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仲良し?
しおりを挟む王太子様とカルザイン様は、浄化をした翌日には王都へと帰って行った。
『ミヤさんは、まだパルヴァン辺境地に居ても大丈夫なんですか?』
ーミヤさんだって、仕事とか王太子妃になる為の準備とかが…あるんだよね?ー
『そうね…ハルが大丈夫そうなら、来週には戻ろうと思っているんだけど…。体調は大丈夫そうよね?』
『はい。もう体調は何の問題も無いですね。後は…記憶だけですね。でも……変な感じなんですけど、男の人が近くに来ても恐怖心が湧いてこない事は…良かったなと。』
『それは…良かったわね。ランバルト様も、エディオルさんも大丈夫だったものね?』
“エディオル=カルザイン様”
『あの…ミヤさん。私……カルザイン様とは…結構仲が良かったんですか?』
『エディオルさん?どうして?』
『うーん…何と言うか……昨日、カルザイン様と一緒にノアに乗せてもらったんですけどね?その…全く嫌な感じとか怖い感じも無くて…。寧ろ、ホッとする感じさえあって…。しかも、前にも何度か一緒にノアに乗った事があるって言われて。だから、それなりに…仲良くさせてもらっていたのかな?って。』
カルザイン様って、見るからに貴族の人なのに…巻き込まれただけの私と仲良くしてくれるって──それに、嫌な顔せずにいつも笑ってくれて──良い人…だよね?
『ふふっ。そんなに気になるなら、また会ってみたら?教える事は簡単だけど…また一から相手を知っていくのも、楽しいかもしれないわよ?』
ーいやいやいやいや…私がお貴族様を誘うとか…有り得ないよね!?ー
まぁ…少しは気にはなるけど…多分、そんなに会うことも…ないよね?
なんて思っていたんだけど───
「これも、前に、ハル殿が好きだって言ってたモノなんだ。」
「ありがとう…ございます。」
あまり会うこともないだろう─なんて思っていたけど。
何故か、カルザイン様は2、3日に一度はノアと一緒にパルヴァン辺境地へとやって来た。
そして、やって来ると、私にこの世界の言葉を色々と教えてくれたりする。聞き取りはそこそこできるようになったけど、言葉にするのがまだまだ苦手で、うまく表現ができなくてしどろもどろになっても、カルザイン様は私を焦らせる事もなく、ただただ優しい目をして耳を傾けてくれる。
「それと、これもどうぞ。」
と、カルザイン様がもう一つ差し出して来たのは
「あ、かすみ草!」
私の大好きかすみ草の、小さなブーケだった。
「前にもらった、青のもキレイだったけど……ピンクも可愛いね?ありがとうございます。」
自然と笑顔になって、カルザイン様と視線を合わせてお礼を言う。
「───くっ……」
と呻いたかと思うと、片手で顔を覆って俯いてしまった。
「えっ!?カルザイン様、だいじょぶですか!?」
「───ふぅ─────…大丈夫だ。気にしないでくれ。」
そんな大きな溜め息吐いて、絞り出すような声を出されて“大丈夫だ”と言われても、大丈夫のようには見えないよね!?体調悪いのかなぁ?ポーション持って来る?
「ポーションは必要無い。本当に大丈夫だから。」
「ん?私、声に出してた?」
「あ─いや…ハル…殿は昔から…顔によく出てるから…な。」
ーえ?何それ!?恥ずかしい!!ー
と、両手で両頬をペシペシと軽く叩くと
「─────本当に…勘弁して欲しい……」
と、カルザイン様が何かまた呟いたけど、ワチャワチャしていた私の耳には届かなかった。
『ハルも大丈夫そうだから、明後日には王都に戻る事にしたわ。』
『分かりました。ミヤさん、本当にありがとうございました。』
相変わらず私の記憶は戻らないままだったけど、特に困った事も無く、体調も問題無いと言う事で、ミヤさんが王都へと帰る事になった。
そして、ミヤさんが王都へと帰る日、私も久し振りにお兄さんであるロンさんに会う為に、一緒に行く事にした。
ミヤさん曰く、お兄さんは、私が作ったクッキーがお気に入りだそうなので、その日はクッキーを作って持って行く事にした。
*王都に行く前夜*
「ん?このポーチ…何だろう?」
明日の準備をしていると、私の記憶にないポーチが出て来た。中に何が入ってるのかな?と思いながら開けてみると──
「え?」
手の平サイズなポーチなのに…中に手を入れると…色々な物が…入っていた。
「え??リアル…四次元ポケット??」
これが…“チート”なのか─と、少し遠い目になったのは…仕方無いよね??
「──あ!」
そして、私が手に取ったのは──パスケースだった。
期限が6年前の8月の定期が入っている。そして──
「お父さん…お母さん……」
私の…本当の両親の写真。
ー久し振りに…見たなぁー
高校の卒業式の時に3人で撮った……家族揃った最後の写真。
「──お父さん、お母さん…私…日本には還れないみたいだけど…新しいお父さんとお兄さんができたよ。だから…安心してね?」
ソッと、その写真を撫でた。
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