分からない。稀に、獣人の番が人間だったりする事があり、その場合は獣人が人間に無理矢理な行動に出ないように、獣人族側と人間側からの監視役が付いたりするらしい。酷い場合は、番に対する欲を押さえるポーションを使用するとか……。
ーちょっと…怖くない?ー
獣人や竜人にとって、番とは自分よりも大切で愛しい存在らしく、番と出会ってしまえば、もう他の異性には目も向かないとか。
ーどこぞの誰かとは…違うよねー
まぁ、そんな執着的な愛情を喜ぶのかどうかは……その人次第だろうけど。
兎に角、基本、竜は竜王国にしか居ない。
それに、真っ黒な竜─黒龍は、この大陸─世界には1人しかいない──筈。
アルクシェリア女神の遣い龍であり、竜王国の国王である黒龍だけだ。
「……………」
私…そんな偉大な竜王陛下の逆鱗に触れるような事を…したんだろうか?
私が、黒龍の巫女─ジュリエンヌ様に何かしたと思われてた…とか?違う───
私が黒龍の贄になる事が……間違っている路だとしたら?
そもそも、絶対不可侵の黒龍が、彼女の言葉に動かされるって…おかしくない?黒龍に見えるけど、実は黒龍じゃない?
彼女が、黒龍の…番だとしたら?
「…………」
その番が……黒龍の巫女だったとしたら?いや…もし、ジュリエンヌ様が黒龍の番だったとしたら……竜王陛下の番ともなれば、トルトニアに留学する事もできなかっただろう。竜人にとって番とは大切な存在と同時に、弱点にもなってしまうから。
ー私は、竜や竜人の事を知らなさ過ぎるー
竜王国にも、留学制度はある。その国によって学園にも色んな特色がある。トルトニアは、特に騎士科が特化している為、騎士を目指す留学生が多かったりする。ジュリエンヌ様のトワイアル王国は、魔法に特化している。そして、竜王国は薬学に特化している。その理由は、竜族は魔法が効きにくい体質の為、怪我や病気になった場合はポーションで治癒する事が多いからだ。まぁ、その怪我や病気になったとしても、竜人自身の治癒力で直ぐに治るそうだけど。
「薬学か………」
私は今13歳。学園に入る迄3年。
私が留学すれば、ハロルド様の婚約者にならず、ジュリエンヌ様とも会う事もなく、今迄とは違う路に進めるかもしれない。
この3年で…何とか最低限の薬学の知識を身に付けないと──。
ー竜王国に留学して、私も、あの竜も助ける!ー
そうして、五度目は、今迄とは違う始まりを迎えた。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
♡٩(*ˊᗜˋ)۶٩(ˊᗜˋ*)۶♡
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