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お砂糖増量につき

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蒼の庭園でのランチをした後、またまた手を繋いで歩いて街迄やって来ました。
そして、一番最初にやって来た所が“ビジュー”だった。

「カルザイン様、いらっ──ハル様!?お久し振りですね!」

「キャリーさん、お久し振りです。」

私達を笑顔で迎えてくれたのは、仲良くしてもらっているキャリーさんだった。

「療養の為にパルヴァンに行っていたと聞いてましたけど…大丈夫なんですか?」

「はい。スッカリ元気になったので、帰って来ました。」

「それは良かったです。これで、カルザイン様もで一安心ですね?」

クスクスと笑うキャリーさん。
きっと、ご令嬢達に突撃?されていた事を知っているのだろう。

「前に頼んでいた物を取りに来た。」

「はい。直ぐにお持ち致しますね。」







何を頼んでいたんだろう?と思いながら、ディと一緒に待っていると、キャリーさんがトレーを持って戻って来た。

「かすみ草の……指輪とピアス?」

「本当は、庭園で咲いていたかすみ草と一緒に、コレも渡そうと思っていたんだが…ちょっと予定がくるってしまったんだ。どうかな?」


前に、お姉さん達と日本に還る前に、ディとクレイル様からのお礼として貰ったモノも、青色と赤色のかすみ草の形をした魔石が付いていた。
でも、今回のは勿論、青色と水色と白色。

「可愛いですね!ありがとうございます!」

ー青色と水色と白色は─ディと私2人の色だー

「気に入ってもらえて良かった。」

そんな私達の様子を、キャリーさんはニコニコしながら見ていたのは─恥ずかしかったけど、コレも噂を払拭する為だ!と自分に言い聞かせて頑張りました!



“ビジュー”を出た後は、ウィンドウショッピング?をしながら街並みを歩いた。時折、物凄く痛い?背中がゾクゾクするようなご令嬢からのキツイ視線を送られたりもしたけど、突撃して来るような人は居なかった。

ーいやいや、あんな視線を飛ばせるとは…本当にお貴族様は凄いですね?ー






そして、ディが見付けたと言っていた美味しそうなケーキは、パティスリー“ブリス”のケーキだった。
ディと2人で初めて来たお店だ。あの時は、個室!?と驚いたけど……今では夫婦…だから何の問題も無く個室に──と思っていたのに、どうやら今日は個室ではないようです。

ー何で?ー

と思いながらも、店員さんに窓際の眺めの良い席に案内されて…4人席なのに横並びに腰を下ろした。

ー何で?ー

しれっと私の横に座ったディが、サラッと二人分の注文を済ませ、暫くすると二人分のケーキと紅茶が運ばれて来た。ディと私のケーキは違う種類のモノで、どちらも美味しそうだった。
私のは生クリームがたっぷり掛かっている。反対に、ディのはタルトタイプのモノで、シンプルだけどフルーツたっぷりで美味しそうだった。

「ハル、美味しいか?」

「はい、甘さ控えめで食べやすくて美味しいです。ディのも美味しい?」

ーできるなら、テイクアウトしたいなぁー

なんて、食い意地の張った考えをしていると、ディが一口分のタルトをフォークに刺して、私の目の前に掲げる。

「一口どうぞ?」

「───え?」

ピシリッと固まる私の横に居るディは、ニッコリと微笑んでいる。

「──え?」

「ほら、口を開けないと…食べれないぞ?」

ーそれ、“あーん”しろって事ですか!?ー

ニッコリ微笑んでいるだけなのに、圧が半端無い。コレ、逃げたら倍返しのヤツですね!?「ゔぅ──」と呻いた後、口を開けてタルトをパクッと口にした。

「美味しい?」

「──ハイ。オイシイデス。」

ーいや、正直恥ずかし過ぎて味なんてちっとも分からないですけどね!?ー

取り敢えず、ミッション?クリアだよね!?と安心したのも束の間で

「ハルのも、俺に一口くれる?」

「───へあ?」

変な声が出たのは許して欲しい!ギュッとディを睨んでみると、やっぱりニコニコと圧が半端無い笑顔をしていた。

「くぅ──っ!」

と我慢しがら、私もディに“あーん”しました!頑張りましたよ!その瞬間、「きゃー」とか「ご馳走様です!」とか聞こえた気がしたけど…気のせいだと思う事にしておきます!HPとやらは、ゴリゴリに削られましたけどね!

その後は、顔を真っ赤にしてフラフラになった私は、ディに支えられながらその店を後にしました。
それはそれは…その場に居た人達からは…微笑ましい笑顔で見送られました。

きっと、これで変な噂は無くなるだろうけど──今度は恥ずかしくて歩けなくなるのでは?と思った事は……間違いではないだろう。

「それじゃあ…ハル。そろそろ蒼の邸ウチに帰ろうか。」

ハッとしてディを見上げると、さっきの圧の凄い笑顔じゃなくて、少し切なそうな色を帯びた瞳をしたディが私を見ていた。

記憶を失くしてから初めて帰る。

私はディの瞳をしっかりと見つめたまま

「はい、帰りたい──です。」

と、私はニッコリ微笑んだ。




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