魔法使いの恋

みん

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壱拾肆*シリウス=マーレン*

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「はい。今日と明日、シリウスは休みだから」

「───はい?」

翌日、騎士棟内にある第一騎士団長の執務室で事務作業をしていると、朝も早い時間にリュウ殿がニコニコしながらやって来た。

ーこれから次々と他国からの賓客がやって来て、警備に忙しくなると言うのに…休みだと!?ー

納得がいかず、不思議に思っていると

「騎士団の連中が、今朝、朝一で陛下と俺の所に来てな………『陛下!お願いします!オレ──私達が副団長の分迄働くので、副団長に休暇を取らせて下さい!!』って、頭を下げに来たんだ。」

「──は?」

「なんでも、可愛らしいご令嬢と、時間があればデートしようって……約束したらしいな?」

「──は?デー……はい?」

「何故そこでお前が固まる?お前が誘ったんだろう?それで─だ。そのやり取りを見て聞いていた奴が、騎士団を味方につけて直談判しに来たんだよ。」

「………」

「今迄、女性に見向きもしなかった副団長が笑っていて、その相手の女性も副団長を見て笑ってたって。それが嬉しかったってね。今迄国に─軍の為だけに動いてくれた副団長にも、そろそろ自分の為にも動いて欲しいって。」

「しかし……え?デート?」

「……シリウス…お前…まさかの無自覚か?」

リュウ殿が溜め息を吐いた後、私に可哀想な子を見るような目を向けて来た。無自覚とは……何だ?ムッ─と眉間に皺を寄せてリュウ殿に視線を向けると、また溜め息を吐かれた。

「少し考えれば分かるわだろう。シリウス、お前は少なからず、ヴィーに好意を持っているからデートに誘ったんだ。あぁ、男女2人で出掛けるのなら、それはデートだからな?」

「好意……」

「信じられないなら──想像してみろ。ヴィーは来年成人して社交界デビューする。そうなれば、ヴィーは可愛い上に“カルザイン”と“パルヴァン”の孫だ。結婚相手にと争奪戦が繰り広げられる事は必至だ。その相手が、シリウス、お前以外の男でも、お前は笑って祝福できるか?」

ヴィオラ嬢の婚約者──

チリッ─と痛む胸を押さえる。

「私とヴィオラ嬢は…14もの年の差が……」

「年は関係無いだろう?そりゃあ、相手が嫌だと言えば仕方無いけどな。兎に角、本当に忙しくなるのは明後日からだから、それに備えて休んでおけ。それで、お前自身の気持ちを確かめて来い。悩むのは、それからでも良いから。」

それだけ言うと、リュウ殿は手をヒラヒラさせながら部屋から出て行った。

「悩むのは……それからでも──か。そう…だな…。」

よし─と軽く手に力を入れた後、残りの事務作業を片付けてから、私は王城へと足を向けた。












「マーレン様、おはようございます!」

「─っ!おはよう、ヴィオラ嬢。」

今日も相変わらず、こんな私に笑顔を向けてくれるヴィオラ嬢──だが、今日のヴィオラ嬢は、今迄着ていたパンツスタイルではなく、淡い水色のワンピースを着ていた。髪も括らず下ろされていて、サイドの髪だけを後ろで髪留めで纏められていて、本当に…可愛らしい。


昨日はあれから、勢いのままにヴィオラ嬢に会いに行き、ダメ元で誘ってみると、『はい!行きます!ありがとうございます!』と、何故かお礼迄言われてしまった。

その後に気付いたが、その場に居たカルザイン夫人にはニコニコと微笑まれ、ミヤ様とサクラ様には……ニヤニヤと微笑まれた。
兎に角、不思議な事に、こんな俺に対しても誰も反対する事がなく寧ろ笑顔で迎え入れられて驚いている。







仕事以外で街に出るのも、久し振りだったが─

街に居る者達の顔は以前よりも明るく、街も活気付いているようで嬉しい気持ちになる。

「ジークフラン様やリュウさん、それにマーレン様達の頑張りのお陰で、ここ迄来たんですね。」

私の横でポツリと呟くヴィオラ嬢。私の視線に気付くと、そのまま目を合わせたまま、またニコニコと微笑む。その笑顔は、やっぱり私の心を温かくする。

それから、お昼迄の時間は色々な店を見て回り、ランチは騎士の嫁に人気があると教えてもらった店に行った。





「んーっ!美味しいです!」

パアッ─と、顔をより一層キラキラさせて喜んでいるヴィオラ嬢は、最早可愛い以外の形容詞が見付からない。

ーいや、私の語彙力の無さ過ぎ故か?ー

一緒に居たほんの数時間で、自分自身の気持ちがハッキリしてしまった。私は、どうやらヴィオラ嬢が好きなようだ。

17歳と31歳───

ー軽く……かなりへこむ……と言うより、色んな問題があり過ぎないか?ー

問題が一つ片付き、また新たな問題が浮上し、どうしたものか─と悩みつつも、目の前にいる可愛らしいヴィオラ嬢に癒やされながら、ランチタイムは楽しく過ごす事ができた───のだが────







「君みたいな可愛い子が、どうしてと一緒に居るんだい?」

店を出た後、私と少し離れた位置に居たヴィオラ嬢が、とある伯爵家の次男坊に声を掛けられた。

「“”とは─どう言う意味でしょうか?」

「あぁ、そうか。君は、彼に脅されて怖くて無理矢理付き合わされているんだな?」

「すみません、あなたの言っている意味が分かりません。」

「可哀想に。君みたいな可愛い子が、顔に傷痕があるような男と一緒に居るのがおかしいと言っているんだ。さぁ、私と一緒に───」

と、その次男坊が話している途中で、ヴィオラ嬢がニッコリと微笑んだ。






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