10 / 84
❋ループ編❋
10 婚約解消へ
しおりを挟む
フルールに連れられてやって来たカフェは人気があるようで、順番待ちをする事にはなったけど、ジョナス様も嫌がる事もなく3人で並び、20分程して店内に入る事ができた。
店内には女性が多いが、恋人か婚約者と来ているカップルも何組か居た。
「ここはチーズケーキが有名なんだけど、フレーバーティーの種類も豊富で、結構美味しいらしいの!」
「それじゃあ、チーズケーキは頼むとして…本当にフレーバーティーは種類が多いのね…悩むなぁ…」
チーズケーキなら、男のジョナス様でも食べられそうだから、フルールはこのお店を選んだのかもしれない。本当に、この2人は前回でも今世でも仲が良くて羨ましい限りだ。
何味にしようか──と悩んでいると、あるカップルが店内に入って来た。そのカップルは、店内の2階にある個室を予約していたようで、店員と少し言葉を交わした後、2階へと続く階段のある方へと進んで行った。
「───え?」
肩まである金髪の男性が、長い金髪をハーフアップにしている女性をエスコートして店内を進んで行く。その2人は……私達と同じ学園の制服を着ている。その2人が、私達3人に気付く事はない。ただ、その2人から少し離れた位置に居た彼は、私達に気付いたようで、少し焦ったように目をキョロキョロとさせている。
「エヴェリーナ…違うお店に行く?それとも…また日を改めて──」
「フルール、気にしないで。私、もうチーズケーキを食べる気満々だから、食べずに帰るなんて無理だわ。」
「くくっ──エヴェリーナがそう言うなら、しっかり食べよう。ここは、俺が奢ってあげるから。」
「ジョナス様、素直に奢られますね。ありがとうございます。」
2階へと去って行った2人とは──ハロルド様とジュリエンヌ様だ。いつから予約をしていたのか…きっと、今日ではないだろう。勿論、その約束に私は誘われてはいない。
ー結局は……前回と同じなのかー
どれだけハロルド様との仲を深めても、結局はジュリエンヌ様に惹かれてしまうのか。それが、“正しい路”だから?二度も同じ痛みを味わうとは──。
ー私が…馬鹿だったー
もう、これからは望んだりなんてしない。
また、あの笑顔を向けて欲しいなんて願わない。
また胸は痛んだけど、美味しいチーズケーキとフレーバーティーと、優しいフルールとジョナス様のお陰で、気持ちは落ち着いたままで居る事ができた。
******
「リーナ、一体どう言う事なんだ!?」
「……殿下、ここは図書室ですから…。」
「──っ!なら、図書室から出て話を─」
「申し訳ありません。殿下とは、2人きりにならないようにと……国王陛下から言われていますので、話があるならここで…お願いします。」
「なっ……んで……………」
前回の私は、ハロルド様がまた私の元に戻って来てくれるかもしれない─と、婚約に関してズルズルとそのまま放置していたけど、その結果を知っているから、今回の私は直ぐに動いた。
ジュリエンヌ様がやって来てから半年。前回では、この辺りからハロルド様とジュリエンヌ様の距離は更に近付き、ハロルド様と私の距離が更に離れていったのだ。これで、また濡れ衣を着せられたらたまらない。だから、私は“ハロルド様には未練は無い”“ジュリエンヌ様に嫉妬などしていない”“婚約解消しても構わない”─と言う意思表示の為に、直ぐに父と国王陛下に、ハロルド様とジュリエンヌ様の事を話した。
「何故──ですか?それは、殿下ご自身がよく分かっているのでは?それとも、私が何も知らないとでも?」
「リーナ………」
くしゃりと顔を歪ませて口を噤むハロルド様。この人は、本当に、私が何も知らないと思っていたのだろうか?あれだけ、婚約者の私との時間を無くして、ジュリエンヌ様と2人きりで会っておいて、何も知らないと?気付いていないと?
