魔法使いの恋

みん

文字の大きさ
上 下
6 / 21

しおりを挟む
「魔法使い…母娘で………。」

リュウさんからの話が終わると、目の前に居るマーレン様はキョトン─とした顔をして固まった。

少し強面気味な顔なのに、キョトンとした顔をすると、何だか少しだけ可愛らしく見える。

「言っておくが、ヴィー…ヴィオラはの魔法使いだけど、ハルは…別格の魔法使いだからな。」

「別格?」

「シリウスは、魔法使いとしての俺の実力は知っているよな?」

「それは勿論。我が国では、リュウ殿以上の者は居ませんからね。リュウ殿から感じる魔力も、とても強いモノで………」

そこで、マーレン様はハッとしたように目を軽く見開いてから、私とお母様に意識を向けて来た。

ゾワリ─と、身体に嫌な感覚が纏わり付いて来た。

ーえ?何?ー

焦っていると、次の瞬間、その嫌な感覚が一瞬にして無くなった。

ー一体…何が起こったの?ー

「──私達の魔力を感じようと、無意識のうちに自分の魔力を相手の身体に纏わせてしまうんですね?」

「え?」

いつものようにニコニコ笑っているお母様。そんなお母様から言われた言葉に驚くマーレン様。

「あれ?気付いていなかったですか?マーレン様が他人ひとの魔力に対して敏感になっているのは、その相手に自分の魔力を纏わせてしまっているからですよ?纏わせる事で、相手の魔力と自分の魔力が混ざってしまって、その魔力差?が違和感となって自分に還って来てるんですよ。特に、その2人の魔力差が大きければ大きい程、違和感は強くなると思います。」

流石はチートな魔法使いのお母様。さっきのゾワリとした感覚は、マーレン様の魔力が纏わりついたからで、その纏わりついた魔力をお母様が弾いた─と言うところだろう。
しかも、マーレン様自身、そんな事が起こっていた事すら知らなかったようで、未だに放心状態である。

ーそんな姿も可愛く見えるのは…何故?ー

「流石はハルだな。俺も全く気付かなかった。」

と、リュウさんが何となく嬉しそうに笑う。

「え?それは…え?」

「ははっ。驚くだろう?見た目はリスみたいなのに…俺は、ハルの足元にも及ばないレベルの魔法使いなんだ。いや、ハルが凄過ぎるだけなんだけどな?兎に角、お前が他人ひとの魔力に対して敏感だったから、お前にだけは伝えておこうと思ったんだ。契約を交したが、これは他言無用だ。他言した場合はそれなりの制裁を受けてもらうし……それ以上に、俺やパルヴァンも黙ってはいないからな……。それだけは覚えておいてくれ。」

いつもは飄々とした顔をしているリュウさんが、一瞬真顔でマーレン様に軽く圧を掛けるように視線を向けた。それだけではなく、この部屋全体にピリッとした空気が張り詰めた。
リュウさんだけではない。お祖父様もティモスさんもルナさんもリディさんも…兎に角、パルヴァンの人達はお母様に対しては過保護以上の過保護だ。

「勿論、口外しません。その…一つだけ…。私自身、魔力をうまく使えない事があって…もし良ければ、時間がある時で良いので、相談にのってもらう事はできますか?」

「私に出来る、分かる範囲で良ければ。」

「ありがとうございます!」

お母様からの了承を得ると、マーレン様はパアッと表情を明るくさせた。

ー強面さんな割には、クルクルと表情が変わる人だよねー

そんなマーレン様が可愛く見えて仕方がなくて、ついついマーレン様に視線がいってしまうのは………仕方が無い…よね?

