9 / 21
玖
しおりを挟む
『今はハル様の拘束魔法が掛かっているのでできませんが、マーレン様程の魔力持ちなら、訓練さえすればコントロールは可能だと思います。』
「本当ですか!?」
マーレン様は、本当に嬉しそうな顔をしている。
それから、ノアから、ノアから見て感じたマーレンの魔力についての話を聞いた後、いくつかの訓練の説明をされ、どれがマーレン様の魔力と合うのか、一つ一つ試していこう─と言う事になった。
「特にヴィーは問題無いとは思うけど、ヴィーの魔力もそこそこ大きいから、ついでにヴィーも一緒に訓練しておこうか?」
『そうですね。いざと言う時に、自分の魔力をコントロールする事は大事ですから。』
「それじゃあ……ヴィオラ嬢、数日の間だけど、宜しくお願いします。」
「はい。こちらこそ、宜しくお願いします。」
こうして、リュウさんとノアに言われて、私もマーレン様と一緒に訓練をする事になった。
とは言え、マーレン様は合同訓練で来ている為、次の日は勿論、朝から───お祖父様達からタップリと特訓を受けている。
隣国から来ているのは30人程。訓練初日には、その全員が昼過ぎには……倒れていた。そして、今日は4日目。今のところ、まだ20人程が動けている。その中でも目が行くのが──
「今日のマーレン様は、動きが良いね。」
「あ、お母様もそう思う?」
そう。昨日迄のマーレン様も、副団長らしく他の騎士達よりも動きが良かったけど、今日は更に動きが良いのだ。
「きっと、ハルの拘束魔法のお陰で、無駄な魔力消費が無くなったからだろうな。」
「なるほど。でも…やっぱり一番良い動きをしてるのは───」
「お父様よね!」
「お父様だね!」
私とお母様の声がハモった。
そう。今日はお祖父様に言われて、お父様が隣国側の騎士として訓練を受けているのだ。
ー何故隣国側?とは、敢えて訊かなかったけどー
兎に角、お父様の動きは別格だった。「え?踊ってる?」みたいな感じで流れるような動きなのに、全く無駄が無い。隣国の騎士では、パルヴァンの騎士に勝る人はいなかったけど、お父様はパルヴァンの騎士を次々と伸していった。ティモスさんとは互角─と言ったところだろうか?お兄様の動きも、お父様に似ていて綺麗だな─と思う。王城での訓練中、見学しているご令嬢達からは、黄色い声援を受けているそうだ。
そして、訓練はお昼になり休憩とランチタイムになった。ランチと言っても、このままパルヴァンの森で野営形式の食事だ。
私とお母様も騎士達と同じ様に地べたに座り込み食べていると、マーレン様がやって来た。
「ハル殿、拘束魔法を掛けていただき、本当にありがとうございます。昨日から調子が良くて…それに、ノア殿にも話をつけていただいて、何か…お礼ができれば良いのですが…」
「それなら良かったです。お礼なんて気にしないで下さい。拘束魔法も、今日には切れてしまいますから、後は自身の力で頑張って下さいね。」
「はい。本当にありがとうございました。ヴィオラ嬢、また訓練の時は宜しく頼みます。」
改めてお礼を言うと、マーレン様はまた元の場所へと戻って行った。
「本当に、マーレン様って見た目とは真逆な人だね。」
真面目と言うか…可愛らしいと言うか……
「グレン様もそうだけど、昔、私を助けてくれた人も…とってもイカツイ顔をしてたから、怖い顔の人程安心してた時期があって…。お父様に初めて会った時は、逆に恐怖心しかなかったのを思い出したわ。ふふっ。」
「恐怖心!?」
ー何故恐怖心??え?お父様って、誰が見てもイケメンだよね?ー
あ、そう言えば…昔、お父様は何かやらかしたんだっけ?まぁ…今がラブラブで仲良しなら問題無いけど…
ー私も、マーレン様と仲良くできるかなぁ?ー
「…………」
“仲良く”
「────ん?」
「さぁ、午後からも頑張ろう!」
「え?あ、はい!頑張ります!」
何かを考え掛けたところでお母様から声が掛かり、その思考が頭から完全に抜けてしまい、私はそのまま午後の見学─訓練へと意識を集中させた。
「サクラ、男の人が可愛く見えるのは…何で?」
「ヴィー、急に来て何を言ってるの?」
「ヴィー、いらっしゃい。今…パルヴァンで合同訓練中じゃなかった?」