「お2人の事は、トルトニアとトワイアルを結ぶと言う、国にとっては喜ばしい事ですから、どうぞ、私の事など………これからも気になさらないで下さい。」
「リーナ!」
「それでは、私はこれで失礼致します。」
「リーナ、待って!」
「ハロルド様!」
カタンと席を立ち、私はハロルド様に背を向けた。その私の背後で、ハロルド様の行動を止めるような声がした。おそらく、国王陛下がハロルド様に付けた者だろう。国王両陛下は、ハロルド様と私の婚約は本当に喜んでくれた。だから、私が婚約解消の話をした時は、親としては残念な事だ─と言ってくれた。国にとっては、トワイアル王国の王女で黒龍の巫女との婚姻は、これ以上ない相手だ。直ぐには解消─とはならないかもしれないけど、これで、ジュリエンヌ様次第で、いつでもすぐに解消して2人の婚約も調うだろう。そうすれば───
私は、今回、あの竜の贄にならなくて済むかもしれない。どうか、これが“正しい路”に繋がってますように──。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
*(੭*ˊᵕˋ)੭* ੈ✩‧₊˚
店内には女性が多いが、恋人か婚約者と来ているカップルも何組か居た。
「ここはチーズケーキが有名なんだけど、フレーバーティーの種類も豊富で、結構美味しいらしいの!」
「それじゃあ、チーズケーキは頼むとして…本当にフレーバーティーは種類が多いのね…悩むなぁ…」
チーズケーキなら、男のジョナス様でも食べられそうだから、フルールはこのお店を選んだのかもしれない。本当に、この2人は前回でも今世でも仲が良くて羨ましい限りだ。
何味にしようか──と悩んでいると、あるカップルが店内に入って来た。そのカップルは、店内の2階にある個室を予約していたようで、店員と少し言葉を交わした後、2階へと続く階段のある方へと進んで行った。
「───え?」
肩まである金髪の男性が、長い金髪をハーフアップにしている女性をエスコートして店内を進んで行く。その2人は……私達と同じ学園の制服を着ている。その2人が、私達3人に気付く事はない。ただ、その2人から少し離れた位置に居た彼は、私達に気付いたようで、少し焦ったように目をキョロキョロとさせている。
「エヴェリーナ…違うお店に行く?それとも…また日を改めて──」
「フルール、気にしないで。私、もうチーズケーキを食べる気満々だから、食べずに帰るなんて無理だわ。」
「くくっ──エヴェリーナがそう言うなら、しっかり食べよう。ここは、俺が奢ってあげるから。」
「ジョナス様、素直に奢られますね。ありがとうございます。」
2階へと去って行った2人とは──ハロルド様とジュリエンヌ様だ。いつから予約をしていたのか…きっと、今日ではないだろう。勿論、その約束に私は誘われてはいない。
ー結局は……前回と同じなのかー
どれだけハロルド様との仲を深めても、結局はジュリエンヌ様に惹かれてしまうのか。それが、“正しい路”だから?二度も同じ痛みを味わうとは──。
ー私が…馬鹿だったー
もう、これからは望んだりなんてしない。
また、あの笑顔を向けて欲しいなんて願わない。
また胸は痛んだけど、美味しいチーズケーキとフレーバーティーと、優しいフルールとジョナス様のお陰で、気持ちは落ち着いたままで居る事ができた。
******
「リーナ、一体どう言う事なんだ!?」
「……殿下、ここは図書室ですから…。」
「──っ!なら、図書室から出て話を─」
「申し訳ありません。殿下とは、2人きりにならないようにと……国王陛下から言われていますので、話があるならここで…お願いします。」
「なっ……んで……………」
前回の私は、ハロルド様がまた私の元に戻って来てくれるかもしれない─と、婚約に関してズルズルとそのまま放置していたけど、その結果を知っているから、今回の私は直ぐに動いた。
ジュリエンヌ様がやって来てから半年。前回では、この辺りからハロルド様とジュリエンヌ様の距離は更に近付き、ハロルド様と私の距離が更に離れていったのだ。これで、また濡れ衣を着せられたらたまらない。だから、私は“ハロルド様には未練は無い”“ジュリエンヌ様に嫉妬などしていない”“婚約解消しても構わない”─と言う意思表示の為に、直ぐに父と国王陛下に、ハロルド様とジュリエンヌ様の事を話した。
「何故──ですか?それは、殿下ご自身がよく分かっているのでは?それとも、私が何も知らないとでも?」
「リーナ………」
くしゃりと顔を歪ませて口を噤むハロルド様。この人は、本当に、私が何も知らないと思っていたのだろうか?あれだけ、婚約者の私との時間を無くして、ジュリエンヌ様と2人きりで会っておいて、何も知らないと?気付いていないと?
「お2人の事は、トルトニアとトワイアルを結ぶと言う、国にとっては喜ばしい事ですから、どうぞ、私の事など………これからも気になさらないで下さい。」
「リーナ!」
「それでは、私はこれで失礼致します。」
「リーナ、待って!」
「ハロルド様!」
カタンと席を立ち、私はハロルド様に背を向けた。その私の背後で、ハロルド様の行動を止めるような声がした。おそらく、国王陛下がハロルド様に付けた者だろう。国王両陛下は、ハロルド様と私の婚約は本当に喜んでくれた。だから、私が婚約解消の話をした時は、親としては残念な事だ─と言ってくれた。国にとっては、トワイアル王国の王女で黒龍の巫女との婚姻は、これ以上ない相手だ。直ぐには解消─とはならないかもしれないけど、これで、ジュリエンヌ様次第で、いつでもすぐに解消して2人の婚約も調うだろう。そうすれば───
私は、今回、あの竜の贄にならなくて済むかもしれない。どうか、これが“正しい路”に繋がってますように──。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
*(੭*ˊᵕˋ)੭* ੈ✩‧₊˚
35
お気に入りに追加
693
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「ババアはいらねぇんだよ」と婚約破棄されたアラサー聖女はイケメン王子に溺愛されます
平山和人
恋愛
聖女のロザリーは年齢を理由に婚約者であった侯爵から婚約破棄を言い渡される。ショックのあまりヤケ酒をしていると、ガラの悪い男どもに絡まれてしまう。だが、彼らに絡まれたところをある青年に助けられる。その青年こそがアルカディア王国の王子であるアルヴィンだった。
アルヴィンはロザリーに一目惚れしたと告げ、俺のものになれ!」と命令口調で強引に迫ってくるのだった。婚約破棄されたばかりで傷心していたロザリーは、アルヴィンの強引さに心が揺れてしまい、申し出を承諾してしまった。そして二人は幸せな未来を築くのであった。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
結婚しましたが、愛されていません
うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。
彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。
為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
お嫁さんはフェアリーのお墨付き~政略結婚した傷物令嬢はなかなか幸せなようです~
かべうち右近
恋愛
腕に痣があるために婚約者のいなかったミシェルは、手に職をつけるためにギルドへ向かう。
しかし、そこでは門前払いされ、どうしようかと思ったところ、フェアリーに誘拐され…!?
世界樹の森に住まうフェアリーの守り手であるレイモンの嫁に選ばれたミシェルは、仕事ではなく嫁入りすることになるのだが…
「どうせ結婚できないなら、自分の食い扶持くらい自分で稼がなきゃ!」
前向きヒロイン×やんちゃ妖精×真面目ヒーロー
この小説は別サイトにも掲載しています。
6/16 完結しました!ここまでお読みいただきありがとうございました!
また続きの話を書くこともあるかもしれませんが、物語は一旦終わりです。
お気に入り、♥などありがとうございました!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる