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久し振り?のノア
しおりを挟むミヤさんの浄化を行う姿は──
本当に綺麗だった。
ミヤさんが両手を組んで祈り?を始めると、身体から金色の光りがフワフワと溢れ出したと思ったら……そこから一気にその光りが森全体に広がっていった。
「もともと穢れがないから、浄化の光りも広がりやすいのよ。3年前の時は、3人で浄化をしてやっと─って感じだったからね。今回の浄化は、楽にできたわ。」
と、ニッコリ微笑むミヤさんだけど、王太子様とカルザイン様と(同行していた)ゼンさんの顔が心なしか引き攣っていたから、きっとこれは、チートな聖女のミヤさんだからこそなんだ───と思います。
「ミヤさん、とっても綺麗でした!」
無事に浄化を終えて邸に戻って来てから、サロンでお茶をしている時に私がミヤさんに言うと
「本当に綺麗だった!」
と、王太子様がミヤさんの両手をとって、目をキラキラさせてミヤさんを見つめている。
「ありがとう…ございます?」
ミヤさんはと言うと、少しひいてる?感じはあるけど、嬉しそうな顔をしている。それからも、王太子様がミヤさんの手を離す様子はなく、そのままミヤさんに色々と語り掛けている。
ーえっと?どうしようかなぁ?二人は…婚約者だったよね?ー
チラリと、王太子様の後ろに控えているカルザイン様に視線を向けると、フワリと微笑んで、この部屋の扉を指差した。
“この部屋から出よう”
と言う意味だろうと思い、私はそっと椅子から立ち上がった。
「ミヤさんと王太子様は…本当に仲が良いんですね。」
カルザイン様と一緒に部屋を出て来た後、廊下を歩きながらカルザイン様に話し掛けた。
私が男性が苦手と言う事を知っているのか、程好い距離を保ってくれていて、それ程緊張する事もなかった。顔は見れないけど。
「仲が良いと言うか…ミヤ様が好き過ぎる王太子殿下を、ミヤ様が受け止めてくれている─感じだろうか?」
「そうなんですね…。兎に角、この世界でミヤさんが幸せそうで良かったです。あ、そう言えば…あの…カルザイン様の愛馬のノアが、ネージュの旦那様であり、ネロの父親だと聞いたんですけど、本当なんですか?」
「あぁ、本当だ。見た目は普通の馬なんだが、天馬と言う魔獣なんだ。」
「そうなんですね。」
「──ノアに…乗るか?」
「はい?のる?」
ーえ?“のる”って何?ー
歩みを止めて私の方へと振り返ったカルザイン様。
私は、コテンと首を傾げて考える。
「ノアに──乗る??」
「あぁ。ハル殿は覚えていないかもしれないが…もうすでに何度かノアに乗った事があるんだ。」
「えっ!?私が…馬に!?」
ーそれはビックリです!私、馬に乗れてたの!?ー
それからのカルザイン様の行動は早かった。
あのままお父さんの元へと行き、森に入る許可を得て、そのまま私と一緒にノア達が居る森へとやって来たのだ。
『あーじ!』
「ネロ!?」
私を視界にとらえたネロが、私へと駆け寄って来て、そのままの勢いで飛び付いて来た。勿論、そんな勢いを受け止め切れる体力は持ち合わせていない訳で……
ー倒れる!!ー
しっかりとネロを抱き抱えたままに、後ろへと倒れる衝撃を覚悟して目をギュッと瞑る─
「───────?痛くない?」
痛くないどころか、後ろに倒れそうにもなっていない。ソロソロと目を開けると
「大丈夫か?」
と、私の背中を受け止めてくれているカルザイン様が居た。
「っ!?だいっじょぶです!?」
「そうか、良かった。」
カルザイン様はフワリと微笑んでから、私から体を離した。
「ネロ、勢いのままに飛び付くと危ないから、次からは気を付けるようにな?」
『あーじ…ごめんなさいなの…』
カルザイン様がネロの頭をポンポンと優しく叩きながら注意をすると、ネロが耳と尻尾を垂れ下げてスリスリとすり寄ってきた。
「次からは…気を付けてね?あの、カルザイン様、ありがとうございます。」
「いや─ハル殿が怪我をしなくて良かった。」
そう言うと、カルザイン様はまたノアの居る方へと歩みを進めた。
ーあれ?ネロが私に飛び付いて来る前って…カルザイン様は私の前を歩いてたよね?ー
そのカルザイン様は、息を切らせている事もなく淡々とした顔のままノアに馬具を装着した後、顔を撫でている。
ー私…どうして…平気なんだろう?ー
程好い距離感があると言っても、殆ど知らないカルザイン様と2人きりなのに…恐怖心が全く湧かない。記憶がないだけで…カルザイン様とは…仲良し?だったのかなぁ?
「コ───ハル殿、どうする?ノアに…乗るか?」
「え?あ──と…乗りたいなとは思うんですけど…今の私には、ノアに乗れるとは───」
「なら、ノアに乗って森の中でも散歩しよう。」
そう言って、カルザイン様はヒラリッと言った感じでノアに騎乗して、そのまま私の方へとやって来た。
「ほら──」
と、騎乗したままカルザイン様が手を差し伸べて来る。
「ん?“ほら”?手?」
よく分からないままに私の手を差し出すと
「ひゃあ──っ」
グンッとノアの上に引き上げられた。
「えっ!?」
両手で手綱を握っているカルザイン様の腕の間に、横向きに騎乗させられた。左を向けば、カルザイン様の顔が……近過ぎます!
それでも、不思議と恐怖心がない。寧ろ───
フワリと、シトラス系の爽やかな香りがした。
その香りが…何故かとてもホッとするモノで──
「動いても大丈夫か?」
「─っ!はい、お願い…します!」
更に、カルザイン様の優しい声に何だか涙が出そうになるのを我慢して、私は周りの景色を見るフリをしてカルザイン様から顔を背けた。
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