ここは、ウォーランド王国の王都にある王城。その王城内にある、王女─サクラのプライベートルーム。そこにはサクラだけではなく、サクラの母であり王妃でもあるミヤも居た。そこへ、先触れの手紙を出した後、ヴィオラが転移してやって来たのだ。
「お母様に相談しようと思ったのだけど、今日はお父様がパルヴァンに来ているから……」
「「──あぁ…なるほどね。」」
「それは…邪魔できないわね。それで?さっきの質問の意味は…何?」
サクラに促されて、私は自分の考えを纏めながらサクラとミヤ様に話をした。
「つまり、11歳のヴィーが、25歳の強面の男の人が可愛く見えるのは─何故か?って事ね?」
「うん。」
「そんなの…答えは簡単じゃない?」
「そうなの!?」
「ヴィーが、その人に対して少なからず好意を持っているって事よ。」
ーマジですか!?ー
「本当ですか!?」
マーレン様は、本当に嬉しそうな顔をしている。
それから、ノアから、ノアから見て感じたマーレンの魔力についての話を聞いた後、いくつかの訓練の説明をされ、どれがマーレン様の魔力と合うのか、一つ一つ試していこう─と言う事になった。
「特にヴィーは問題無いとは思うけど、ヴィーの魔力もそこそこ大きいから、ついでにヴィーも一緒に訓練しておこうか?」
『そうですね。いざと言う時に、自分の魔力をコントロールする事は大事ですから。』
「それじゃあ……ヴィオラ嬢、数日の間だけど、宜しくお願いします。」
「はい。こちらこそ、宜しくお願いします。」
こうして、リュウさんとノアに言われて、私もマーレン様と一緒に訓練をする事になった。
とは言え、マーレン様は合同訓練で来ている為、次の日は勿論、朝から───お祖父様達からタップリと特訓を受けている。
隣国から来ているのは30人程。訓練初日には、その全員が昼過ぎには……倒れていた。そして、今日は4日目。今のところ、まだ20人程が動けている。その中でも目が行くのが──
「今日のマーレン様は、動きが良いね。」
「あ、お母様もそう思う?」
そう。昨日迄のマーレン様も、副団長らしく他の騎士達よりも動きが良かったけど、今日は更に動きが良いのだ。
「きっと、ハルの拘束魔法のお陰で、無駄な魔力消費が無くなったからだろうな。」
「なるほど。でも…やっぱり一番良い動きをしてるのは───」
「お父様よね!」
「お父様だね!」
私とお母様の声がハモった。
そう。今日はお祖父様に言われて、お父様が隣国側の騎士として訓練を受けているのだ。
ー何故隣国側?とは、敢えて訊かなかったけどー
兎に角、お父様の動きは別格だった。「え?踊ってる?」みたいな感じで流れるような動きなのに、全く無駄が無い。隣国の騎士では、パルヴァンの騎士に勝る人はいなかったけど、お父様はパルヴァンの騎士を次々と伸していった。ティモスさんとは互角─と言ったところだろうか?お兄様の動きも、お父様に似ていて綺麗だな─と思う。王城での訓練中、見学しているご令嬢達からは、黄色い声援を受けているそうだ。
そして、訓練はお昼になり休憩とランチタイムになった。ランチと言っても、このままパルヴァンの森で野営形式の食事だ。
私とお母様も騎士達と同じ様に地べたに座り込み食べていると、マーレン様がやって来た。
「ハル殿、拘束魔法を掛けていただき、本当にありがとうございます。昨日から調子が良くて…それに、ノア殿にも話をつけていただいて、何か…お礼ができれば良いのですが…」
「それなら良かったです。お礼なんて気にしないで下さい。拘束魔法も、今日には切れてしまいますから、後は自身の力で頑張って下さいね。」
「はい。本当にありがとうございました。ヴィオラ嬢、また訓練の時は宜しく頼みます。」
改めてお礼を言うと、マーレン様はまた元の場所へと戻って行った。
「本当に、マーレン様って見た目とは真逆な人だね。」
真面目と言うか…可愛らしいと言うか……
「グレン様もそうだけど、昔、私を助けてくれた人も…とってもイカツイ顔をしてたから、怖い顔の人程安心してた時期があって…。お父様に初めて会った時は、逆に恐怖心しかなかったのを思い出したわ。ふふっ。」
「恐怖心!?」
ー何故恐怖心??え?お父様って、誰が見てもイケメンだよね?ー