「あくまでも、合同訓練が第一優先事項である事を忘れずに。」

と、お祖父様はニッコリ微笑みながら、マーレン様にキッチリと釘を刺した。





それから少し話をしてから、お互いの騎士達の集まる時間となった為、お母様と私は別邸へ。レオン様達は騎士邸へと向かった。











『主…何か…誰かに何かされたか?』

私とお母様は、そのままネロとネージュの居る中庭へとやって来た。すると、いち早くネージュが反応した。

「流石はネージュだね。気付いた?でも大丈夫。何かされた─と言うか…」

と、お母様はマーレン様とのやりとりの話をした。




『ふむ。それは…なかなか厄介な能力だな。無意識にとなると、コントロールするのにも、少し時間が掛かるかもしれぬな。あ、そう言えば…ノアが、その魔力や血で繋がりを手繰る能力がある故、何か手助けができるかもしれぬが…この1週間の間にここに来れるかどうか─だな。』

「そうなんだね。それじゃあ、もしノアが来れるようなら、その時に頼んでみるね。ところで…ネージュ?久し振りに…ネージュと寝転んでも良い?」

『勿論』

そう言うと、ネージュは元の大きさに戻り、ゴロンと横になった。その横になったネージュに、ハルは勿論の事、『ネロもー』「私も!!」と、仔犬サイズのネロとヴィオラもネージュのもふもふにダイブした。

「ネージュのもふもふ、久し振りだね!やっぱりネージュのもふもふは気持ちいい!」

と、ハルはネージュに抱き着いたまま撫で回す。

「確かに、ネージュのもふもふは気持ちいいけど、ネロも気持ちいいからね?」

と、ヴィオラはネロを抱き寄せてワシャワシャと撫で回す。

そして、撫で回されているネージュとネロは、嬉しそうに目を細めて尻尾をフリフリとさせていた。












「「はぁー……見てるだけで癒やされる!」」

と、そんな様子を見守っているルナとリディだった。









*補足*

★ネージュ★
ヴィオラの母─ハルと名を交している白色のフェンリルで、ネロの母。本来は2m以上の大きさだが、普段はゴールデンレトリバー程の大きさになっている。
擬人化すると美魔女になる。

★ノア★
ヴィオラの父─エディオルと名を交している黒色の天馬で、ネロの父。
擬人化するとイケオジになる。

★ネロ★
ヴィオラと名を交している黒色のフェンリル。
擬人化すると美少女になる。









❋明けましておめでとうございます。本年も、どうぞ宜しくお願い致します❋
(⑅ᴗˬᴗ)ꕤ*.゚




しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。

石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。 いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。 前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。 ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

あなたのそばにいられるなら、卒業試験に落ちても構いません! そう思っていたのに、いきなり永久就職決定からの溺愛って、そんなのありですか?

石河 翠
恋愛
騎士を養成する騎士訓練校の卒業試験で、不合格になり続けている少女カレン。彼女が卒業試験でわざと失敗するのには、理由があった。 彼女は、教官である美貌の騎士フィリップに恋をしているのだ。 本当は料理が得意な彼女だが、「料理音痴」と笑われてもフィリップのそばにいたいと願っている。 ところがカレンはフィリップから、次の卒業試験で不合格になったら、騎士になる資格を永久に失うと告げられる。このままでは見知らぬ男に嫁がされてしまうと慌てる彼女。 本来の実力を発揮したカレンはだが、卒業試験当日、思いもよらない事実を知らされることになる。毛嫌いしていた見知らぬ婚約者の正体は実は……。 大好きなひとのために突き進むちょっと思い込みの激しい主人公と、なぜか主人公に思いが伝わらないまま外堀を必死で埋め続けるヒーロー。両片想いですれ違うふたりの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

拾った仔猫の中身は、私に嘘の婚約破棄を言い渡した王太子さまでした。面倒なので放置したいのですが、仔猫が気になるので救出作戦を実行します。

石河 翠
恋愛
婚約者に婚約破棄をつきつけられた公爵令嬢のマーシャ。おバカな王子の相手をせずに済むと喜んだ彼女は、家に帰る途中なんとも不細工な猫を拾う。 助けを求めてくる猫を見捨てられず、家に連れて帰ることに。まるで言葉がわかるかのように賢い猫の相手をしていると、なんと猫の中身はあの王太子だと判明する。猫と王子の入れ替わりにびっくりする主人公。 バカは傀儡にされるくらいでちょうどいいが、可愛い猫が周囲に無理難題を言われるなんてあんまりだという理由で救出作戦を実行することになるが……。 もふもふを愛するヒロインと、かまってもらえないせいでいじけ気味の面倒くさいヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより pp7さまの作品をお借りしております。

婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」  侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。  その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。  フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。  そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。  そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。  死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて…… ※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。

処理中です...