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壱
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「合同訓練?」
「そう。ハルも知らないだろう?20年ぶりに行う事になったからなぁ。」
と、愉しそうに笑いながら説明をしだしたのは、私─ヴィオラ=カルザインの祖父─ゼン─である。
ここは、ウォーランド王国の辺境地─パルヴァン。
祖父は、そのパルヴァン辺境地の先代のグレン様の護衛兼家令だったが、グレン様が嫡男であるレオン様に辺境伯を継がせた後、妻であるシルヴィア様と旅に出た後も、この辺境地に留まり、現当主のレオン様を見守りつつのんびりと余生を満喫している。
最強と言われた武人─らしいけど、私にとっては優しいお祖父様でしかない。お母様やお兄様や私の前では、いつも優しい目をしている。
『本当に、最強だったの?お父様よりも?』
と、一度、お父様とお母様とお兄様の4人で食事をしている時に訊いた事があったけど─
何故か、お父様は遠い目をして、お兄様は顔を少し引き攣らせていた。お母様からは、ニコニコと笑って『そのうち分かるわ』とだけ言われた。
パルヴァン辺境地にある森を管理する辺境伯は、血で引き継がれるのではなく、武に長けた者で、国王や貴族院に認められなければなれない。そんな辺境伯─グレン様の護衛をしていたのだから、お祖父様は武に長けているのは本当なんだろうと思う─けど。
ー“最強”と言うのが…いまいちピンッと来ないんだよねー
なんて……あの頃はそう思っていた。
それから暫くして、お祖父様から知らされたのが、20年ぶりにパルヴァンの森で行われる隣国との合同討伐訓練だった。
大昔には、その領土を争っていた隣国。争いによってその森に穢れが溜まり魔獣や魔物が増えた事で、これ以上の被害を食い止める為に争いに終止符を打ち和平を結んだ。そこから、その森の魔獣や魔物の討伐を兼ねて、二国で訓練が行われるようになったそうだ。
二国の間には海があり、陸では繋がってはいないが、空を飛ぶ魔物や魔獣には関係ない。その為、大変なことではあるが、2年に1度のペースで訓練が行われていたらいしのだけど─。
「ハイスペ聖女のお姉さん達が、きれいサッパリ浄化してくれたから、魔物達が現れなくなって討伐自体が……無くなったのね。」
「そう。ありがたい事に、何年も穢れが出なかったから、討伐する必要がなかったんだ。それに、隣国の国内がバタバタしていたと言う事もあるがな。」
隣国─私の師匠でもある魔法使いのリュウさんが居る国は、私が生まれる前にクーデター?が起こったようで、色々大変だったらしい。よくは知らないけど、今の隣国の国王であるジークフラン様は、リュウさんが後ろ盾となってジークフラン様を支えている。
それに、我が国の王妃であり、そのハイスペ聖女の1人だったミヤ様も、ジークフラン様の後ろ盾となっている。
「ハイスペ聖女様と魔法使いが後ろ盾に居るなら、ジークフラン様も安心だね?」
と言うと、リュウさんが苦笑していた──のは何故だろう?
「一番の後ろ盾は──」
リュウさんが何かを呟いてはいたけど、よく聞き取れなかった。
「まぁ…パルヴァンはまだ、そこまで穢れが増えた訳ではないんだが、隣国は以前の国王の時に酷い目に遭ったから、落ち着いて来た今、改めて訓練をしてもしもの時に備えておきたいらしい。それでなくとも、前国王の時代では、貴族が甘い蜜を吸っていたせいで、騎士達に使うお金がかなり減らされていたらしく、まともに訓練や人員を確保できていなかったそうだ。」
そうなれば、騎士を育てる事も維持する事もできず─魔獣や魔物が一気に増えた時、直ぐ様対応ができず、対応できたとしてもまともに戦う事すらできず、被害が拡大してしまったそうだ。
「─これは……鍛え甲斐が……ありそうだ。」
ニヤリ─と嗤うお祖父様。
「「…………」」
この時、私は初めて、お祖父様の笑顔を見て背中がゾワゾワとしたのだった。
「それで……お父さん?どうして、私とヴィーがパルヴァンに呼ばれたの?」
討伐訓練の話を聞き終えた後、お母様がコテン─と小首を傾げながらお祖父様に質問をすると、お祖父様がフワリといつもの優しい笑顔に戻った。
ーお父様もだけど、お祖父様も、お母様のこの“コテン”とする仕草に……とても弱いよねー
正直、お母様の“コテン”は可愛い。贔屓目無しに可愛い。一体何歳なの!?と訊きたくなる。お父様が溺愛するのも、本当によく解る。
─コホン──少し、落ち着こう。
「あぁ、そうそう。その訓練に、ハルとヴィーも参加する事になったんだ。」
「「え!?参加!?」」
「そう。参加だ。」
驚いているお母様と私とは対象的に、お祖父様はこれまた愉しそうに笑った。
❋新作の話がなかなか纏らず、モブシリーズで気分転換をしようと…子達の話を始めました。短編でサクサク行こうと思っています。宜しくお願いします❋
