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異変
しおりを挟む「ハル様!結婚式の時は、ありがとうございました!」
「あの…迷惑じゃなかったですか?イリス様は怒ったりしてませんでしたか?」
「迷惑なんて事はありませんわ!とっても綺麗で、見惚れてしまってましたわ。勿論、イリス様も喜んでいましたわ!」
「ハル、あの花びらはサプライズだったの?」
「はい。私の式の時にクレイル様がしてくれて、それが嬉しかったので…ついついベラ様の式の時にしてしまいました。」
はい、今日はミヤさんと一緒にベラ様─ベラトリス様の邸に遊びに来ています。
そう。私が記憶を失って戻って…それから暫くして、ベラ様とイリス様の結婚式が執り行われたのだ。
そして、この邸は、ハンフォルト公爵邸敷地内にある別邸で、イリス様とベラ様の住まいになっている。
兎に角、ベラ様達の結婚式には、私は何とかギリギリ間に合った─と言う感じだった。
その結婚式で、私はサプライズでフラワーシャワーをした。誰にもバレてはいないと思っていたけど……バレバレだった。
ー何で?ー
「ハルはすぐに顔に出るからね。きっと、“えっへん”とか“どやぁ”みたいな顔をしてたのよ。」
「──なる程…。」
今日も相変わらず、ミヤさんは私の思っている事が分かるようです。
「でも、ハル様の記憶が戻って良かったですわ。これで、お兄様も安心して結婚式を挙げられますわ。でも…ミヤ様?本当に…本当にあのヘタ──お兄様で良いのかしら?王家としては、両手を挙げて喜んでますけど、ミヤ様なら、もっと良い方が──」
「ふふっ。ベラ様、ありがとうございます。あのヘタレ─ランバルト様も、良い処はあるんですよ?政治に関しては本当に王たる資質を持っている程ですしね。何より───」
「「──“何より”?」」
一旦口を噤んでニコリと笑うミヤさんを、ベラ様と私で先を促す。
「あの人、可愛いのよ。」
「「可愛い!?」」
ふふっ─と朗らかに笑うミヤさんに、ベラ様が面白そうに根掘り葉掘りと話しを聞いていた。
ーミヤさんも…ベラ様も、本当に幸せそうで良かったー
そして、その日は3人で夕方迄沢山話しをした。
*****
『あーじ、またねちゃったの。』
『そうだな。』
蒼の邸の裏庭で、元の大きさに戻ったネージュのお腹のもふもふで昼寝をするハル。最近では、午前中にポーションを作ったり納品したりした後、午後からはネージュのもふもふで昼寝をすると言う事がルーティンになっていた。
『あーじ…びょうきなの?』
こてんと首を傾げて、心配そうな顔をするネロ。
『いや。主は病気ではない。ただ───眠たいだけなのだ。ゆっくりさせてあげよう。』
ネージュが優しく笑うと、『わかったの!』と、ネロもニッコリ笑った後、ハルに寄り添うように横になり、今日もまた3人でお昼寝をするのであった。
「?」
今日は久し振りに、ミヤさんとベラ様が蒼の邸に遊びに来てくれました。
たけど──
いつもは美味しい筈のお菓子が…
ー何だろう…変な味がするー
チラリと、一緒に食べているミヤさんとベラ様に視線を向けるけど、2人は特に何かを気にする様子もなくお菓子を食べている。何だかよく分からないまま、口直しにと紅茶を一口飲むと──
「─っ!?」
ガチャンッ─と、私の手からティーカップが滑り落ちる。
「「ハル(様)!?」」
ミヤさんとベラ様が焦った顔をして私の名前を呼ぶ。
「大丈夫です」と言いたくても言えなくて、私はそのまま意識を失った。
*王城ランバルトの執務室*
「今日は、蒼の邸でお茶をしているみたいだね。ベラが2、3日前から楽しみにしていて…ワクワクしている姿は……可愛かったなぁ。」
「本当に、イリスもブレないな?まぁ、妹と仲良くやっているのは嬉しい限りだがな。ランバルト、あれからパルヴァンの森も特に問題は無いのか?」
「あぁ、問題が出たとは聞いていない。ミヤ様とハルの2人が浄化したようなモノだから、また暫くの間は穢れも出ないだろう─と言っていた。」
規格外の魔法使いが呪いを跳ね返し一掃し、歴代最高の聖女が浄化したのだ。暫くは安泰だろう。
「なんかさぁ…この国って、ミヤ様とハル殿が居る限り安泰だよね?」
クレイルの言葉に、ある意味遠い目になり掛けた時
「すみません、エディオル様はここに居ますか?」
執務室のドアがノックされるのと同時に、ドアの外から少し焦ったような声が掛かる。
「居るぞ。入って来ていいぞ。」
と、ランバルトが入室を促すと、門番をしている騎士と共に擬人化したノアが入って来た。
「ノア?どうした?」
『主、手紙や早馬よりも早いからと、ネージュから伝言が届きました。ハル様が、茶会の途中で気を失って倒れてしまったそうです。』
「ハルが!?」
「エディオル、今すぐ邸に帰ってやれ!」
「あぁ、エディオル、もしベラが望み許されるなら、ハル殿の側に居ても良いと伝えてもらえるか?」
「イリス、分かった。ランバルト、すまないが…その言葉に甘えさせてもらう。」
「こっちの事は気にするな。私も暫くの間は外に出る予定はないからな。兎に角、ハル殿の側に付いてやれ。」
その言葉に素直に頷いて、エディオルはノアと共に王城を後にした。
「バート!!ハルは──ハルは大丈夫なのか!?」
コトネが居るであろう寝室の手前にある部屋に入ると同時に、そこに待機していたバートに詰め寄る。
「エディオルさん、落ち着いて?」
俺の問いかけに答えたのは、コトネの寝室から出て来たミヤ様だった。
「ミヤ様!すみません。それで…ハルは──」
焦る気持ちを抑えながら、ミヤ様にもう一度コトネの様子を訊くと─
ミヤ様はニッコリ微笑んだ。
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