44 / 62
ゼンとリュウ
しおりを挟む『勿論だ。これからも、ずっと…ハルは俺の娘だからな。』
ー良かった。これからも…ゼンさんが…私のお父さんー
「────ん…」
ーん?苦しい??ー
あれ?私、お父さんと話しをしていなかったっけ?
あれ?ひょっとして、話の途中で寝ちゃった!?
バチッ─と、自分でビックリして目を開けると──
「おはよう、コトネ。」
目の前に、同じ布団に入り、私をガッツリ抱え込んでニッコリ微笑むディが居た。
「ふぁいっ!?」
ビックリついでに、思わずディの胸に手を押し当てて距離を空けようと───してもできませんでした。
はい。ディはピクリとも動きませんでした。
ーディに勝てる訳ないよね!?ー
「おはよう…ございます。えっと…あの…どうなってますか?」
あれから、お父さんと2人で話しをして、これからも父娘でよろしく!ってなって…嬉しくてお父さんに抱きついて─そこからの記憶が無い。
「ん?見たままだな。コトネと一緒に寝ていた。」
「ひょっとして…寝落ちしましたか?」
「──らしいな。昨日、ゼン殿が……寝ているコトネを運んで来てくれたんだ。」
ーそれはそれは、苦虫を噛み潰したような顔をしながらー
と言う事は、コトネには言わないでおこう。
「あー…やってしまってたんですね。後で、謝罪?お礼?を言わなきゃですね。」
それは後にして…
それよりも──と思う。
ー恥ずかしいのは相変わらずだけど…やっぱりディの温もりは安心するなぁー
ディの服をギュッと握って、顔をスリスリと擦り付ける。
「───コトネ?」
「はい?」
名前を呼ばれて顔を上げると、ディは微笑んでいて…
ーあ、これ、ヤバいパターン!?何で!?ー
と思った時には…遅かった。ガッツリ抱え込まれたまま、一気に深いキスで攻められた。
息も絶え絶えで、ディの腕の中でグッタリしていると
「続きは蒼の邸に帰ってからだな。」
と、囁かれた。
*少し時を遡って─ハルが寝落ちした後の、グレンの執務室にて*
今ここには─グレン、ゼン、ロン、リュウ、擬人化したノアが居る。
「ノアがここに居るって事は、サリスの処分が決まった─と言う事か?」
「決まったと言うか、既に…処分は実行された。」
「──は?」
リュウの質問に、グレンがサラッと答える。
今回の件に関しては、ハルとネージュとパルヴァンが関わっていたから、サリスが一旦国王預かりとはなったが、最終的にはパルヴァンに渡されて処罰されるだろうと思っていた。それに、ネージュに関しては二度目だった。ノアが静かにだが─かなりキレていた事も知っていた。
俺が魔法使いだからこそ気付いた、ノアの魔力。
本人は“魔獣の端くれ”等と言っていたけど─とんでもない伏兵だと思った。
ノアは、先代達と比べて魔力が少ないだけで、本当は──“流石の天馬”なのだ。普段はうまく隠しているようだけど。
兎に角、ネージュが傷付きハルが記憶喪失。おまけにネロが泣いたとか─。
だから、きっとノアが何かしらサリスに仕掛けるだろうと思っていたけど…
「パルヴァンで…既に処罰を済ませたのか?早過ぎないか?」
「──ノアがな…一瞬だったんだ。」
「ノア?」
そのノアに視線を向けると、ノアはニッコリ微笑んだ後、サリスへの処罰を語り出した。
ーノアを怒らせてはいけないー
と言う事を心に留めておこう。
普段のノアは、物腰の柔らかい馬で、魔力も殆ど感じないのに。いや、感じさせないようにしているのか。
『危険分子は全て潰したので、もう、今回のような事は起こらないと思います。勿論、サリスも…時間の問題です。あぁ、リュウ様がサリスに会いに行っても…話はできないと思います。』
「───ソウカ…ワカッタ。」
『では、私はこれで失礼致します。』
ノアは、それはそれは男の俺でもドキッとするような綺麗な微笑みを浮かべた後、この部屋から出て行った。
「フェンリルのネージュが…選んだ相手…だったな…。」
きっと、ネージュもノアの本当の力は知らないだろう。それだけ、ノアの魔力が優れているのだ。
ただ、ネージュも、本能的にノアの力を理解しているからこそ、伴侶に選んだのだろうけど……。
「取り敢えず、今回の件は…コレで終わり─と言う事だな?」
「そうだ。」
ゼンは一呼吸置いた後
「お前はクズでも俺がお前を嫌いであっても、ハルはお前を信頼しているからな。だから、今日はお前も呼んだんだ。それと、魔力封じの枷も、今後も頼むぞ。」
「枷の事は言われなくても、これからも見つけ次第潰していく。アレは…本当に…ヤバかった……。」
ー転移後、王太子が俺に気付くのが遅かったら…本当に死んでたんじゃないんだろうか?ミヤ様には言わないけどー
それと、これは確認しておかないとな─と思い、改めてゼンに視線を合わせる。
「で?ハルがこっちの人間だったって事は…ゼンにとっては、嬉しい事なのか?愛する嫁と自分では無い男との娘だった訳だけど…」
これで“許せない”と言うなら、相手がゼンだろうと、俺はハルを守る為に動く。
「嬉しいに決まっているだろう。ユイが俺に残してくれた娘だからな。今迄以上に守っていくから、お前が心配する事はない。」
「ふっ─なら良かった。」
そりゃそうか。そんな理由で、ゼンがハルを嫌いになる事はないか。
「それじゃあ、俺もそろそろ隣国に帰るよ。」
ひらひらと手を振った後、俺は魔法陣を展開させて、隣国へと帰った。
❋いつも読んでいただき、ありがとうございます。モブも、いよいよ終わりが見えて来ました。本編完結後には、何話か余話を投稿する予定ですが、読みたい人?の話などありましたら、感想欄にでも書いて下さい。
後少し、お付き合い宜しくお願いします❋
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
43
お気に入りに追加
1,073
あなたにおすすめの小説
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。
――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?
追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。
その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。
※序盤1話が短めです(1000字弱)
※複数視点多めです。
※小説家になろうにも掲載しています。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる