47 / 62
お砂糖増量につき
しおりを挟む蒼の庭園でのランチをした後、またまた手を繋いで歩いて街迄やって来ました。
そして、一番最初にやって来た所が“ビジュー”だった。
「カルザイン様、いらっ──ハル様!?お久し振りですね!」
「キャリーさん、お久し振りです。」
私達を笑顔で迎えてくれたのは、仲良くしてもらっているキャリーさんだった。
「療養の為にパルヴァンに行っていたと聞いてましたけど…大丈夫なんですか?」
「はい。スッカリ元気になったので、帰って来ました。」
「それは良かったです。これで、カルザイン様も色んな意味で一安心ですね?」
クスクスと笑うキャリーさん。
きっと、ご令嬢達に突撃?されていた事を知っているのだろう。
「前に頼んでいた物を取りに来た。」
「はい。直ぐにお持ち致しますね。」
何を頼んでいたんだろう?と思いながら、ディと一緒に待っていると、キャリーさんがトレーを持って戻って来た。
「かすみ草の……指輪とピアス?」
「本当は、庭園で咲いていたかすみ草と一緒に、コレも渡そうと思っていたんだが…ちょっと予定がくるってしまったんだ。どうかな?」
前に、お姉さん達と日本に還る前に、ディとクレイル様からのお礼として貰ったモノも、青色と赤色のかすみ草の形をした魔石が付いていた。
でも、今回のは勿論、青色と水色と白色。
「可愛いですね!ありがとうございます!」
ー青色と水色と白色は─ディと私の色だー
「気に入ってもらえて良かった。」
そんな私達の様子を、キャリーさんはニコニコしながら見ていたのは─恥ずかしかったけど、コレも噂を払拭する為だ!と自分に言い聞かせて頑張りました!
“ビジュー”を出た後は、ウィンドウショッピング?をしながら街並みを歩いた。時折、物凄く痛い?背中がゾクゾクするようなご令嬢からのキツイ視線を送られたりもしたけど、突撃して来るような人は居なかった。
ーいやいや、あんな視線を飛ばせるとは…本当にお貴族様は凄いですね?ー
そして、ディが見付けたと言っていた美味しそうなケーキは、パティスリー“ブリス”のケーキだった。
ディと2人で初めて来たお店だ。あの時は、個室!?と驚いたけど……今では夫婦…だから何の問題も無く個室に──と思っていたのに、どうやら今日は個室ではないようです。
ー何で?ー
と思いながらも、店員さんに窓際の眺めの良い席に案内されて…4人席なのに横並びに腰を下ろした。
ー何で?ー
しれっと私の横に座ったディが、サラッと二人分の注文を済ませ、暫くすると二人分のケーキと紅茶が運ばれて来た。ディと私のケーキは違う種類のモノで、どちらも美味しそうだった。
私のは生クリームがたっぷり掛かっている。反対に、ディのはタルトタイプのモノで、シンプルだけどフルーツたっぷりで美味しそうだった。
「ハル、美味しいか?」
「はい、甘さ控えめで食べやすくて美味しいです。ディのも美味しい?」
ーできるなら、テイクアウトしたいなぁー
なんて、食い意地の張った考えをしていると、ディが一口分のタルトをフォークに刺して、私の目の前に掲げる。
「一口どうぞ?」
「───え?」
ピシリッと固まる私の横に居るディは、ニッコリと微笑んでいる。
「──え?」
「ほら、口を開けないと…食べれないぞ?」
ーそれ、“あーん”しろって事ですか!?ー
ニッコリ微笑んでいるだけなのに、圧が半端無い。コレ、逃げたら倍返しのヤツですね!?「ゔぅ──」と呻いた後、口を開けてタルトをパクッと口にした。
「美味しい?」
「──ハイ。オイシイデス。」
ーいや、正直恥ずかし過ぎて味なんてちっとも分からないですけどね!?ー
取り敢えず、ミッション?クリアだよね!?と安心したのも束の間で
「ハルのも、俺に一口くれる?」
「───へあ?」
変な声が出たのは許して欲しい!ギュッとディを睨んでみると、やっぱりニコニコと圧が半端無い笑顔をしていた。
「くぅ──っ!」
と我慢しがら、私もディに“あーん”しました!頑張りましたよ!その瞬間、「きゃー」とか「ご馳走様です!」とか聞こえた気がしたけど…気のせいだと思う事にしておきます!HPとやらは、ゴリゴリに削られましたけどね!
その後は、顔を真っ赤にしてフラフラになった私は、ディに支えられながらその店を後にしました。
それはそれは…その場に居た人達からは…微笑ましい笑顔で見送られました。
きっと、これで変な噂は無くなるだろうけど──今度は恥ずかしくて歩けなくなるのでは?と思った事は……間違いではないだろう。
「それじゃあ…ハル。そろそろ蒼の邸に帰ろうか。」
ハッとしてディを見上げると、さっきの圧の凄い笑顔じゃなくて、少し切なそうな色を帯びた瞳をしたディが私を見ていた。
記憶を失くしてから初めて帰る。
私はディの瞳をしっかりと見つめたまま
「はい、帰りたい──です。」
と、私はニッコリ微笑んだ。
33
お気に入りに追加
1,076
あなたにおすすめの小説

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!
未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます!
会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。
一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、
ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。
このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…?
人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、
魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。
聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、
魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。
魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、
冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく…
聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です!
完結まで書き終わってます。
※他のサイトにも連載してます

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる