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余話

チートなリス

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タシタシタシタシ!

『何で!?』

タシタシタシタシ!

はい、またまた!物理的に!リスになったハルです!

タシタシタシタシ!

一心不乱?に布団を叩いています。

私には9歳のセオと7歳のヴィーと言う、可愛い可愛い子供が居ます。立派な母親になった──筈の私なのに、今日、朝目が覚めると……リスになっていた。

『──“二度あることは三度ある”なのかなぁ?』

相変わらず、頬は引っ張るとミヨーんと伸びる。
どうせ、夕方には元に戻るんだよね。ディも…分かってくれるだろう。なら──

ーまた、この姿を堪能するしかないよね!?ー

と、私はまた、ルナさん達に手紙を書いてから部屋から抜け出した。














『あーじ、久し振りのリスなの!可愛いの!』

やっぱり、私の存在にいち早く気付いたのはネロで、私を両前足で掴んでから鼻をスリスリと私の頭に擦り付けてきた。

『主はまた、リスになったのか?』

『もうね、何でリスになるのか全く分からないの!でも、なってしまったら…もう、リスを堪能するしかないよね!?』

リスになった小さな手をグッと握る。あ、知ってますか?リスって、前足は4本しか指が無いんです!だからか、何か物を掴む時は少し変な感じがするんです。

『子供を生んでも、相変わらずなのだな?まぁ─主らしいな?』

そう言って、ネージュは優しい目で笑った。










それから、今日はネージュではなく、ネロのもふもふに埋もれてお昼寝をしていた。






「お兄様、リスがいるわ!」

「ん?リス?あ、本当だね。」

気が付くと、目の前にセオとヴィーと──

「あ、本当だね。ネロのもふもふに埋もれて…可愛いな。ネロに馴れてるって事は…この辺に生息してるのかな?」

果物を持ったクレイル様が居た。
3人共、そこそこの魔力持ちだが、リスがハルだと言う事には気付いていないようだ。
そのまま、クレイル様にヒョイッと持ち上げられる。

「クレイル様、わたしもさわりたい!」

「んー…このリスはおとなしそうだから、大丈夫かな?じゃあ、ヴィー、両手を出して?」

ヴィーが素直に両手を出すと、クレイル様はそのまま私をヴィーの手に乗せた。そんな私を、キラキラとした目で見て来るヴィーが──

ーめちゃくちゃ可愛い!!ー

後で思い切り抱きしめよう!!『キュッキュッ』と鳴きながら、両手をグッと握り締めた。

それから、「可愛いね」と言われながら、セオとヴィーとクレイル様に撫でられまくった。そんな状態であっても、ネロもネージュも助けてはくれなかった。

だから、今は────グッタリ状態のリスなハルです!




「クレイル、また来ていたのか?」

どうしようか?─と思っていると、少し呆れた顔をしたディがやって来た。

「あ、エディオル、おかえり。エディオルは良いよね。家に帰って来たら癒しがいっぱい居て。」

「お前も結婚すれば良いだろう?」

「相手も居ないのにできる訳ないよね?それに、別に結婚したい訳ではないからね。」

「ん?」

そこで、ようやくディと目が合った。

「『………』」

「お父様、このリス、かわいいでしょう?」

と、グッタリしている私を“どやぁ”顔でディに掲げるヴィー。

「──あぁ…可愛いな…でも…グッタリしていないか?そろそろ……離してあげなさい。」

「えー…もう少し…ダメ?」

「───くっ…」

あぁ──ディは、このヴィーのに弱いのだ。お願いします!ディ、今は頑張って私に自由をもたらして下さい!

「ヴィー、気持ちは分かるけど、そのリス、少し弱っているように見えない?きっと、急にいっぱい触られて疲れてるんじゃないかな?」

そんなウルウルのヴィーに声を掛けたのは、セオだった。

ーセオ、ありがとう!後でギュッてさせて下さい!ー

「それに、このリスにだって家族も居るだろうしね。そろそろ帰してあげよう?」

「お兄様…分かりました。」

「──それじゃあ…俺が帰してこよう。」

そう言って、今度はディが私をヒョイッと持ち上げる。

「お父様、もう少し、クレイル様とヴィーと、ここで魔法の練習をしていても良いですか?」

「クレイルの時間があればな。」

「うん、それなら大丈夫だよ。」

「それじゃあ、クレイル、頼む。セオ、ヴィー、無理はしないようにな。」

そう言って、ディは私を持ったまま邸へと戻った。

















「まさか、またリスになっていたとはな……くくっ……」

「笑い事じゃないからね?」



あれから、ディの部屋に戻ってソファーでグッタリしていると、またまた急にポンッと元の姿に戻った。

一体、どんな条件でリスになって戻るのか─本当に分からない。


「でも、ディが来てくれて良かった──けど、ディは、本当にヴィーのウルウルに弱いよね?」

「───仕方無いだろう…。」

「ふふっ。氷の騎士と呼ばれるディも、娘には弱いって事なんですね?ふふっ。」

拗ねた様な顔をするディが可愛い──

なんて笑った自分は馬鹿だった。


「そうじゃない。あのヴィーのウルウルが───コトネにソックリ過ぎて…戸惑ってしまうんだ。」

「───えっ!?」

「俺は、どうしたって…コトネには勝てないからな。」

「はい?」

ー私、いつも負けてますけど?勝った事なんて一度も無いですけど?ー

「どうやら、まだ、俺がどれだけコトネを愛しているか…分かってないようだな?」

「はい??──って、ひやぁっ!」

何故、お姫様抱っこ!?いや、分かってますよ!?

「ディ、落ち着いて?私、ちゃんと理解してますよ!?それに、ほら!今はまだ夕方前だよ?セオ達も帰って来るよ!?」

「大丈夫だ、ウチには有能な者しか居ないからな。」

ーはい、ソレ、知ってます!本当に、空気を読むのが素晴らしい人達ですよね!!ー

ほら、どうしたって、私はディに勝てないんだ。なら──

ギュッとディの首に手を回してしがみつく。

「私だって、ディの事───あ…愛して…ます…からね!」

「─────馬鹿コトネ…………」





何故か、恐ろしく地を這うような声で呟かれ───











私は翌日の昼過ぎ迄寝室から出る事ができなかった。

















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