あ、そう言えば…昔、お父様は何かやらかしたんだっけ?まぁ…今がラブラブで仲良しなら問題無いけど…
ー私も、マーレン様と仲良くできるかなぁ?ー
「…………」
“仲良く”
「────ん?」
「さぁ、午後からも頑張ろう!」
「え?あ、はい!頑張ります!」
何かを考え掛けたところでお母様から声が掛かり、その思考が頭から完全に抜けてしまい、私はそのまま午後の見学─訓練へと意識を集中させた。
「サクラ、男の人が可愛く見えるのは…何で?」
「ヴィー、急に来て何を言ってるの?」
「ヴィー、いらっしゃい。今…パルヴァンで合同訓練中じゃなかった?」
ここは、ウォーランド王国の王都にある王城。その王城内にある、王女─サクラのプライベートルーム。そこにはサクラだけではなく、サクラの母であり王妃でもあるミヤも居た。そこへ、先触れの手紙を出した後、ヴィオラが転移してやって来たのだ。
「お母様に相談しようと思ったのだけど、今日はお父様がパルヴァンに来ているから……」
「「──あぁ…なるほどね。」」
「それは…邪魔できないわね。それで?さっきの質問の意味は…何?」
サクラに促されて、私は自分の考えを纏めながらサクラとミヤ様に話をした。
「つまり、11歳のヴィーが、25歳の強面の男の人が可愛く見えるのは─何故か?って事ね?」
「うん。」
「そんなの…答えは簡単じゃない?」
「そうなの!?」
「ヴィーが、その人に対して少なからず好意を持っているって事よ。」
ーマジですか!?ー
40
お気に入りに追加
435
あなたにおすすめの小説
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語
みん
恋愛
【モブ】シリーズ②
“巻き込まれ召喚のモブの私だけ還れなかった件について”の続編になります。
5年程前、3人の聖女召喚に巻き込まれて異世界へやって来たハル。その3年後、3人の聖女達は元の世界(日本)に還ったけど、ハルだけ還れずそのまま異世界で暮らす事に。
それから色々あった2年。規格外なチートな魔法使いのハルは、一度は日本に還ったけど、自分の意思で再び、聖女の1人─ミヤ─と一緒に異世界へと戻って来た。そんな2人と異世界の人達との物語です。
なろうさんでも投稿していますが、なろうさんでは閑話は省いて投稿しています。
幸せを望まなかった彼女が、最後に手に入れたのは?
みん
恋愛
1人暮らしをしている秘密の多い訳ありヒロインを、イケメンな騎士が、そのヒロインの心を解かしながらジワジワと攻めて囲っていく─みたいな話です。
❋誤字脱字には気を付けてはいますが、あると思います。すみません。
❋独自設定あります。
❋他視点の話もあります。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
没落令嬢は、おじさん魔道士を尽くスルーする
みん
恋愛
とある国の辺境地にある修道院で育った“ニア”は、元伯爵令嬢だ。この国では、平民の殆どは魔力無しで、魔力持ちの殆どが貴族。その貴族でも魔力持ちは少ない。色んな事情から、魔力があると言う理由で、15歳の頃から働かされていた。ただ言われるがままに働くだけの毎日。
そんな日々を過ごしていたある日、新しい魔力持ちの……“おじさん魔道士”がやって来た。
❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただければ幸いです。
❋気を付けてはいますが、どうしても誤字脱字を出してしまいます。すみません。
❋他視点による話もあります。
❋基本は、1日1話の更新になります。
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
初恋の還る路
みん
恋愛
女神によって異世界から2人の男女が召喚された。それによって、魔導師ミューの置き忘れた時間が動き出した。
初めて投稿します。メンタルが木綿豆腐以下なので、暖かい気持ちで読んでもらえるとうれしいです。
毎日更新できるように頑張ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる