5 / 21
伍
しおりを挟む
「えっと…そんなに圧を掛けないでくれるかなぁ?」
圧を掛けて来るレオンに、リュウは苦笑しながら両手を上げる。
「話の内容によるけど……それで?彼女達の事とは何だ?ゼンも呼ぶか?」
「大したことじゃないよ。今回連れて来た騎士の中に、第一騎士団の副団長が居るんだけど、そいつが結構な魔力持ちなんだ。それに、勘?が鋭いと言うか…そんな訳で、ひょっとしたら、ハルとヴィーに対して違和感を覚えるかもしれないなと思って。だからと言って、ハルやヴィーに対して何かしたり、言いふらしたりするような奴ではないけど。」
「……私達だけでは決められないから、ハルとゼンと相談してから決める。朝食が済んだ後、また1人で…いや。その第一騎士団副団長と2人て来てくれ。」
「了解。」
片手を上げて返事をすると、リュウは執務室から出て行き、レオンも手元にあった、今回派遣されて来た騎士達に関して書かれてある資料を手にして、ゼンとハルの居る別邸へと向かった。
「“シリウス=マーレン”─隣国のマーレン伯爵の次男で、現在第一騎士団副団長として、今回の合同訓練に参加している。資料を見る限りでは、魔力もそこそこあって、魔導師としてもやっていける程だそうで、他人の魔力も敏感に感じ取る事ができるそうだ。しかも、魔法使いであるリュウとも接する機会が多いそうだから、同じ魔法使いであるハルとヴィーにも…敏感に反応するかもしれない。それを踏まえて…ハルは、どうしたい?」
朝早くにお祖父様に起こされて、お祖父様の執務室にやって来ると、レオン様からそんな話をされた。
「ハルはどう思う?どうしたい?」
「そうですねぇ……魔法での契約を交してもらう事が絶対条件にはなりますけど、この人には、私とヴィーが魔法使いである事を伝えても良いかと…。今回の合同訓練に大きな危険は無いと思いますけど、私達に対する違和感を持ったまま訓練を行う事はよくありませんからね。それに、何かあった時、知っているのと知っていないのとでは…大きく違って来ますから。お父さんは…どう思う?」
「俺は、ハルの意思を尊重する。ハルがそれで良いなら、俺は反対しないが……もし、そいつが魔法使いと知ってハルやヴィーに何かをするようなら…俺は俺で動かせてもらうだけだ。」
「「「………」」」
ー“動かせてもらう”って、何ですか?ー
とは、レオン様もお母様も私も訊けなかった。否─訊かない方が良い。
「─あ…あぁ、最悪そうなった場合の対処は…ハルとゼンに……一任するよ……」
と、レオン様は顔を引き攣らせながら答えた。
そして朝食後─
リュウさんが、そのシリウス=マーレン第一騎士団副団長様を連れて、レオン様の執務室へとやって来た。今度は、お母様とお祖父様と私も同席していて、部屋の壁側にはパルヴァンの騎士団長となったティモスさんと、お母様の侍女兼護衛のルナさんとリディさんも控えている。
「初めまして。私は第一騎士団の副団長を務めているシリウス=マーレンと言います。今回は、合同訓練を受けていただき、本当にありがとうございます。」
マーレン第一騎士団副団長様は、25歳と言う若さで副団長を務めている。
アッシュブラウンの短髪で、瞳の色はミントグリーンで、とても綺麗な色をしている。そして、右目の斜め下辺りに傷痕がある。
ー怪我をしたのが、目じゃなくて良かったー
私はマーレン様を見ながら、何となくそんな事を思っていた。すると──
「私の、この顔の傷痕が気になりますか?」
「え?あっ!すみません、不躾に見てしまって。いや、その…怪我をしたのが目じゃなくて良かったなぁ…なんて…って、怪我をした事自体が大変だったのに!変な事を言ってすみません!!」
ガバッと、その場で頭を下げて謝る。
ーうわぁ…初対面でやらかしてしまった!ー
頭を下げたまま焦っていると「ははっ─」と笑い声がした後「頭を上げて下さい」と、柔らかい声を掛けられた。
「あぁ、笑ってしまってすみません。そんな事を言われたのが初めてだったもので。たいていの人は、怖がったり憐れんだり……忌避めいた視線を向けられたりするので…なんだか新鮮?と言うか…面白くて…。」
と言いながらも、未だに少し笑っているところを見ると、怒ってはいないんだろう。
「あの、本当に、すみませんでした。」
取り敢えず、もう一度謝った後、改めてお互いの自己紹介と挨拶をしていき、皆の自己紹介が終わると、リュウさんが魔法での契約が必要となる話がある─と説明し、マーレン様の了承を得てから魔法での契約書にサインをした後、リュウさんがお母様と私の事についての話をしだした。
❋本作品を読んでいただき、ありがとうございます。皆様が、良い年越しを過ごせますように❋
圧を掛けて来るレオンに、リュウは苦笑しながら両手を上げる。
「話の内容によるけど……それで?彼女達の事とは何だ?ゼンも呼ぶか?」
「大したことじゃないよ。今回連れて来た騎士の中に、第一騎士団の副団長が居るんだけど、そいつが結構な魔力持ちなんだ。それに、勘?が鋭いと言うか…そんな訳で、ひょっとしたら、ハルとヴィーに対して違和感を覚えるかもしれないなと思って。だからと言って、ハルやヴィーに対して何かしたり、言いふらしたりするような奴ではないけど。」
「……私達だけでは決められないから、ハルとゼンと相談してから決める。朝食が済んだ後、また1人で…いや。その第一騎士団副団長と2人て来てくれ。」
「了解。」
片手を上げて返事をすると、リュウは執務室から出て行き、レオンも手元にあった、今回派遣されて来た騎士達に関して書かれてある資料を手にして、ゼンとハルの居る別邸へと向かった。
「“シリウス=マーレン”─隣国のマーレン伯爵の次男で、現在第一騎士団副団長として、今回の合同訓練に参加している。資料を見る限りでは、魔力もそこそこあって、魔導師としてもやっていける程だそうで、他人の魔力も敏感に感じ取る事ができるそうだ。しかも、魔法使いであるリュウとも接する機会が多いそうだから、同じ魔法使いであるハルとヴィーにも…敏感に反応するかもしれない。それを踏まえて…ハルは、どうしたい?」
朝早くにお祖父様に起こされて、お祖父様の執務室にやって来ると、レオン様からそんな話をされた。
「ハルはどう思う?どうしたい?」
「そうですねぇ……魔法での契約を交してもらう事が絶対条件にはなりますけど、この人には、私とヴィーが魔法使いである事を伝えても良いかと…。今回の合同訓練に大きな危険は無いと思いますけど、私達に対する違和感を持ったまま訓練を行う事はよくありませんからね。それに、何かあった時、知っているのと知っていないのとでは…大きく違って来ますから。お父さんは…どう思う?」
「俺は、ハルの意思を尊重する。ハルがそれで良いなら、俺は反対しないが……もし、そいつが魔法使いと知ってハルやヴィーに何かをするようなら…俺は俺で動かせてもらうだけだ。」
「「「………」」」
ー“動かせてもらう”って、何ですか?ー
とは、レオン様もお母様も私も訊けなかった。否─訊かない方が良い。
「─あ…あぁ、最悪そうなった場合の対処は…ハルとゼンに……一任するよ……」
と、レオン様は顔を引き攣らせながら答えた。
そして朝食後─
リュウさんが、そのシリウス=マーレン第一騎士団副団長様を連れて、レオン様の執務室へとやって来た。今度は、お母様とお祖父様と私も同席していて、部屋の壁側にはパルヴァンの騎士団長となったティモスさんと、お母様の侍女兼護衛のルナさんとリディさんも控えている。
「初めまして。私は第一騎士団の副団長を務めているシリウス=マーレンと言います。今回は、合同訓練を受けていただき、本当にありがとうございます。」
マーレン第一騎士団副団長様は、25歳と言う若さで副団長を務めている。
アッシュブラウンの短髪で、瞳の色はミントグリーンで、とても綺麗な色をしている。そして、右目の斜め下辺りに傷痕がある。
ー怪我をしたのが、目じゃなくて良かったー
私はマーレン様を見ながら、何となくそんな事を思っていた。すると──
「私の、この顔の傷痕が気になりますか?」
「え?あっ!すみません、不躾に見てしまって。いや、その…怪我をしたのが目じゃなくて良かったなぁ…なんて…って、怪我をした事自体が大変だったのに!変な事を言ってすみません!!」
ガバッと、その場で頭を下げて謝る。
ーうわぁ…初対面でやらかしてしまった!ー
頭を下げたまま焦っていると「ははっ─」と笑い声がした後「頭を上げて下さい」と、柔らかい声を掛けられた。
「あぁ、笑ってしまってすみません。そんな事を言われたのが初めてだったもので。たいていの人は、怖がったり憐れんだり……忌避めいた視線を向けられたりするので…なんだか新鮮?と言うか…面白くて…。」
