上 下
52 / 62

最終話

しおりを挟む
蒼の邸の裏庭の木陰で、セオドアとヴィオラとネロが昼寝をしている。

「この2人…本当に9歳と7歳か?寝顔は年相応だけど。」

「うん。セオは9歳だし、ヴィーは7歳で間違いないよ?リュウも知ってると思ってたけど…」

と、リュウの呟きにコテンと首を傾げるハル。

「あぁ、リュウもボケて来たのか?少し…早過ぎないか?」

そこに、俺に追撃を喰らわすエディオル。

ー本当に、エディオルもブレないよなぁー

「ボケてない。意味、分かってるだろう!?小学生1年生と3年生の子供が、ここ迄魔力を上手く使事に感心してるだけだ!」

「あ、なる程。でも、それは、リュウの魔力の使い方の教え方が上手なんだと思うよ?ほら、私が記憶を失った時も、本当に分かりやすいな─って思ったから。」

と、ハルがニコニコと笑っている。

「そう言ってもらえると嬉しいけど……多分、ハルから受け継いだ魔力が、2人に馴染んでいるのも要因の一つだろうね。流石は、規格外チートな魔法使い様様だよ。」

「ふふっ。それが本当なら、チートに感謝だね?」

ハルが、本当に幸せそうに─穏やかに笑う。
その笑顔を見ると、俺も幸せな気持ちになる。

セオとヴィーも、本当に可愛い。甥や姪…孫の存在とは…こう言うモノなのか?と思う。
前世では結婚どころか彼女すらいなかった(今世もだけど)。
この世界で前世を思い出し、俺がした事は…本当に最低な事だった。そんな俺を赦してくれたハル。そのハルが幸せになった。本当に良かった──と、俺は寝ている3人の横に腰を下ろした。







「コトネ、今日もお疲れ様。」

「ディもお疲れ様でした。」

セオとヴィーが寝た後は、ディが夜勤以外の日は、ディの私室でお茶をする事がルーティンになっている。

「明日は王城に行くんだろう?一緒に行こう。」

「一緒に行けるのは嬉しいんですけど、時間は大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。王城に来るように誘って来たランバルト本人が、“家族4人一緒に登城して良い”と言って来たからな。」

「そうなんですね。ふふっ。セオとヴィーは、喜ぶだろうなぁ。」

明日の登城は、王太子様からのお誘いだった。
王太子様とミヤ様も予定通りに結婚して、ヴィーと同い年の双子の王子と王女がいるのだ。そして、有り難い?事に、その双子と我が子2人は幼馴染みである。あ、因みに、イリス様とベラ様にも子供が2人居て、セオとヴィーと同い年であり、こちらも幼馴染みだ。
その6人の子達が遊ぶ為?に、王太子様からお誘いを受けた─と言う訳である。

「────ヴィーを連れて行かないと駄目か?」

「ん?」

何故か、ディが唸る様に呟いた。

「えっと…連れて行ってあげないと、ヴィーは泣くかもしれないですよ?」

「─────分かっている。」

「??」

どうしたんだろう?と、ジッとディを見つめていると、軽く息を吐いた後困ったような顔をして

「──王子がな…ヴィーをいるだろう?」

「王子?狙って??」

ー王子とは─双子の兄のリオン様の事だよね?リオン様がヴィーを狙うって…何?ー

「“婚約者はヴィーが良い”─って、ランバルトとミヤ様に言っているらしい。」

「婚約者!?え?まだ7歳だよ!?」

「あぁ…コトネの世界では有り得ない事かもしれないが、この世界では割とよくある話なんだ。特に上位貴族ともなれば…な。」

「あ…そう言えば、ディ達に婚約者が居なかったのは…聖女様絡みでしたね。えー…7歳で?」

ー早過ぎるよね?出来れば…恋愛結婚をさせてあげたい!ー

ムウッ─と、知らず知らずに眉間に皺を寄せて考えていると

「まぁ…ミヤ様とコトネが居る限り、ランバルトも国王両陛下も無理強いはしないだろうけどね。」

そんな事をすればどうなるか……ランバルト自身が一番よく解っている筈だから──と言う事は、エディオルは言葉にはせず呑み込んだ。

「そう…ですね。ミヤさんが居る限りは大丈夫ですね。勿論、ヴィー本人がリオン様を選んだら、私も反対はしませんよ?」

「──くっ…ヴィーが選んだら…その時は俺も……いや、まだまだ早過ぎるだろう!!」

「ふふっ。ディ、それ…ただ単に娘を嫁に出したくない─だけだよね?」

「当たり前だろう?」

「ヴィーが選んだら…選んだ時は、ちゃんと送り出して下さいね?ふふっ。」

ー少し拗ねた?ディは可愛いなぁー





なんてフワフワ笑っていた自分を殴ってやりたいです。




「コトネ、余裕で笑っているな?俺は…傷付いたのに。」

「ふぁいっ!?」

私の耳元で静かに囁きニヤリと笑った─次の瞬間、お姫様抱っこされて、そのまま夫婦の部屋へと運ばれた。
子達を出産した後は、抱き潰されると言う事は無かったけど…。


「手加減できるかどうかは…分からないからな。」


と言われたのが最後。
久し振りに、最後の記憶が……




ーあ、窓の外…少し明るくないかなぁ?ー




だった。





翌日がどうなったかは……ご想像にお任せします。

ミヤさんがチクリとディに言ってくれたけど、ディはニコリと笑っただけだった──とだけ、言っておきます。

ー恥ずか死ねるよね!?ー






兎に角、聖女様達に巻き込まれただけのモブだと思っていた私─
それが、元の世界に還れなかった規格外チートな魔法使いになり──
実は、この世界の血を引き継いでいるモブで、私はこの世界で好きな人と結婚して愛しい子供が2人生まれた─



「「お母様!」」


今日も裏庭へと行くと、ネージュとネロと一緒に居るセロとヴィーが笑顔で私の方へと駆け寄って来る。二人を抱きとめて話をしていると

「ここに居たのか─」

「「お父様!」」

フワリと微笑むディが、ノアと一緒に帰って来た。

「ただいま─」

そう言いながら、ディは私の頬にキスをした後、セロとヴィーを抱きしめた。
ノアも、ネージュとネロにキスをする。


ー幸せだなぁー



これからも、この幸せが続きますように──

それだけが、私の願いだ─








リオン王子とヴィーがどうなったか?──は、また別の話である。








❋最後迄読んでいただき、ありがとうございました。これにて、【モブ】本編は終わりとなります❋
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。 今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。 すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。 気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!? 他視点による話もあります。 ❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。 メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

処理中です...