「そう。ハルも知らないだろう?20年ぶりに行う事になったからなぁ。」
と、愉しそうに笑いながら説明をしだしたのは、私─ヴィオラ=カルザインの祖父─ゼン─である。
ここは、ウォーランド王国の辺境地─パルヴァン。
祖父は、そのパルヴァン辺境地の先代のグレン様の護衛兼家令だったが、グレン様が嫡男であるレオン様に辺境伯を継がせた後、妻であるシルヴィア様と旅に出た後も、この辺境地に留まり、現当主のレオン様を見守りつつのんびりと余生を満喫している。
最強と言われた武人─らしいけど、私にとっては優しいお祖父様でしかない。お母様やお兄様や私の前では、いつも優しい目をしている。
『本当に、最強だったの?お父様よりも?』
と、一度、お父様とお母様とお兄様の4人で食事をしている時に訊いた事があったけど─
何故か、お父様は遠い目をして、お兄様は顔を少し引き攣らせていた。お母様からは、ニコニコと笑って『そのうち分かるわ』とだけ言われた。
パルヴァン辺境地にある森を管理する辺境伯は、血で引き継がれるのではなく、武に長けた者で、国王や貴族院に認められなければなれない。そんな辺境伯─グレン様の護衛をしていたのだから、お祖父様は武に長けているのは本当なんだろうと思う─けど。
ー“最強”と言うのが…いまいちピンッと来ないんだよねー
なんて……あの頃はそう思っていた。
それから暫くして、お祖父様から知らされたのが、20年ぶりにパルヴァンの森で行われる隣国との合同討伐訓練だった。
大昔には、その領土を争っていた隣国。争いによってその森に穢れが溜まり魔獣や魔物が増えた事で、これ以上の被害を食い止める為に争いに終止符を打ち和平を結んだ。そこから、その森の魔獣や魔物の討伐を兼ねて、二国で訓練が行われるようになったそうだ。
二国の間には海があり、陸では繋がってはいないが、空を飛ぶ魔物や魔獣には関係ない。その為、大変なことではあるが、2年に1度のペースで訓練が行われていたらいしのだけど─。
「ハイスペ聖女のお姉さん達が、きれいサッパリ浄化してくれたから、魔物達が現れなくなって討伐自体が……無くなったのね。」
「そう。ありがたい事に、何年も穢れが出なかったから、討伐する必要がなかったんだ。それに、隣国の国内がバタバタしていたと言う事もあるがな。」
隣国─私の師匠でもある魔法使いのリュウさんが居る国は、私が生まれる前にクーデター?が起こったようで、色々大変だったらしい。よくは知らないけど、今の隣国の国王であるジークフラン様は、リュウさんが後ろ盾となってジークフラン様を支えている。
それに、我が国の王妃であり、そのハイスペ聖女の1人だったミヤ様も、ジークフラン様の後ろ盾となっている。
「ハイスペ聖女様と魔法使いが後ろ盾に居るなら、ジークフラン様も安心だね?」
と言うと、リュウさんが苦笑していた──のは何故だろう?
「一番の後ろ盾は──」
リュウさんが何かを呟いてはいたけど、よく聞き取れなかった。
「まぁ…パルヴァンはまだ、そこまで穢れが増えた訳ではないんだが、隣国は以前の国王の時に酷い目に遭ったから、落ち着いて来た今、改めて訓練をしてもしもの時に備えておきたいらしい。それでなくとも、前国王の時代では、貴族が甘い蜜を吸っていたせいで、騎士達に使うお金がかなり減らされていたらしく、まともに訓練や人員を確保できていなかったそうだ。」
そうなれば、騎士を育てる事も維持する事もできず─魔獣や魔物が一気に増えた時、直ぐ様対応ができず、対応できたとしてもまともに戦う事すらできず、被害が拡大してしまったそうだ。
「─これは……鍛え甲斐が……ありそうだ。」
ニヤリ─と嗤うお祖父様。
「「…………」」
この時、私は初めて、お祖父様の笑顔を見て背中がゾワゾワとしたのだった。
「それで……お父さん?どうして、私とヴィーがパルヴァンに呼ばれたの?」
討伐訓練の話を聞き終えた後、お母様がコテン─と小首を傾げながらお祖父様に質問をすると、お祖父様がフワリといつもの優しい笑顔に戻った。
ーお父様もだけど、お祖父様も、お母様のこの“コテン”とする仕草に……とても弱いよねー
正直、お母様の“コテン”は可愛い。贔屓目無しに可愛い。一体何歳なの!?と訊きたくなる。お父様が溺愛するのも、本当によく解る。
─コホン──少し、落ち着こう。
「あぁ、そうそう。その訓練に、ハルとヴィーも参加する事になったんだ。」
「「え!?参加!?」」
「そう。参加だ。」
驚いているお母様と私とは対象的に、お祖父様はこれまた愉しそうに笑った。
❋新作の話がなかなか纏らず、モブシリーズで気分転換をしようと…子達の話を始めました。短編でサクサク行こうと思っています。宜しくお願いします❋
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