と言いながらも、未だに少し笑っているところを見ると、怒ってはいないんだろう。
「あの、本当に、すみませんでした。」
取り敢えず、もう一度謝った後、改めてお互いの自己紹介と挨拶をしていき、皆の自己紹介が終わると、リュウさんが魔法での契約が必要となる話がある─と説明し、マーレン様の了承を得てから魔法での契約書にサインをした後、リュウさんがお母様と私の事についての話をしだした。
❋本作品を読んでいただき、ありがとうございます。皆様が、良い年越しを過ごせますように❋
36
お気に入りに追加
436
あなたにおすすめの小説
告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。
石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。
いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。
前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。
ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
あなたのそばにいられるなら、卒業試験に落ちても構いません! そう思っていたのに、いきなり永久就職決定からの溺愛って、そんなのありですか?
石河 翠
恋愛
騎士を養成する騎士訓練校の卒業試験で、不合格になり続けている少女カレン。彼女が卒業試験でわざと失敗するのには、理由があった。 彼女は、教官である美貌の騎士フィリップに恋をしているのだ。
本当は料理が得意な彼女だが、「料理音痴」と笑われてもフィリップのそばにいたいと願っている。
ところがカレンはフィリップから、次の卒業試験で不合格になったら、騎士になる資格を永久に失うと告げられる。このままでは見知らぬ男に嫁がされてしまうと慌てる彼女。
本来の実力を発揮したカレンはだが、卒業試験当日、思いもよらない事実を知らされることになる。毛嫌いしていた見知らぬ婚約者の正体は実は……。
大好きなひとのために突き進むちょっと思い込みの激しい主人公と、なぜか主人公に思いが伝わらないまま外堀を必死で埋め続けるヒーロー。両片想いですれ違うふたりの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
拾った仔猫の中身は、私に嘘の婚約破棄を言い渡した王太子さまでした。面倒なので放置したいのですが、仔猫が気になるので救出作戦を実行します。
石河 翠
恋愛
婚約者に婚約破棄をつきつけられた公爵令嬢のマーシャ。おバカな王子の相手をせずに済むと喜んだ彼女は、家に帰る途中なんとも不細工な猫を拾う。
助けを求めてくる猫を見捨てられず、家に連れて帰ることに。まるで言葉がわかるかのように賢い猫の相手をしていると、なんと猫の中身はあの王太子だと判明する。猫と王子の入れ替わりにびっくりする主人公。
バカは傀儡にされるくらいでちょうどいいが、可愛い猫が周囲に無理難題を言われるなんてあんまりだという理由で救出作戦を実行することになるが……。
もふもふを愛するヒロインと、かまってもらえないせいでいじけ気味の面倒くさいヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより pp7さまの作品をお借りしております。
【コミカライズ決定】無敵のシスコン三兄弟は、断罪を力技で回避する。
櫻野くるみ
恋愛
地味な侯爵令嬢のエミリーには、「麗しのシスコン三兄弟」と呼ばれる兄たちと弟がいる。
才能溢れる彼らがエミリーを溺愛していることは有名なのにも関わらず、エミリーのポンコツ婚約者は夜会で婚約破棄と断罪を目論む……。
敵にもならないポンコツな婚約者相手に、力技であっという間に断罪を回避した上、断罪返しまで行い、重すぎる溺愛を見せつける三兄弟のお話。
新たな婚約者候補も…。
ざまぁは少しだけです。
短編
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる