49 / 62
異変
しおりを挟む「ハル様!結婚式の時は、ありがとうございました!」
「あの…迷惑じゃなかったですか?イリス様は怒ったりしてませんでしたか?」
「迷惑なんて事はありませんわ!とっても綺麗で、見惚れてしまってましたわ。勿論、イリス様も喜んでいましたわ!」
「ハル、あの花びらはサプライズだったの?」
「はい。私の式の時にクレイル様がしてくれて、それが嬉しかったので…ついついベラ様の式の時にしてしまいました。」
はい、今日はミヤさんと一緒にベラ様─ベラトリス様の邸に遊びに来ています。
そう。私が記憶を失って戻って…それから暫くして、ベラ様とイリス様の結婚式が執り行われたのだ。
そして、この邸は、ハンフォルト公爵邸敷地内にある別邸で、イリス様とベラ様の住まいになっている。
兎に角、ベラ様達の結婚式には、私は何とかギリギリ間に合った─と言う感じだった。
その結婚式で、私はサプライズでフラワーシャワーをした。誰にもバレてはいないと思っていたけど……バレバレだった。
ー何で?ー
「ハルはすぐに顔に出るからね。きっと、“えっへん”とか“どやぁ”みたいな顔をしてたのよ。」
「──なる程…。」
今日も相変わらず、ミヤさんは私の思っている事が分かるようです。
「でも、ハル様の記憶が戻って良かったですわ。これで、お兄様も安心して結婚式を挙げられますわ。でも…ミヤ様?本当に…本当にあのヘタ──お兄様で良いのかしら?王家としては、両手を挙げて喜んでますけど、ミヤ様なら、もっと良い方が──」
「ふふっ。ベラ様、ありがとうございます。あのヘタレ─ランバルト様も、良い処はあるんですよ?政治に関しては本当に王たる資質を持っている程ですしね。何より───」
「「──“何より”?」」
一旦口を噤んでニコリと笑うミヤさんを、ベラ様と私で先を促す。
「あの人、可愛いのよ。」
「「可愛い!?」」
ふふっ─と朗らかに笑うミヤさんに、ベラ様が面白そうに根掘り葉掘りと話しを聞いていた。
ーミヤさんも…ベラ様も、本当に幸せそうで良かったー
そして、その日は3人で夕方迄沢山話しをした。
*****
『あーじ、またねちゃったの。』
『そうだな。』
蒼の邸の裏庭で、元の大きさに戻ったネージュのお腹のもふもふで昼寝をするハル。最近では、午前中にポーションを作ったり納品したりした後、午後からはネージュのもふもふで昼寝をすると言う事がルーティンになっていた。
『あーじ…びょうきなの?』
こてんと首を傾げて、心配そうな顔をするネロ。
『いや。主は病気ではない。ただ───眠たいだけなのだ。ゆっくりさせてあげよう。』
ネージュが優しく笑うと、『わかったの!』と、ネロもニッコリ笑った後、ハルに寄り添うように横になり、今日もまた3人でお昼寝をするのであった。
「?」
今日は久し振りに、ミヤさんとベラ様が蒼の邸に遊びに来てくれました。
たけど──
いつもは美味しい筈のお菓子が…
ー何だろう…変な味がするー
チラリと、一緒に食べているミヤさんとベラ様に視線を向けるけど、2人は特に何かを気にする様子もなくお菓子を食べている。何だかよく分からないまま、口直しにと紅茶を一口飲むと──
「─っ!?」
ガチャンッ─と、私の手からティーカップが滑り落ちる。
「「ハル(様)!?」」
ミヤさんとベラ様が焦った顔をして私の名前を呼ぶ。
「大丈夫です」と言いたくても言えなくて、私はそのまま意識を失った。
*王城ランバルトの執務室*
「今日は、蒼の邸でお茶をしているみたいだね。ベラが2、3日前から楽しみにしていて…ワクワクしている姿は……可愛かったなぁ。」
「本当に、イリスもブレないな?まぁ、妹と仲良くやっているのは嬉しい限りだがな。ランバルト、あれからパルヴァンの森も特に問題は無いのか?」
「あぁ、問題が出たとは聞いていない。ミヤ様とハルの2人が浄化したようなモノだから、また暫くの間は穢れも出ないだろう─と言っていた。」
規格外の魔法使いが呪いを跳ね返し一掃し、歴代最高の聖女が浄化したのだ。暫くは安泰だろう。
「なんかさぁ…この国って、ミヤ様とハル殿が居る限り安泰だよね?」
クレイルの言葉に、ある意味遠い目になり掛けた時
「すみません、エディオル様はここに居ますか?」
執務室のドアがノックされるのと同時に、ドアの外から少し焦ったような声が掛かる。
「居るぞ。入って来ていいぞ。」
と、ランバルトが入室を促すと、門番をしている騎士と共に擬人化したノアが入って来た。
「ノア?どうした?」
『主、手紙や早馬よりも早いからと、ネージュから伝言が届きました。ハル様が、茶会の途中で気を失って倒れてしまったそうです。』
「ハルが!?」
「エディオル、今すぐ邸に帰ってやれ!」
「あぁ、エディオル、もしベラが望み許されるなら、ハル殿の側に居ても良いと伝えてもらえるか?」
「イリス、分かった。ランバルト、すまないが…その言葉に甘えさせてもらう。」
「こっちの事は気にするな。私も暫くの間は外に出る予定はないからな。兎に角、ハル殿の側に付いてやれ。」
その言葉に素直に頷いて、エディオルはノアと共に王城を後にした。
「バート!!ハルは──ハルは大丈夫なのか!?」
コトネが居るであろう寝室の手前にある部屋に入ると同時に、そこに待機していたバートに詰め寄る。
「エディオルさん、落ち着いて?」
俺の問いかけに答えたのは、コトネの寝室から出て来たミヤ様だった。
「ミヤ様!すみません。それで…ハルは──」
焦る気持ちを抑えながら、ミヤ様にもう一度コトネの様子を訊くと─
ミヤ様はニッコリ微笑んだ。
34
お気に入りに追加
1,076
あなたにおすすめの小説

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!
未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます!
会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。
一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、
ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。
このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…?
人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、
魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。
聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、
魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。
魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、
冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく…
聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です!
完結まで書き終わってます。
※他のサイトにも連載してます

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる